あなたと歩む未来を取り戻したい。

飛燕 つばさ

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第一章 恋愛編

第27話 隠された真実(前編)

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 今日は、骨折した足の通院日である。

 痛みの感覚は漸く薄れてきたが、未だ松葉杖をついて歩く必要があり、不便な状況は続いていた。

 整形外科の待合室で診察を待ちながら、時間が過ぎるのをただ待っていた。

 仁藤先生の診察は、丁寧なので、毎回30分くらいの遅れがある。

 私より順番が先の方がまだ四名おり、もう少し時間が掛かりそうだ。

 待ち時間に何もすることがなくなり、拓弥君がいないかと、リハビリテーションルームを訪ねてみた。

 残念ながら今日はまだ来ていないようだ。

 最近、連絡があまり来ないので心配していたし、顔を見たいと思っていたので、会えないのは残念である。

 私は肩を落としながら待合室へ戻ることにした。

 私の診察の順番が近づき、呼び出しの通知音が鳴ったので、中待合に移動する。

「福田真由さんですね。あ、あなたは…。次呼ばれますからここでお待ちください。」

 案内してくれた看護師さんが、私を見て何か反応していたが、私には心当たりがなく、首を傾げる。

 記憶を遡るが、先程の看護師さんとは面識はないと思う。

「お待たせしました。じゃあ、固定を外して様子を見せて貰いますね。」

 先程の看護師さんが慎重にギブスを取り外していく。

 身軽になった足を仁藤先生が手に取り、押したり、可動状況を確認したりしてチェックしてくれていた。

「問題なく回復していますね。来月には完全に外せるかも知れません。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「そう言えば、あの時の彼氏さんはどうですか?元気にされてますか?」

 仁藤先生は、当初より拓弥君を彼氏だと勘違いしていたが、訂正するのも面倒なのでそのまま返事をする。

「ええ。軽い麻痺は残っていますが、リハビリに通いながら頑張っています。」

「そうですか。では、お大事になさってください。」

 私が午前中の最後の患者の様で、少し世間話をして診察を終えた。

 診察室を後にした私に、先程の看護師さんが声を掛けてきた。

「福田さん。」

「あ、はい…。」

「つかぬ事をお伺いしますが、佐野拓弥さんとお付き合いされているんですか?仁藤先生とのお話で気になってしまって…。」

「えっ…。」

「私、最近まで病棟勤務をしていて、佐野さんのお世話もしていたんです。手術後は、しばらく福田さんがついていらしたので、福田さんが彼女さんかと思っていたら、今度は佐々木先生の娘さんが付きっきりでしょ?佐野さんは、格好良いし、ナースステーションには若い看護師が多く集まっているので、良く話題に上がっていたんです。どうしても気になってしまってを声掛けてしまいました。すみません。」

「えっ?ちょっと待って下さい。佐々木先生の娘さんですか?あの脳外科の?」

「はい。先生の娘さん、美人さんですよね。」

 何かおかしい…。

 佐々木先生の娘であるならば、苗字は佐々木のはず。恵美さんの苗字は宮原なので一致しないのである。

「それで、どちらが彼女さんなんですか?」

「あ、私は友人ですよ。」

「やっぱりそうなんだ。」

「私からも質問いいですか?佐々木先生の娘さんも佐々木を名乗っているんですか?」

「それはどうかわからないですね。ただ、先生は四、五年前くらいに離婚されて、ここの看護師と再婚したんです。娘さんが元の奥さんの苗字を名乗っている可能性はあるかも知れません…。」

 どういうことだろう?

 病棟の看護師さんは、拓弥君の彼女が佐々木先生の娘だと言っている。

 だとすると、恵美さんが佐々木先生の娘ということになる。

 でも、あの恵美さんの苗字は、確か宮原である。

 やはり、佐々木先生の元奥さんが宮原なのだろうか…。

 もしそうだとしたら、恵美さんはかつては『佐々木恵美』だったということになる。

 私と拓弥君の仲を策略によって破壊した大学の同級生の名前も『佐々木恵美』だった。

(まさかね…。)

 名前が同姓同名の可能性もある。

 恵美さんは、確かに性格の悪さでは近いものを感じるが、容姿は全くの別人だと思う。

 流石にないとは思うが、宮原恵美さんがもしあの佐々木恵美と同一人物なら、とんでもないことである。

 私達に卑怯な手を使い、別れさせた後に、のうのうと別人として拓弥君とお付き合いしている訳だから…。

 そんなの絶対に許せない!でも、それを証明することができるのだろうか…。

 看護師さんにお礼を言ってから会計へと向かう。

 モヤモヤした気持ちが更に頭を混乱させている。

 リハビリテーションルームの前を通った所で、聞き覚えのある声がして振り向いた。

 そこには、リハビリに励む拓弥君の姿があったのである。

「おーい!拓弥君!」

「真由か!?もう少しで終わる。待っていてくれ…。」

 拓弥君は、必死な顔でストレッチに取り組んでいる。

 今日は、珍しくスーツ姿で、格好良いけど少し違和感を覚えてしまう。

 しばらくして、リハビリを終えた拓弥君がやって来た。

「スーツ…どうしたの?」

「ああ、これね。最近、会社で異動があってさ。今は営業部で働いているんだ。」

「それは大変ね!大丈夫なの?」

「大丈夫ではないんだけど、クビにされなかっただけマシだよ。」

「あのね、拓弥君に聞きたかったんだけど、恵美さんが佐々木先生の娘さんだってこと知ってた?」

「何それ?いや…それは違うと思うよ。佐々木先生本人が恵美のことを親戚だって言ってたから…。」

「親戚?変ね。さっきの看護師さんの話と食い違っているわ。」

「それに、恵美の苗字は宮原だぞ。」

「うん。佐々木先生は、数年前に離婚して、ここの看護師さんと再婚しているそうなのよ。」

「つまり、恵美は今は宮原を名乗っているが、元々は佐々木だったってことか。」

「そうかも知れないのよ。確証はないけど。」

「あっ…佐々木恵美ってまさか!?恵美が大学時代のあの恵美だっていうことか?いや、それなら余りにも外見が違い過ぎるし…。」

「私もそれは考えたわ。もし、彼女があの恵美さんなら…。」

「何にせよ情報がまだ足りないな。なら、直接佐々木先生に聞いてみようか?」

「え?大丈夫なの?」

「多分ね!ほら、行ってみよう。」

 私達は、更なる情報を掴む為に、脳外科の佐々木先生を訪ねることにしたのであった…。
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