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第996話 何とも言えない光景
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どうなるのか見守っていると、1人の騎士が前に出て武器を捨てた。後ろで指揮官がギャーギャー騒いでいるが、その騎士がリリスたちに向かって、
『俺は剣を捨てる。だけど、戦ってここで殺してくれ! 家族だけは助けてほしい! お金はあまりないが、救い出してほしい』
リリスは無表情でその様子を見ている。少なくとも、自分で言っている事は理解しているはずだが、どういう選択をするのだろう?
その騎士の様子を見ていた、他の騎士も次々に同じように前に出て武器を捨て、自分の命と引き換えに家族の助命をお願いしている。100人程が同じような行動をとっていた。
そんな事をしていれば、本物の狂信者が武器を捨てた騎士に襲い掛かるので、アントが足を焼いたりAランク冒険者の弓使いが足を射抜いたりしていた。その数およそ50人。
現状、半数が使い物にならなくなっている。
『他に武器を捨てる者はいないのか?』
リリスからの最終警告。
狂信者50人と残りの150人合わせて200人が敵に回ったようだ。ここで騎士してるから、この街に家族がいるとは限らないよな。そんな150人なのだろうか?
『武器を捨てた家族思いの騎士、手を頭より高く上げてこちらへ来い』
指揮官がまだギャーギャー言っているが完全に無視されている。指示に従って武器を捨てた騎士が移動を開始する。リリスたちの下についた騎士は手足を縛られていく。
『では、出来る限り殺さないように敵を捕らえろ!』
新人冒険者は、戦列に加わらず倒れている騎士の拘束をしている。力量で言えば数段上。格上の相手に油断せずに緊張しながら縛り上げている。
だが、やられたふりをしていた騎士が不意打ちで、新人に襲い掛かり4人の新人が重傷を負ってしまった。俺とピーチは慌ててネルに指示を出して助けに入らせる。
他のメンバーもエリクサーを使い治療を試みたが、1人の新人冒険者は傷が深く刺し傷が心臓にまで達しておりほぼ即死だったようだ。近くで仲間だったと思われる新人が泣いている。
20分もしないうちに領主館前の戦闘は終わり、領主館に突入していく冒険者が見える。ある程度ランクの高い人選のようだ。
リリスは領主館探索の指揮のために一緒に突入したが、アントとヒーラーのマーニャは領主館前に残って色々後始末をしている。
その中で、新人冒険者を殺した騎士は報復措置として冒険者にボコボコにされていた。よく見ていると、新人冒険者の先輩っぽい人たちが、結構エグイ方法を使ってボコボコにしているので、冒険者は上下のつながりも強いのだと感じた。
「あっ! あれが領主かな? 家族っぽい人もいるけど……子どもがいない?」
「そうですね。子どもの姿が見当たらないのは、何故でしょう? 親や親戚ですかね?」
領主っぽい豪華な服を着ているのが40歳過ぎ位に見える。同じくらいと歳が6人程いて男4人女2人、60歳過ぎのおじいちゃんおばあちゃんが8人、女5人男3人。若い人間は全員がメイド服を着ているので家族ではなさそうだ。
「若い関係者がいなそうだな?」
「確かに若い関係者がいないように見えますね。ですが、領主っぽい人間を見ればその理由は明らかかと」
うん、あれはオークだね。女性なら生理的にアウトのような気がするわ。領主が貴族であるなら、政略結婚だって、関係を強化する押し売りだってあるはずなのに、あれじゃそれも無いかもしれないな。
貴族って人の血が流れてるのかって思う位、下の人間の事を使い捨てるのに、身内には甘いのか? まぁ、そうじゃなければ、あんな体格……オークのような領主は出来上がらないよな。
どうやら領主たちは処刑されるようだ。何か喚いているが、距離が空いているのでちゃんとした声は聞こえない。
メイドと下男以外は殺されたようだな。だからと言って何とも思わないんだけどな。
あれは……初めに投降した騎士の家族かな? 続々と連れてこられており、親や妻、子どもたちと抱き合っている。リリスはどうするつもりなのだか。
しばらくすると、
「おっ? 投降した騎士たちの家族が移動を始めたのか? みんな泣いているな。つまりそういう事なのかな?」
独り言を言っていると、状況の変化があった。20人1チームだった冒険者たちが、半分になって投降した騎士たちを連れてどこかに移動を開始している。
捕らえられた騎士に冒険者が何か話しているが、声が聞こえなくても罵倒を返しているのがよくわかる。何を話してるんだか?
