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第2239話 愚者は愚者だった
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「よっし、準備完了。バッハ、飛んでくれ。方向は……大体あっち」
キュオッ! と一鳴き。返事というよりは、大体!? と俺の発言に驚いている感じだな。すまないが、この段階になって初めて、襲う街がどこにあるのか分からないことに気付いたんだ。でも、魔導無線でグリエルから聞けば問題ないので、出発してくれ。
メグちゃんは……俺の首に巻き付いているのでいいのか? それでいいなら俺はかまわないんだが……
あ~娘たちに絶対に守るようにお願いされたのね。不意打ちで即死しない限りは、死ぬことは無いだろうけど、メグちゃんの守りがあるなら心強いね。
「先走って向かおうとしたのはいいけど、襲う街が分からないからどこにあるか教えてくれ」
『ですよね。えっと、マップ先生を開いて、皇都から北東の方向に進んで、4つ目の街ですね。一応名前は、イステリオンという街らしいですね。人口は約30万人ほどで、皇都を除けばトップに位置する人口の数ですね』
方向をバッハに指示して、グリエルと会話を続ける。
「人数が多いから声が大きくて、虎視眈々と教皇の座を狙っているって感じかね? 人数が多いけど、肉体労働をしたくないから、街は疲弊していて、奴隷を欲しがっているって感じか?」
『おそらく、ご想像の通りかと。これまで耐えていたのが奇跡かもしれませんね。街の大人の大半が罰賞がありますので、奴隷で過酷な状況で扱っていたのでしょう。虐待……いえ、拷問もしていたようですね』
グリエルの情報を元に、マップ先生の設定をいじると……胸糞悪い思いをした。
「ったく、どうしてこんなことができるのかね……」
『自分より下に何かがいる場合、人間は愉悦を感じるからでしょうね。少し調べてみましたが、この街で獣人は前世に罪を犯したものだ! だから不完全な人型に生まれてきた。罪を償うために今世は奴隷として生きよ、というのが聖国の教えだと説いていたみたいですね』
「本当にどうしようもないな。獣人を無理やり犯して、生まれてきたハーフの獣人は、獣人の罪ではなくクソ共の罪の証って事にもなるのにな。そもそも、前世の罪とかありえないしな。罰賞のついている、クソ共の排除を先にしろと言いたい」
『言ってしまえば、自分たちの都合のいいように獣人を扱いたいから、教えを歪ませていただけですからね。そんな奴らのことを考えるのは、私たちでいいので、シュウ様は元凶を叩いたら戻ってきてください』
グリエルに早く帰ってくるようにお願いされた。
1時間も飛んでいると、聖都らしき街影が見えてきた。次は……北東の方向に飛んで、4つ目の街ね。
そこからは20分程で到着してしまった。
街から1キロメートルほど離れた位置に降ろしてもらい、メグちゃんに守りを任せた。
メグちゃんクラスのリバイアサンになると、空中に存在する水分も感覚器官として使うことができ、状況をマップ先生以上に把握することができる。距離に制限はあるが、本当に凄い能力だな。
これで守りは完璧なので、拡声魔法を使い、
「イステリオンの住人の皆さん、その街の領主がディストピアの領主である私に宣戦布告をしてきたので、街を滅ぼしに来ました。領主は、獣人を返せ奴隷を差し出せと言ってきました。その意見に同調する方は、是非街へ残って徹底抗戦をしてください。逃げたい方はご自由に。
なお、獣人への対応を変えるつもりの無い方は、いずれボロが出て、死よりも苦しい生き地獄を味わうでしょう。ここで死んだ方が楽だと思う人生を用意してあげますので、必死に逃げてください。
今より1時間の後にイステリオンへの攻撃を開始します。それまでに退避したい方は退避してください。1時間より前に私への攻撃を確認した場合は、その時点で殲滅を開始します。
繰り返します……」
ただこの街には、Sランクに差し掛かろうとしているパーティーがいるので、1時間も待つことも無く街を攻撃することになると思われる。
10分程椅子に座りくつろいでいると、メグちゃんが俺の肩を叩いてきた。マップ先生に目を落とすと、予想通り例のパーティーが門から出てくるのが分かった。門の内側に兵士や騎士たちも集まっているようで、マップ先生の光点がうごめいていた。
「おい、あんた。ディストピアの領主というのは本当か? 領主が1人でこんなところに来るなんて、バカなのか?」
