ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第644話 やっぱりいた

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 雪山エリアに出てくる魔物は、スノーマン、スノータイガー(ベンガルトラの白変種のような外見)、普通寒い地域にはいないはずの甲虫系の魔物(白変種の蜘蛛やカマキリ)、トレントやツタの魔物、クマやシカ・イノシシ等の動物系の魔物、ゴーレムやゴブリン・オーク・コボルト・オーガ等の亜人系の魔物。

 他のフロアに比べて、出てくる魔物の種類が倍くらいいるのだ。その全部が、この地形に対応しているため、厄介な攻撃なども仕掛けてくる。

 特にスノーゴーレムの奇襲には、びっくりした。雪と完全に一体化しており、索敵にも反応を示さない完璧な隠形なのだ。同じような奇襲が多かったのに、全く気付けなかったので、移動する範囲に魔法を放ちながら進んで、索敵する形になっていた。

 一〇八階に到着すると、雪山エリアは変わらないのだが、雰囲気が一変して、ピリピリした空気が漂っている。

「別に毒が散布されているわけじゃないよな? ガーディアンか? 気付ける範囲の変化は?」

 誰も首を縦に振らず横に振っている。やっぱりみんな気付いてはいるけど、どんな変化があったかまではわかっていないようだ。それは俺も一緒なんだけどな。

 様子をうかがいながらしばらく進んでいくとさらに異変に気付く。魔物がいないのだ。ダンジョンで魔物がいない部屋とか空間はあるが、全く気配がないのは異様な雰囲気だ。上る階段から下る階段までの丁度半分くらいまで移動すると次なる異変が起きた。

「地震か?」

 体に揺れを感じたのだ。この世界で初めてではないが、地震ではないけど、巨大な魔物が動く時に地面が揺れたな。

「違うな、この規則的に揺れが強くなる感じは、巨大な魔物が動く時に似ているな、相手の姿が見えないのは困るな。周りの木を伐るぞ!【カマイタチ】」

 全方位に向かって、風の刃の乱れ撃ちをしていく。他の魔法組も俺の伐り残しを処理してくれていた。それと同時に足場を確保するために、強風を生み出して伐り刻んだ木を遠くへ吹き飛ばす。

 そうするとニ〇〇メートル程先だろうか? 地震の原因だと思われる魔物の姿が見えた。

「あいつがデカ過ぎて、距離がよくわからんな。名前が分からないから、ジャイアントとでも呼んどくか、ここまでデカい巨人がいるんだな。武器もデカいと丸太どころの話じゃないな。直撃は避けないとやばいか? シュリも今回は無理して受けるなよ!」

 俺がジャイアントと呼んだ巨人は、俺が見た亜人タイプの魔物で一番デカく、木が十メートル位な事を考えて、それが膝位までしかないので五〇メートル位のサイズになる。こいつがいれば、ドラゴンとか余裕じゃね?

「中途半端な距離はとるなよ。できる限り近くか離れた所から攻撃だ。大きな敵を倒す心得の、足を削る作業をしようか。絶対に無理はするなよ!」

 俺の指示に従って、みんなが動き出す。

「ここまで体のサイズが違っても、あいつは俺たちの事をしっかり認識できるのか? ワームなら何か特殊な器官がある気がするけど、ジャイアントは見た目はマッチョメンな毛むくじゃらだもんな、目以外に特殊な器官があるんかな?」

 前衛がジャイアントの攻撃範囲に入ると、ジャイアントの行動パターンが変わった。

 俺たちが魔法で木を伐った事を視認して、こちらに向かってきていたが、攻撃範囲に前衛陣が侵入すると、きちんと敵だと認識して攻撃態勢に入る。はたして攻撃の速度はどんなものだろう。

 速度自慢のニ人、マリーとライラが攻撃のターゲットになっている。ジャイアントの攻撃は、左手に持った棍棒? 石棒? を振り下ろす。遠くから見ている分には、普通の人間と変わらないような速度に見えるが、サイズが大きいので、実際の速度は比ではない。

 どの位の強さ速さか分からないので、今回は結界で攻撃をそらす方向にすると、ピーチが決めた。

「マリー、ライラ! 右に回避!【結界】!」

 ジャイアントの振り下ろしの軌道に合わせて、少しずらすように結界を張る。ニ人は問題なく距離をとる事ができたが、結界に守られてない側が、大変な事になっていた。

 地面を叩いた際に、地面が強烈に揺れるのは変わらなかったが、結界に守られていない方は土煙や雪、氷が舞い上がっていた。

「これ、攻撃も厄介だけど、攻撃の余波がヤバいな。ピーチはどう思う?」

「そうですね。逃げる方を指示するのが良いと思いますが、ジャイアントが結界を破った時が怖いですね。やっぱり前衛陣は、あの武器の内側に入るべきでしょう。近くにいても、スタンピングとかが危ないので、注意が必要だと思いますが……」

 ピーチの意見はもっともだな。近付きすぎれば足による攻撃もあるからな。ピーチと頷き会い、指示が出る。

「武器の攻撃範囲の内か外からの攻撃をするように。近くにいるメンバーは、足による攻撃にも注意するように! 私たちヒーラーは、できるだけ前衛に、攻撃の余波がいかないように、声掛けしながら結界を張っていきます」

 前衛陣が近付いていくと、地震を起こすような、スタンピングの攻撃にさらされ、少し距離をとると持っている武器での攻撃が飛んでくる。範囲内に誰もいないと、一番近くの誰かに向かって移動して、攻撃を繰り返す。

「何か動きが機械っぽいな、この世界で言うならゴーレムっぽい? それも違う気がする。ピーチ、しばらく指揮権をもらうよ。聞いてくれ、前衛陣の中から四人同時に、ジャイアントの攻撃範囲に入ってくれ、攻撃が来たらすぐに退却して、四回繰り返してくれ」

 俺の指示に従って、前衛陣の年長組から四人、マリー、ライラ、シュリ、アリスが攻撃範囲内に入る。ジャイアントは、一番攻撃をしやすい位置にいたアリスに、攻撃を仕掛けている。ヒーラー陣と協力して、余波を防ぐように健闘している。

 四回目の突撃で、何となくつかめた。

「理由は分からないけど、プログラムっぽく、優先順位の高い順番で攻撃をしているようだ。それを利用してみようと思う。武器を左に持っているためか、左から近付いてくる敵を優先して攻撃する傾向がある。

 ジャイアントの左前側に足が速いメンバーを、一番遠い右後ろに前衛火力陣。遠距離攻撃組は、ジャイアントの右足を狙うように。前衛火力陣はスタンピングの範囲内に入ると、足が向かってくるから注意するように! 一撃離脱は守ってね!」

 指示を出して攻撃を開始する。三十分程繰り返していると、やっとジャイアントが右膝をついた。武器を手放して、両手で近くのメンバーを攻撃しているが、無茶な体制で攻撃しているためか、力や速さは無い。

 俺も攻撃に加わり、後方から飛ぶような速度で背中を駆け抜け、首の後ろを大薙刀で切り付ける。

 人間と同じ構造であれば、ウィークポイントであるため、執拗に攻撃を仕掛ける。すると、その攻撃を嫌がるように、首の後ろに手が飛んでくることが増えている。

 そうすると足の守りが疎かになるため、無事な左足にもダメージがたまっていき、次第に膝立ちも維持できなくなり倒れ込む。

 とどめとばかりに、前衛火力陣が順々に首の後ろを切り付けていく。戦闘開始から四十四分で、ジャイアントはドロップ品に変わる。
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