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wonderland へようこそ
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『Welcome to the wonderland!』
パンパンと手を叩く音。
『ようこそおいでくださいました。ここはwonderland………不思議の国です。』
燕尾服をまとった首から上がうさぎのその男は、その場から2歩3歩、下がったり近づいたりしながらスタッカートを刻むようにステップを踏む、それに合わせてステッキを踊らせる様はまるでピエロを見ているかのようだった。
『おや、私としたことが、ついうっかり自己紹介をするのを忘れておりました』
男はステップを止めると、脚を揃えて立ち止まった。カツンというタップシューズの音が耳に心地いい。
『私の名前はラプラスの魔、この世に存在する全ての物語の傍観者です』
ラプラスの魔と名乗るその男は腰を少し折りかがめると、自分の唇に《静かに》をする様に人差し指をあてがった。
『今日ここにお誘いしたのは理由がありましてねぇ…あの物語を見るには、まずはこの物語をご覧になられた方がよろしいかと』
何を考えているのか解らない。でも、確かに意志がある眼差しでこちらを見るラプラスの魔。こんなの、誰だって怖いと感じるだろう。少なくとも私はそう感じた。
『わかりませんか?少女と少年のお話の事ですよ』
今、笑った。表情は変わらずとも、何故かそう感じた。解らないモノを理解する事ほど怖いことは無いのでは無いだろうか。知らないのに知ってしまった。解らないのに解ってしまった。それだけで強烈な違和感と不安感に襲われた。
逃げたい。でもここがどこかもわからない。自分の身体の動かし方も、自分の存在も、逃げるという行為さえも解らない。まるで夢を見ているかのような、曖昧で、不安定で、気だるい。
『では、見てもらいましょうか、wonderlandの物語を』
パンパンと手を叩く音。
『ようこそおいでくださいました。ここはwonderland………不思議の国です。』
燕尾服をまとった首から上がうさぎのその男は、その場から2歩3歩、下がったり近づいたりしながらスタッカートを刻むようにステップを踏む、それに合わせてステッキを踊らせる様はまるでピエロを見ているかのようだった。
『おや、私としたことが、ついうっかり自己紹介をするのを忘れておりました』
男はステップを止めると、脚を揃えて立ち止まった。カツンというタップシューズの音が耳に心地いい。
『私の名前はラプラスの魔、この世に存在する全ての物語の傍観者です』
ラプラスの魔と名乗るその男は腰を少し折りかがめると、自分の唇に《静かに》をする様に人差し指をあてがった。
『今日ここにお誘いしたのは理由がありましてねぇ…あの物語を見るには、まずはこの物語をご覧になられた方がよろしいかと』
何を考えているのか解らない。でも、確かに意志がある眼差しでこちらを見るラプラスの魔。こんなの、誰だって怖いと感じるだろう。少なくとも私はそう感じた。
『わかりませんか?少女と少年のお話の事ですよ』
今、笑った。表情は変わらずとも、何故かそう感じた。解らないモノを理解する事ほど怖いことは無いのでは無いだろうか。知らないのに知ってしまった。解らないのに解ってしまった。それだけで強烈な違和感と不安感に襲われた。
逃げたい。でもここがどこかもわからない。自分の身体の動かし方も、自分の存在も、逃げるという行為さえも解らない。まるで夢を見ているかのような、曖昧で、不安定で、気だるい。
『では、見てもらいましょうか、wonderlandの物語を』
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