ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
822 / 2,518

第822話 敵性ダンジョンマスターの影?

しおりを挟む
 目を覚ますと……あたりはまだ暗かった。朝だったら光が差し込み、部屋が明るくなっているはずだ。薄暗いけど全く見えないわけじゃないから、目が見えなくなったという事はないだろう。はて? 何でそんな事を考えたのだろうか? 俺は首をかしげたが理由は分からなかったので、そのまま放置する事にした。

 次にする事といえば、体を動かす事なのだが体が起こせない。手足が微妙に動くのだが、少し動かすと抵抗に合う。強引に力を入れれば動かせそうだが、柔らかな感触につつまれているので、それをしようとは思わない。全身が重い感じがするのだが、嫌な重さではない気がする。

 しばらくすると、寝ぼけた頭が覚醒して状況が理解できるようになった。

「あ~みんなが俺にくっついて寝ているから、体を動かすのに抵抗を感じたり、柔らかさを感じていたのか。ん~昨日は、ベッドに横になった覚えがないんだけど、何があったんだっけ?」

 昨日、何があったのかを思い出す。

「魔熱病の対策をして、土を運ぶための馬車を作ってバザールに届けて、ゴーストタウンを散策したんだったな。そこで、魔熱病の魔法薬を手に入れて、出所を探って可能性に行き着いた。

 それを夕食後にみんなに説明して、ピーチとシュリとライムに説教をされたんだったな。正座をさせられて、1時間ほどループで怒られて……そういえば、急に足が痛くなったんだった! そこから後の記憶がないな。なんでだ?」

 ブツブツ言っていると、ピーチが目を覚ましてあいさつの代わりにキスをしてくれた。その後、昨日の事をどこまで覚えているかを聞かれ、今さっき言葉にしたことを再度言葉にした。

「やっぱりそこで、記憶が飛んでるんですね。ご主人様が急に大きな声を出したかと思ったら、倒れてしまって心配したんです。理由が分からなくて慌てたのですが、様子を見ていたシルクちゃんとツィード君が駆け寄ってきて、診察してくれたのですが、体には異常がなかったとの事で安心しました。

 見ていた様子から、痛みによって意識が飛んだのではないか? との事でした。おそらく正座の所為だと思いますが、それが原因だったとしても、何でそうなったかまではわかりませんでした。本当に申し訳ありません」

「気にしないでいいよ。もともと、俺がみんなを心配させたのが悪かったんだしね。それより気になるのが、サル団子みたいに、くっついているのはなんで?」

「サル団子ですか? その言葉はよくわからないですが、ご主人様が倒れたって話をしたら、みんなが集まってきて、一緒に寝ようって話になりました」

 すごく簡潔で分かりやすいけど、なぜ一緒に寝るという発想になったのかはよくわからん! 考えても意味がない事なので、考える事を放棄した。

「そっか、みんなを起こすのはあれだし、もうひと眠りするわ。話はまた朝にでも」

 そう言って、再度キスをしてから眠りについた。

 体に触れている温かい何かが離れていき、温もりがドンドン減っていく、それを逃がさないように捕まえようとして体を起こした。

「「「あっ! お兄ちゃん兄様! 起きた!」」」

 そう言ったのは、三幼女だった。あれ? そういえば久しぶりに『お兄ちゃん』って聞いた気がするな。

 ちょっとほっこりした気持ちになって、挨拶をすると部屋を出ていこうとしてたのに、ベッドに戻ってきてダイブをしてきた。3人とも受け止めてなでてやると、3人とも猫みたいに喉を鳴らして顔を俺の体にこすりつけてきた。

「ちょ! ちょっと! 3人とも、くすぐったいからそれをやめてくれ!」

 胸やわき腹に顔をこすりつけてくるため、くすぐったかったのだ。それでも止めない3人を引き離すのにたっぷり5分も時間がかかった。

「ふぅ……はぁ~~ふぅ~~」

 深呼吸を繰り返して息を整える。アリスが様子を見に来て3人を止めてくれなかったら、酸欠でまた倒れる可能性があった。本当に助かったぜ。

 朝食後に「もう大丈夫だ」と伝え、これからの事を話し合った。

 今回、手を出してきた敵をダンジョンマスターと仮定して、考えうる対策を話し合うためだ。そう考えた理由は、レシピが召喚できないため、魔熱病の魔法薬は作成できないと考えたのだ。

 失敗してできたとされているが、魔法薬を作るのに失敗しても別の魔法薬になる事はない。鑑定では『失敗した魔法薬』と出て、使い道のない物になるだけなのだ。

 もしかしたら、レシピが存在するのかもしれないが、今回は考えても意味がない。なぜなら今回はダンジョンマスターがいると思われる街以外で今の所、発生が確認されていないからだ。

 商会のネットワークでもその存在を把握できていないため、たどり着いた結論だ。たまたまフレデリクだけだったら、こんなことは考えなかっただろう。ゴーストタウンにこの魔法薬が入ってきていた事で、その事に思い至った。

 フレデリクとゴーストタウン、俺の管理している街で起こったから、この考えに至れたという事もあった。狙いがピンポイント過ぎるからな。これで他にも複数『魔熱病』が発生している街があったら、たどり着けなかった結論だと思う。

 ダンジョンマスターが敵だとしたのには、相手にするうえで一番厄介な存在だからだ。単純に王国が敵ならば制圧するのは簡単な話だ。相手の動きはマップ先生で丸わかりだからな。そもそも三大国は、俺の強さを実感しているから、下手な攻撃はしてこないと考えている。

 それに、一領主に過ぎない貴族では相手にならない。だから、個人として一番戦力を持つことができるのが、ダンジョンマスターだ。

 例外でトリプルの冒険者という個人戦力もあるが、把握できる奴らは全員見つけてるからな。聖国の事件があってからは、情報を集めてスプリガンに位置情報を管理してもらっている。

 長々と理由を話したが、結局後付けみたいなものだ。俺は怒っているのだ! 正当な理由をつけて、力を行使するための建前みたいなものだ。そんなものも必要あるか微妙だけどな。ダンジョンマスターを発見するのに適した人材も、こちらにいるからな。

 勇者である綾乃には、事情を説明して手伝ってもらう予定だ。高レベルの勇者が近くに現れれば、何かしらのアクションがあるのでは? とも考えている。

 ダンジョンマスターは、召喚した魔物であれば操れる事もあるので、魔物の動きにも注意する必要があるだろう。

 飛行型の魔物は命令であっても樹海には近づかないと思うから、俺が管理している街を中心に注意を払ってもらう事になった。あ、樹海に近付いてこないのは、バッハとLvをあげたワイバーンの領域だからな。

 お昼までの3時間ほどで決まった事は、

 相手は、敵性ダンジョンマスターと仮定。念のため、トリプルの冒険者の動きにも注意。

 マップ先生による『魔熱病』の魔法薬の位置の把握。

 マップ先生による魔物の動きの把握。

 勇者である綾乃を最寄りの街や、その周辺の町へ派遣。(本人の了解は得ていない)

 この辺の4つである。俺たちが考えるのは、敵がいた時の殲滅である。他の可能性については、グリエルとガリアに任せて大丈夫なのだ。ゼニスも情報を集めてくれるだろう。協力してその他の可能性を潰してくれ。

 さて、シルキーに怒られる前に昼食を食べよう!
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...