69 / 81
第二章 レーナス帝国編
第69話 属国の嘆き
しおりを挟む
私とジュリアは、聖王国での戦争を終えた後、帝国へと旅立った。
帝国はジンディオールの故郷だ。だが、胸には喜びよりも蟠りの感情が渦巻いていた。
私は、ジンディオールと心を通わせたことで、彼の過去や思いも深く知ることができた。
彼が抱える感情の一つ…。
それは、軍司令官のザナクゥへの疑惑だった。
ジンディオールは、魔剣士隊長としてザナクゥと親密な関係にあった。
彼は、ザナクゥに様々なことを相談し、ザナクゥの指令で様々な任務を遂行してきた。
時には意見が衝突することもあったが、話し合いで解決してきた。
だから、ジンディオールは信じたくなかった。ザナクゥが裏切っていたという事実を。
私たちは、その真相を確かめるために、帝国へと旅立ったのだ…。
◇ サマルト法国領 都市クルール◇
私たちは、レーナス帝国に向かう途中、サマルト法国領の都市クルールに立ち寄った。
サマルトは、かつては独立した国だったが、帝国に敗れて属国となった。
法王が統治するこの国は、帝国の意向に逆らえない立場となっていた…。
「ジンさん。やっとクルールに着きましたね!」
「長い道のりだったな。ジュリアは大丈夫か?」
「ええ!前回と違って馬車で移動しましたから!でも、お尻がちょっと痛いです。」
「ハハハ!馬車は、揺れるからな。今日は宿屋でゆっくり休もう。」
「はい。ありがとうございます。」
私たちが乗った馬車は、都市の入口で検査を受けた。
「身分証を見せてくれ。」
無気力そうな若い兵士が声をかけてきた。私たちは冒険者ギルドカードを見せた。
「黄金のカード!?まさか、Sランク冒険者なのか?」
「そうだが…。」
「すまない…。私は今まで商家の下済みをしていたので、黄金のカードを見るのは初めてなんだよ。」
「なぜ、兵士になったんだ?」
「帝国との戦争で兵士が大勢死んだろ?その後、帝国軍として聖王国とも戦争して更に死んだ。この国は兵士が足りないんだよ。だから、強制徴兵されたんだ。」
「そんな…。無理やりなんてひどいですね。」
ジュリアは、彼に同情の目を向けた。
「わかってくれるか?あんたも黄金のカードかい。か弱そう見えるが強いんだな。いいぞ!通ってくれ!」
私たちはトラブルなく入場した。
街の中では、全身黒服の人々が棺を引きずって歩いていた。戦争で亡くなった者たちを葬るのだろうか…。
私たちは、馬車の主人に別れを告げ、宿屋に向かった。
宿屋は木造の二階建てで、看板には『蜜柑』と書かれていた。
◇ 宿屋 蜜柑 ◇
古びた建物だが、清掃は行き届いており、清潔感があった。
「いらっしゃい!何泊するの?」
「とりあえず一泊だ。仕事次第で連泊するかもしれないが。」
「わかったよ!部屋は一部屋でいいのかい?」
「ああ。それで頼む。」
「はいよ、これが部屋の鍵だ。二階の一番奥の部屋だよ。」
私たちは鍵を受け取り、二階に上がった。
旅立った頃は別々の部屋を取っていたが、ジュリアが毎晩私の部屋にやってきて一緒に寝るようになったので、今では一部屋だけにしていた…。
(完全にジュリアのペースなんだよなぁ。)
結局、前回の滞在中、私の理性は限界を超え、男女の境界を越えてしまった。
しかし、後悔はしていない。
私はジュリアを一人の女性として大切に思っていることに気づけたからだ。
ジュリアもそんな私の気持ちを理解し、全てを受け入れてくれたのだった。
「ジンさん。ずっと私をそばに置いてくださいね?」
「もちろんだ。ジュリアを私がずっと守るよ。」
私たちは深く口づけを交わした。
そして、その夜は二人にとって静かに深まっていった…。
◇ ◇ ◇
《 翌朝 》
私たちは冒険者ギルドを訪れることにした。
今日は馬車ではなく徒歩での移動だ。新たな街での景観を楽しむのも旅の醍醐味の一つだ。
しかし、クルールの街は美しいけれど、何か暗い雰囲気が漂っているようだった。
人々の顔には笑顔がなく、不安や恐怖が見え隠れしているようだ。
「やはり少し街全体に元気がないような…。」
ジュリアが私の隣でつぶやいた。
「確かに…。家々や街並みそのものは美しいが、問題は人々の様子だな。」
私はジュリアに同意した。この街には何かが起こっているのだろうか。
しばらく歩くと教会のような建物が目の前に見えてきた。意外にも看板には「冒険者ギルド」と書かれていた。
私たちはギルドへと入った。
◇ 冒険者ギルド クルール支部 ◇
「助けてください!誰か!」
ギルドに入った途端に緊迫したような空気がギルドホールを覆っていた。
どうやら女性がギルドにいる冒険者に助けを求めているようだった。
「ヒーラーか薬師の方はいませんか?ジョニーが…夫が大怪我を負っているんです!」
女性は涙ながらに訴えているが、救いの手を差し伸べる者はいなかった。
「あの…ジンさん。」
ジュリアが私の目を見つめてくる。私は彼女の気持ちを察した。
「いいよ。行ってあげな!」
「はい!」
ジュリアは、女性の元に駆けていったのだった…。
