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第849話 これはひどい
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哀愁漂う背中でトボトボと歩いているダマを見送る……
ゼクセンの陣営は、ワイバーンを見て混乱しているようだが、冒険者パーティーの中には落ち着いた様子の者もいる。ワイバーンに限らず空を飛んでる魔物に対して、何かしらの攻撃手段があるのだろう。もしかしたら、ワイバーンを倒した事があるんじゃないだろうか?
だとしても、このワイバーン一家には通じないんだけどな。ヴローツマインのワイバーン……竜騎士ならワンチャンどうにかなったかもしれないが。
だが、ワイバーンが動く様子を見せず、ダマが小さい姿のままトボトボと歩いている姿を見て、ゼクセン陣営が落ち着いていた。中には、嘲っている様子の者まで出てきた。捕まえて売ればいい金になるんじゃないか? みたいな事まで言っていた。
知らぬが仏……か。ガチで戦えば、俺たちの中でもトップに近い位置にいるダマを嘲るなんてな。まぁ、力関係は従魔の中でも下の方だから、そう見えてもしょうがないんだろうけどな。
もうすでに戦争が始まっているのに、油断しすぎじゃないかな? 俺たちはダマが出ていった後に、土木組と協力して、塹壕やトーチカの様な物を準備している。念のためダンジョンマスターのスキルで補強もしている。ダンジョンの一部と認識させて、壊しにくい物に変えたのだ。
そうこうしている間に、ダマが敵陣まで約100メートル程の位置に来た。スキルやレベルの高い弓職であれば、100メートル位簡単に当ててくるので、すでに戦闘領域内なのだ。実際に何本かダマに向かって弓が飛んできている。
俺達の中で唯一、弓に重きをおいている今のメアリーであれば、500メートル先の的にも命中させる事ができるのだ。弓とレイピア使いのマリアは、さすがに500メートル先は無理だが、300メートル位は余裕で当てられる。そういう俺も200メートル位なら何とかなる。
遠くを狙う時に一番厄介なのが、風や重力! と言いたいところなのだが、魔法も併用しているため風の影響は全く受けないのだ。だから一番厄介になるのは、相手が小さすぎて狙いにくい事が問題だ。銃でも500メートルも離れれば確実に当てられる距離では無いのに、弓でこの命中力、さすがファンタジー!
って、ダマが矢をかわしていると、不意に体が光った。どうやら元の姿に戻ったようだ。久しぶりに本来のサイズのダマを見た気がしたな。まともにあの姿を見たのは、こいつがディストピアに攻めてきた時以来だと思う。
普段はチンマイサイズで、大きくなっても体長2メートル程だろう。それ以上大きくなると、人間のサイズの家で生活するのには不便だからな。で、今は本来のサイズの4メートルオーバーの巨体になっている。
「GURUOOOOOOOOOOOOO」
本来のサイズに戻ってあげた咆哮は、ゼクセン陣営の人間を恐慌させるのには十分な効果があった。そういえば、ダマが咆哮してるのって初めて見たかも?
咆哮の効果をレジストで来たのは、ごく僅かの冒険者と身なりのいい騎士の数名だけだった。冒険者の方がレベルを見る限り、耐えてもおかしくないレベルだったのだが、騎士たちの方はレベルは大したことが無かった……レベル偽装とかできるのか?
「みんな、騎士たちの動きに注意してくれ。マップ先生で調べた所表記上のレベルが低いのに、あいつ等よりレベルの高い騎士や冒険者たちが恐慌したり戦意喪失してる。
もしかしたら、厄介な相手かもしれない! ダマが危険そうなら、全力で介入するぞ。少し前に移動しよう。土木組のみんな、慣れないドッペルだけど、敵陣全体を掘り下げる事は出来るか?」
全員が揃って「大丈夫だ、問題ない!」と言ったため、すごく不安になった。あのゲームは召喚した覚えが無いのに、何でそのネタを知ってるんだろうか? 単なる偶然?
