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第1653話 出来ないこともあった
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「もう一度確認でござる。床が土の所では、掃除の問題は1つも出ていないでござる。石やレンガの場所からだと、3割くらいでござるかね。残りの7割は困っていないでござるが、汚れているのが気になると言っていたでござるな」
「木の床に比べれば床の掃除はしやすいけど、細かな凹凸があるからその隙間に入ったのが、気になるって感じかな?」
「そうでござるな。で、木の床の食堂だけじゃなく、食堂のおばちゃんたちの話だと、宿の方も掃除が大変だと話を聞いていたらしいでござる」
「食堂だけならそこまで汚れないみたいだけど、夜になるとお酒も出す店はかなり困ってたわね。床にシミが出来ちゃうから、見た目がね~みたいなこと言ってたわ」
そうなんだよな。冒険者や工房の人間が来るお酒を出す食事処は、こぼす人間も多いので床がどうしても汚くなってしまうのだと嘆いていた。
「さすがに木を使う床の掃除を考えると、かなり難しいよな」
「この際、食堂の床を張り替えるのに、補助金を出すとかした方が良いんじゃない?」
「それでも、張り替えるのに時間がかかるし、宿屋の方は2階以上もあるから根本的な解決にはならんだろ」
「じゃあ、どうするのよ?」
「おいおい、それを今考えてんだろ」
「張り替える、というのは大げさでござるが、コーティングを考えるのはどうでござるか?」
「それの方がまだいいか? でも、この世界で都合よくコーティング剤なんて見つけられるかね?」
「クリアメタルみたいに何か見つかるんじゃない?」
「とりあえず、工房の人に何かないか聞いてみるか」
工房で働いている人間に片っ端から聞いてみた。
「まさかね」
「こういうのも、フラグを折るって言うのかしら?」
「どっちでもいいけど、お金にならないスティッキースライムのドロップアイテムに、乾燥させると膜ができる機能があるなんてな……そもそもさ、アメーバ状のスライムって元々ネバネバしてね? それなのにスティッキーって、おかしい気がするのだけどな」
「そんなこと、どうでもいいじゃん。ただ乾燥させるだけじゃなくて、熱して乾かすことによって塗られたものにしっかり定着するらしいから、それを大工系の商会に話を通せばいいんじゃない? 一定期間は、補助金を出すようにすれば、宿の方も話が進むんじゃない?」
「とりあえず、床はそれでいいかもな」
グリエルにスティッキースライムのドロップ品の話をして、ゴーストタウンの領主代行を通して各商会に話をする形になった。
「コーティングができるなら、クリーナーでも十分か?」
「コーティングされるなら、掃除も手間がかからないからクリーナーの必要すらないんじゃない?」
「そうすると、掃除部門の設立が微妙になるか?」
「そこは、キッチンの掃除もあるでござるから、問題ないのではござらんか?」
それもそうか、食堂以外にも掃除する場所はいくらでもあるんだから、掃除部門はあっても問題はないよな。この工房もそうだけど、汚い所って多いからな。
「今回は、これで十分か? 他にも便利掃除道具作るか?」
「外壁掃除用に高圧洗浄機を作ってもいいんじゃない。それなら石の床も掃除できるわよ」
「それって水浸しにならんか? まぁ、掃除道具としてはありだよな。よっし、そっちも作ってみるか」
さてさて、俺たちは高圧洗浄機を作ることにした。前回お手本を見ないで作るのも面白かったので、作り始めは自分たちの力で作るのを楽しむことになった。
スチーム掃除機の造りを利用して、タンク、圧力をかける部分、ホースを準備して繋げてみた。
「勢いよく出ないな」
いきなり躓いた。水をたくさん使うのでタンクを大きめにして、水を大量に確保する形になったのだが、圧力をかける部分……スチームでは熱する部分だったのだが、今回はどういう加工をすればいいのかわからず、タンクに空気を入れる圧力で押し出すことしかできなかった。
「テレビショッピングみたいなので、水道に繋げて勢いよく出してたわよね。どういう造りなのかしら?」
「クリエイトゴーレムなら、何も考えずに圧力をかけた水を、魔核から生み出すだけでいいでござるのに」
「一定時間でいいなら強い水圧をかけれても、長い時間かけ続けるのは難しいな。まじで、どんな風に作ってんだ?」
3人で悩みに悩んで3日後。
俺は閃いた。圧力をかける部屋が1つだから、持続的に水を出し続けられないのだと! なので、ピストンを使って複数、常にどこかの部屋に圧力がかかっている場所から、水を押し出せるようにしておけば、問題が解決する考えた。
俺は3つのピストンを準備して、常に圧力がかかる部屋をできるようにした。
「圧力は強くなったけど、威力は無いな。やっぱり、あの道具ってすごいんだな。あ~分からん! 高圧洗浄機を分解して調べてみるか」
その結果、何も分からなかった。
分解して仕組みの資料も出してみたのだが、どうして高圧で出せるのかよくわからなかった。いや、圧力をかける方法はなんとなく理解できたが、持続的に高圧をかけられるのかがよくわからなかったのだ。
とはいえ、分からなくても模倣することは、可能だったので作ってみたのだが、作れても同じように圧力をかけて押し出せなかった。クリエイトゴーレムを使わない魔道具では、圧力を確保できなかったのだ。
「これは無理でござるな。魔道具じゃ再現できないでござるよ。それなら、この世界の人間たちは力があるから、スプレーの造りを少し変えれば手動で強い水流を作れるでござるよ」
確かに、それでいいかもしれないな。
広範囲の外壁を掃除するなら、柄付ブラシで頑張ってもらう形かな。