「そういえば、シュリが見当たらないな」
「今、領主館の中にいるようですよ」
マップ先生で確認すると、領主館の中を歩いているようだ。時々止まってまた動き出す。何をしてるんだろうな? 様子を見ていると、その理由がはっきりした。
「なるほど、シュリの力を使って効率よく隠し部屋を探しているって事か。近くにアントがいる事を考えると、怪しい所をしらみつぶしに壊してるのかな? 魔力温存って意味では正解だけど、いつの間にリリスと入れ替わったんだろ?」
4ヵ所あった隠し部屋からすべての荷物を運び出すようで、シュリは収納の鞄も持って領主館の中に入ったようだ。この取り分ってどうなるんだ?
領主館から次々と荷物が運び出され、ジェノサイドキャラバンの馬車に積み込んでいた。
そういえば、知らない人間が領主館に集まってきている。騎士たちの親、妻、子どもたちっぽいな。おいおい、マジで殺すつもりか?
俺も結構ひどい事をしてきたけど、さすがにこれで家族まで殺したら、外道になるんじゃないか? 住人には手を出さないとか言っていたのに、毒よりよっぽど質が悪いだろ!
そしたら、初めに行動不能にさせられた狂信者たちの家族が、本人たちの目の前で殺された。
「マジか、本当にやりやがった」
縛られている手首が半分千切れるほど暴れている奴もいるな。殺すのはどうかと思うけど、自分たちが今までやってきた事を考えれば、因果応報なのかな?
こいつらはどうか知らないけど、聖国の人間がやってきた悪逆非道な事を考えれば、本人とその家族で済ませているんだしな。それでも、気分が悪くなってきた。
「ご主人様! 大丈夫ですか?」
吐き気を感じて胃から食堂にかけて酸っぱい物が込み上げてきた。そこに水を出してくれたので口に含んでうがいをして、次の一口を飲み込む。
あれ? 狂信者の家族は殺したみたいだけど、それ以外の家族は縛られてるな。その目の前でリリスが何やら言っている。そうすると泣き崩れる家族が見える。そして、最後まで抵抗した兵士たち全員首が落とされた。
ベテラン冒険者が1ヵ所に死体を集め出した。何をするのだろうと思っていたら、魔法使いが一斉に火魔法を放ち火葬していた。疫病対策かな?
そして、殺されていない家族は冒険者に連れられてこちらに向かってきている。
『俺は剣を捨てる。だけど、戦ってここで殺してくれ! 家族だけは助けてほしい! お金はあまりないが、救い出してほしい』
リリスは無表情でその様子を見ている。少なくとも、自分で言っている事は理解しているはずだが、どういう選択をするのだろう?
その騎士の様子を見ていた、他の騎士も次々に同じように前に出て武器を捨て、自分の命と引き換えに家族の助命をお願いしている。100人程が同じような行動をとっていた。
そんな事をしていれば、本物の狂信者が武器を捨てた騎士に襲い掛かるので、アントが足を焼いたりAランク冒険者の弓使いが足を射抜いたりしていた。その数およそ50人。
現状、半数が使い物にならなくなっている。
『他に武器を捨てる者はいないのか?』
リリスからの最終警告。
狂信者50人と残りの150人合わせて200人が敵に回ったようだ。ここで騎士してるから、この街に家族がいるとは限らないよな。そんな150人なのだろうか?