「じゃぁ、合図したら掘り下げてくれ」
ワイバーンに頼まなくても、この方法で逃走防止ができたんだな、と今更気が付いた。
「ダマ! いったん引くんだ。土木組、合わせるんだぞ! スリー・ツー・ワン・ゴー!」
大きな声で、ダマに引くように促し、土木組が全員でユニゾンマジックを使用した。今回は全員同じ魔法だったので、ユニゾンマジックというよりは、ブーストマジックの方が近いかもしれないな。
そんな事を考えている間に、魔法の結果があらわれた。
敵陣をはるかに上回る規模で、落とし穴があらわれた。恐慌したり戦意喪失している人間はもちろんの事、動ける人間も周りの人間が邪魔をして対応する事が出来なかった。
小説やマンガ、アニメなどで、魔法を戦場で使う時に、必ずと言っていいほど戦術の1つとして出てもおかしくない。だが、この世界では大規模に魔法を使える人間がいないので、とっさに対応できるモノはほとんどいないだろう。それこそ、空でも飛べないと無理かもしれんな。
ダマも近くまで戻ってきた。
『主殿? 何で引かせたのですか?』
「あの集団の中に、マップ先生で表示されているレベルと、お前の咆哮の結果が釣り合わない奴がいたから念のため引いてもらったんだよ。あのまま戦いたかったか?」
『数だけ多くて、面倒だったので出来れば戦いたくないですね』
次の策を考えようと思っていたら、すでに妻たちが行動に移っていた。三幼女を中心にして穴の近くまで進んでいた。真ん中にいるシェリルの腕の中には、小さなリバイアサンがおり、口を大きく開けたのが見えた。すると、大量の水が生み出され、みるみるうちに水かさが増えていた。
鎧をつけたままだと沈むぞ! と誰かが言っており、恐慌していた人間も、戦意喪失していた人間も、全員が慌てて鎧を脱ぎだした。
深さ20メートル位ある穴の半分程まで水が溜まると、リバイアサンが水を吐くのを止めた。カナヅチの人間も多かったのか、近くにあった木片や浮き輪代わりになる物に、必死にしがみついているのが見える。満タンにすると出てくるから、途中で止めたのかな?
今度は、イリアに抱かれていたバッハが、口をパカリと開けて火を吐き始めた。敵陣のいない所に火を吐いても、脅し位の効果しかないんじゃないか? ワイバーンたちも一緒になって火を吐いている。
無駄な事をしている気がするな……と思ったら、火で炙られている水面が沸騰して蒸発し始めた。おっと、これは茹で殺しか? ゼクセンの魔法使いが必死になって水の温度を下げているようだが、バッハたちの勢い勝てるわけもなく、魔力が枯渇しかけている。
あれ? ピーチが何やら指示を出したら、バッハたちが火を吐くのを止めたぞ。何が起きるのかと思ったら、リンドが前に出て、
「えっと、ゼクセン側で戦争に参加している人たちに告げます。早いところ、負けを認めてくれませんか? 負けを認めない限り、このまま水の温度を上昇させていきます。
レベルの高い人であれば、50~60度のお湯でも耐えられると思いますが、沸騰したお湯にどれだけ耐えられるでしょうか? 負けを認めないのであれば、試す事になりますので……お早い判断をよろしくお願いします」
最終勧告みたいなものか? ゼクセンの領主は戦え! とか言ってるけど、この状態じゃどうにもならんだろ。魔法使いも魔力切れ……後は、咆哮に耐えたあの騎士は……あれ? 泡吹いてないか?
ゼクセンの陣営は、ワイバーンを見て混乱しているようだが、冒険者パーティーの中には落ち着いた様子の者もいる。ワイバーンに限らず空を飛んでる魔物に対して、何かしらの攻撃手段があるのだろう。もしかしたら、ワイバーンを倒した事があるんじゃないだろうか?
だとしても、このワイバーン一家には通じないんだけどな。ヴローツマインのワイバーン……竜騎士ならワンチャンどうにかなったかもしれないが。
だが、ワイバーンが動く様子を見せず、ダマが小さい姿のままトボトボと歩いている姿を見て、ゼクセン陣営が落ち着いていた。中には、嘲っている様子の者まで出てきた。捕まえて売ればいい金になるんじゃないか? みたいな事まで言っていた。
知らぬが仏……か。ガチで戦えば、俺たちの中でもトップに近い位置にいるダマを嘲るなんてな。まぁ、力関係は従魔の中でも下の方だから、そう見えてもしょうがないんだろうけどな。
もうすでに戦争が始まっているのに、油断しすぎじゃないかな? 俺たちはダマが出ていった後に、土木組と協力して、塹壕やトーチカの様な物を準備している。念のためダンジョンマスターのスキルで補強もしている。ダンジョンの一部と認識させて、壊しにくい物に変えたのだ。
そうこうしている間に、ダマが敵陣まで約100メートル程の位置に来た。スキルやレベルの高い弓職であれば、100メートル位簡単に当ててくるので、すでに戦闘領域内なのだ。実際に何本かダマに向かって弓が飛んできている。
俺達の中で唯一、弓に重きをおいている今のメアリーであれば、500メートル先の的にも命中させる事ができるのだ。弓とレイピア使いのマリアは、さすがに500メートル先は無理だが、300メートル位は余裕で当てられる。そういう俺も200メートル位なら何とかなる。
遠くを狙う時に一番厄介なのが、風や重力! と言いたいところなのだが、魔法も併用しているため風の影響は全く受けないのだ。だから一番厄介になるのは、相手が小さすぎて狙いにくい事が問題だ。銃でも500メートルも離れれば確実に当てられる距離では無いのに、弓でこの命中力、さすがファンタジー!
