あなたと歩む未来を取り戻したい。

飛燕 つばさ

文字の大きさ
41 / 51
第ニ章 遡及編

第41話 サークルの飲み会

しおりを挟む
「やあ、真由君。よく来たね。」

「レジャックさん?私は…何故ここへ?」

「ああ。君はチャレンジの第一関門を突破したので、一度話をしておこうと思ってね。君からの質問のあった能力だけど、先程君が使った能力は『心眼』というのだよ。対象をより深く観察していると、思いがけない情報が得られるよ。」

「ええ。とても驚きました。あの…心眼で彼に『洗脳』と表示されましたが、本当に拓弥さんは洗脳を受けているのでしょうか?」

「ああ。そうだね。君はあまりそういう類いのことから遠ざかった暮らしをしているからね。君からしたら残念なことかも知れないが、心眼の情報は正しいよ。」

「彼の洗脳を解くことはできますか?」

「残念だけど、僕は直接手出しすることを禁じられているからね…。」

「そうですか…。」

「真由君。チャレンジでの目的は分かっているかい?」

「『未来の分岐点』において、私たちが別れない道に導くことですよね?」

「その通り。そのことを忘れないでね。では、またね…。」

 レジャックさんは最後にそう言うと、私の意識は再び薄れていったのであった…。
 

◇ 真由のマンション 2025年11月9日 16:35 ◇

 目を覚ます。

 私のマンションのベッドの上だった。

 直ぐに前のループとは違う状況になっていることを理解する。

 スマートフォンの時間を確認する。

 今は、2025年11月9日 16:35である。前のループは11月14日だったのでそれより5日も前に戻っていた。

 スケジュールアプリを開いて予定を確認する。

 午前中は授業があり、夜からはサークルの飲み会が入っていた。

(確か…今晩開かれる飲み会の後に写真を撮られたはず。二次会へ移動する時に、山本君に肩を抱かれている場面をホテル前で撮影されていたと拓弥さんは言っていた。もし、撮影されないで済むとしたら、証拠が無くなる訳だから別れる未来を阻止できるかも…。)

 間違った未来の震災の時に、地下で拓弥さんに教えて貰った時の話が役に立った。

 どういう状況で撮影されたかわかるだけでも防ぎようがあるからだ。

 あの時の拓弥さんは、優しくて素敵だったなと思い出すと、つい頬が緩んでしまうのであった。

 私は、単純ではあるが作戦を考えた。

 山本君とホテル前で撮影されたのが問題なのだから、に注意すればいいのである。

 現在の時間からして、午前中は授業を受けて午後に昼寝でもしていたのかも知れない。

 サークルの飲み会は、18:00にペチ公前に集合だったので、シャワーを浴びて身支度を整えた。
 

◇ 18:00 ペチ公前 ◇

 電車を使って移動し、時間通りに集合場所に到着する。

「おーい!真由!こっちだよ~!」

 声を掛けてきたのは、渡井 加奈。私の所属するテニスサークルのメンバーである。

 他にも、山本君、酒井君、井上君、望月君、岸谷君、石崎君の男性6名と、私と加奈、絢香、舞華、咲の女性5名が集まった。

 欠席者が6名いたので今回は11名で飲み会が行われる。

 10年振りに見る仲間達の姿に感動するも、他の方々からすれば最近会ったばかりなので、おかしな反応にならないように気をつけた。

 やはり、10年の差は大きいなとしみじみ思う。特に肉体的には…。移動時の動きが軽いのを実感する。

 私たちが訪れたのは、大衆居酒屋の『寄ってって』である。

 特別美味しくて評判という訳ではないが、安さはピカイチなので、懐が素ない大学生には良くチョイスされる居酒屋である。

「乾杯ー!!」

 山本君の勢いよく放った乾杯の音頭で、飲み会がスタートした。

 親しい仲間たちとの飲み会は、心地よさが溢れるものだった。

 男女が交じり合う宴会とはいえ、不埒な展開になるわけではないため、私も時折参加していた。

 女性メンバーたちも加奈をはじめとして、気心の合う友人が多く、会話も盛り上がった。

 家庭を持ち、子育てに追われる現在、このような楽しい時間を過ごす機会はなかなか訪れない。

 だからこそ、心が躍る思いで、久しぶりの飲み会に参加したのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

処理中です...