異世界スクワッド

倫敦 がなず

文字の大きさ
27 / 30
第一章

26 死体

しおりを挟む
 光の筋レーザーの射出が止まり、森の中は、また元の暗さを取り戻す。
 異様な静寂だけが、森を包み込んでいた。

 少しの間をおいて、モヒカンの男がハッと我にかえった。

 ま、まさかぁ、ライトドラゴンが倒れたぁああ?!
 助かったのかぁあ? おれわぁたすかったのかぁ?

 でも、でもぉお、なぁんでぇ?
 なあぁああんで 新人くぅぅうんがぁああ?

 ドラゴンの死体の向こう側には確かに へんな魔法具レーザーライフルをもった、新人くんユーイチが立っていた。
 モヒカンの男は我が目を疑う。見間違いかと、眼をゴシゴシとこすって何度も見直す。
 だが、何度も見直してもそこに立っているのは、新人くんユーイチだった。
 
 勇一は、モヒカンの男には目もくれず、ライトドラゴンの死体にのみ意識を集中して、少しづつ近づいていく

「ユーイチ、用心しろよ」
 勇一の後ろから、ディケーネもついている。
 二人共レーザー小銃ライフルを構え、銃口をライトドラゴンに向けたままで、徐々に近づいていった。

 ライトドラゴンの死体にある十字の傷口からは、レーザーに肉を焼かれた事による煙が漂っている。
 そして、そのライトドラゴンの死体の周辺、暗い森の中にズタズタになった無数の冒険者達の死体が転がっていた。

「う……これは…、えぐいな」
 ムワっと、生臭い血の匂いと熱が押し寄せてくる。

 勇一が、ライトドラゴンに近づいていき、改めて完全に死亡しているのを確認する。
 その間に、ディケーネは冒険者達の死体が転がっている場所へズカズカと入っていく。
 辺りに散乱した死体を見て回る。

「息のある者がいたら回復薬ポーションで助けようとおもったんだが、……駄目だな。
 生き残ってるのは、あの男だけのようだ」

 ディケーネが指さした方向に、勇一も目を向ける。

 あ、こいつかー。

 勇一は、そこで初めて唯一の生き残りが、例の"モヒカンの男"だと気がついた。
 眼があったモヒカンの男はニヤリと笑う。

「新人くぅぅんが相手じゃぁああ、ケエツウのあなぁは、やれねえなぁああ」

 なに訳のわからんこと言ってるんだ、こいつ?
 勇一が、顔をゆがめる。
 それでも、たった一人だけでも、助ける事ができたことに少しだけ安堵する。

 イトウコウヘイ准佐の言葉が頭によぎる。
 『君と、君の周りで困難な状況にあるすべての人の為に、この機器達を使ってくれ』
 もちろん勇一は、イトウコウヘイ准佐の詳しい事情はしらない。
 だが、その機器を勇一は、受け継いだ。
 "強い力を持つものは、強い義務をもつ。"
 タツタを始めとする機器の数々を受け継いだ、勇一には、その意思をも継ぐ義務があった。

 今回の事で勇一は、『困っている人がいれば、助ける』という当たり前の事をするべきなのだ ・・・・・・・・・・・・・・と、改めて強く自覚していた。

「ユーイチ、とりあえずその男は元気そうなので、ほっておくことにしよう。
 それよりも、このライトドラゴンの死体を持って帰る準備をしよう」

「ドラゴンの死体? もって帰るってことは、やっぱりドラゴンって武器の材料とかになったりするのか?」
「もちろんだ」

 なるほど。やっぱりそうなのか。
 まあ、ドラゴンから取れる材料で作る武器が強いってのは、ゲームでも定番だもんな。
 勇一は、なんとかライトドラゴンの死体を持って帰る方法に思いをめぐらす。

「ユーイチあそこに、空の馬車がある。
 元々このレイドパーティーがライトドラゴンを退治したら、死体を載せてもって帰る予定だった荷車だろう。アレを借りてしまおう」

 見ると、屋根の無い形で荷物を載せる為だけの荷馬車が放り出してある。
 馬は、逃げてしまったのか、どこにもいない。

「とりあえず荷馬車を借りてしまって、街で返すとするか」

 通れる道がなかった関係で、近くに止めておいていた電動バギーピェーピェーのところまで一旦戻る。

「御主人様。 ドラゴンはどうなりました?」
 電動バギーピェーピェーで待っていたニエスが心配ぎみに聞いてきた。

 『やったぜ』と言う意味合いで、親指をグッと突き立ててみた。
 すると
 「ぎゃっ! 御主人様の変態!!! こんな時になにやってるんですかー!!」と、本気でなじられた。

 失敗した!?
 どうやらこっちの世界では、親指を立てるジェスチャーは、違う意味があるらしい!
 ディケーネがいつものように、横から『なにやってるんだ お前は』的な目でみていた。

