ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第895話 一難去ってまた一難

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 風を送る魔導具の研究を始めて1週間が経った。

 その間にカエデとリンド達が作っていた船は、ほぼ完成に近づいていた。何で10日もかかったのかと思えば、すでに3隻目を造っているからだ。

 もともと、3隻造る予定だったので何の問題も無いのだ。ほぼ完成といっても、船の形と内装が完成しているだけで、動力やその他の運航に必要な魔導具は全部俺の御手製になるので、最終的には俺が調整する事になる。

 もちろん、綾乃やバザールでも問題ないのだが、アリスとライムが作った魔導具の調整ができないので、俺が教える事になる。

 3隻の魔導具以外が完成したら、向こうの船の仕上げをしなきゃいけないので、いったんこっちの船の作成は中止しなければいけなくなる。やっと、模様と効果の関係性が分かってきたので、中断したくないが優先順位は向こうの方が高いからな。

「それにしても、効果を強くする模様って見つからなかったな。同じ模様を複数書いても、2つ目の効果は半減して魔力の消費量が倍増するから、魔導具自体が起動しなくなるんだよな。魔力の吸収量をあげようとしても限界があるからな~どうしたもんだか」

「そうでござるな。ここまで模様と効果の関係性が分かったでござるが、それを運用する上手い方法が見つけられないでござるな」

「そうよね、同じ模様は消費魔力が半減して消費量が倍増するのに、違う模様だと全く影響がないんだよね~初めは、模様の総距離に関係があると思ったのに全く関係なかったもんね。魔核ではそんな事起こってないのになんでだろうね」

 いい所まで行っているのだが、そこから先に踏み出せない状況なのだ。ただのプログラムみたいに組み上げていけばいいわけじゃなく、同じ模様が使えないという縛りがどうにもこうにも足を引っ張るのだ。

「同じ模様じゃなければいいと思って似たような効果の模様を繋げても、効果が相乗するわけじゃなくて反対に打ち消しあう事もあるから困るんだよな。唯一成功した例と言えば、風を送る模様と火を噴出する模様をあわせた奴位だよな。ただの火炎放射みたいになったせいで、船の動力には使えないけどな」

「あれには驚いたでござるな。でも、あれなら武器として使えるでござるよ。船の外装の下に隠しておけばいいでござるし、近付いてくる船を火だるまに出来るでござるよ!」

「バザール、さすがに船を火だるまにするって発想が怖いんだけど、木造船が主流だった時代にあったら、悪魔の船って呼ばれたかもね。特に近付いてくるガレー船みたいな船だと、船と船員にとてつもない被害が出そうよね」

 俺たちは唯一成功した例の、筒から火を拭き出す魔導具の事を思い出して、くだらない話をする。

「あれよね、乾電池みたいに直列に繋げたら出力が上がる、みたいな分かりやすければいいんだけどね。繋げたら、消費量も効果も下がるとか馬鹿らしくなるわね」

 綾乃の『乾電池』というセリフに俺は、何かをひらめきそうになっていることに気付いた。なんだか分からないが、何か大切なひらめきのような気がする。

「乾電池……直列……並列……何かひっかかるんだよな。

 昔、理科の実験でそれらしいことをやった気がするんだけど、何だったっけな? 乾電池を使った実験と言えば、モーターに電池を繋げてプロペラを回すか、豆電気のソケットにハンダ付けして電池を繋げて、直列と並列の違いを視覚で分かるようにした実験位だよな」

 俺がブツブツ言い始めたのを見て、綾乃とバザールは、またシュウの悪い癖が始まったと思い放置する事にした。2人は2人で、また違う実験を行うために色々準備を始めた。

「モーターの時は、並列は電池1個と出力は変わらないけど持続時間が長くなる。だったか? 直列でつなげると、1個の時と同じ時間だけど回転数が上がるんだよな。豆電球の方も同じで、直列だと明るさが強くなる……つなげ過ぎて豆電球の線を切って怒られたな」

 俺がブツブツ言っている間に、綾乃は効果が類似する模様から似通った点を探して、自分で新しく模様を想像して作れないか試行錯誤を始めていた。これが可能なのは、クリエイトゴーレムで魔石とイーコールを混ぜた魔導具の根幹を、直接いじって加工できるからだ。

 バザールは新しく想像して模様を作るのではなく、今ある模様を継ぎ接ぎして新しい効果ができないか、探りを入れる事にしたらしい。これができるのも、クリエイトゴーレムで模様を作り、切ってくっつける事ができるからだ。

「豆電球の光。明るくするのには直列に電池を繋げて、出力を上げる以外にも、何かあった気がするんだけどな。何だったかな?」

 もう少しで何かを思い出せそうだが、最後の1歩が思い出せない。このモヤモヤが本当に嫌な感じだな。

 何か思い出せないかと考え、日本の学校の風景が分かるような写真をながめる。

「あ、直線の蛍光灯って言えばいいのかな? 懐かしいな。これって、何本も付いてて良くどれかの電気が切れてたんだよな。先生が交換するの面倒がって、生徒にやらせてたな。なんであんなに蛍光灯が多かったか聞いてみたっけ? ある程度数が無いと部屋が広くて、暗くなるとか言ってたっけな」

 んっ? 数を増やす? 蛍光灯ってそういえばいっぱい並んでたよな。魔導具も並べる? ちょっと違うな、重ねる? 繋げないで重ねてみるか? 蛍光灯が1つで明るさが足りないからたくさんつける? 1つの魔導具の出力が低くても、重ねれば出力が上がるか?

「悩んでも仕方がないな。試してみればいい。えっと……魔導具を並べる? 縦に並べると、何個並べれるかな? 4個以上だとちょっと長すぎるか? じゃぁ重ねてみるか?」

 1つの魔導具の模様を薄くした金属で挟む。それを何重にも重ねれば、出力が上がらないか? それに、風より水の方が重いから、反動が強くならないか? 確か風、空気じゃなくて水? 液体を動かす模様があった気がするな。水中にはスクリュー以外に、それを配置すれば問題ないか?

「お! やっぱり出力が上がったな! でも必要な出力を得るためには、結構ごっつくなるよな」

 少し離れた所から

「えっ! シュウ! 解決したの?」

「あ~解決できる程出力が上げられたわけじゃないけど、1つ1つを独立させた魔導具としてくっつけないで重ねる事によって、何とか出力が上がった感じだな。ただ、今の状態だと必要な出力を得るためにかなり分厚くなっちゃうんだよね」

 次の問題ができてしまった。
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