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第四章
第四十四話・ラベントリー領、べリング男爵家の暗雲
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二人は憤懣やるかた無い様子で怒りを募らせている、その足元にはそれぞれの豹が纏わり付き二人の怒りに呼応するように低い声でウナ~~ゴと鳴き、黒い身体が一瞬黄色く光豹の斑紋が浮かび上がった。
レブランドは溜め息を吐くとアレンにこっそり囁やく「ゆっくり養生していいと言ったけど、傷が治ったら此処から早く出て行った方がいいよ、巻き込まれない内にね。」
「一体、”あいつ”って誰ですか?巻き込まれない内にとは?何かあるんですか?」
「”あいつ”とは蝙蝠男爵のジェイコブさ、隣の領地の悪徳領主なんだ。」横からシオンが話掛けた。
「そうだ、あいつはこのラベントリーの領地を狙ってる。卑怯にも自分から攻めて来ずに盗賊団を送り込んでくるんだ。」レオンも話に加わった。
「もう、領地の半分近く占領されてしまったんだ、残りの肥沃なラベントリー城の近郊も狙ってる。最近、特に蝙蝠が多くて盗賊の下見も大胆になってる。でも、手持ちの兵士も少なくて見回りの手が足りないんだ。」シオンの話も熱を帯びて来る。
「ノーランドに援軍を頼んでみたら?それとも同盟を結べば隣の領主も手が出せないんじゃありませんか?」アレンは提案してみた、きっとサージェント伯なら助けてくれると思って。
「それは無理だよ、伝手も無いし此処はノーランドから離れてる。」レブランドがゆっくり首を振って言う。
「でも、同盟だけならどうです?」
「無理だよ、このラベントリーと手を結んでサージェント伯にどんな特が有る?返って他の領主からの疑心暗鬼を買うだけだよ。」
「どうして他の領主からよく思われないんですか?」
「それはノーランドとラベントリーの間にグレイスリー、フォード、そして問題のミンクスの三領がある。三領を飛び越して我がラベントリーと同盟を結べば、間の領主達は挟み打ちに合って領地を取られんじゃないかと心配になり、反対に三領主が結束して攻めてくるかもしれない。」
「そんな、でもノーランドはフォートランドやトリングス(メイナム伯の領地)とかの離れた領地と同盟を結んでいますよ。」
「それは彼らが伯爵家同士な上、広大な領地と財力を持っているからね、不可侵条約も兼ねているのさ。つまり、周りの領主達に睨みを利かせているんだよ、攻めて来たら他の伯爵家達が黙ってないぞ、とね。それに、国王に対する牽制にもなる。」
「僕達、貧乏な男爵家は御呼びじゃないのさ。」レオンが肩を竦めた。
「さあ、暗い話はそこまで。アレン、スープを飲んで体力付けなくちゃね。」レブランドは優しく微笑んだ。
(言われてみれば、皆伯爵家だ、小さな領地では無い。他の領地の事は関係ないんだろうか・・そんな筈は無いと思いたい。)
アレンはスープを飲むと歩く練習を始めたが、三人が驚く程に傷の治りが早かった。
「今日はアレンを見つけた川縁へ行ってみない?」シオンが提案してくれると、二つ返事でアレンは承諾する。
どうやって助かったか、どうやってラベントリーまで来たか皆目見当がつかないのだ。
「そうだね。見れば少しは思い出すかもね。」レオンも励ましてくれる。
「教えてくれたら自分で行くよ。」アレンは三人の兄弟の無償の親切が返って重荷になった。
自分はそれに値いしない、何も返すものも無いと。
その上、嘘もついてる。
元のアレリスなら、ノーランドとの伝手もできるし頼めば援軍ももしかしたら寄越してくれるかも知れない。
で も、もう僕には守護魔獣がいない、ただのアレンだ。だから二度とフォートランドに戻る気はなかった。
それに、あそこでの思い出は辛過ぎる、何も思い出したくないと言うのが本音で、だから僕に構わないでというのも本音だ。
