異世界スクワッド

倫敦 がなず

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第一章

24 姫様

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 電動バギーピェーピェーが、白い馬車に追いつく。
 まだ数騎の敵と、姫を守る白い騎士が戦闘を続けていたが、もうすでに大勢は決まっている。
 残りの敵を、レーザー小銃ゴークで打ち抜き、全滅させた。

 森の中の道を、そのまま走ったところに、開けた広場のような場所があった。
 そこで白い馬車が、速度を落として停車した。
 周りを警戒するためだろう、その馬車の周りをぐるりと取り囲むように、輪になって騎士が止まる。

 なんとなく他を寄せ付けない雰囲気があったので、少し離れた所に電動バギーピェーピェーは、停止する。

 勇一が確認の為に、胸のマイクに話しかける。
「タッタ 周りに敵はいるか」
『グループAと思われる人の反応はありません。別途いくつかの人の反応が森の中に存在しておりますが、無関係だと思われます』

 よし、敵は居ないな。

 勇一が安心していると、白い鎧を着た騎士が一人、馬を下りて近づいてきた。

「誰か知らぬが、助かったよ」

 兜を取る。燃えるような真紅の髪と、更に紅いルビーのような瞳が印象的な女性だった。
 かなり背が高く、体格も厳つくて、兜を取るまでは女性だとは思っていなかった。

「まずは、私から名乗らせてもらうよ。
 アルバ姫の護衛を勤める『穢れなきバラホワイトローズ親衛隊』隊長、ダフネ・ド・コスターだ。
 そちらのお名前をお聞かせいただけるかな」

勇一も電動バギーピェーピェーを降りて、立ち上がって名乗る。

勇一ゆういち五百旗頭いおきべです」
「ディケーネ・ファン・バルシュコールだ」
「ニエルエンス・スィンケルです」

「ふむ。それにしても不思議な乗り物と武器だな。
 一体、君達は何者なんだ?」

 何者と聞かれて勇一は、どう答えていいか迷う。
 そう言えば、俺っていったい何者なんだ?
 口ごもってしまっている勇一に代わって、ディケーネが答えてくれた。

「我々は、こちらのイオキベをリーダーとして活動している、ダーヴァの街の冒険者パーティーです。
 姫様達が襲われていると知り、義をもって戦いに参加させて頂きました」

 そう言ってから、服の袖を肘までめくり上げ、両腕を差し出して見せる。
 
 あ! あのジェスチャーって、確か『武器をかくしていません。怪しい者ではありません』っていう意思表示だよな。
 横を見ると、ニエスも同じように、両手を差し出している。
 勇一も、あわてて真似をして、服の袖をめくりあげ、両手を差し出す。

 その両手を見つめて納得したようにダフネは頷く。

 「ふむ。まずは、助力頂いた事、感謝する」

 そこへ別の騎士が奔り寄ってきて、ダフネの耳元で何か囁く。
 大きく頷いた後に、こちらを向く。

「姫様達が、皆に直接にお礼を述べたいとご希望だ。
 ただ、姫様達と面会する場合は、たとえどんな略式の面会と言えど、武装の携帯は認められない。
 大変申し訳ないが、皆、武装を解除してから、馬車の近くに来て頂けないだろうか」

 まあ、そりゃそうだ。
 VIPに面会するのに、武器の解除は必須だよな。

 レーザー小銃ゴークレーザー拳銃レイニー電動バギーピェーピェーの座席に置いていく。
 ディケーネとニエスは、腰につけていた剣も外す。

 馬車に近づこうとすると、更に止められて、ボディチェックまで行うと言われた。

「それにしても、すごい念入りだな」
「そりゃそうだろう。
 さっきまでの襲撃がおとりで、実は私達が本命の刺客だと言う可能性だって、無きにしもあらずだからな」

 ああ、なるほど。
 確かにそうだな。思わず納得してしまう。

 どうやら、この姫様の護衛をする親衛隊には女性しかいないらしい。勇一のボディチェックを行う騎士も、やっぱり女性だった。
 金髪の美女が、体の隅々まで、手で触り念入りにチェックされる。
 ちょっと、こそばゆいな。
 そんな事を思っていたら、いきなり股間をしっかりと触られた。
 形を確認するかのように、かなりしっかりと握ってくる。
 ちょっと、あれだ! 美女にそんな所をしっかり触られると、その、あれだ。
 さらに後ろへと手が回り、お尻の穴にも軽く触わられた時などは、思わず、ウヒョゥ! と変な声が出てしまった。

 たぶん、こーゆー場所って、武器が隠しやすいから、重点的にチェックしてるんだろうな。
 いや、それにしても、美女に触られると変な気分になってくるよ。

 チラっと横を見ると、ディケーネとニエスも、別の女性騎士に体中をまさぐられている。
 胸とか、本物かどうかしっかり揉みしだいて確かめているし、当然、両足の間も、ばっちりしっかりじっくりと触られている。
 ディケーネは無表情に、さらるがままに体をまさぐられる。
 ニエスは、くすぐったがりなのか、触れるたびに、アヒュン、アヒュンとへんな声を出して、悶えている。

 なかなか、その、なんというか、エロティックな良い眺めだった。

「では、こちらへ」

 ボディチェックが終わりダフネに先導されて、馬車に近づいていく。

「お姫様に会えるなんて、なんかすっごいですねー 楽しみです」
 ニエスが浮き浮きして、不思議なステップで歩いている。

 ちょっと前から気になってたんだけど、いったい何なんだろう、あのステップ。
 謎だ。

 馬車の手前で、ダフネが立ち止まり、こちらに向けて、手を上げる。
 その動きに反応して、ディケーネが、さっと地面に跪く。
 勇一とニエスもあわてて真似をして、地面に跪いた。

 さてさて、この世界のお姫様に対面だ。
 そういえば、姫様って姉妹で二人いるんだよな。
 二人とも、美人なのかな?
 ひょっとして、どちらかのお姫様が助けに現れた俺に一目惚れとかしちゃって、こっから、お姫様と平民の俺との間の禁じられたラブストーリーとかが始まっちゃったりして。
 あ、姉妹で、俺に惚れてしまって、二人で俺を取りあってしまうとか! 

