RYANGA-リャンガ・【俺の性格上それは無理!!】

錬寧想 リンロ

文字の大きさ
23 / 26
第一章:リャンガとして

第十九話:ロコイサ王救出作戦当日・どうしたんだトゥーチョ

しおりを挟む
ロコイサ王救出作戦当日─────

 昨日のトゥーチョの話を聞いた上でも正直、今日に対する緊張感は俺にはあまりない。ただ寝て起きて、昨夜あんなに張り切っていたトゥーチョのあの姿を見た時には少し驚いた……。

 まぁ少しすれば復活しているだろうと一旦身支度を済まし終えてきてリンロが再び戻ると、トゥーチョは未だ変わらず地面に顔を張り付け伏せ続けたままだった。

 (え)
 
 呆然ぼうぜんと立ち尽くすリンロに見向きもせずトゥーチョが話しかける。
 
 「チョッ、チョハッ、実に良い快晴ッ……すっ、素晴らしい逃走日和とうそうびよりィ~~……だっチョなぁ~~ッ! リンロぉ~~ッ!」

 そう言われたリンロは一瞬黙り空を見上げた。

 (うん……確かに快晴なことは快晴なんだよな……)

 「でもそっちに空はないぞっトゥーチョ。昨日あんだけ張り切ってたのに一体どうしたっていうんだ?」

 「チョハッ? そっちに空はないだチョ? じゃーっ今見てるこのオレ様の目の前に広がっている景色は一体何だって言うんだっチョかァ~~ッ!! チョアァッ!? まさかオレ様の脳が天変地異てんぺんちいを引き起こしてるとでも思ってバカにしてるっチョ……あれっ?  空がいつの間にか茶色くなっているっチョっ! 何でだっチョかッ!? どこに行ったっチョかっオレ様の空はァ~っ! オレ様の快晴はどこだッチョかァ~~っ!!」

 グリグリグリグリッ!!
 
 そしてトゥーチョは【オレ様の快晴】を探すべく、突如として顔面で地面を堀始めた。

 (ヤバい……何でかは分からんがトゥーチョがとてもヤバい状態だっ……どうにかしねえとっ)
 
 そう思い立ってすぐリンロは少し地面に埋もれ始めていたトゥーチョの頭を急いで引っ張り出すと、トゥーチョが落ち着きを取り戻せるまでトゥーチョに空が見えるよう仰向けに抱え上げてひたすら高い高いを繰り返した。

 バッ  バッッ   バッッッ    バッッッッ      バッッッッッ!       バッハァァンッッ!!!
 
 時間が経つに連れて高い高いの高さは増していき。
 そして高く投げ上げられたトゥーチョは同じ高さで飛んで来たはがねのような筋肉と硬い羽を持った鳥【ムキヤジンチョウ】の大群に激突されまくりフルボッコ横転おうてんの最中、ようやく我に返った。

 「チョッッたぁッッッ!!!! 何だッチョかお前らッ!! 痛ッ!! 痛ッ!! 痛ッ!! チョやめッ──チョベッ!!」
 
 ムキヤジン鳥のトンネルを抜け、トゥーチョが別の異変に気が付く。

 「てかッ!! 何か熱いチョっなッ! アッツッッ!! 何でこんなに身体が熱くなっているんだっチョかーーッ!!? チョぐッ!! しかもメチャクチョまぶぶしすぎて目が開けられないッチョしぃ~~ッ!!」

 トゥーチョが直射日光から逃れようと下に目を向けると、下で待ち受けていたのはリンロの軽蔑けいべつの眼差しだった。
 
 「チョぼふぁッッ!! こんなはさちは嫌だっチョォぉ~~ッ!!」

 (おっ、戻った)

 ぱしッ

 リンロの腕に納まったトゥーチョは泡を吹き気を失っていた。

 「…………」

 それから少ししてトゥーチョの意識が戻り、二人の会話は通じ合うようになっていた。

 「さっきの拷問ごうもんをオレ様は一体どれくらい受けてたっチョか?」

 「んーー、多分1時間くらい」

 「…………そうだっチョか…………チョアァァァァ~~~~ッ!!時間差で拷問アレルギーのアレルギー反応で全身からガジリンキャベチョテ出てきたァァァァ~~~~ッッ!!!!」
 ※【ガジリンキャベチョテ】は野菜の一種です。

 「出てないから落ち着くんだ」

 そんなこんなの会話の中で俺は、トゥーチョからああなっていた理由を聞き出してみたのだが。
 
 (どうやら昨夜見たロコイサ王救出シミュレーションの夢の中でモチャオーチさん(あの老夫)にことごとく返り討ちにい、自信を完全に失い心が折れてしまっていたらしい………)
 
 「でも、夢の事なんだからそこまで気にしなくてもいいんじゃないかっ?」

 「……正夢になったらどうするんだっチョか?」

 「まぁ~そうなったらそうなったでそん時は、そん時の俺が多分なんとかしようとすると思うから問題ないと思う………はず」

 「【何だっチョかっその不安げなカバーはっ! はっきり断言してオレ様を安心させてくれッチョ!】と本来なら突っ込んでやりたいところだっチョが、正夢になった時点で真っ先にリンロがやられていなくなるっチョから特別に今の発言は慈悲じひを込めて聞かなかったことにしてやるっチョ」

