ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
816 / 2,518

第816話 希望の光

しおりを挟む
 実験を開始してから3週間が過ぎた。特に俺の草原エリアで行っている実験は、初日以上の進展がなかった。色々試してみたのだが、次亜塩素酸水より効果があった物もあったが、全部が全部劇薬に近い物や、それを薄めて散布した物だったので、使用する事ができないと判断せざるを得なかった。

 今日は、グリエルがフレデリクの街の周辺の様子や、状況を報告しに来ることになっている。

「シュウ様、お待たせしました。この資料が3週間の様子や状況の報告書になります」

 グリエルが準備してくれた資料を、綾乃やバザールと一緒に目を通す。とりあえず安心したのは、

「今の所『魔熱病』でなくなった人はいないんだな。それより、植物の方の報告が信じられないな」

 『魔熱病』のもたらす被害について聞いていたが、植物はこの3週間でフレデリクの街を中心とした、約10キロメートルの範囲から姿を消しているとの事だ。

 フレデリクの周辺に作っていた実験農場の作物に関しては、感染拡大を始めてから1週間のうちに腐ってしまっていた。地中にある芋類などまで全滅しているとの事だった。

「食料に関しては問題ないって事かな?」

「そうですね、ディストピアから収納の箱を使って食料は運んでいますので、劣化する事もなく送り届けています。買い占めなどを行っていた商会は、私の独断でゼニスの助けを借りて潰させていただいています。格安で売っているとはいえ、貯えが多くない家族もいますので、どうしようかと悩んでおります」

「あ~それもそうか……お金だって無限じゃないもんな。無償で放出すれば堕落をまねくよな? それに、一部の人間が仕事がないだけで、現状仕事がある人間だっているんだもんな……」

「それなら、一時的に街の事をしてもらって、奉仕の対価としてお金を渡すのはどうでござるか? 後、お金に問題がないのでござるなら、一時的に税を無くすなどの方法もいいでござるよ?」

「…………」

「その目は何でござるか! 某だって一時的にではありますが、ゴーストタウンの前の街エデンを収めていたでござるよ!」

 バザールからまともな意見が出てきたので、思わず見入ってしまっていたらバザールから抗議をされてしまった。

「ごめんごめん、グリエル、今の意見ってどうなんだ?」

「そうですね、普通の街では行えない政策ですが、シュウ様の管理されている街であれば、確かにそれは可能ですね。盲点でした」

「街の拡張工事でもしようか、お金ならいくらでもあるから、衛星都市……というか町? 村? の防壁も強化しようか。後、『魔熱病』で腐った作物って、悪影響ってでるのかわかるか?」

「一応、過去の文献を漁ってみたのですが、生き残った人間がほとんどゼロなので、情報が全くない状況なんです」

「バザール、どう思う?」

「そうでござるな。影響がないと考えるのは、愚策でござろうな。それを考えると、畑の土は入れ替えるの前提で動くべきかと考えるでござる」

「そうだな。畑の土は全部入れ替える事前提に考えよう。仕事の無い人を可能な限り動員して、土を運ばせよう。運ばせる道具は、ガルドにいったん向こうに行ってもらって、リアカーやスコップあたりを大量に召喚してもらうか。

 とりあえず、その方向で話を進めてもらっていいか? 金は俺のポケットマネーから出しといていいから、よろしく!」

「了解しました。明日までに当面の計画書を作成してきますので、確認お願いいたします。何か気になる事がありましたら、魔導無線で連絡をお願いいたします」

 そう言ってグリエルは足早に工房を立ち去った。俺たちは3週間の間に行った実験の報告を再度行って、情報を共有する。

 俺の感染エリア軽減対策は、効果的な物がなく一番効果があった劇毒を薄めた水溶液の散布でも、2割程は残ってしまう結果になった。

 食品担当のバザールの報告では、葉野菜や根菜類は基本的に『魔熱病』に対して効果が無かったとの事だ。一番効果があったのは、ジャガイモを一緒に混ぜた際に、気持ち病原菌が減ったかな? という感じだった。

 ただ、トマトに関しては何故か病原菌が増える結果になった。栄養素も関係ないし、何が影響しているか全く不明だった。

 果実系は何故か分からないが、2~4割程の減少がみられた。一番効果が高かったのは、イチゴだったのも意味が分からなかったが、食料を届ける際の目安にしてもいいかと思った。

「私からなんだけど、今日の朝に実験結果の出た内容なんだけど、人体に感染している『魔熱病』に対しては、万能薬の効果が無かったのは知っていると思うけど、空気中は違うわね、人体に入っていない病原体に関しては、何故か万能薬の効果があったわ。ランクで言うとBランクの万能薬で効果を示したわ」

「意味が分からん。あ、効果はどのくらい見込めたんだ?」

「大部屋で実験した時は、ほぼ100パーセントね。しかも『魔熱病』が再度広がる事はなかったわ。だから、シュウの実験している草原でやってもらいたいんだけど、どうかな?」

「ほぼ100パーセント? マジか? まさか俺が探していたのが、万能薬だったなんてな。人体で実験した時には、全く効果が無かったから盲点だったよ。今から実験しに行ってみようか」

 綾乃からもたらされた情報を聞いてすぐに行動に移した。綾乃……何でグリエルが報告する前に、教えてくれなかったんだ……ドッペルに意識を映して移動を開始する。

 ゴーレム散布機にBランク万能薬を20本分投入して、地面に『魔熱病』の魔法薬を投げつけて様子を観察する。

「お~すげえな。ここまで効果があるなんて、大部屋で実験した時には病原菌が増えなかったんだよな? 今回もそうなってくれると助かるんだけど、どうだろな? 30分位したら一回停止させようか。それでどうなったか確認してみよう」

 ドッペルから意識を戻して、タブレットでマップ先生を開き、カメラで病原菌の推移を示した画面を録画しておく。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい
ファンタジー
 六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。  そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。  そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。 小説家になろう、カクヨムにて同時掲載 カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】 なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...