もう少し体力が戻れば早く出て行く方がいいのかもしれない。
アレンはつらつらとそんな事を考えていた。
「また深刻に考えてる、顔が暗いよ。」シオンが茶化してアレンの暗い気持ちを吹っ切てくれる。
彼等は貴族なのに少しも偉ぶらない、アレンのような何処の誰かも分からない者にも親切だ。
これは稀有な事だ、返し切れない恩義を受けている。
彼等は他の人にもフランクだから、村に行くと向こうから豹の若様と声が掛る。
始めて村に行った時も一緒にいるだけでアレンまで大歓迎された。
「さぁ、早く用意して行こうよ。」レオンが催促する、彼はマイペースでシオンは慎重派だ。
アレンの用意といっても二人のお下がりに着替えるだけで、本当に何もかもお世話になっている。
「今日は林を通るから茸を探しながら行こう、そうすれば今日は茸スープだ。」シオンが言うと、レオンは茸も飽きたと呟き彼にじろりと睨まれている。
そんな光景さえ微笑ましかった。
(よし、今日は茸をいっぱい見つけよう、他にも食べられる物も何か。)
三人は籠やバスケット等をそれぞれ持って出発した、できるだけ速い方がいい馬が無いからひたすら徒歩だ。
「アレンは凄いな、色々な食べられる植物をよく知ってるんだね。」林に入って間もなくシオンが感心して言った、アレンの籠はもう半分埋まっている。
「草は草だよ。」レオンは好き嫌いが激しいので、ぶつくさ呟く。
「ふふ、僕の貧乏は生まれた時からだからね。よく食べられる物を始終探してた、薬草を探すのも得意だよ。」
「ご両親はいつ亡くなられたの?」
「母さまは六才の時に、父さまの事は亡くなってから知ったんだ。」
「そうなんだ・・・・。」
「他に親戚とかいなかったのか?」レオンが不思議そうに聞いてくる。
「・・うん、身寄りはいないようなものだった。」
まさか親戚に病気になった母親ごと森に捨てられたとは言いづらかった。
暫く歩くと川縁に着き「あそこにアレンは倒れていたんだよ。」と、レオンが指を指した。
アレンはその場所を見ても何も思い出せなかった、川の中からどうやって縁に辿り着いたかも。
「何か思い出した?」アレンが緩く首を振ると「暫く、そこにいるかい?僕達は少し向こうで釣りをしているよ。」シオンがそう言って、アレンを一人にしてくれた。
アレンは少しして川縁に近寄ると膝を付いてそっと手を差し入れる、するとアレンの手に水の塊が触れた気がして顔を覗き込ませた。
川の表面に始めはアレンの顔が映り込んでいたが程なく波紋が広がり水で作られた顔が現れる。
「やっぱり君達が助けてくれたんだね、僕はあんなに酷い態度を取ったのに。ありがとう。」
森で母親を亡くしたアレンを慰めようとした彼らに八つ当たりをして追い払った事があり、それ以来だ。
彼等のことをアレンは”秘密の友達”と呼んでいる、それが何かは知らないままに。
あの日、あの高さから川に落ちれば間違いなくアレンは死んでいた、だがアレンが川の表面に到達する前に”秘密の友達”は大きくて長い水の手を伸ばし包み込むようにアレンを受け、空気を取り込み大きな気球を作り水の膜で覆って彼を水中密かに安全だと思われる遠方まで運んだのだ。
なぜ、彼等がそこまでしてくれるかもアレンには分からない。しかし、ずっと昔、アレンが二歳くらいの時に川に落ちたて助けて貰った事があり、それ以来彼等を感じる事ができるようになった。アレンは不思議な縁だと思っている。
もう一度、彼等にお礼を言うと其処を離れてシオン達と合流して釣りを楽しんだ。
「アレンは釣りも上手だね。」シオンはバケツ一杯になった魚を見て言った。
「うん、ほんとに凄いや。」レオンも賛同してアレンを褒めたが本人は苦笑いしか返せなかった。
なぜなら、この魚は彼ら(”秘密の友達”)が密かに(勝手に)針に魚を掛けたに違いなかったからだ。
