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学級委員会ならぬ魔女裁判
しおりを挟む部屋に突如と訪れた陽キャイケメンである天上院天下。そしてクラスメイトでの話し合いがあるからお前もついて来いと告げられた。
「それじゃあ行こうか」
なんとか屁理屈こねて追い返そうと試みたが、結局そんな彼のその無駄に輝くアルカイックスマイルに押し切られてついていく羽目に。自分の小心者さが憎らしい。
「休んでいたのかな。疲れているところ悪いね」
そして現在、陽キャ氏は城内通路において先導するように俺の前を進んでいる。そう思うなら遠慮して欲しい件について。
『マスターはその上にわりと卑怯かつ薄情ですもんね』
おいこらやめろ。
それだとホントに俺が駄目人間みたいじゃねーか。さてはこいつまだ捨てようとしたことを根に持っているな?
『ふんっ! 当然です!! だいたいーー』
聖剣ちゃんはその反応を皮切りにネチネチと言葉を連ねていく。
うわ、長くなりそうだ。
俺は聞き流すように前を歩く陽キャ氏の背中を注視することにした。なんか無駄に陽キャオーラがキラキラしているだけで何の面白みもないけど。
「さぁついたよ」
親に追従する雛鳥のごとくひょこひょこと移動した末に辿り着いたのは会議室のような部屋だった。既に他のクラスメイトの面々は着席しており、俺のことを糾弾するような視線を向けて来た。俺が何したっていうんだよ。
え? これ魔女裁判な感じ?
◆
異世界転移されたクラスメイトは全員ではない。大体一〇くらいだ。作者的に三〇人以上も設定を考えるのが面倒だったのだろうか。怠慢だ怠慢。
まぁせめてもの救いなのは集まったクラスメイト達の中にアリスは居ないことぐらいだ。いたら若干ショックだし心折れそう。本当に良かった。
「いきなりで悪いね陰キャ君。君はその剣を持つに相応しくない。これはクラス全員の総意だ」
「はぁ」
いきなり魔女裁判会場に連行されて来たら、開口一番にそんなことを言われたでござる。あんまりだと思う。
まぁ、それはそれとして俺もその通りだと思うけど。何度も言うが聖剣を持つ勇者なんて柄じゃないし。
でもそんなこと言われましてもね。この剣、全然手放せないんですよ。試しにさっきも隙間時間にバルコニーから城壁の外に放り投げたらものっそい勢いで戻ってきたし。
『そりゃあマスターが適合者だったからですよ。もう諦めて勇者しましょ?』
黙れ。お前には聞いていない。
『マスターは冷たいですね。こういう状況はむしろ喜ぶのが普通だと思いますけど』
厄介事のほうが多いからね。俺は身の丈に合った生活をしたいんだよ。
「話聞いてるか?」
聖剣ちゃんと脳内会話に勤しんでいたら陽キャ氏からツッコミが入った。若干イライラしているようにも見える。カルシウムとか足りてないのかな。
「あ、ごめんごめん。いやぁ渡したいのは山々なんですけどね?」
「なるほど。あくまでも渡す気はないみたいだ」
陽キャ氏は俺がわざと聖剣を手放さないようにしていると判断したらしい。なんでだ。
取り巻きが『サイテー』とか『これだから自己中は』とかヒソヒソと陰口を叩く。全部聞こえているからな?
だいたい死なない限り譲渡出来ないらしい件について。死ねってか。陰キャは無様に死ねってか。御免被るね。
「いやいやいやいや。これにはマリアナ海溝ばりに深い事情がありましてね?」
試しにその情報も伝えてみたが、どーしよいまいち信じてくれそうもない。しかも何故か敵意は増す一方だ。
「は? 嘘つくんじゃねぇよクソ陰キャがっ!!」
俺の様子に堪忍袋の緒が切れたのかヤンキー氏が激高するように近くにある椅子を蹴飛ばした。うわそういうとこまじヤンキー。
「大体さっき渡したけど駄目だったじゃん」
そ、それはてめぇが渡す気なかっただけだろうがよ!!」
いやいやいや。渡す気満々でしたって。
「だいたいそれならあの王女とかに聞けばいいじゃん」
「ぐっ」
これにはクラスメイトの面々はもちろん陽キャ氏も言葉に詰まった。推察するにつまりこれは独断専行。もしくは既に提案しに行ったが取り合われなかったか。
自分達の現在の地位における不安不満。見下していた陰キャより下の立場に耐えられない。そんなところだろうか。
あ ほ く さ。
とりあえず向こうも沈黙するので俺もそれに習い沈黙を重ねた。俺は空気が読めるタイプの日本人なのだ。
どうするもこうも向こうの要望を叶えられない以上なんにも言えないからね。
この沈黙を破ったのは何とも意外な人物達だった。
「まーまー。話もこれ以上進まなさそうだし、とりま一回お開きってことでいいんじゃね?」
「デュフフ、拙者も賛成ナリ」
一人は活発な美少女ギャル。語尾に★とかつけそうな感じだ。後、そのメロンみたいなお胸様がすんごい。
もう一人は小柄かつでっぷりとしたお腹を持つスタンダードキモオタ。陰キャの俺としても親近感かつ安心感を覚える。
ていうかコイツらキャラ濃くない?
『マスターは全くもって人のこと言えないですよ』
うっさいぞ。
この二人はさして俺に敵意を向けてくる様子はない。中立派や穏健派みたいなものなのだろうか。
ともかく話はここで終わり一度解散し後日にまた話し合うということになった。(勝手に)
とはいえそろそろ色々と面倒になってきたな。
よし、城から逃亡しよう。聖剣とかあるしどうにでもなるでしょ。
◆
『マスターマスター』
学級委員会ならぬ魔女裁判会場からそそくさと逃げ出したところで聖剣ちゃんがおもむろに話しかけてきた。
『お聞きしたいことが一つあるんですけど、いいですか?』
「変に改まっちゃってなにさ」
『いえね。今までのマスターの行動を見て色々と思うことがあるんですけど』
聖剣ちゃんはもったいぶるように一拍おいた。
『ーーマスターって自分の命を蔑ろにしすぎじゃないですか?』
は?
一瞬だけ何を言われたのか理解出来なかった。
「ど、どうしてさ?」
自然に出したと思った声音は何故だか震えていた。
『いやぁ自分で言うのもあれなんですがマスターにとって聖剣って安全装置みたいなものじゃないですか。それなのにやたらと捨てたり手放そうとするのは些か理に合わないなと思ったわけです』
その言葉に俺は心臓を鷲掴みにされるような凍った湖の底に閉じ込められるような。とにかくそんな感覚に陥った。
なんなんだ。なんなんだこの嫌な感覚は。理由は不明だ。そしてそれがやたらと気持ち悪く感じた。
「……そんなことねぇよ」
なんとか絞り出した声は自分でも驚くほど底冷えするようなものだった。
『そうですか』
そんな僕の言葉に聖剣ちゃんは特に追及するわけでもない。彼女はどこか寂しげにそう呟いた。
そしてこの言葉を最後にこの会話は終了した。
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