って、ダマが矢をかわしていると、不意に体が光った。どうやら元の姿に戻ったようだ。久しぶりに本来のサイズのダマを見た気がしたな。まともにあの姿を見たのは、こいつがディストピアに攻めてきた時以来だと思う。
普段はチンマイサイズで、大きくなっても体長2メートル程だろう。それ以上大きくなると、人間のサイズの家で生活するのには不便だからな。で、今は本来のサイズの4メートルオーバーの巨体になっている。
「GURUOOOOOOOOOOOOO」
本来のサイズに戻ってあげた咆哮は、ゼクセン陣営の人間を恐慌させるのには十分な効果があった。そういえば、ダマが咆哮してるのって初めて見たかも?
咆哮の効果をレジストで来たのは、ごく僅かの冒険者と身なりのいい騎士の数名だけだった。冒険者の方がレベルを見る限り、耐えてもおかしくないレベルだったのだが、騎士たちの方はレベルは大したことが無かった……レベル偽装とかできるのか?
「みんな、騎士たちの動きに注意してくれ。マップ先生で調べた所表記上のレベルが低いのに、あいつ等よりレベルの高い騎士や冒険者たちが恐慌したり戦意喪失してる。
もしかしたら、厄介な相手かもしれない! ダマが危険そうなら、全力で介入するぞ。少し前に移動しよう。土木組のみんな、慣れないドッペルだけど、敵陣全体を掘り下げる事は出来るか?」
全員が揃って「大丈夫だ、問題ない!」と言ったため、すごく不安になった。あのゲームは召喚した覚えが無いのに、何でそのネタを知ってるんだろうか? 単なる偶然?
「じゃぁ、合図したら掘り下げてくれ」
ワイバーンに頼まなくても、この方法で逃走防止ができたんだな、と今更気が付いた。
「ダマ! いったん引くんだ。土木組、合わせるんだぞ! スリー・ツー・ワン・ゴー!」
大きな声で、ダマに引くように促し、土木組が全員でユニゾンマジックを使用した。今回は全員同じ魔法だったので、ユニゾンマジックというよりは、ブーストマジックの方が近いかもしれないな。
そんな事を考えている間に、魔法の結果があらわれた。
敵陣をはるかに上回る規模で、落とし穴があらわれた。恐慌したり戦意喪失している人間はもちろんの事、動ける人間も周りの人間が邪魔をして対応する事が出来なかった。
小説やマンガ、アニメなどで、魔法を戦場で使う時に、必ずと言っていいほど戦術の1つとして出てもおかしくない。だが、この世界では大規模に魔法を使える人間がいないので、とっさに対応できるモノはほとんどいないだろう。それこそ、空でも飛べないと無理かもしれんな。
ダマも近くまで戻ってきた。
『主殿? 何で引かせたのですか?』
「あの集団の中に、マップ先生で表示されているレベルと、お前の咆哮の結果が釣り合わない奴がいたから念のため引いてもらったんだよ。あのまま戦いたかったか?」
『数だけ多くて、面倒だったので出来れば戦いたくないですね』
次の策を考えようと思っていたら、すでに妻たちが行動に移っていた。三幼女を中心にして穴の近くまで進んでいた。真ん中にいるシェリルの腕の中には、小さなリバイアサンがおり、口を大きく開けたのが見えた。すると、大量の水が生み出され、みるみるうちに水かさが増えていた。
鎧をつけたままだと沈むぞ! と誰かが言っており、恐慌していた人間も、戦意喪失していた人間も、全員が慌てて鎧を脱ぎだした。
深さ20メートル位ある穴の半分程まで水が溜まると、リバイアサンが水を吐くのを止めた。カナヅチの人間も多かったのか、近くにあった木片や浮き輪代わりになる物に、必死にしがみついているのが見える。満タンにすると出てくるから、途中で止めたのかな?
今度は、イリアに抱かれていたバッハが、口をパカリと開けて火を吐き始めた。敵陣のいない所に火を吐いても、脅し位の効果しかないんじゃないか? ワイバーンたちも一緒になって火を吐いている。
無駄な事をしている気がするな……と思ったら、火で炙られている水面が沸騰して蒸発し始めた。おっと、これは茹で殺しか? ゼクセンの魔法使いが必死になって水の温度を下げているようだが、バッハたちの勢い勝てるわけもなく、魔力が枯渇しかけている。
あれ? ピーチが何やら指示を出したら、バッハたちが火を吐くのを止めたぞ。何が起きるのかと思ったら、リンドが前に出て、
「えっと、ゼクセン側で戦争に参加している人たちに告げます。早いところ、負けを認めてくれませんか? 負けを認めない限り、このまま水の温度を上昇させていきます。
レベルの高い人であれば、50~60度のお湯でも耐えられると思いますが、沸騰したお湯にどれだけ耐えられるでしょうか? 負けを認めないのであれば、試す事になりますので……お早い判断をよろしくお願いします」
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