途中、エルダ村に寄って魚とチーズを交換しお城に戻って夕食の用意をした、今晩は御馳走でレオンも喜んで食べた。
その夜、エルダ村が蝙蝠と盗賊団に襲われ、人質として何人か攫われてしまった。その人質達は数日後の収穫と交換の為に使われる。
知らせを聞いてレブランド達が駆け付けたが盗賊団も蝙蝠も去った後でどうしようもなかった。
城に帰って来たレブランドは今回は敵が総力を挙げて、この城も乗っ取りに来るつもりのようだからアレンに此処から出て行った方がいいと告げた。
「そんな、レブランド達はどうするの?」
「僕はこの城の跡取りだからね、最後までここに残るよ、できればシオンとレオンを連れて一緒にノーランドまで行ってくれないかアレン。危ないと分かっているけど、頼めるのは君しかいないんだ。」
それを聞いた二人は猛反発した。
「僕も残って最後まで戦うよ、べリング家の者として。」シオンが言うと、レオンも重ねるように言った。
「もちろん僕もだよ。兄上一人にするもんか、あの蝙蝠男に痛い目見せてやる!!」
「でも、べリング家の血を絶やして欲しくないんだ。」レブランドが懇願するが二人は頑として譲らなかった。
「兄上はなぜ、負けると決めて掛るのです。」
「そうだよ、戦ってみなくちゃ分からないよ!」
「ジェイコブは兵士団を持っているし、盗賊団もいる。その上人質まで取られている。到底敵わないよ。」
「僕達にはルイとエルもいる、兄上のエゴラもいるじゃないか!」レオンが叫ぶように言った。
「僕達の豹はあれ以上、大きくなれないし魔力も少ない、空を飛ぶあの巨大な蝙蝠には届くことさえ無理だ。」
「巨大な蝙蝠?」アレンは尋ねた。
「そうだよ、たくさんの蝙蝠を操って巨大化できるんだ。小さくなれば、どこにでも潜り込めるし敵ながら便利なものだよ。」レブランドがお手上げだと言うように肩を竦める。
「ねえ、ハッカはどう?ハッカ爆弾を作って追い払うんだ。」アレンは思い付いて言った。
確か蝙蝠はハッカの匂いが嫌いな筈だったと思い出したのだ。
アレンも一緒に戦おうと決めていた、例えどうなろうと。
++++++++
第四十五話・ラベントリー領、蝙蝠男爵ジェイコブズの来襲①水の馬
レブランドは溜め息を吐くとアレンにこっそり囁やく「ゆっくり養生していいと言ったけど、傷が治ったら此処から早く出て行った方がいいよ、巻き込まれない内にね。」
「一体、”あいつ”って誰ですか?巻き込まれない内にとは?何かあるんですか?」
「”あいつ”とは蝙蝠男爵のジェイコブさ、隣の領地の悪徳領主なんだ。」横からシオンが話掛けた。
「そうだ、あいつはこのラベントリーの領地を狙ってる。卑怯にも自分から攻めて来ずに盗賊団を送り込んでくるんだ。」レオンも話に加わった。
「もう、領地の半分近く占領されてしまったんだ、残りの肥沃なラベントリー城の近郊も狙ってる。最近、特に蝙蝠が多くて盗賊の下見も大胆になってる。でも、手持ちの兵士も少なくて見回りの手が足りないんだ。」シオンの話も熱を帯びて来る。
「ノーランドに援軍を頼んでみたら?それとも同盟を結べば隣の領主も手が出せないんじゃありませんか?」アレンは提案してみた、きっとサージェント伯なら助けてくれると思って。
「それは無理だよ、伝手も無いし此処はノーランドから離れてる。」レブランドがゆっくり首を振って言う。
「でも、同盟だけならどうです?」
「無理だよ、このラベントリーと手を結んでサージェント伯にどんな特が有る?返って他の領主からの疑心暗鬼を買うだけだよ。」
「どうして他の領主からよく思われないんですか?」
「それはノーランドとラベントリーの間にグレイスリー、フォード、そして問題のミンクスの三領がある。三領を飛び越して我がラベントリーと同盟を結べば、間の領主達は挟み打ちに合って領地を取られんじゃないかと心配になり、反対に三領主が結束して攻めてくるかもしれない。」
