Own Eyes

NOVA

文字の大きさ
1 / 1

第1話 「翔べなかった鳥」

しおりを挟む
――あの日、もし俺が別の選択をしていたら、俺の人生はどうなっていたのだろうか。

俺は咲神永和さきがみとわ
漫画のような名前だとよく言われ俺はこの名前が好きではない。
この中二病のような名前を背負いながら俺は17年生きてきた。そして人生にうんざりしている。
学校に行ったところで馬鹿共のいじめが始まる。別にそれが苦痛だという訳では無い。普通の生活さえも邪魔されることに嫌悪感を抱くのだ。
だから最近は学校にも行っていない。家でパソコンをカチカチするだけの時間になっている。
今日は月曜日。普通の人なら憂鬱な気持ちで学校や仕事に向かうだろうが俺には関係ない。今日も怠惰な生活を送るだけだ。
親は何も言わないのかと思った人もいるだろう。
俺には親がいない。母は昔から体が弱く、俺が物心つく時には死んでいた。父親はその頃に家を出ていき、それから帰ってこなかった。
ということで今、俺は一人で生きている。生活費や学費に関しては母が残してくれた莫大な遺産と祖母が送ってくれる金でどうにか生活している。
俺は今日もパソコンを立ち上げるとニュースサイトで今日のニュースを確認する。家から出てない分最近の事は把握しておくようにしている。
画面に目を向けると衝撃の記事があった。

「○○市で集団行方不明」

おい待て、○○市ってここだぞ...?
俺は恐る恐る【続きを見る】をクリックする。
そこには長々と文字が綴られている。
簡単に説明すると昨日9月2日午前9時頃、この町で約20人が行方不明になったらしい。
歳は関係なく、学生から老人まで行方不明になってるとか。警察は今も捜索を続けているらしい。
そんなことがあったのか、寝てたおかげで全く知らなかった。まさか自分の住んでいる町で事件が起きるなんて...
同時に集団行方不明ってことは1人の犯行では無いだろう。何人かのグループによる集団的犯行だと考えられる。
俺はニュースサイトを閉じるとテレビをつける。テレビをつけるなんて何日ぶりだろう。
テレビのチャンネルを回すとニュース番組はやはり例の事件の話題で持ち切りだった。若いニュースキャスターがフリップを使い説明している。俺はそれを食いつくように見ていた。
すると、

「ピンポーン」

テレビに夢中になっていて2回目でインターホンが鳴っていることに気づいた。
時計を見るとまだ針は午前6時を過ぎたところだ。こんな朝早くに誰が?
俺は玄関へ行くとドアスコープを確認する。
そこにはスーツ姿の男が立っていた。予想からして30代くらいだろう。
「咲神永和様、あなたにお知らせがあって参りました。」
背筋が凍りつくような無機質な声で男は俺の名前を呼んだ。
なんだこいつは?なにかの勧誘か?
とりあえず無視した方が良さそうだ。
俺は玄関を離れると自分の部屋に移動する。部屋にはインターホンの音が鳴り響く。いつまで鳴らす気なんだ。
俺はテレビに目を向ける。丁度CMになってしまったようだ。とりあえず今日はこの事件について調べてみるか...
と思った時だった。

「咲神永和様。」

え?
嘘だろ?
声がするんだ?
即座に後ろを見るとあの男が立っていた。
俺は頭が真っ白になった。
なんでここにいるんだ?
玄関の鍵は閉めていたぞ?
じゃあなんで?どうして?
頭が混乱している中、男は俺に言う。
「あなたは選ばれたのです。」
選ばれた?何に?
とにかくまずい、距離を取らないと。
俺は足に全てを力を入れ、部屋から出ようとした。
しかし遅かった。
男は俺の肩を掴みその場に押し倒す。
痛みなんてなかった。むしろ恐怖感が俺を支配していた。そして直感した。
――ああ、俺は死ぬのか。
そこで俺の記憶は途絶えた。


































「永和、あなたは好きなように生きなさい。そして人生を大切にしなさい。」
母の向日葵のような笑顔が浮かぶ。
ごめんね。約束、守れなかった。
俺の頭の中で母の笑顔が消えていく。

































気がつくと俺は座っていた。
周囲を見渡すとそこは学校の教室だった。
どういうことだ、たしか俺は自分の部屋であの男に...
そして俺は異変に気づく。

誰もいない。

あるのは机に上にある手帳のようなものだけ。
なんだこれは...?
俺は手帳のようなものに手を伸ばす。開いてみると丁寧な字でこう書かれていた。


近くにある窓を見ると、そこには左目が金色に光った自分の姿があった。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...