 (どんな夢見てくれてんだ……。それじゃあ俺にはもう、正夢論に対しての発言の余地は無い)

 「でもロコイサ王を助けるんなら避けては通れない道だろっ? 正夢にならないことにかけて行くしかないんじゃないかっ?」

 「…………そのとおりだっチョけど……。でもリンロっ……オレ様っ……自信を取り戻さないと不安すぎて、足からオレ様の動きを止めるアイツがっ……不動のエースが出てきてしまうんだっチョ!!」

 その言葉にリンロが無意識にトゥーチョの足元へと視線を落とすと───。

 (何かいるっ!!)

 トゥーチョの足元には全身ダンボールでできた子どものラクガキ顔の中年肥満体のおじさんダンボールが、コアラのようにしがみついていた。胸元辺りには【不動のエース】と書かれている。
 
 「…………分かった……。
 じゃあ……意気込み対決なんてのはどうだろうか?」

 「なんだっチョか……それ」

 「…………ルールはただ、これからロコイサ王を助けに行くにあたっての意気込みを語るだけ。どっちがロコイサ王に対してより強い忠誠心ちゅうせいしんを持っているかの真剣勝負だ」

 「分かったっチョ。それで受けてたつっチョ」

 「よしっ、んじゃあ……あっ。ごめんトゥーチョっ、俺から先に言わせてもらってもいいか?」

 「好きにしてくれっチョ」

 「こ……この度俺は~ロコイサ王を~何となく助けたいな~なんて思ったりもして~それで~できる限りの力を尽くして~ロコイサ王を助けられればいいのですが~~とりあえず頑張ろうかな~とは思っていま~すっ! 以上だっ」

 (どうだっ!これぞ必要最低限の意気込みっ! 只でさえロコイサ王への忠誠心が強いトゥーチョなんだ、これなら絶対に下回れないだろうっ!!)

 「チョキぃーッ!! 何だっチョかッ……その御無礼極まりないクチョみたいな気の抜けた生ぬるい意気込みはッ!……」

 (よしっ! もうこの時点で大丈夫そうだなっ!)

 「それじゃあオレ様ッ言わせてもらうっチョが……。オレ様はあの時ッ!ロコイサ王様に一生の忠誠を誓ったんだっチョッ!!」

 (おぉっ!)

 「でもダブルホワイトコットンキャンディーが恐いッチョォォ~~ッ!!」

 (え?)

 「ロコイサ王様と共に過ごさせて頂く中お近くでお見せ頂くその神々こうごうしいお姿に、日々憧れと尊敬の気持ちを積み重ねてきたんだッチョ!!」

 (おぉっ)

 「でもやっぱりダブルホワイトコットンキャンディーが恐いッチョォォ~~ッ!!」
 
 (何か葛藤かっとうしてるなっ!)
 
 その後トゥーチョのプラス思考とマイナス思考の押収おうしゅうは続き。

 ++++----+++----++-++++-+----───────

 この時トゥーチョの中では、ロコイサ王への忠誠の言葉を抱く度に昨夜の夢が彼の自信をかき消していた。

 「思い出せっ! トゥーチョっ! お前にとってロコイサ王は誰よりも偉大な存在なんだろっ!?」

 リンロがトゥーチョを勝たせたい一心に必死に訴え掛ける。

 「うぅ~~~~っチョうだっチョけどォォォォ~~~~ッ!!─────────」

 激しい葛藤の末、ゲッソリと疲れ果てた表情のトゥーチョの口から溢れ出たのはプラマイゼロの意気込みだった……。

 「…………頑張るっチョ」
 
 (あぶねぇっ!! いやっ!! 微妙だなっ!!!)

 …………仕方ない……もうこれしかない。

 「あの、トゥーチョ。さっき言い忘れていたんだけど、これで勝った方には副賞として朝御飯ちょっと増やすために【敗者を食糧調達に行かせる権】が与えられるんだが……。そういえばこの勝負には審判がいないし正直今の勝負どっちが勝ったのかも分からないんだよなぁ………」

 「ッ!!!」 

 トゥーチョは副賞に対して強く反応を見せて、直ぐに口を開いた。

 「チョほんッ。ならッ……しょうがないっチョからオレ様が特別に審判になってやるっチョ。
 チョれじゃあ今から責任を持って厳正且げんせいか公正こうせいなジャッジを下させてもらうっチョ!
 今の勝負っ!!────オレ様の圧勝だッチョッ!!!! さぁっ!! たった今オレ様の対戦相手から副賞の食糧しょくりょう調達男ちょうたつおとこへと成り下がったリンロよっ!! オレ様を満腹にするため出動するッチョォォーーッ!!」

 (………うん。そうなってほしかった訳だけど………やっぱそうなるんだよなっ……)

 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...