僕が可愛いって本当ですか?

さよ

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本編

遠いところへ 2

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「っ――――!」

 荷馬車のような物が見え、その中の堅い床に突き飛ばされる。檻になっていたのか扉が閉まり、柵の間から見えていた鍵をかけられガシャリと音がした。そこに幸多以外は誰もいない。
 檻の上から布で覆われ、入り口からわずかに光が漏れている。

 フードを深くかぶり顔も見えていないのになぜ攫われたのか……。もし体型だけでこんなことになるのなら、本当に一歩も外を歩けないじゃないか。
 ため息をついた幸多は、ヒューに伝えるために動き出した。

「貰っておいて良かった……」

 首に提げている紐を引っ張り出す。先には薄水色のつるりとした石がついていた。

 以前、一度だけ庭に出たいと言ったことがあった。そのとき「これだけは肌身離さず持っていて」と渡された物がある。自分がいないときに何かあれば必ず使うように、とヒューは言った。

 三センチほどの細長い石。真ん中あたりに加工を施してくびれを作り、何やらブツブツと呟きながら魔法をかけていた。
 力を加えれば石が折れてヒューに通知が行くらしい。折ることができない状態であれば、幸多以外が触れば割れるようになっている。

「……ん?」

 ふと、花のような甘い香りが強くなったのに気づいた。幸多の頭がぐらりと傾く。

「これだけは、使っておかないと」

 瞼が重くなる。急いでパキッと石を折って、幸多の体はドサリと転がった。

◇ ◇ ◇

 ヒューは全ての内容を確認し、記入を終えたら無事に仮のカードは発行された。カードを手に持ち外へ向かうと、幸多の姿がどこにもない。

「幸多っ! いったいどこへ……」

 歩き出してすぐ、付けているピアスから音が聞こえた。
 上を見上げると、石の割れた場所に光が浮いているのが見える。それを確認しつつ転移で移動していく。

「っ……見つけた!」

 荷馬車は走っているため離れてしまっていたが、一本道のためそれほど苦労はしなかった。
 人数は減らされているのか二人しかいない。他の者を攫ってくるのにいないだけか、それとも二人だけなのか……。
 ヒューは怒りにまかせて魔法を操り、御者と仲間らしき男を吹き飛ばした。腕が折れようが足がねじれようが知ったことか。

 布をめくり鍵を壊して幸多の姿を確認するが、眠っているだけで傷は見当たらない。

「ああ、良かった……」

 攻撃を受けた者達はうめいていて死んではいないようだが、しばらく動けないだろう。
 幸多を抱きしめ歩き出したヒューは、再びハルーファスへと向かったのだった。

 宿に着いて一日。高い宿を取ったため広めの内装になっていて、いろいろと揃えられた品物が置かれているが使われた痕跡はない。

「幸多」

 眠り続ける幸多の姿がベッドにあった。

「離れたくないけれど……少し待っていて」

 二日、三日と幸多を眠りから目覚めさせる方法を探す。魔族の中でも人に近い者に聞いたが、人間を診たことのない者ばかりで完璧に回復できるかはわからないと言われた。

 どうしたら良いのかとフラフラ歩くヒューの肩に、手が置かれた。
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