ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,048 / 2,518

第1048話 知らない事って多い

しおりを挟む
 充実した休みを終え、工房へ向かった。

「あ~やっと来たわね! あなたが週休二日で休むから、話が進まなくて待ってたのよ!」

「そうでござる! シュウ殿がいないと話が進まないでござる!」

「そんな事言われても、ゼニスに言われて休んでるからな。あまり働きすぎると、下の人たちが休むに休めなくなるから、トップである俺は率先して休めって言われてるんだよ。俺は好きな事やってるからまだいいけどさ、下の人たちはそうじゃない人だっているだろ?

 過労死なんてされたくないし、しょうがないと思うよ。それに、娘たちの写真鑑賞会が楽しくて早く次の休みにならないかって思って週の頭を出勤してきた!」

 その言葉に、白けたのか無言になった2人だった。

「シュウの娘自慢は放っておいて、今日の予定は錬金術師探しよ! 銅線に絶縁体をコーティングするなりして、私たちが求めている銅線に仕上げてもらえる人を、探さないといけないのよ! 早くモーター作りましょ!」

「確か次は銅線を加工してもらう予定だったな。でも錬金術とかコーティングしてくれる人を探す前に、工房に行って追加で注文をしてこないとな。今の細さがあれば小型モーターが作れるだろうから、次は少し太くして電動工具系を一通り作りたいな。そうすれば俺たちの加工スピードが上がるもんな」

 3人でこれからの希望を込めた未来予想を口にしていく。

 まずは、銅線を作ってくれた工房を訪れて、前回とは太さの違う銅線をいくつか注文する。その際に素材として銅のインゴットを10トン分渡して少しずつ細さの違う銅線を注文した。

 正直な所、銅線の太さはどれくらいがいいのかよくわかっていないので、同じサイズのモーターに違う細さで実験しようと考えているのだ。

「さぁ! 早く錬金術師を探しに行きましょ!」

 綾乃はとにかく電動工具を使って何かを作りたい様子だ。俺と同じでクリエイトゴーレムを覚えてからは、加工は全部魔法で行っていただろうから、手作業が劇的に楽になる電動工具は、喉から手が出るほど欲しいのだろう。

 その気持ち分からないでもないが、別に工房で作るもの以外、自分で使ったり研究するだけなら魔法を使ってもいいんだけどな。それが外に広まらないのであれば何でもいいと考えている。

 ゴーストタウンでも有名な錬金術師を訪ねてコーティングの話をした所、錬金術とは多少分野が違うようだ。やってできない事は無いが、俺たちが期待している程薄くできるものではないらしい。ここにきて地球の技術がまた邪魔をする。

 だけど、その錬金術師から有力な情報を手に入れた。

 電気を流さないようにするのであれば、付与の分野だと教えてくれた。あまり多くはないが、魔物の中には魔法を使うモノもいる。その中に雷系の魔法を使う魔物もいるため、金属鎧に電気を通し難くするものがあるそうだ。

 高位の魔法使いというくくりで見ると、魔法を発動してから着弾するまでの時間が短く、動きを封じる事ができるので使っている人が多いらしい。

 騎士団にも高位の術者がいたはずなのだが、雷使いとは戦った事が無いと思う。そう言ったら錬金術師は笑って答えてくれた。

「騎士団で求められている魔法は、単体攻撃魔法と範囲殲滅魔法。特に重要とされているのが、後者の範囲殲滅魔法だ。騎士団が魔物の群れを討伐する時の初手がそれなんだよ。

 乱戦になっている所に魔法を撃ったら、味方にあたっちまうかもしれないからな。その点、雷系の魔法は着弾までの速度は速いが、周囲にも影響を及ぼす事があるから、あまり推奨されていないんだよ」

 との事だ。ん~魔物が相手だと、雷系って威力不足なのかな? イメージの差か? それに、戦争ごっこ、ウォーゲームなら雷系もありなんじゃねえか?

 まぁ、扱いが難しいという点については同意せざるを得ないので、無駄に集中力を消費するくらいなら、イメージしやすい火とか爆発系の魔法の方が楽に使えるだろう。

 そもそも、高位の魔法使いはしがらみに縛られる事を嫌う傾向があり、用心棒だったり傭兵だったり冒険者等に多いそうだ。

 錬金術師はついでとばかりに、付与を専門に行っている集団の情報を教えてくれた。色々な情報を得る事が出来たので、情報料として金貨を数枚積んでおいた。

「私知らなかったけど、この世界の錬金術ってどっちかと言うと、製薬みたいなイメージだね。魔法的な薬が錬金術師のメインだったなんて!」

「某も知らなかったでござる。地球の錬金術は卑金属から金等に作り変える事を、目的としていたと思うのでござる。最終的な目標は不老不死だった……あれ? そう考えると、この世界の錬金術の方が目的としては正しいでござるか? 地球は科学的アプローチでござったが、この世界は魔法的アプローチでござるな」

「そう言われると、こっちの錬金術って地球の意味の錬金術と違うけど、魔法的要素が含まれるおかげで、結果的に地球の錬金術より先に行っている気がしないでもないな。って、地球の錬金術なんて知らないのに評価できるわけないか」

「錬金術の意味に関しては議論する意味はないわね! それに、不老と言う意味なら2人程実例があるし、不死も存在するかもしれないわね」

 俺とバザールは、現状から老いる事は無い。バザールは骨に魔力が宿っているので、これ以上腐る事も無い。俺に関しては、成長はするそうだ。ただ、何処まで成長するかは分かっていない。前例がほとんどないので何とも言えないとの事だ。

 それに、定期摂取が必要になるが、寿命が延びると言うか、老いが一時的に止まる薬がDPで出せるので、実際に錬金術で作る事が可能かもしれない。ただ、スキルや技術、素材の問題で不可能に近いとかそういうレベルの話のような気はするが。

 あーでもないこーでもない、と話しながら錬金術師に教えてもらった付与の集団のいる場所に到着した。

「思ったよりでかい建物でござるな」

 ゴーストタウンでもかなり大きめの部類に入る住居兼工房だった。

「お邪魔しま~す」

「邪魔するなら帰れ!」

 綾乃がそう言って工房に入ると、いきなり怒鳴られて追い出されそうになった。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...