ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,217 / 2,518

第1217話 特効……物?

しおりを挟む
 食堂では、元気な兵士が食事をとっていたが、慌てて入って来た俺たちにびっくりして、食事の手が止まっていた。

 専属の料理人は、街の外で待機しているので、今ここで食べられている物は簡単に作れる物だけだ。

 メニューを見ると、ご飯とみそ汁、焼きサバ、サラダ、納豆……あぁ! これか!? 納豆菌?

 確か納豆菌って、かなり強い菌だって聞いた事があるけど、抗生物質や抗菌剤より効果を示すのか? みそ汁の麹菌って可能性もあるか?

 そんな事はどうだっていいか。納豆菌だけを……召喚できるな。街にどんな影響があるか知らんけど、今は効果がある事が実証できればいい!

 食堂から出て、痛みを訴えている兵士の近くで納豆菌を大量にばら撒く。

 しばらくすると、ばら撒いた空間の奴らの濃度が下がっていった。マップ先生を見て分かるレベルで一気に減っているのが分かった。

「まさか、納豆菌が最強の対抗策になるとは……みんな、下手でもいいから、今から渡す物を風魔法でこの空間を満たしてくれ。それで、ある程度はこいつらの活動を抑制できると思う」

 どういう形で納豆菌が奴らを撃退しているか知らないが、マップ先生を見る限りかなりの効果を上げているのが分かる。

 2時間ほどすると、痛みを訴えていた兵士が落ち着いてきたと報告が上がって来た。

 奴らは納豆菌をバラまく前の半分以下になっているが、まだまだ空間内に存在している。それなのに、兵士が落ち着いてきたというのはどういう事だろうか?

 元々、痛みを訴えていた兵士は痛みがほとんど収まってきたという事で、すでに普通に動いていた。一番驚いたのは、痛みがなくなって腹が減ったといい普通に飯を食っていたのだ。

 何とも現金な話である。でも、食欲が回復する程の元気があるなら、ひとまず問題はないだろう。

 問題は、納豆菌だけで奴らを完全排除ができるかどうか……もしできないなら、我慢させてポーションを飲ませながら火で焼くしかないかもしれないな。

 喰い合うか分からないけど、納豆菌より強い菌はいくらでもあるけど、その菌もほとんどが体に害があるんだよな。俺は平気でも兵士には致命的の可能性だってあるよな。

 今は、理由は分からないけど納豆菌で抑制出来ているという事実だけでも十分か。こいつらが細菌だと仮定して、どういう状況で繁殖するか……体内に入るって事がないだけでも良しとするか。

 見えない物に対策するのって言うのはキツイな。

 そういえば……

「ダマ、体の調子はどうだ?」

『少し前にムズムズは無くなりました。ナットウキンですか? すごいですね』

「他の従魔は大丈夫だったのか? シエル、グレンは大丈夫か?」

『私は問題ありませんね。理由は分かりませんが、亀には効果がないのではないですか?』

『自分は、燃えれますので、こういう類の攻撃は効きませんね。毒も大概は無効化にできますからね』

 シエルに関しては、よくわからないが効かなかったらしい。グレンは火の霊獣だから、燃える事ができて焼き尽くせるという事だな、なんと便利な体だ!

「そういえば、他の奴らはここにいなかったから関係ないか……ん? 何でここにニコがいるんだ?」

 何処で待機していたのか知らないけど、少なくともここにはいなかったはずなのに……そして、見つかっちゃった! みたいなリアクションをとるな! 待て待て! 今は外に出るな!

 見つかったと思ったニコは慌てて外に出ようとしていた。

「シエル! 結界でニコを捕らえろ! 外に出ようとしてる!」

 シエルは、俺の指示を正確に理解して、聞き返す事をしないですぐさまニコを結界の中に閉じ込めた。

「まったく……来ちゃいけないとは言わないけど、状況を理解して行動してほしい。今、お前が外に出たら原因不明の菌が街の中にばら撒かれる事になるんだぞ。頼むから大人しくしててくれ……」

 ニコを捕まえて定位置の頭の上に乗せてやると、満足したのかそこに落ち着いてくれた。

 おっと、ニコの状態も一応確認しておかないとな。亀、シエルと同じように効果が無いと思うと思うし、何よりこいつ体力だけならシュリより圧倒的に高いから、効いてないだろうけどな。

「えっ!?」

 ニコを調べて驚きの声を上げてしまった。

「ご主人様、どうかなさいましたか?」

「あ、あぁ……シュリ、お前もマップ先生でニコを調べてみてくれ」

「えっ!?」

 シュリも同じように素っ頓狂な声を上げてしまった。それに興味を持った手の空いている他の妻たちもマップ先生で確認すると、同じように素っ頓狂な声を上げてしまった。

 俺は、ダンジョンマスターのスキルで直接見ているから間違いはないだろうし、妻たちはそのスキルをタブレットで使えるようにしてあるので、俺と違う結果が表示をされるわけはない……という事は、同じ理由で驚いている事は間違いない。

 慌ててニコを頭の上から、目線の高さに持って来ようと動いたら、意地でも動かないと抵抗されて、髪の毛が全部抜けて禿げるかと思った。

 これじゃぁ確認が取れない……って! お前らもいつの間に入って来たんだよ! だぁ! だから見つかったからって逃げようとすんな!

「シエル!」

 名前を呼ぶだけで理解してくれたシエルが、ドームの中に入ってきていたスライムたちを結界の檻に閉じ込めてくれた。

「それにしても、やっぱりニコたちスライムにはあいつらが付いてないな。その流線形のおかげで、細菌が寄り付かないのか? それだと何かがおかしいな」

『主殿、ニコ先輩たちスライムは、元々は接触して相手を取り込む性質があると思うのですが』

 ダマにそう言われて、ハッとした。

「えっ? そう言う事なのか? レイリー! ちょっと実験に付き合ってくれ、出来ればパンイチになって、あの馬車でスライムに全身を包まれてくれ」

「!? どういうことですか?」

「こいつら、もしかしたら原因になっている奴らを捕食してくれる可能性がある。スライム隊! 仕事だ! 仕事のしない奴らに食事はないぞ!」

 レイリーは納得して準備を始めた。スライム隊と呼ばれて、自分たちに割り振られた仕事だと理解して、ブルブル震えたり、うにょーんうにょーんと伸びたり縮んでしてウォーミングアップを始めた。

「お前たちは、ただレイリーにくっついて、奴らをって選択できるか分からないから、体を包んでレイリー以外をすべて捕食してくれ」

 何となく任せて置け! とジェスチャーをしている様な気がする。相変わらず訳の分からん連中だ。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

処理中です...