7人パーティーで、6人は俺の前に姿を現しているが、最後の1人は俺に見えないように後方へ移動しており、俺の事を弓か何かで狙っているのようだな。
「確かに人間は俺1人だけどさ、俺の近くには2匹の従魔がいることを忘れていないか? 後、攻撃を仕掛けようとしているように見えるが、お前らが手を出した時点で、1時間の約束は無くなるんだぞ。それでもいいのか?」
「ふんっ、くだらん。そんな小さな従魔が何の役に立つ。それに、1時間の約束なんて必要ない。お前は今から死ぬんだからな」
俺が前を警戒しているのを利用して、後ろからの攻撃が飛んできた。
音を消す矢でも使わない限り、気付いている敵からの不意打ちなんか食らう訳がない。躱さずに矢をつかみ取った。
「カッコいい事言っている割には、卑怯な攻撃をしてくるもんだな。俺には通じないけどな。攻撃を確認したから、メグちゃんとバッハは元の姿に。メグちゃんはあの街を水で押し流してくれ」
メグちゃんに指示を出すが、メグちゃんが娘たちにお願いされたのは、俺を守ることで街を攻撃することは含まれていなかったため、動こうとしなかった……俺の従魔なのにな。
仕方がないのでバッハに、上から火の玉をまんべんなく街へ落としてやるように命令する。
Sランクになろうという冒険者が、敵を目の前に動きを止めてどうする。
「メグちゃんは、後ろの弓使いを排除してくれ。俺は目の前のやつらを殲滅する」
俺が前に出ることが不服そうだが、娘たちとの約束を守るために俺に水魔法の守りをかけてくれた。
「さっきまでの威勢はどうした? 棒立ちになってんぞ!」
ミスリル合金にアダマンコーティングをした棍を使って冒険者たちへ襲い掛かる。
何とか反応できたサブタンクと思われる冒険者が、俺の前に出てきた。
俺は技術も何もない、力任せの攻撃を繰り出す。
魔物の素材でできていると思われる盾を粉砕し、装備していた左腕を潰した。
サブタンクの悲鳴によって、冒険者たちは我を取り戻すが……遅い。
魔法使いと思われる後衛2人を円運動を利用した棍棒術で両腕と両足を潰す。
助けが間に合わないと判断したのか、守ることより攻撃を選んだメインタンクとアタッカー2人の判断は悪くない。悪くないが……初動が遅すぎる。そして、同時に攻撃する際は、位置取りを考えないとな。
一番威力の強い冒険者の攻撃を逸らして、タンクの腹に吸い込まれる。
最後の1人は、棍棒による突きが胸に突き刺さる。
キュオッ! と一鳴き。返事というよりは、大体!? と俺の発言に驚いている感じだな。すまないが、この段階になって初めて、襲う街がどこにあるのか分からないことに気付いたんだ。でも、魔導無線でグリエルから聞けば問題ないので、出発してくれ。
メグちゃんは……俺の首に巻き付いているのでいいのか? それでいいなら俺はかまわないんだが……
あ~娘たちに絶対に守るようにお願いされたのね。不意打ちで即死しない限りは、死ぬことは無いだろうけど、メグちゃんの守りがあるなら心強いね。
「先走って向かおうとしたのはいいけど、襲う街が分からないからどこにあるか教えてくれ」
『ですよね。えっと、マップ先生を開いて、皇都から北東の方向に進んで、4つ目の街ですね。一応名前は、イステリオンという街らしいですね。人口は約30万人ほどで、皇都を除けばトップに位置する人口の数ですね』
方向をバッハに指示して、グリエルと会話を続ける。
「人数が多いから声が大きくて、虎視眈々と教皇の座を狙っているって感じかね? 人数が多いけど、肉体労働をしたくないから、街は疲弊していて、奴隷を欲しがっているって感じか?」
『おそらく、ご想像の通りかと。これまで耐えていたのが奇跡かもしれませんね。街の大人の大半が罰賞がありますので、奴隷で過酷な状況で扱っていたのでしょう。虐待……いえ、拷問もしていたようですね』
グリエルの情報を元に、マップ先生の設定をいじると……胸糞悪い思いをした。
「ったく、どうしてこんなことができるのかね……」
『自分より下に何かがいる場合、人間は愉悦を感じるからでしょうね。少し調べてみましたが、この街で獣人は前世に罪を犯したものだ! だから不完全な人型に生まれてきた。罪を償うために今世は奴隷として生きよ、というのが聖国の教えだと説いていたみたいですね』
「本当にどうしようもないな。獣人を無理やり犯して、生まれてきたハーフの獣人は、獣人の罪ではなくクソ共の罪の証って事にもなるのにな。そもそも、前世の罪とかありえないしな。罰賞のついている、クソ共の排除を先にしろと言いたい」