『武器を捨てた家族思いの騎士、手を頭より高く上げてこちらへ来い』
指揮官がまだギャーギャー言っているが完全に無視されている。指示に従って武器を捨てた騎士が移動を開始する。リリスたちの下についた騎士は手足を縛られていく。
『では、出来る限り殺さないように敵を捕らえろ!』
新人冒険者は、戦列に加わらず倒れている騎士の拘束をしている。力量で言えば数段上。格上の相手に油断せずに緊張しながら縛り上げている。
だが、やられたふりをしていた騎士が不意打ちで、新人に襲い掛かり4人の新人が重傷を負ってしまった。俺とピーチは慌ててネルに指示を出して助けに入らせる。
他のメンバーもエリクサーを使い治療を試みたが、1人の新人冒険者は傷が深く刺し傷が心臓にまで達しておりほぼ即死だったようだ。近くで仲間だったと思われる新人が泣いている。
20分もしないうちに領主館前の戦闘は終わり、領主館に突入していく冒険者が見える。ある程度ランクの高い人選のようだ。
リリスは領主館探索の指揮のために一緒に突入したが、アントとヒーラーのマーニャは領主館前に残って色々後始末をしている。
その中で、新人冒険者を殺した騎士は報復措置として冒険者にボコボコにされていた。よく見ていると、新人冒険者の先輩っぽい人たちが、結構エグイ方法を使ってボコボコにしているので、冒険者は上下のつながりも強いのだと感じた。
「あっ! あれが領主かな? 家族っぽい人もいるけど……子どもがいない?」
「そうですね。子どもの姿が見当たらないのは、何故でしょう? 親や親戚ですかね?」
領主っぽい豪華な服を着ているのが40歳過ぎ位に見える。同じくらいと歳が6人程いて男4人女2人、60歳過ぎのおじいちゃんおばあちゃんが8人、女5人男3人。若い人間は全員がメイド服を着ているので家族ではなさそうだ。
「若い関係者がいなそうだな?」
「確かに若い関係者がいないように見えますね。ですが、領主っぽい人間を見ればその理由は明らかかと」
うん、あれはオークだね。女性なら生理的にアウトのような気がするわ。領主が貴族であるなら、政略結婚だって、関係を強化する押し売りだってあるはずなのに、あれじゃそれも無いかもしれないな。
貴族って人の血が流れてるのかって思う位、下の人間の事を使い捨てるのに、身内には甘いのか? まぁ、そうじゃなければ、あんな体格……オークのような領主は出来上がらないよな。
どうやら領主たちは処刑されるようだ。何か喚いているが、距離が空いているのでちゃんとした声は聞こえない。
メイドと下男以外は殺されたようだな。だからと言って何とも思わないんだけどな。
あれは……初めに投降した騎士の家族かな? 続々と連れてこられており、親や妻、子どもたちと抱き合っている。リリスはどうするつもりなのだか。
しばらくすると、
「おっ? 投降した騎士たちの家族が移動を始めたのか? みんな泣いているな。つまりそういう事なのかな?」
独り言を言っていると、状況の変化があった。20人1チームだった冒険者たちが、半分になって投降した騎士たちを連れてどこかに移動を開始している。
捕らえられた騎士に冒険者が何か話しているが、声が聞こえなくても罵倒を返しているのがよくわかる。何を話してるんだか?
「そういえば、シュリが見当たらないな」
「今、領主館の中にいるようですよ」
マップ先生で確認すると、領主館の中を歩いているようだ。時々止まってまた動き出す。何をしてるんだろうな? 様子を見ていると、その理由がはっきりした。
「なるほど、シュリの力を使って効率よく隠し部屋を探しているって事か。近くにアントがいる事を考えると、怪しい所をしらみつぶしに壊してるのかな? 魔力温存って意味では正解だけど、いつの間にリリスと入れ替わったんだろ?」
4ヵ所あった隠し部屋からすべての荷物を運び出すようで、シュリは収納の鞄も持って領主館の中に入ったようだ。この取り分ってどうなるんだ?
領主館から次々と荷物が運び出され、ジェノサイドキャラバンの馬車に積み込んでいた。
そういえば、知らない人間が領主館に集まってきている。騎士たちの親、妻、子どもたちっぽいな。おいおい、マジで殺すつもりか?
俺も結構ひどい事をしてきたけど、さすがにこれで家族まで殺したら、外道になるんじゃないか? 住人には手を出さないとか言っていたのに、毒よりよっぽど質が悪いだろ!
そしたら、初めに行動不能にさせられた狂信者たちの家族が、本人たちの目の前で殺された。
「マジか、本当にやりやがった」
縛られている手首が半分千切れるほど暴れている奴もいるな。殺すのはどうかと思うけど、自分たちが今までやってきた事を考えれば、因果応報なのかな?
こいつらはどうか知らないけど、聖国の人間がやってきた悪逆非道な事を考えれば、本人とその家族で済ませているんだしな。それでも、気分が悪くなってきた。
「ご主人様! 大丈夫ですか?」
吐き気を感じて胃から食堂にかけて酸っぱい物が込み上げてきた。そこに水を出してくれたので口に含んでうがいをして、次の一口を飲み込む。
あれ? 狂信者の家族は殺したみたいだけど、それ以外の家族は縛られてるな。その目の前でリリスが何やら言っている。そうすると泣き崩れる家族が見える。そして、最後まで抵抗した兵士たち全員首が落とされた。
ベテラン冒険者が1ヵ所に死体を集め出した。何をするのだろうと思っていたら、魔法使いが一斉に火魔法を放ち火葬していた。疫病対策かな?
そして、殺されていない家族は冒険者に連れられてこちらに向かってきている。
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