文字の大きさ
大
中
小
5 / 12
1③
その日の昼食と夕食も食べさせてあげて、次の日の朝食の時間、僕はまたお兄様の部屋に向かっていた。もちろんキャサリンといっしょに。お兄様といっしょに……というより、お兄様に僕の手から食事を摂っていただきたいと思ったからだ。
でも、今日は昨日と違って皿の乗ったワゴンがお兄様の部屋の前に置いてある。
「…?キャシー、これは?」
「……ラインハルト様のお食事ではないでしょうか?」
「お兄様の?」
あんなになるまで放っておいて、今更?そう思った僕は、皿の被せを取って絶句した。
馬鹿みたいに脂が乗った牛のステーキ、ほとんど脂なんじゃないかってくらいギトギトのスープ、ドレッシングかけすぎのサラダに大量の生クリームがのったケーキ……どれも何日も食べていなかった人に食べさせるものではない。キャサリンもそう思ったのだろう。いつもの完璧な笑顔をちょっと歪めてワゴンに手をかけた。
「……お下げいたしますね」
ワゴンを運んでいくキャサリンとすれ違いでダニエルがこっちに来る。手にはワゴンではなく中くらいお盆を持っていた。
「おはようダニー。それお兄様の朝食?メニューは?」
「おはようございますマーク様。よく煮込んだ鶏肉のシチューになります」
お盆を凝視しながら質問すれば、かぶせを取って中を見せてくれた。湯気の漂う温かそうなシチューからはおいしそうな匂いが漂ってくる。
ああ、おなかすいた……そういえば僕の朝食どうしよう……。
そう思っているとキャサリンがさっきのより小さいお皿を乗せたワゴンを運んでくるのが見えた。もしかして僕の朝食だろうか。
「キャシー、それ……」
「マーク様の朝食でございます。ラインハルト様とご一緒なさるかと思いまして……」
さすが、できる侍女。キャサリンが扉を開けて入ったあと、続けて僕が入り、最後にダニエルが入る。お兄様はまだ寝ていたらしく、目をパチパチしながらぼーっとこっちをみている。やっぱり、お兄様はかわいい。
「おはようございます、お兄様」
「ん……マーク、おはよう……」
お兄様目を眠たそうにこすりながらゆっくりと挨拶をする。その様子がかわいくて、ベッドの端に座りこすっていない手を撫でた。
キャサリンは部屋の小さい机を少し掃除して僕の朝食を準備していて、ダニエルはお兄様のベッドの横の台を椅子みたいにしてそこに座った。
「こちらが本日の朝食になります」
「シチュー……俺、結構、好き……」
「食べさせて差しあげ「僕がやります!」
ついダニエルの言葉を遮ってしまったが仕方ない。かわいいお兄様を独り占めしたいのだ。ダニエルがしぶしぶといった様子で譲ってくれた椅子に座り、
「お兄様、あーん」
とすれば、お兄様はちょっと戸惑ってからシチューを口に含む。昨日1日じゃ慣れてくれなかったみたいだ。おいしかったみたいでふわふわとしているお兄様に調子に乗って半分ほど食べさせてあげたとき、キャサリンに時間がないからと半強制的にダニエルに交代させられた。
「時間がないって、今日なにか予定あったっけ?」
「いえ、ですが本日はラインハルト様のお部屋の掃除とご入浴をしていただこうと思っております」
ご入浴。お風呂。お兄様とお風呂……!?あまりの衝撃にもっていたフォークを落としそうになった。お兄様とお風呂……つまりお兄様の裸が……!?