 それから、草や木を隙間を掻き分けて電動バギーピェーピェーをドラゴンの死体の近くまで持ってくる。

 ライトドラゴンの死体に牽引用のワイヤーを絡ませ、一旦電動バギーピェーピェーにで結ぶ。
 無理矢理引きずるようにして、なんとか空馬車にのせる。
 その後、その荷馬車を電動バギーピェーピェーに牽引用のワイヤーで結びつけ、引っ張って走れるようにした。

「よし、行くか」
「ちょほいぃと、まちなぁぁあああ 新人くぅぅん」

 まだ、いたのか、この男。
 声をかけてきたモヒカンの男に対して、勇一は思わず、顔をゆがめる。

「なんだよ。なんか用か?」
「そぉおんな 嫌そうなぁあ 顔すんなよぉお。ともだちぃだろう ともだちぃいい」

「お前と、いつ友達になったんだよ」
「つめたぁああい、つめたぁぁああいねえ。新人くぅぅん。おれはぁ、助けてくれてぇええ、本当にぃい 感謝してるんだぜぇえええ。まじでぇ まじでぇ。まじだってぇええ。だっからさぁあああ、一回だけぇえええ、俺がしぬまでぇにぃいい 一回だけええええ。

 モヒカンの男の目が、少しだけ鋭く光る。
「一回だけ 命がけでお前を助けてやるぜ。絶対にこの恩はかえすぜぇえええええ」

 それから、ポケットから魔物除けの薬品の瓶を取り出して、目の前にぶらぶらさせる。
「俺はちょぃいと、これをやってからぁあ 街に帰るとするぜえええ。そうそう、俺がもってるだけじゃぁああ、足りないからさあああ、持ってたらちょぃとわけてくれよぉぉおおお」

 ディケーネが腰につけたバッグから魔物除けの薬品が入った瓶を取り出す。それをモヒカンの男に向けて放り投げた。
「使え」
「ありがとぉよぉおおおお、じゃああねぇええ」

 モヒカンの男は、その薬瓶をキャッチすると、死体のある方向へと歩いていった。

「あの魔物除けの薬、なんに使うんだ?」
「死体に振りかけておくんだ。
 そうすれば死体が魔物に食われないからな。後から死体を回収する場合はそうしておくんだ。
 今回、死体の数が多いから、改めて死体回収パーティーでも組むつもりなんだろうな。
 さあ、私達は行くとしよう」

 ディケーネに言われ、勇一達は出発した。


 森の中で、モヒカンの男は、死体の山に近づく。
 いくつかの死体を踏み越えて進み、一つの死体の前で立ち止まった。

「おいおい、キルスティィイイイン。
 おめええ、もうすぐぅうう例のこいびとぉぉおおに、結婚申し込むとかぁああ、言ってたじゃねえかあ。死いんじまってぇえええ、どうすんだよぉおおお」

 殆どの冒険者仲間達が、モヒカンの男の実力は認めながらも非道で金に汚いやりかたについていけず、距離をとっていった。
 そんな中、情にあつい性格で、そのうえ同じ地方出身だった彼だけは、ずっと仲良くがよかった。
 その男、キルスティンは、モヒカンの男にとって、唯一、友人といえる男だった。

「まあ、死んじまったもんわぁああ しゃぁあねえ。
 勇敢な戦士だけがぁあ死んだぁら行けるっていうう"アルドニュスの館"でぇええ、酒でも飲んでまっててくれぇええ」

 モヒカンの男は膝まづき、熱心なイルース教信者だけが行う、複雑で手間のかかる正式なやり方に則って、死者に祈りを捧げた。

 祈りが終わる。
 すると、おもむろに死体の懐に手を突っ込んだ。
 死体の懐から、何枚かの金貨を取り出す。

「お、あったあった。けっこうもってるじゃねええかぁあああ」
 その行為は禁じられている、"死体あさり"だった。
 本来ならば、死体を回収する場合、死体の持ち物はすべて遺族に渡される。
 ましてパーティ仲間の死体をあさるなど、冒険者として"外道中の外道"決して許される行為ではない。
 だが、モヒカンの男はそんな事はもちろん気にしない。
 剣などを盗むと所有者が判明してばれる事もあるが、金だけ盗めば、ばれる事もない。

 モヒカンの男は立ち上がって、周りをぐるりと見渡す。

「こんだけぇぇええ 死体があったらぁあああ、下手したらぁあドラゴンたいじぃの分け前よりぃいい、もうかるんじゃねええかぁあ?」

 げへへへっへへ、と 下卑た笑いをあげる。

「やっぱりぃいい おれぇわあ 運がいいぜぇええええええ!!
 ひゃっほほぅうううううう!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...