『言ってしまえば、自分たちの都合のいいように獣人を扱いたいから、教えを歪ませていただけですからね。そんな奴らのことを考えるのは、私たちでいいので、シュウ様は元凶を叩いたら戻ってきてください』
グリエルに早く帰ってくるようにお願いされた。
1時間も飛んでいると、聖都らしき街影が見えてきた。次は……北東の方向に飛んで、4つ目の街ね。
そこからは20分程で到着してしまった。
街から1キロメートルほど離れた位置に降ろしてもらい、メグちゃんに守りを任せた。
メグちゃんクラスのリバイアサンになると、空中に存在する水分も感覚器官として使うことができ、状況をマップ先生以上に把握することができる。距離に制限はあるが、本当に凄い能力だな。
これで守りは完璧なので、拡声魔法を使い、
「イステリオンの住人の皆さん、その街の領主がディストピアの領主である私に宣戦布告をしてきたので、街を滅ぼしに来ました。領主は、獣人を返せ奴隷を差し出せと言ってきました。その意見に同調する方は、是非街へ残って徹底抗戦をしてください。逃げたい方はご自由に。
なお、獣人への対応を変えるつもりの無い方は、いずれボロが出て、死よりも苦しい生き地獄を味わうでしょう。ここで死んだ方が楽だと思う人生を用意してあげますので、必死に逃げてください。
今より1時間の後にイステリオンへの攻撃を開始します。それまでに退避したい方は退避してください。1時間より前に私への攻撃を確認した場合は、その時点で殲滅を開始します。
繰り返します……」
ただこの街には、Sランクに差し掛かろうとしているパーティーがいるので、1時間も待つことも無く街を攻撃することになると思われる。
10分程椅子に座りくつろいでいると、メグちゃんが俺の肩を叩いてきた。マップ先生に目を落とすと、予想通り例のパーティーが門から出てくるのが分かった。門の内側に兵士や騎士たちも集まっているようで、マップ先生の光点がうごめいていた。
「おい、あんた。ディストピアの領主というのは本当か? 領主が1人でこんなところに来るなんて、バカなのか?」
7人パーティーで、6人は俺の前に姿を現しているが、最後の1人は俺に見えないように後方へ移動しており、俺の事を弓か何かで狙っているのようだな。
「確かに人間は俺1人だけどさ、俺の近くには2匹の従魔がいることを忘れていないか? 後、攻撃を仕掛けようとしているように見えるが、お前らが手を出した時点で、1時間の約束は無くなるんだぞ。それでもいいのか?」
「ふんっ、くだらん。そんな小さな従魔が何の役に立つ。それに、1時間の約束なんて必要ない。お前は今から死ぬんだからな」
俺が前を警戒しているのを利用して、後ろからの攻撃が飛んできた。
音を消す矢でも使わない限り、気付いている敵からの不意打ちなんか食らう訳がない。躱さずに矢をつかみ取った。
「カッコいい事言っている割には、卑怯な攻撃をしてくるもんだな。俺には通じないけどな。攻撃を確認したから、メグちゃんとバッハは元の姿に。メグちゃんはあの街を水で押し流してくれ」
メグちゃんに指示を出すが、メグちゃんが娘たちにお願いされたのは、俺を守ることで街を攻撃することは含まれていなかったため、動こうとしなかった……俺の従魔なのにな。
仕方がないのでバッハに、上から火の玉をまんべんなく街へ落としてやるように命令する。
Sランクになろうという冒険者が、敵を目の前に動きを止めてどうする。
「メグちゃんは、後ろの弓使いを排除してくれ。俺は目の前のやつらを殲滅する」
俺が前に出ることが不服そうだが、娘たちとの約束を守るために俺に水魔法の守りをかけてくれた。
「さっきまでの威勢はどうした? 棒立ちになってんぞ!」
ミスリル合金にアダマンコーティングをした棍を使って冒険者たちへ襲い掛かる。
何とか反応できたサブタンクと思われる冒険者が、俺の前に出てきた。
俺は技術も何もない、力任せの攻撃を繰り出す。
魔物の素材でできていると思われる盾を粉砕し、装備していた左腕を潰した。
サブタンクの悲鳴によって、冒険者たちは我を取り戻すが……遅い。
魔法使いと思われる後衛2人を円運動を利用した棍棒術で両腕と両足を潰す。
助けが間に合わないと判断したのか、守ることより攻撃を選んだメインタンクとアタッカー2人の判断は悪くない。悪くないが……初動が遅すぎる。そして、同時に攻撃する際は、位置取りを考えないとな。
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