「そんな、でもノーランドはフォートランドやトリングス(メイナム伯の領地)とかの離れた領地と同盟を結んでいますよ。」
「それは彼らが伯爵家同士な上、広大な領地と財力を持っているからね、不可侵条約も兼ねているのさ。つまり、周りの領主達に睨みを利かせているんだよ、攻めて来たら他の伯爵家達が黙ってないぞ、とね。それに、国王に対する牽制にもなる。」
「僕達、貧乏な男爵家は御呼びじゃないのさ。」レオンが肩を竦めた。
「さあ、暗い話はそこまで。アレン、スープを飲んで体力付けなくちゃね。」レブランドは優しく微笑んだ。
(言われてみれば、皆伯爵家だ、小さな領地では無い。他の領地の事は関係ないんだろうか・・そんな筈は無いと思いたい。)
アレンはスープを飲むと歩く練習を始めたが、三人が驚く程に傷の治りが早かった。
「今日はアレンを見つけた川縁へ行ってみない?」シオンが提案してくれると、二つ返事でアレンは承諾する。
どうやって助かったか、どうやってラベントリーまで来たか皆目見当がつかないのだ。
「そうだね。見れば少しは思い出すかもね。」レオンも励ましてくれる。
「教えてくれたら自分で行くよ。」アレンは三人の兄弟の無償の親切が返って重荷になった。
自分はそれに値いしない、何も返すものも無いと。
その上、嘘もついてる。
元のアレリスなら、ノーランドとの伝手もできるし頼めば援軍ももしかしたら寄越してくれるかも知れない。
で も、もう僕には守護魔獣がいない、ただのアレンだ。だから二度とフォートランドに戻る気はなかった。
それに、あそこでの思い出は辛過ぎる、何も思い出したくないと言うのが本音で、だから僕に構わないでというのも本音だ。
もう少し体力が戻れば早く出て行く方がいいのかもしれない。
アレンはつらつらとそんな事を考えていた。
「また深刻に考えてる、顔が暗いよ。」シオンが茶化してアレンの暗い気持ちを吹っ切てくれる。
彼等は貴族なのに少しも偉ぶらない、アレンのような何処の誰かも分からない者にも親切だ。
これは稀有な事だ、返し切れない恩義を受けている。
彼等は他の人にもフランクだから、村に行くと向こうから豹の若様と声が掛る。
始めて村に行った時も一緒にいるだけでアレンまで大歓迎された。
「さぁ、早く用意して行こうよ。」レオンが催促する、彼はマイペースでシオンは慎重派だ。
アレンの用意といっても二人のお下がりに着替えるだけで、本当に何もかもお世話になっている。
「今日は林を通るから茸を探しながら行こう、そうすれば今日は茸スープだ。」シオンが言うと、レオンは茸も飽きたと呟き彼にじろりと睨まれている。
そんな光景さえ微笑ましかった。
(よし、今日は茸をいっぱい見つけよう、他にも食べられる物も何か。)
三人は籠やバスケット等をそれぞれ持って出発した、できるだけ速い方がいい馬が無いからひたすら徒歩だ。
「アレンは凄いな、色々な食べられる植物をよく知ってるんだね。」林に入って間もなくシオンが感心して言った、アレンの籠はもう半分埋まっている。
「草は草だよ。」レオンは好き嫌いが激しいので、ぶつくさ呟く。
「ふふ、僕の貧乏は生まれた時からだからね。よく食べられる物を始終探してた、薬草を探すのも得意だよ。」
「ご両親はいつ亡くなられたの?」
「母さまは六才の時に、父さまの事は亡くなってから知ったんだ。」
「そうなんだ・・・・。」
「他に親戚とかいなかったのか?」レオンが不思議そうに聞いてくる。
「・・うん、身寄りはいないようなものだった。」
まさか親戚に病気になった母親ごと森に捨てられたとは言いづらかった。
暫く歩くと川縁に着き「あそこにアレンは倒れていたんだよ。」と、レオンが指を指した。
アレンはその場所を見ても何も思い出せなかった、川の中からどうやって縁に辿り着いたかも。
