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本編
あなたが描くもの 2
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暖かいどころか暑くなってしばらく。夜は相変わらずどちらかと過ごし、疲れ果てて眠る日も少なくない。今日は動けない日で、ヒューの足の間に挟まれ抱っこ状態で過ごしていた。
子どもが帰ってくるのを待ちながら過ごす穏やかな日々に、変化が訪れる。
「え!?」
「何者だ……?」
ガラスの割れるような音が屋敷に響いた。何事かと焦るが幸多は立ち上がれず、ヒューだけが「確認してくる」と部屋から出ようとしたとき――
「……こう、た?」
扉がバキッと歪んだかと思うと、無理矢理外され倒れていった。この屋敷には攻撃を防ぐ魔法をかけたはずだ。それが今は破壊され何もない状態になっている。
「ここには魔王がいるんじゃなかったのか?」
「ま、魔王? ……あれ、始!?」
入ってきた人物をまじまじ見ると、見たことのある顔だった。幸多は目を見開いて幼馴染みを見る。始も困惑して立ち止まり、幸多を凝視していた。
黒髪は染めていて、くすんだ金髪。身長は幸多よりも伸びているが、薄茶色の大きな目と童顔は変わっていない。
「……幸多も、この世界に召喚されたのか? 俺がどれだけ捜したと……」
「僕がこの世界に飛ばされた原因はわからないんだ。始は違ったの?」
「俺は一年前にウェセターって国に喚ばれた。魔王を倒したらもとの世界に帰してやるって言われてな」
「……幸多? 知り合いなのか? ……誰かは知らないが、話すならとりあえず座ろう」
ヒューはまだ警戒したままだが、話を聞く気はあるらしい。
座る前に「壊したところは直しておく」と始はパパッと魔法を使っていた。
「え、何で魔法使えてるの? 僕は全く使えないよ?」
「さあ? 召喚するときに何かしら能力が付くように組み込んだんだろ。この世界で生まれてなきゃ付加できるのかもな」
きれいに直った扉を眺めて座った後、始は話し出した。
急に光に包まれ召喚されたこと。召喚した男が何やら良からぬことを考えていたので、帰ることだけを目的に旅に出たこと。
魔王が現れたらしいという噂は本当にあったので、確かめるためにこの屋敷に来たこと。やってきたら強大な魔力を持つ者がいたので魔王だと思い屋敷に入ったこと。
「元々魔法なんて使えなかった人間が読めもしない魔法書を探すより、まずは魔王を倒して帰れるか試そうと思ったんだ。ありがたいことに能力はかなり底上げされて、ある程度戦えたから。勝てそうになかったり、もし帰れなくても、他に帰る方法を探せば良い」
腕組みをして淡々と話す。ヒューに攻撃しなかったのはなぜかと幸多は聞いた。
「あー、ゲームみたいに自分の能力が見られるんだよ。こっちの世界の人には見えないみたいだな。実際に会ってステータス確認したら、魔王なんてどこにも書いてなかったし。……それよりも気になることがある。幸多の夫ってなんだ」
「ええっと、その、僕達は結婚しているから……だから……」
「幸多と俺は夫夫だ」
「はあ!?」
最初は冷静に聞こうと頑張っていたが、信じられないよねぇ、とヘラヘラ笑う幸多に始は逆ギレした。
子どもが帰ってくるのを待ちながら過ごす穏やかな日々に、変化が訪れる。
「え!?」
「何者だ……?」
ガラスの割れるような音が屋敷に響いた。何事かと焦るが幸多は立ち上がれず、ヒューだけが「確認してくる」と部屋から出ようとしたとき――
「……こう、た?」
扉がバキッと歪んだかと思うと、無理矢理外され倒れていった。この屋敷には攻撃を防ぐ魔法をかけたはずだ。それが今は破壊され何もない状態になっている。
「ここには魔王がいるんじゃなかったのか?」
「ま、魔王? ……あれ、始!?」
入ってきた人物をまじまじ見ると、見たことのある顔だった。幸多は目を見開いて幼馴染みを見る。始も困惑して立ち止まり、幸多を凝視していた。
黒髪は染めていて、くすんだ金髪。身長は幸多よりも伸びているが、薄茶色の大きな目と童顔は変わっていない。
「……幸多も、この世界に召喚されたのか? 俺がどれだけ捜したと……」
「僕がこの世界に飛ばされた原因はわからないんだ。始は違ったの?」
「俺は一年前にウェセターって国に喚ばれた。魔王を倒したらもとの世界に帰してやるって言われてな」
「……幸多? 知り合いなのか? ……誰かは知らないが、話すならとりあえず座ろう」
ヒューはまだ警戒したままだが、話を聞く気はあるらしい。
座る前に「壊したところは直しておく」と始はパパッと魔法を使っていた。
「え、何で魔法使えてるの? 僕は全く使えないよ?」
「さあ? 召喚するときに何かしら能力が付くように組み込んだんだろ。この世界で生まれてなきゃ付加できるのかもな」
きれいに直った扉を眺めて座った後、始は話し出した。
急に光に包まれ召喚されたこと。召喚した男が何やら良からぬことを考えていたので、帰ることだけを目的に旅に出たこと。
魔王が現れたらしいという噂は本当にあったので、確かめるためにこの屋敷に来たこと。やってきたら強大な魔力を持つ者がいたので魔王だと思い屋敷に入ったこと。
「元々魔法なんて使えなかった人間が読めもしない魔法書を探すより、まずは魔王を倒して帰れるか試そうと思ったんだ。ありがたいことに能力はかなり底上げされて、ある程度戦えたから。勝てそうになかったり、もし帰れなくても、他に帰る方法を探せば良い」
腕組みをして淡々と話す。ヒューに攻撃しなかったのはなぜかと幸多は聞いた。
「あー、ゲームみたいに自分の能力が見られるんだよ。こっちの世界の人には見えないみたいだな。実際に会ってステータス確認したら、魔王なんてどこにも書いてなかったし。……それよりも気になることがある。幸多の夫ってなんだ」
「ええっと、その、僕達は結婚しているから……だから……」
「幸多と俺は夫夫だ」
「はあ!?」
最初は冷静に聞こうと頑張っていたが、信じられないよねぇ、とヘラヘラ笑う幸多に始は逆ギレした。
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