ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,306 / 2,518

第1306話 あれから

しおりを挟む
 チビ神を通して、更に神たちに喧嘩を売ってから1ヶ月、特に変わりのない生活をしていた。

 ダンジョンの中の家では息が詰まるので、地上の家に戻り普通に生活をしている。

 娘たちはすくすく育ち、ミーシャに引っ張られるようにスミレとブルムが話せるようになってきている。だけど「とーたん」は相変わらずである。みんな可愛いので、俺の呼び方なんてどうでもいいんだけどな。クソオヤジとかパパ臭いとか言われなければなんだっていい!

 一番大きく変わったのは、世界樹ユグドラシルだろう。エルダートレントが乗り移ってから、しっかりと根を張り更に大きくなっているだが、枝を伸ばす方向広さも自由自在で住宅街に迷惑がかからないように鍛冶エリアの方に枝を伸ばしている。

 そして一番驚いたのは、ユグドラシルの索敵と呼べばいいのだろうか? 周辺の木々に働きかけて、樹海内の動きであればすべてを把握する事ができるらしい。しかもその範囲の中には空も含まれており、近付いてくる者は全て把握できるのだとか。

 人間だったら、そんな広い範囲の情報を処理できるわけが無い。それを軽々とやってしまうユグドラシルは本当にすごいな。しかも、こいつ滅茶苦茶頭がいいというか、スペックが高い。

 新しく作った監視室に入り浸り、分体でスパコンと同調して情報管理を一手に引き受け始めている。

 このユグドラシルは、理論上の量子コンピューターと同レベルの情報処理能力があったりするんじゃねえかな?

 ユグドラシルが監視に参戦した事により、スプリガンの負担がかなり減っている。そのおかげで、効率よく仕事ができるようになっているようだ。

 というか、ユグドラシルよ。お前はそれでいいのか? と聞いたのだが、

『基本的に光合成以外する事がないので暇なんです。こうやっていろいろ知れる事は面白いですよ? 私、寝る必要ないのでずっと面白いまま!』

 とか言っていましたね。本人と言っていいのか分からないけど、自分で納得というか楽しんでやっているみたいなので、無茶はしないように。

 変わった事と言えば、ウルが家の外に出るようになった事かな? 人にはまだビクビクしている様子は見られるけど、娘たちと遊んでいる時や、孤児院の子たちと遊んでいる時は、かたさが取れてきていると思う。

 孤児院には、同じ年齢の子どももいるし、獣人の子も多い。なので、ウルにはちょうどいいのかもしれないな。

 とはいえ、孤児院の子たちもずっと遊んでいるわけでは無い。恵まれているけど、街の子どもより大変な思いもしている。

 この子たちは親がいないので、早い段階で自立していかなければならない。勉強もしっかりとしなければならないが、自分にあった職業も探さなければならないのだ。

 特に10歳を過ぎてくると、個々に色々な所に職業体験をしに行くようになる。色々体験して、自分で自分の将来を決めていくのだ。色々苦労するだろうから、巣立つまではしっかりとサポートするようにしている。お金を出しているだけだけどね。

 10歳になるまでは、ある程度の人数でまとまって職業体験をしに行くのが基本だ。後は、孤児院の裏にある畑を自分たちで管理しているくらいだろうか?

 ウルはその中に入って色々な体験をここ半月程頑張っている。

 娘たちが、ウー姉と一緒のことする! と騒ぐのだが、さすがにまだ早いので中庭に娘用の畑を作っている。気が向いた時にしか作業をしていないのだが、ウルと同じ事ができると満足して大人しくなるので基本的な管理は、面白がっているドリアードが進んでしてくれている。

 改めて考えると、俺って本当に恵まれているよな。良い人にも出会え、召喚した従魔や妖精もみんないい子ばかりである。

 可愛い妻たちもいるし、娘も可愛いしな。

 1つ心配な事は、どこまで娘たちをかまっていいか分からない事くらいだろう。

 そういえばユグドラシルは、剪定等は必要ないそうだ。ただの世界樹だった時もしていなかったが、ユグドラシルになった今、自分でいらない枝等は落とすそうなのだ。

 どういう基準で選んでいるのかは分からないが、毎朝ユグドラシルの根元に大小さまざまな枝が落ちている。

 何かに使ってみようと思ったのだが、クリエイトゴーレムでも加工が難しくどうしようか悩んでいる。

 昔、フルアダマンタイト製の剣を作った時のように、無茶苦茶魔力を消費するのだ。あの時は召喚する時に多少形を整えていたからギリギリ何とかなったが、今回のユグドラシルの枝は枝なのだ。

 クリエイトゴーレムで加工するためには、大まかな形を整える所から始めなければならない。長さや形を調整してやっとこさできたのが、木刀である。京都奈良の修学旅行で1人は買うお土産屋に置いてある感じの木刀だ。

 ただ、この木刀、やべえ。何がやべえって、ドワーフのじっちゃんがミスリルを使って打った大剣と打ち合って、叩き折ってしまったのだ。しかも木刀のくせに傷1つ付いていないとか……マジやべえ。

 ネタ武器としては面白そうなので、色々な種類の武器をユグドラシルの枝で作ってみようと思う。きちんとした武器として使えるように、刃もしっかりとつけてみようと思う。

 それ以外には使い道は思いつかなかったので、日々倉庫に枝が積みあがっていっている。

 今日も落ちた枝を回収しに行ったら、ウルと娘たちがユグドラシルの枝を振り回して遊んでいる。あれは恐らく、俺や妻たちが庭で訓練している時の素振りとかを真似しているのではないだろうか?

 ウルが3人の前に立って、木の棒を構え「1、2、1、2」と掛け声をかけて振っているのだ。それを見た娘たちも真似して「1、2、1、2」とやっている。何をしていても可愛いな。

 母親やケットシーは、その様子を微笑ましそうに見ている。

 俺の事を見つけたミーシャが駆け寄ってきて、

「とーたん! これキレイにして!」

 と、先程まで振っていたユグドラシルの枝を突き出してきた。ミーシャの前で木刀を作った事を覚えていて、木の枝っぽいのじゃなくて武器っぽくしてほしいって事だな。

 マジか! ウルも含めて4本もユグドラシルの枝を加工する事になった。誰か1人ずつというわけにはいかなかったので、根性を入れて加工した。Sランクのマナポーションを合計20本も飲む羽目になったよ。

 1本が100ミリリットル位なので、合計2リットル、お腹がタポタポです。ニコ、プニプニベッドを頼む。

 パタリッ
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...