「何か思い出した?」アレンが緩く首を振ると「暫く、そこにいるかい?僕達は少し向こうで釣りをしているよ。」シオンがそう言って、アレンを一人にしてくれた。
アレンは少しして川縁に近寄ると膝を付いてそっと手を差し入れる、するとアレンの手に水の塊が触れた気がして顔を覗き込ませた。
川の表面に始めはアレンの顔が映り込んでいたが程なく波紋が広がり水で作られた顔が現れる。
「やっぱり君達が助けてくれたんだね、僕はあんなに酷い態度を取ったのに。ありがとう。」
森で母親を亡くしたアレンを慰めようとした彼らに八つ当たりをして追い払った事があり、それ以来だ。
彼等のことをアレンは”秘密の友達”と呼んでいる、それが何かは知らないままに。
あの日、あの高さから川に落ちれば間違いなくアレンは死んでいた、だがアレンが川の表面に到達する前に”秘密の友達”は大きくて長い水の手を伸ばし包み込むようにアレンを受け、空気を取り込み大きな気球を作り水の膜で覆って彼を水中密かに安全だと思われる遠方まで運んだのだ。
なぜ、彼等がそこまでしてくれるかもアレンには分からない。しかし、ずっと昔、アレンが二歳くらいの時に川に落ちたて助けて貰った事があり、それ以来彼等を感じる事ができるようになった。アレンは不思議な縁だと思っている。
もう一度、彼等にお礼を言うと其処を離れてシオン達と合流して釣りを楽しんだ。
「アレンは釣りも上手だね。」シオンはバケツ一杯になった魚を見て言った。
「うん、ほんとに凄いや。」レオンも賛同してアレンを褒めたが本人は苦笑いしか返せなかった。
なぜなら、この魚は彼ら(”秘密の友達”)が密かに(勝手に)針に魚を掛けたに違いなかったからだ。
途中、エルダ村に寄って魚とチーズを交換しお城に戻って夕食の用意をした、今晩は御馳走でレオンも喜んで食べた。
その夜、エルダ村が蝙蝠と盗賊団に襲われ、人質として何人か攫われてしまった。その人質達は数日後の収穫と交換の為に使われる。
知らせを聞いてレブランド達が駆け付けたが盗賊団も蝙蝠も去った後でどうしようもなかった。
城に帰って来たレブランドは今回は敵が総力を挙げて、この城も乗っ取りに来るつもりのようだからアレンに此処から出て行った方がいいと告げた。
「そんな、レブランド達はどうするの?」
「僕はこの城の跡取りだからね、最後までここに残るよ、できればシオンとレオンを連れて一緒にノーランドまで行ってくれないかアレン。危ないと分かっているけど、頼めるのは君しかいないんだ。」
それを聞いた二人は猛反発した。
「僕も残って最後まで戦うよ、べリング家の者として。」シオンが言うと、レオンも重ねるように言った。
「もちろん僕もだよ。兄上一人にするもんか、あの蝙蝠男に痛い目見せてやる!!」
「でも、べリング家の血を絶やして欲しくないんだ。」レブランドが懇願するが二人は頑として譲らなかった。
「兄上はなぜ、負けると決めて掛るのです。」
「そうだよ、戦ってみなくちゃ分からないよ!」
「ジェイコブは兵士団を持っているし、盗賊団もいる。その上人質まで取られている。到底敵わないよ。」
「僕達にはルイとエルもいる、兄上のエゴラもいるじゃないか!」レオンが叫ぶように言った。
「僕達の豹はあれ以上、大きくなれないし魔力も少ない、空を飛ぶあの巨大な蝙蝠には届くことさえ無理だ。」
「巨大な蝙蝠?」アレンは尋ねた。
「そうだよ、たくさんの蝙蝠を操って巨大化できるんだ。小さくなれば、どこにでも潜り込めるし敵ながら便利なものだよ。」レブランドがお手上げだと言うように肩を竦める。
「ねえ、ハッカはどう?ハッカ爆弾を作って追い払うんだ。」アレンは思い付いて言った。
確か蝙蝠はハッカの匂いが嫌いな筈だったと思い出したのだ。
アレンも一緒に戦おうと決めていた、例えどうなろうと。
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