ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,351 / 2,518

第1351話 到着

しおりを挟む
 新しく捕まえてきた奴らも話が通じないので、騒いでも気にしないで済む場所に隔離しておく。オークじゃなかった、クソ野郎を閉じ込めた場所を広げて、3メートル四方狭い部屋へ、1人ずつ突っ込んでおいた。

 新しくそれなりの地位にある人間を拉致られた帝国軍は、動くに動けなくなっている。

 ただ、魔改造した双眼鏡で兵士の様子を見ていると、先ほどまでの暗かった雰囲気から、何となく表情が明るくなっている気がする。

 こいつらがそんなに怖かったのだろうか? 実力主義の帝国なのに、場所によってはまったく関係なく、世襲制の所もあるようだな。

 無能な人間が上に立つと、こんな風になってしまうという実例かもしれないな。

 あっ! 帝国軍が動かないのは、もうすぐインペリアルガードが到着するから、それを待っているのかもしれないな。

 冒険者の処分はギルドの管轄になると思うけど、兵士はインペリアルガードというか、皇帝が決める事だからな。兵士に関しては、命令を聞かないわけにはいかない心理状況や、街の兵士の数も加味して罰が下されるだろうから、反逆罪とかは無いだろう。

 そもそも、皇帝も処分したいのは有害な邪魔者を排除したいだけで、末端の兵士までどうこうしたいというわけではなさそうなので……うん、まぁ俺も邪魔な奴らだけは、しっかりと処分してくれれば問題ないわ。

 インペリアルガードが到着する2時間程は特に何もなかった。

 グリフォンに乗って来たインペリアルガードが到着する。体のサイズ的に大量輸送は出来ないけど、2~3人位なら問題なく運べるようだな。

「シュウ様。この度は、誠に申し訳ございませんでした。もうしばらく害虫共の隔離をお願いしてもよろしいでしょうか? 先に向こうにいる軍の対処をさせていただこうかと思いますが……」

「かまわないよ。無理やり連れてこられた人たちもいると思うから、早めに対応してやって。後、帝国の街を占領した軍が近くにいるんだけど、あれってどうすればいいんだ? 戦ってる場所は、そっちの領地なんだけど」

「ありがとうございます。お前ら、先に行って軍を掌握してこい。敵軍に関してですが、シュウ様の不利にならない程度に対応していただいて構いません。本来であれば、帝国が戦わなければいけないのですが、立地的にお任せする形になってすいません」

「今と同様に適当に戦ってていいって事か?」

「そう言う事ですね。仮の話ですが討ちに出たいのであれば、軍を帝国の領土にいれても構いません。ですが、街に被害を出さないようにしていただければと思います」

 事実上無条件で軍を帝国の領土で動かしていいという許可をいただいてしまった。

「じゃぁ今までの予定通り、壁を越えてこようとしない限りは、撃退方向で行きますね。追い返す形になるので、帝国の街の奪還は自分たちでお願いします」

 事務的なやり取りを少しすると、まずは向こうに集まっている帝国軍の掌握に向かって行った。

「よ~し、俺たちはこの辺で終わりかな。兵士の皆もお疲れ様! 引き渡しまではまだ時間があるから、もう少しだけ頑張ってくれ。今日の夜は、ブラウニーに美味い食事を準備させているから楽しんでくれ!」

 兵士に向かってそう言うと、雄たけびのような声で関所が包まれた。

 ここまで喜んでもらえるならお酒も……ダメか。他の関所にも、戦争に参加してくれている人にも公平に、食事を準備してやらないとな。

「ピッポッパっと。シルキーの誰かいるか?」

『ハイハイ、どうなさいましたか?』

 アマレロが魔導無線に答えてくれた。

「そっちで、10000人分位のちょっと豪華な食事を準備できたりするか?」

『戦争に参加してくださった人の分ですか? それでしたら、ディストピアの皆さんに手伝ってもらって準備できていますよ。準備しましたが兵士の食事を準備するために、こちらからも人員を送っていますが、その人が作る食事ではだめなのですか?』

「やっぱり戦勝パーティーなら、シルキーが監督して作った食事の方がいいでしょ。俺は普段からシルキーたち食べてるから気にならんけど、普段食べていない人にとっては、普通の食事でも飛んで喜ぶ程嬉しいみたいだからな」

『それは聞いた事がありますね。スカーレットが監修してブラウニーが指揮をとって作った食事なので、喜んでもらえると思います』

「え? アマレロたちは?」

『私たちは、娘様たちのお食事を作っていますから、全員で作る事はありませんよ。誰からお願いされても、優先度が違いますからね。本当ならスカーレットもこちらに加わりたかったのですが、ジャンケンで負けたので今回は準備の方へ回っています』

 なるほど、俺がお願いすると思っていたのか、4人全員で対応しないでジャンケンで負けたスカーレットが、血の涙を飲んでこっちの準備をしてくれたようだ。

 何かそんな事を聞いてると、なんか切なくなってくるな。娘たちを大切にしてくれているのは嬉しいけど、俺の扱いがぞんざいじゃないか?

 まぁ、食事が準備されているのであれば、後で送られてくるから食事に関しては十分だろう。

 ふむ、する事がなくなってしまったな。帝国軍はインペリアルガードが対応してくれるから手を出す必要はない。なら、レイリーの方を見てみるか。

 マップ先生を開いて戦況を予想する。

 予想するまでも無かった。壁から2キロメートル程離れた所にいた敵軍2つは、動くに動けず膠着状態に陥っていた。

 あのフレシェット弾をくらった人を何とか助けて、カタパルトの射程の外まで逃げて休んでいるようだ。でも、こっちが追撃したら本当にどうするつもりなのだろうか?

 攻めるわけでもないし、俺が気にしてもしょうがないか。

「レイリー、レイリー」

『どうなさいましたか?』

「こっちはインペリアルガードが到着して、事後処理が始まった感じだよ」

『そうでしたか。こちらは、毒を受けた人たちを回収して後退しただけですね。こちらは、監視要員以外は休憩に入っている所です。もう一度攻めてくるか分かりませんが、すぐには攻めてこれないと思います』

 なるほど、やっぱりそんな所か。

「油断しないようにね。戦争が終結したら、ディストピアから送られてくる料理でパーティーだってみんなに伝えていいよ」

『おぉ、それは士気が上がるでしょう。早速伝えてまいります』

 レイリーも知っているみたいだな。だけど、今更士気が上がったところで何の意味があるのだろうか?
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...