 勇一の妄想が、とめどなく広がっていく。

 そして、馬車のドアが開かれようとする。
 その瞬間。
 胸のマイクから『タツタ』の声が響いた。

『周辺監視範囲内の反応に新たな動きがあります。状況から推測し危険な可能性が『高』と判断しました。詳細をご報告いたしますでの、対応をご検討してください』


 いきなり勇一の胸元から響いた、理解不能な言葉に、周りの騎士たちが殺気だつ。
 騎士全員が一斉に剣をぬいて、こちらに向けて構えてきた。

「ちょ、タッタ。タイミング悪すぎる。できればもうちょっと後にしてくれ」

 勇一の言葉を無視して、タツタは報告を続ける。

『左前方十時の方向、距離980mの地点に、人の反応が77、馬と思われる哺乳類の反応が12。
 爬虫類系のトカゲに近いと思われる大型生物反応に接触しました。
 瞬間的に大量の熱反応も発生しております。
 至急に対応をご検討ください』

 人の数が77? 爬虫類系トカゲに近いと思われる大型生物反応?
 その数と、爬虫類にピンとくる。
 間違いない。
 ドラゴン退治のレイドパーティー達と、対象のドラゴンだ。

「近くにドラゴンがいるぞ!」

 思わず勇一が叫ぶ。
 なに? 勇一達に剣を向けていた騎士達が、すぐさま回りを警戒する。

 一人の騎士が叫んだ。
「今、私の探知魔法でも反応がありました。
 間違いありません。この近くでドラゴンが、冒険者と思わしき集団と戦闘を行っています」

 胸のマイクから、更にタッタの報告が続く。
『反応に変化がありました。
 人と思われる反応の数が急速に減少。68まで減少しました。
 更に減少。68、67、66まで減少しました。更に減少、65、64
 至急に対応をご検討ください。更に減少63、62、61、60、59、58
 至急に対応をご検討ください。更に減少57、56、55

 うわ、しかも、レイドパーティーの連中、無茶苦茶ボロボロ一方的にやられてないか?

「すまないが、我々は姫様の安全を優先させて頂く。
 今すぐ、ここから安全だと思われ地点まで移動する。君達はどうする」

 そう叫びながら、ダフネ隊長は、もうすでに馬に飛び乗っている。
 周りの騎士も馬に飛び乗り、今すぐにでも出発しそうだ。

 勇一は、別にドラゴンを倒したい訳ではない。
 正直に言ってしまって、レイドパーティーの連中も気に食わない。

『至急に対応をご検討ください。更に減少54、53、52、51、50
 至急に対応をご検討ください。更に減少40、49、48、47』
 タッタの報告の声が響く。その声にイドウコウヘイ准佐の最後のメッセージが重なる。
『君と、君の周りで困難な状況にあるすべての人の為に、この機器達を使ってくれ』

 レイドパーティーの連中も気に食わない。
 気に食わないけど……

 だからと言って、見捨てることはできないよな。
「俺達は、冒険者達を救いに行きます」

「ユーイチ・イオキベ殿、そなたの勇気には、敬意を表す。
 その名と、その勇気ある行動は、私が責任もって後世に言い伝えると約束しよう」

 ん? んんん?
 その言い方って、たぶん俺が死ぬと思ってないか?

 『目の前のこの男は義をもって、ドラゴンに挑み、そして勇敢に散るだろう』
 ダフネは、実際に、そう思っていた。
 何十人と集まって準備したレイドパーティーが敗れるのだ。
 今更、三人くらい援軍が入った所で、どうなるものでもない。
 それ程に、ドラゴンは強い。 

「それでは、"アルドニュス"の神のご加護があらんことを!」
 
 そう言い残し、隊長ダフネを先頭に、姫様をのせた馬車とそれを守る騎士達は行ってしまった。

 さて俺達も行くかな。
 けっきょく姫様達には会えなかったな。
 姫様達にほっていかれて、助けにいくのが、あの街の冒険者たちだもんな。
 テンション落ちる。

 でも、そんな事も言っていられない。

「いくぜ! ちくしょう、最悪のダブルヘッダーだぜ!」
 勇一が、自分自身に気合をいれる為にも、叫んでみる。

「御主人様、ダブルヘッダーってなんですか?」

 不意に、ニエスに聞かれて、戸惑ってしまう。
 えっと、たしか、一日二試合行うって意味でいいんだよな。
 正確にはどんな意味なんだ?
 それを、どうやってニエスに説明すればいいんだ?

「いいだよ。細けえ事は気にするな。とにかく 行くぜ!」
「ふむ」
「はい、行きましょー!」

電動バギーピェーピェーに飛び乗って、次の戦場へ向かって、疾走する。

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