ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2309話 これも職業病なのだろうか?

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 昨日はあの後、追加で同じものを10本ほど出すことになった。その内の5本は、カエデとブルムによって飲み干されていたな。いつもは強い酒で40度を超えた物をカパカパ飲んでいるとはいえ、20度未満だったとしても1人で4リットル以上を飲んだんだから、飲みすぎだよな。

 俺なんて、300ミリリットルで酔いを感じていたのに、その10倍以上を飲んでいても平然としてたな。やっぱりドワーフって、何かしら酒に対する人間とは違う臓器がありそうだな。

 おつまみも好評だったな。日本酒がメインだったから日本の味をチョイスしてくれたブラウニーたち、最高だったぜ! 味付けに使った調味料もお酒も、麹菌が使われているから相性がいいのかもな。

 個人的には、塩辛が一番好きだったな。普通の塩辛は、塩以外つかわないで作られることが多いけど、うちでは隠し味と言っていいのか、少量の出汁と醤油も使っているので、かなり俺好みなんだよね。

 でも、最後に出てきた酒盗は反則だった。

 酒を盗むと書いて酒盗……本当にそのままの意味だった。塩辛とも違うが、系統は同じだと思う。昔から塩辛が好きだったせいもあって、お酒が進んでいたと思うが、酒盗はそれを越えてきたね。

 ご飯と食べるなら塩辛だけど、お酒、特に純米大吟醸の冷酒に合わせるのはこれ! と思うくらいには美味かった。他にいうと、味が濃いものが多かったからか、箸休めみたいなおぼろ豆腐の出汁醤油は、ホッとする美味しさがあったな。

 そのせいもあってか、今日の朝食にもおぼろ豆腐を注文してしまった自分は、悪くないと思う。すべては美味しいのがいけない!

 朝食も済んで、久しぶりに子どもたちに見送られて庁舎へ向かっている。ゲートで行っても良かったのだが、朝は運動がてら歩いていこうと思い、テクテクと大通りを進んでいる。

 久しぶりに俺の事を見た住人からは、俺が思っているのとは違う意味で心配された。

 内容として多かったのは、おばちゃんたちから夜頑張りすぎてたんじゃないか? という、セクハラ発言が多かったな。次におっちゃんたちが、他所の街で美人見つけて鼻を伸ばしていて奥様方に怒られてたんじゃないか? というモノが多かった。

 俺が体調不良だったのでは? と心配してくれたのは、子どもでもミーシャたちくらいの子どもたちまでだけだった。

 この世界にセクハラなんて言葉は無い。娯楽が少ないから、他人の下世話な話が会話の種になるのだろう。それが領主であれば、面白おかしく話す人も出てくるだろうしな。

 もっとも、他の街でそんなことをすれば不敬罪で首が飛ぶだろうが、ディストピアでは笑い話にしかならない。もっというと、俺の話なのに俺を放置して、男と女に分かれてあーだこーだ好き勝手話し始めるのが、ディストピア流の交流みたいだな。

 庁舎のある建物にはいると、子どもたちもいて挨拶をしてくれた。元気のいい挨拶のできる子には、飴ちゃんをあげよう。

 一番上にある俺の執務室へ入ると……散らかってはいないな。たまに来ていることもあるけど、秘書が整理や掃除をしてくれているみたいだから、埃が溜まっているということもないな。

 戻って来てから溜まった分を……と思ったが、想像しているよりはるかに少なかった。

 パッと見た感じ10枚ほどだ。いなかった期間に比べると、圧倒的に少ない気がする。たまに来てちょこちょこさばいてはいたが、ここまで少ないと少し驚きだな。

「少なくて驚いているようですね。本当はもっと見てほしいものがありますが、奥様方の判断でも裁決ができるようになるという話ですので、回して問題ないと思われるものは、後でミリー様を中心に裁決してもらう予定です。で、今日は至急シュウ様に決裁してもらいたいモノだけをピックアップしています」

 今日準備された書類は主に、街の運営にかかわる最終的な報告書と次の収支に関する物だった。

 準備された報告書や収支の表は10枚ほどだったが、付属資料として50枚分ほどがタブレットに送られてきた。付属資料の大半は表と数字なので、そこまで重要ではないだろう。それに、俺が目を通す前に何人もの人間が目を通しているので、本当はサインするだけで問題がない状態だと思う。

 この部屋の仮想モニターも立ち上げて、関係書類をいつでも出せるようにしてから、紙媒体で準備されている報告書を読んでいく。

 へ~、俺が知らないだけで、治水工事とかもしてたりするんだな……って、今まで治水工事してなかったってことか? それだけ災害が少なかったのか、それ以外の災害が大変だったのか……これは、前者だな。

 報告書は、あった事をまとめてあるので、特に問題は無いな。細かくまとめられた資料は……すまないが、今回はパスで! 次は、収支か。

 見比べるために、1つの街の過去5年間分の資料を1つのモニターに表示して、それを街の数分だけ準備する。

 5年分をパッと見比べて、数字の推移を簡単にパーセントで表していく。住民は増えていて、少しキャパが危なくなっている場所があるな。そういったところは、居住区域の拡張申請が出てるから問題ないか。

 半分流し読みのような状態だったが、1つだけ気になる点があった。

 万単位の人間が住んでいる街で、2年続けて伸び率が同じパーセントがあったのだ。小数点第5まで一緒となると、おかしい気がする。偶然かもしれないが、違和感は違和感だ。

 調べてみると、経費の部分に明らかに変な点が見られた。誤差としては、1パーセント以下の誤差なのだが、ある月を境に不自然に値段が全部上昇していたのだ。

 気になって他の街を調べてみると、他2つの街で同じように値段が上昇していたものがあった。こっちは一部だったこと、数量が減っていて数字に違和感がなかったこともあり、5年分を並べただけじゃ気付けないものだった。

 この世界は、着服や横領をしないことの方が悪いと思われてたりするのかね? ちょっと前にも、不正をする人間の首を切ったはずなのに、また不正している奴らがいるんだからな……

 しかも、手口が巧妙になっているのが腹立たしい。癒着と言われてもいいから、仕入れは全部俺の商会を通すようにするか……同じシステムを使っているから、不正を見つけるのが楽になるんだよね。数字が違えば一発で判明するからね。

 俺の商会が関わっている物では、不正が無いので明らかに狙ってやってるんだよな。そこらへんは対策を建てるしかないだろう。

 今日は夕方に各街の幹部クラスを集めて会議しよう。あと、この3つの街のかかわった人間たちにも、来てもらって事情を説明してもらおう。もしかしたら、俺の勘違いってこともあるからな。

 準備頼むね。
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