帝国はジンディオールの故郷だ。だが、胸には喜びよりも蟠りの感情が渦巻いていた。
私は、ジンディオールと心を通わせたことで、彼の過去や思いも深く知ることができた。
彼が抱える感情の一つ…。
それは、軍司令官のザナクゥへの疑惑だった。
ジンディオールは、魔剣士隊長としてザナクゥと親密な関係にあった。
彼は、ザナクゥに様々なことを相談し、ザナクゥの指令で様々な任務を遂行してきた。
時には意見が衝突することもあったが、話し合いで解決してきた。
だから、ジンディオールは信じたくなかった。ザナクゥが裏切っていたという事実を。
私たちは、その真相を確かめるために、帝国へと旅立ったのだ…。
◇ サマルト法国領 都市クルール◇
私たちは、レーナス帝国に向かう途中、サマルト法国領の都市クルールに立ち寄った。
サマルトは、かつては独立した国だったが、帝国に敗れて属国となった。
法王が統治するこの国は、帝国の意向に逆らえない立場となっていた…。
「ジンさん。やっとクルールに着きましたね!」
「長い道のりだったな。ジュリアは大丈夫か?」
「ええ!前回と違って馬車で移動しましたから!でも、お尻がちょっと痛いです。」
「ハハハ!馬車は、揺れるからな。今日は宿屋でゆっくり休もう。」
「はい。ありがとうございます。」
私たちが乗った馬車は、都市の入口で検査を受けた。
「身分証を見せてくれ。」
無気力そうな若い兵士が声をかけてきた。私たちは冒険者ギルドカードを見せた。
「黄金のカード!?まさか、Sランク冒険者なのか?」
「そうだが…。」
「すまない…。私は今まで商家の下済みをしていたので、黄金のカードを見るのは初めてなんだよ。」
「なぜ、兵士になったんだ?」
「帝国との戦争で兵士が大勢死んだろ?その後、帝国軍として聖王国とも戦争して更に死んだ。この国は兵士が足りないんだよ。だから、強制徴兵されたんだ。」
「そんな…。無理やりなんてひどいですね。」
ジュリアは、彼に同情の目を向けた。
「わかってくれるか?あんたも黄金のカードかい。か弱そう見えるが強いんだな。いいぞ!通ってくれ!」
私たちはトラブルなく入場した。
街の中では、全身黒服の人々が棺を引きずって歩いていた。戦争で亡くなった者たちを葬るのだろうか…。
私たちは、馬車の主人に別れを告げ、宿屋に向かった。
宿屋は木造の二階建てで、看板には『蜜柑』と書かれていた。
◇ 宿屋 蜜柑 ◇
古びた建物だが、清掃は行き届いており、清潔感があった。
「いらっしゃい!何泊するの?」
「とりあえず一泊だ。仕事次第で連泊するかもしれないが。」
「わかったよ!部屋は一部屋でいいのかい?」
「ああ。それで頼む。」
「はいよ、これが部屋の鍵だ。二階の一番奥の部屋だよ。」
私たちは鍵を受け取り、二階に上がった。
旅立った頃は別々の部屋を取っていたが、ジュリアが毎晩私の部屋にやってきて一緒に寝るようになったので、今では一部屋だけにしていた…。
(完全にジュリアのペースなんだよなぁ。)
結局、前回の滞在中、私の理性は限界を超え、男女の境界を越えてしまった。
しかし、後悔はしていない。
私はジュリアを一人の女性として大切に思っていることに気づけたからだ。
ジュリアもそんな私の気持ちを理解し、全てを受け入れてくれたのだった。
「ジンさん。ずっと私をそばに置いてくださいね?」
「もちろんだ。ジュリアを私がずっと守るよ。」
私たちは深く口づけを交わした。
そして、その夜は二人にとって静かに深まっていった…。
◇ ◇ ◇
《 翌朝 》
私たちは冒険者ギルドを訪れることにした。
今日は馬車ではなく徒歩での移動だ。新たな街での景観を楽しむのも旅の醍醐味の一つだ。
しかし、クルールの街は美しいけれど、何か暗い雰囲気が漂っているようだった。
人々の顔には笑顔がなく、不安や恐怖が見え隠れしているようだ。
「やはり少し街全体に元気がないような…。」
ジュリアが私の隣でつぶやいた。
「確かに…。家々や街並みそのものは美しいが、問題は人々の様子だな。」
私はジュリアに同意した。この街には何かが起こっているのだろうか。
しばらく歩くと教会のような建物が目の前に見えてきた。意外にも看板には「冒険者ギルド」と書かれていた。
私たちはギルドへと入った。
◇ 冒険者ギルド クルール支部 ◇
「助けてください!誰か!」
ギルドに入った途端に緊迫したような空気がギルドホールを覆っていた。
どうやら女性がギルドにいる冒険者に助けを求めているようだった。
「ヒーラーか薬師の方はいませんか?ジョニーが…夫が大怪我を負っているんです!」
女性は涙ながらに訴えているが、救いの手を差し伸べる者はいなかった。
「あの…ジンさん。」
ジュリアが私の目を見つめてくる。私は彼女の気持ちを察した。
「いいよ。行ってあげな!」
「はい!」
ジュリアは、女性の元に駆けていったのだった…。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる