<第一部 完結> お前がなれるわけがない!

mokono

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第1部 第4話

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妹メイの気持ちが聞けたことで、体にあった疲れが少し消えた。



まあ、後は、夜にもう一度、奴らを叩けば、大丈夫だろう!



母は、メイの感覚では現実の辛さからの逃避の可能性がある。



夢見ているところは可哀そうだが、夢は夢だと早くに解らせるのがいいだろう。



祖母は、馬鹿親父をやり込めてから、誤りを教えることにしよう。



この年で、息子の馬鹿を思い知るのは気の毒だが、ここは致し方ない。気苦労から心臓が止まらない様に配慮はいるだろうな。と、家族の心を戻す為の分析をしながら、アッシュは職場へ向かう。



色々と、策を練りながら、我が家の平穏維持を目指す。



ただ、この時アッシュは、父以外の大きな爆弾であるロビンを義理という立場で家族の枠から外していたのだった。



それが、後から恐ろしいことになるとは、彼にはこの時思いもしなかったのである。



アッシュの職場はこのトウの町に、たった一つある役場だ。



公的な職場であるので、学校を優秀な成績で卒業しないと入れないところだ。



アッシュは、とても成績は良かった。ただ、人気者とかでは無かったので、人望はあまりなかった。



おまけに、父の離職や転職は町では有名で子の優秀さも搔き消されてしまったくらいだ。



そんな訳で、本来なら、成績や人望、家庭環境も加味されての採用ではあるので、アッシュはそれを考えると、不合格の域が確定であった。



しかし、彼には運があった。



ダメ元で受けた採用試験の問題で、受けた皆が解けなかった問題をアッシュだけが解いていたのだ。



その問題は皮肉なもので、家督相続に関する手続についてで、父が度々起こす離職に腹を立て、数年前に亡くなった祖父が、父への家督相続を変更すると言い出したことがあり、家族で大きな騒動になった。



父が馬鹿だったことで、自分はその騒動の渦中に放り込まれ、よくわからない手続きや法律を聞かされた。



それが、まさかの問題になって出るとは・・作った側も多分誰も答えが出ないことを見越した意地悪問題だったはずが、必要な書類などきちんと書き上げられて、解答欄を埋められていたので、アッシュを不採用に出来る要因がなかった。



そう、まさかの父ウォルトのお陰での採用であった。いや、ちょっと違うかな・・・



まあ、そんな、難関を制して入ったアッシュは、エリートである。



しかし、職場での仕事はエリートとはかけ離れたところ・・



今日もいそいそと仕事を熟していると、上司が目くばせしてくる。



目を逸らして、上司の訴えから逃げようかと思っていたが、それよりも先に声がかかる。



「よう、兄ちゃん」



自分を呼ぶ、じじい・・いや、来訪者の声がする。



「こんにちは。今日はどのようなことで来られたのでしょうか」



奴は、モンスター3と、役場の裏で呼ばれる南通りの西奥に住むジェン爺さんだ。



「この間も言ったがな、うちの前にだな、また若い連中が集まってよ。騒ぐんだよ。こっちは昼寝も出来なくってよ」



この件から始まって、息子の愚痴や死んだ奥さんの話に続いていく。そして、最後に言うのが



「でさぁ、うちの息子も馬鹿なりにも色々とやってるんだけどよ。税金がよ、払うのが今月もキツイみていでよ。兄ちゃんよ、何とかしてくれよ」



と来る。常套句である。



「事情はわかりますが、こちらも規則にのってでして・・・」



こちらも負けじと、いつものように抗戦するが、相手もなかなか引かない、強者だ。



「おめえらはよ、俺らが治める税金ってので食ってるんだろ?俺らも苦しいんだからよ。おめえもそれに応じたらいいんでないか?」



じじいは、これ見よがしに、役場に勤める職員を締め上げにかかる。



『クソ!よく聞け!じじい、税金はな、役場の職員の給料にもなるが、それよりもだ!国に大半が持っていかれ、後は、トウの町の為に使われるんだよ!役人の給料なんて少しだ!』



とは言えず、ここは顔面に営業スマイルを貼り付けて、口調は柔らかくして、皆様から頂いた税たるものの行く末を教える。



これ、これまで何十回した話だ?と思いながらも、繰り返し話す。



相手が疲れて、ため息を零したら、今日の私の仕事は片付いたな!と、アッシュは勝利を確信した。



「すみませんね。お力に慣れずに、でも、ご理解頂いて良かったです。今度は、ご子息様と税金納めに来て下さいね」



と、ジェン爺さんを見送った。



疲れた・・・勝利はしたが、疲労感は半端ない。今日は、昨日のやり残した仕事が家にもあるというのに。



アッシュは項垂れながら、自席に着いた。



そんなアッシュに、「オイ!」と言いながら、先輩のケントが書類を渡してくる。



とある報告書の作成であった。



手渡した先輩は、「終わったら帰ってもいいぞ!」と告げながら、鼻歌まじりで離れていく。



受け取った書類は、かなりめんどくさいものだった。



縁故採用らしい彼は、時折、こうやって自分の手に余る仕事を回してくるのだ。



『まったく、仕事も出来ない様な奴が、役場にいるなんて!ジェン爺さんじゃないが、給料について考えて欲しいもんだ!』



と、心で愚痴りながら仕事に掛かる。



『今日は早く帰って、家のゴタゴタを片付けたいんだよ!』



朝の少しあった機嫌の良さも、仕事終わりには綺麗に消えていた。



これで、帰れる。今日は昨日よりも遅い時間に家路に着くのだった。
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