僕が可愛いって本当ですか?

さよ

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本編

はじめてなんです 1

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 卒業まであと一年。その一年を耐えることができなかった。
 ぽっちゃりと言えば可愛く聞こえるかもしれない。横に広がった小さくはない体に、睨んでいるように見える細いつり目。
 他にもいくつかの要素が重なり、よく酷いことを言われた。引っ込み思案な性格もあり、いじるにはちょうど良い人間だったのかもしれない。

 誰にも相談などできず、幸多こうたは部屋へ引きこもるようになった。

 何もやる気が起きない。夜になり、動きたくはないがせめてお風呂だけでもと服を脱いで、下着に手をかけたときだった。

「え?」

 目の前には洗濯機があったはず。床は石じゃなくて……ああ、脱いだ服を入れたカゴもなくなっている!?
 混乱したまま顔を上げてみるが記憶にない物ばかり。とはいえ、視界に入るのは小さな棚だけで殺風景な部屋だった。
 瞬きをした瞬間に一体何があったのか……。

 ギッ、と小さな音に振り返ると、ベッドに腰掛けた男が幸多を見つめていた。
 酔っているのか、頬も赤くなんだかフワフワした様子で首をかしげる。

「可愛い……君の名前を聞いても良い?」

 髪は明るめで……黄金色かな? 毛先がうねっていて顎よりも少し長い。垂れ目で色気のあるお兄さんだ。すごく整った顔をしている。
 幸多は見られているのが恥ずかしくなり、彼から目をそらした。

 そらした先で本やランプのようなものが浮いているのが見える。
 手品? ……ベッドがあるし寝室のはずだ。わざわざそんなことをするだろうか?

「俺はヒュー、君は?」
「あ…………僕は、幸多」

 顔の整ったヒューに微笑まれ、幸多は固まった。そんなことはお構いなしに、ニコニコとしながら立ち上がり幸多に近づく。
 きっとこれは夢だ、とヒューは思った。

 そろそろ食糧が尽きると、久しぶりに依頼を受けた。魔力を持つと知られている者は人族の国ではまともに仕事もできないが、魔族の住む国では力さえあればそれなりの仕事はある。

(人族だけの国なんて、見てくれが最悪というだけで門前払いされることもあった。……この子には魔力はなさそうなのに、驚いているだけのような……?)

 魔力を持つ者は皆魔族と呼ばれる。決めたのは“人間”だ。
 少し力を使える者でさえ魔族なんて言われて、ヒューは同じ姿形なのに違いがよくわからないな、と常々思っている。

(あー……俺好みの子が目の前にいる。あり得ない。醜い俺を見ても逃げないなんて……それに、突然現れたよね? 魔法を使った感じもなかったし……俺、いつの間に眠ったんだろう)

 頭はクラクラするが、今まで頑張ってきたヒューに良い夢を見せてくれているのだ。今日の依頼はヘマしたわけだが。

 花の魔物から、娼館で使われる媚薬の素材を採取すること。数回受けているが、状態異常を食らったのは今回が初めてだ。
 数時間程度で消えるはずだが、興奮状態で勃ったままおさまらない。つらい。
 この状態で花の近くにいると触手に捕まってしまう。素材は集まったし、ここにいる魔物は移動しない。すぐにでも逃げてしまおう……と、ヒューは自宅に転移したのだった。

 …………そんなことを考えている場合じゃない。

「……っ」

 ヒューは急いで幸多に近寄ると、左手で肩をつかみ右手を棚へ向けて二回揺らす。すると置いてあった瓶が浮き、フタが外れるとヒューの近くで停止した。
 中に入っている一センチ程のピンクの玉を一つつまむと、幸多の唇に軽く押しつけた。
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