少女の心臓に転生しました~白髪少女の異世界転生冒険記~

邪ま

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第二章 海岸貿易国ポーラル編

28 リミド、パパになる。

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27とあわせて茶番回です。

日が沈み、ウンディーネ討伐の宴がギルドで行われているせいか高ランク冒険者が大勢のみにくるここ汐風の家の一階にはほとんど冒険者の姿はなかった。異様なほどに静まり返ったここ汐風の家、しかしどこからか人の声がする。
幼い子供の声、それも女である。ふっ、ふっ、と乱れた息。流れ出る汗。
「だ、だめ…。リミドさん…!もう、限界!」
「もう少しだあと100回!」
何かいやらしいことを想像してしまった方々はきっと疲れているに違いない。
イミナは日課であるトレーニングをしているのだ。今日は依頼をしなかったぶん、少しきつめのトレーニングだ。俺の分身体を最大量イミナの背中に乗せて、素材変換で俺が知る限り一番重い素材に変換してイミナに負荷をかける。その状態でイミナは腕立て伏せをしているのだ。前世の世界じゃ考えられないほどの力でイミナは弱音を吐きながらも一生懸命に頑張る。なんだか幼い子供を魔改造している気分で罪悪感があるが、これもイミナのためを思ってのことだ。もちろんイミナは俺が守るが、俺はあくまでイミナの体の一部であり、攻撃もイミナにアシストであるから、イミナ自身が強化されることにより、俺も強化されるという原理である。
俺はどうやら筋トレをしてもステータスは強化されないから、イミナの筋トレのサポートをしているというわけだ。そもそも心臓の筋トレってなんだろう、心臓負荷試験とか聞いたことあるけど…?
ただ、だからと言って俺が何もしていないというわけではない。俺は睡眠をとらなくてもいい体になったので、日夜ずっと自由補助粘体(アシストカスタム)の練習やバリエーションを増やしたり、あるいはスキルの構想を練っているのだ。
心臓に休みなどない。どんなときでも常にイミナの周囲を警戒しイミナを守ることを考えているのだ。えへん、すごいだろう?誇らしいポジションだとも。
さてと…悪魔帝トゥルモティアスを倒してからアシストカスタムのスキルが増えたのだ。

[所得可能スキル]
火属性耐性:1500
水属性耐性:1500
自然属性耐性:1500
雷属性耐性:1500
闇属性耐性:1500
光属性耐性:1500
魔力探知:1000

これらの耐性は「上位耐性」と言われていてとても強力なものだそうだ。それに対して「耐・〇〇」とつくものは「下位耐性」と呼ばれ、上位耐性と比べても習得が簡単だそうだ。
しかし、どれも強力な分ポイント数は高い。まぁそれもそれもそのはず、通常、スキルというのはこのような形で選んで取得するわけではない。長い年月をかけて鍛錬を積むとか、極限の状態に追い込まれるとか、そういうある程度の条件があるのだ。俺はそれを一度経験している。耐・恐怖だ。極限に追い込まれた状況。悪魔帝トゥルモティアスの恐怖から逃れようとした結果、このスキルを獲得した。つまりだ、スキルとは生物の生存本能ともいえるだろう。俺が生物であるという確証はないけどね。
さてと、上位耐性が追加されたはいいものの、俺らにはそれをすべて取るほどのポイントもない。まぁ、耐性は必要になったときでいいかもしれないな。そして…一番気になるのが新しく追加された形態だ…。

[所得可能形態]
《黒蝶》:200000

明らかにやばそうなやつがきました。
必要ポイント20万!?あとレベル200上げろというのか。そんなの無理に決まっているあろう。そしてどうにもこれらを見るに、レベルで増えるポイントを基軸に作られているわけではないということがわかるのだ。つまり、魔物喰ライによる追加ポイントで、ということなのだ。先の戦いで悪魔帝トゥルモティアスを食ったら3000ポイントももらえたということもあり、強敵であればあるほどそのポイントが増えるということが分かった。だから効率のいいポイント稼ぎ…いやまぁ、そんな都合のいい魔物なんかいないか。まぁ、それはのちのちでいいか。
「はぁ…はぁ…リミドさん終わりました。」
「よし、じゃあ今日は終わりにするか。」

風呂から上がり、俺はイミナの髪をタオルで拭く。
「なぁイミナ、次に取ろうと思ってるアシストカスタムなんだが…この特殊形態・分離ってのをとろうと思うんだ。」
「前に私が吸収解析したやつですよね。リミドさんの本体を分離させて設置できるんでしたっけ。」
「あぁ。分離体を生産するときに「俺」の量はその分離させた分だけ減ってしまうが、それでも十分便利な能力だ。」
「とりましょ、とりましょ!」

『特殊形態:分離を所得しました。』

俺の残りポイントは2659
さてと、さっそくお試しと行きましょうか。
「イミナ、念じてみてくれ。」
「わかりました。…!『分離』!」
にゅるる、ぽこ。
イミナの服から黒色の丸いものが現れ、ぽこっと音をたてて分離した。
ちょこんとしたそれは、まぎれもなく俺の分離体である。
「p…ぱ…!パパ!」
ちょこんと目が二つ。大きな口が一つ。これではまるでスライムだな。
そして開口一番がそれか。どうやら知能はそこまでないみたいだが…。
「ん?これ俺と感覚がリンクしているぞ。こいつの視点が俺と共有されて、今俺とイミナの姿が見える。」
「じゃあ、監視にもってこいなんですね。にしても…かわいいですねこの子。」
「ま、まぁ…。」
自分のクローンのようなものだから、少し気味悪いが。便利なことに間違いはない。まぁ、今後はこれの活用法をもっと考えるか。



イミナが寝た後に、俺は分離体に教育を施していた。俺が親だ、とかこうやって体を伸ばすんだ、とか。夜のうちずっとだ。気味悪いとかいいながら、俺はなんだか愛着をもってしまった。


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