そのあたりで考えるのを一旦やめた。それ以上考えたらなんだか鼻血が出そうな感じがしたからだ。
「お風呂……嬉しい……」
シチューでふわふわしていた雰囲気がもっとふわふわになっていく。ずっと入れていなかったのだろう。僕もお兄様と入れるのはうれしい。
お兄様のお肌やお髪を洗って差し上げられるだろうか……僕と同じ石鹸にすればお兄様から僕と同じ匂いが……やりたいことがたくさんある。もしお兄様が許してくだされば、だけど。
お兄様のふわふわに負けないくらい心がふわふわして、なんだかどうしようもない朝食の時間だった。
でも、今日は昨日と違って皿の乗ったワゴンがお兄様の部屋の前に置いてある。
「…?キャシー、これは?」
「……ラインハルト様のお食事ではないでしょうか?」
「お兄様の?」
あんなになるまで放っておいて、今更?そう思った僕は、皿の被せを取って絶句した。
馬鹿みたいに脂が乗った牛のステーキ、ほとんど脂なんじゃないかってくらいギトギトのスープ、ドレッシングかけすぎのサラダに大量の生クリームがのったケーキ……どれも何日も食べていなかった人に食べさせるものではない。キャサリンもそう思ったのだろう。いつもの完璧な笑顔をちょっと歪めてワゴンに手をかけた。
「……お下げいたしますね」
ワゴンを運んでいくキャサリンとすれ違いでダニエルがこっちに来る。手にはワゴンではなく中くらいお盆を持っていた。
「おはようダニー。それお兄様の朝食?メニューは?」
「おはようございますマーク様。よく煮込んだ鶏肉のシチューになります」
お盆を凝視しながら質問すれば、かぶせを取って中を見せてくれた。湯気の漂う温かそうなシチューからはおいしそうな匂いが漂ってくる。
ああ、おなかすいた……そういえば僕の朝食どうしよう……。
そう思っているとキャサリンがさっきのより小さいお皿を乗せたワゴンを運んでくるのが見えた。もしかして僕の朝食だろうか。
「キャシー、それ……」
「マーク様の朝食でございます。ラインハルト様とご一緒なさるかと思いまして……」
さすが、できる侍女。キャサリンが扉を開けて入ったあと、続けて僕が入り、最後にダニエルが入る。お兄様はまだ寝ていたらしく、目をパチパチしながらぼーっとこっちをみている。やっぱり、お兄様はかわいい。
「おはようございます、お兄様」
「ん……マーク、おはよう……」
お兄様目を眠たそうにこすりながらゆっくりと挨拶をする。その様子がかわいくて、ベッドの端に座りこすっていない手を撫でた。
キャサリンは部屋の小さい机を少し掃除して僕の朝食を準備していて、ダニエルはお兄様のベッドの横の台を椅子みたいにしてそこに座った。
「こちらが本日の朝食になります」
「シチュー……俺、結構、好き……」
「食べさせて差しあげ「僕がやります!」
ついダニエルの言葉を遮ってしまったが仕方ない。かわいいお兄様を独り占めしたいのだ。ダニエルがしぶしぶといった様子で譲ってくれた椅子に座り、
「お兄様、あーん」
とすれば、お兄様はちょっと戸惑ってからシチューを口に含む。昨日1日じゃ慣れてくれなかったみたいだ。おいしかったみたいでふわふわとしているお兄様に調子に乗って半分ほど食べさせてあげたとき、キャサリンに時間がないからと半強制的にダニエルに交代させられた。
「時間がないって、今日なにか予定あったっけ?」
「いえ、ですが本日はラインハルト様のお部屋の掃除とご入浴をしていただこうと思っております」
ご入浴。お風呂。お兄様とお風呂……!?あまりの衝撃にもっていたフォークを落としそうになった。お兄様とお風呂……つまりお兄様の裸が……!?
そのあたりで考えるのを一旦やめた。それ以上考えたらなんだか鼻血が出そうな感じがしたからだ。
「お風呂……嬉しい……」
シチューでふわふわしていた雰囲気がもっとふわふわになっていく。ずっと入れていなかったのだろう。僕もお兄様と入れるのはうれしい。
お兄様のお肌やお髪を洗って差し上げられるだろうか……僕と同じ石鹸にすればお兄様から僕と同じ匂いが……やりたいことがたくさんある。もしお兄様が許してくだされば、だけど。
お兄様のふわふわに負けないくらい心がふわふわして、なんだかどうしようもない朝食の時間だった。
感想 7
あなたにおすすめの小説
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆこの国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
【BL】惚れた男に嫌われたくなくて「男遊びならしてもいい」と言ったら、本当に男遊びを始められて絶望している侯爵令息の話
かがみゆえ多額の借金で没落寸前の実家を救うため、結婚相手を探していた男爵令息のラキにカムグロス侯爵家から求婚状が届く。
お相手は同性のディートリヒで、初対面で歓迎されるどころか冷たく突き放されてしまう。
『必要最低限関わるな』
『愛人を作るな』
『男遊びならしてもいい』
ディートリヒから実家の借金を完済する条件を言われたラキは、学園で令息たちとの交流を満喫中。
褒め上手なラキの周りには可愛い令息が集まり、推し活状態に。
一方、ディートリヒだけが嫉妬で胃を痛める日々。
ラキへの恋心を隠し続けた不器用侯爵令息に、幸せな未来は訪れるのか?
.
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
おしまいのそのあとは
久野字悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……
BLゲームのモブですが、前世を思い出したら成り行きで悪役令息と「ざまぁ」することになりました。
ぷかり目の前で起こった断罪劇はBLゲームのハイライトシーンでした。
学園の卒業パーティーで第一王子が彼の婚約者であるエバン公爵令息に婚約破棄を告げた瞬間、ジェームズは突然前世を思い出した。
どうやらここはBLゲームの世界で、自分はそのモブキャラらしい。
とはいえ、全てがゲームの通りというわけではなく、現実のエバンは悪役令息らしからぬ品行方正な人物だった。
しかし、ゲームの強制力のなせる業なのか、エバンはシナリオ通りに社交界を追われ行方不明になってしまう。
このままではいけない!
これはエンディング後の世界を生きる成金モブが悪役令息を幸せにするための物語。