掃除部門を作る前提で話が進んでいるが、もしかしたら途中で頓挫するかもしれない。
まぁ、屋台の方は掃除が楽になるだろうから、今回は頑張った方かな。
「木の床に比べれば床の掃除はしやすいけど、細かな凹凸があるからその隙間に入ったのが、気になるって感じかな?」
「そうでござるな。で、木の床の食堂だけじゃなく、食堂のおばちゃんたちの話だと、宿の方も掃除が大変だと話を聞いていたらしいでござる」
「食堂だけならそこまで汚れないみたいだけど、夜になるとお酒も出す店はかなり困ってたわね。床にシミが出来ちゃうから、見た目がね~みたいなこと言ってたわ」
そうなんだよな。冒険者や工房の人間が来るお酒を出す食事処は、こぼす人間も多いので床がどうしても汚くなってしまうのだと嘆いていた。
「さすがに木を使う床の掃除を考えると、かなり難しいよな」
「この際、食堂の床を張り替えるのに、補助金を出すとかした方が良いんじゃない?」
「それでも、張り替えるのに時間がかかるし、宿屋の方は2階以上もあるから根本的な解決にはならんだろ」
「じゃあ、どうするのよ?」
「おいおい、それを今考えてんだろ」
「張り替える、というのは大げさでござるが、コーティングを考えるのはどうでござるか?」
「それの方がまだいいか? でも、この世界で都合よくコーティング剤なんて見つけられるかね?」
「クリアメタルみたいに何か見つかるんじゃない?」
「とりあえず、工房の人に何かないか聞いてみるか」
工房で働いている人間に片っ端から聞いてみた。
「まさかね」
「こういうのも、フラグを折るって言うのかしら?」
「どっちでもいいけど、お金にならないスティッキースライムのドロップアイテムに、乾燥させると膜ができる機能があるなんてな……そもそもさ、アメーバ状のスライムって元々ネバネバしてね? それなのにスティッキーって、おかしい気がするのだけどな」
「そんなこと、どうでもいいじゃん。ただ乾燥させるだけじゃなくて、熱して乾かすことによって塗られたものにしっかり定着するらしいから、それを大工系の商会に話を通せばいいんじゃない? 一定期間は、補助金を出すようにすれば、宿の方も話が進むんじゃない?」
「とりあえず、床はそれでいいかもな」
グリエルにスティッキースライムのドロップ品の話をして、ゴーストタウンの領主代行を通して各商会に話をする形になった。
「コーティングができるなら、クリーナーでも十分か?」
「コーティングされるなら、掃除も手間がかからないからクリーナーの必要すらないんじゃない?」
「そうすると、掃除部門の設立が微妙になるか?」
「そこは、キッチンの掃除もあるでござるから、問題ないのではござらんか?」
それもそうか、食堂以外にも掃除する場所はいくらでもあるんだから、掃除部門はあっても問題はないよな。この工房もそうだけど、汚い所って多いからな。
「今回は、これで十分か? 他にも便利掃除道具作るか?」
「外壁掃除用に高圧洗浄機を作ってもいいんじゃない。それなら石の床も掃除できるわよ」
「それって水浸しにならんか? まぁ、掃除道具としてはありだよな。よっし、そっちも作ってみるか」
さてさて、俺たちは高圧洗浄機を作ることにした。前回お手本を見ないで作るのも面白かったので、作り始めは自分たちの力で作るのを楽しむことになった。
スチーム掃除機の造りを利用して、タンク、圧力をかける部分、ホースを準備して繋げてみた。
「勢いよく出ないな」
いきなり躓いた。水をたくさん使うのでタンクを大きめにして、水を大量に確保する形になったのだが、圧力をかける部分……スチームでは熱する部分だったのだが、今回はどういう加工をすればいいのかわからず、タンクに空気を入れる圧力で押し出すことしかできなかった。
「テレビショッピングみたいなので、水道に繋げて勢いよく出してたわよね。どういう造りなのかしら?」
「クリエイトゴーレムなら、何も考えずに圧力をかけた水を、魔核から生み出すだけでいいでござるのに」
「一定時間でいいなら強い水圧をかけれても、長い時間かけ続けるのは難しいな。まじで、どんな風に作ってんだ?」
3人で悩みに悩んで3日後。
俺は閃いた。圧力をかける部屋が1つだから、持続的に水を出し続けられないのだと! なので、ピストンを使って複数、常にどこかの部屋に圧力がかかっている場所から、水を押し出せるようにしておけば、問題が解決する考えた。
俺は3つのピストンを準備して、常に圧力がかかる部屋をできるようにした。
「圧力は強くなったけど、威力は無いな。やっぱり、あの道具ってすごいんだな。あ~分からん! 高圧洗浄機を分解して調べてみるか」
その結果、何も分からなかった。
分解して仕組みの資料も出してみたのだが、どうして高圧で出せるのかよくわからなかった。いや、圧力をかける方法はなんとなく理解できたが、持続的に高圧をかけられるのかがよくわからなかったのだ。
とはいえ、分からなくても模倣することは、可能だったので作ってみたのだが、作れても同じように圧力をかけて押し出せなかった。クリエイトゴーレムを使わない魔道具では、圧力を確保できなかったのだ。
「これは無理でござるな。魔道具じゃ再現できないでござるよ。それなら、この世界の人間たちは力があるから、スプレーの造りを少し変えれば手動で強い水流を作れるでござるよ」
確かに、それでいいかもしれないな。
広範囲の外壁を掃除するなら、柄付ブラシで頑張ってもらう形かな。
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まぁ、屋台の方は掃除が楽になるだろうから、今回は頑張った方かな。
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