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第1部 第16話
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トウの町では、「平民議員」制度が齎されてからは、とある一族の当主が代々「平民議員」として君臨していた。
そもそも、この「平民議員」が選出される区域は、元々は、ピスタ国の王族が管理する集落が主とされている。
この制度が導入される前は、王族が領地管理としていたのだが、目に見えた利益産物もない土地の管理に、王族たちは仕事を削られることに負担を感じていた。
ならば、代わりとなる者を置く必要があるのだが、二束三文的な小さな土地を欲しがる貴族はおらず、いや、この王族管理下の領地の中には、元々は、貴族に与えられていた領地もあったが、その領地での価値が見いだせず王家に返上したものもあった訳で、要するに、不良債権的な土地が占めていた。
そんな領地をどう分割して、尚、規定通りの税を徴収するかと言う問題から、その一つの対策として、国から地方に公人を配置して運営を図ることを考えたのだった。
その大きな役割の拠点を役場において、地方の、貧しい土地の管理を王家から放す事に成功したのだ。
ただ、それだけでは、役場に全てを任せてしまい、国が投げ捨てて、見捨てた事がわかってしまう。
それを恐れた王家は「平民議員」たるものを設立し、平民によって、その集落の統率力を持たせ、平民の力量を高めさせ、それぞれがその土地を上手く運営するように仕向けたのだ。
しかし、多くの平民は、王家のそんな企みがあるとは知らず、「平民議員」たるものから、この国での自由や平等を見出そうとしたのだった。
だが、いざ、この「平民議員」が世に放たれてからは、平民の中で序列を強いるまでになり、自由や平等とはかけ離れていったのである。
このトウでもそれは当たり前のようになっていった。
そんな「平民議員」の選出について、初めて、国が告知したのは、ほんの一昔前だ。
トウにも初めて「平民議員」が誕生した。彼の名は、ハッサンといい、この集落では、代々酪農を営み、トウの中では大きな事業を起こしている家の当主であった。
その為、このハッサンは、国の中央である王都の様子にも詳しく、町の情報通としても名を馳せていた。
そんな物知りである彼を、集落の皆は頼りにしていた。
それが、彼ハッサンを「平民議員」として、このトウから選出する者として決めた理由だった。
ほとんどの集落の者たちの相違で、混乱も何もなく、ハッサンが「平民議員」として決まったのだ。
皆の期待は大きく、ハッサンもそれに応えようと、当初は張り切っていた。
だが、王都での「平民議員」は立場がなく、また、学もない平民には議会の内容は難しく、思っていたような状況になれない、いや、近づきさえも出来ない日々だった。
中央での活躍、それに伴い、故郷の活性化・・・そんなことを思い描いていたが、それは夢でしかなかった。
だが、集落の者に本当のことを言えるはずもなく、ハッサンは、王都での華やかな生活や中央にて、「平民議員」としての大いなる活躍談などのウソを、真実として伝えていくのであった。
その姿に、トウの町の者は、ますます彼に期待し頼るようになっていった。
ハッサンが話す言葉に、誰もが耳を貸し、また、手を貸していく。
ハッサンが伝える世界が真実であり、それが、このトウの為になっている。ハッサンに頼るのが一番だと・・
そんな事が月日が経つに連れ、色濃くなり、トウの町にも浸透していったのだ。
最近まで、「平民議員」として、このトウから出ていたのは、初代「平民議員」のハッサンから、三代後としたハッサンのひ孫であるウラスである。
このウラス、生まれた時から、将来は「平民議員」になる者として、家族は元より親戚一同からも期待され、甘やかされて育ってきた男で、頭の中身はさほど大したこともないというのに、小さな頃から偉そうで、権力を振りかざす傲慢ぷりであったので、人々は困っていたのだった。
だが、そんな彼であったのに、トウの人々は、彼にも「平民議員」の地位を与えてしまったのである。
そして、この横暴ウラスが「平民議員」になってからは、これまで以上に「平民議員」の立場が高く扱われることになっていった。
それは、彼がこのトウで「絶対的な権力者」となる為に、色々なところに、彼の息のかかる者が配置されていったからだ。
町の中心である役場や駐屯騎士団と。
こうなると、トウの人たちは、ウラスに逆らえない。ウラスがトウの最高権力者となっていった。
トウでは、ウラスたち一族の傲慢ぷりが顕著となっていった。
ウラスの奥方や娘などが欲しいと強請れば、宝石や衣服が店から奪われる。
公共事業があれば、ウラスが出張り、賄賂を事業者に要求する。
役場の規律が邪魔になれば、自分よりに改変させる。
町の食堂や酒場では無銭がまかり通る。
学校では、自分の子たちに有利な成績を与えさせる。
病院の医療費も支払わない。
と、やりたい放題であった。
「それが、今のトウの「平民議員」の実体さ・・」
所長が、ため息と共に、ラドが尋ねてきたことについて、自分が知りえる情報として話をした。
所長の話に、問い掛けたラドはただ黙って聞いていた。顔色一つ変えずに。
一方、アッシュは、沈痛な面持ちである。
自分が生まれ育つ地が、これほどまでに腐りきっていたとは・・・
昨日のエディから見せられた報告書にもあったことだが、あまりにも酷い内容である。
これでは、どこぞの支配国家ではないか・・・
「まあ、こんなとこに勤めていながら、私もやつらには敵わず、情けない状態さ。だから、正直なとこ、アッシュの「平民議員」の立候補には驚きよりも、喜んじまった。ただ、年配者として、心配もあったんだ」
頭を少し下げながら、所長が小さく呟く。
「ウラスらは、手段を択ばないからな・・」
その言葉にアッシュは拳をぎゅっと握った。
ウラス・・彼のことは、正直、あまり知らないが、この話で、彼らに対する気持ちに、これまで以上の怖さを感じてしまった。
だけど、だけど・・
「もう、立候補しましたから、やるしかないですね」
アッシュの代わりに、ラドが爽やな口調で言葉を口にした。
「所長殿が味方なのは大きいです」
ラドの美しい顔が、益々、美しく輝いたように見えた。
「アッシュさん、そろそろ、他の方にもご挨拶しに行きませんか?ドブネズミも気になりますし」
ラドが所長室の扉に手を掛けて、退席を促してきた。
アッシュが暫し、唖然とする中、今回も、アッシュには考える時間を与えず、ラドが次の行動へ進めていくのだった。
そもそも、この「平民議員」が選出される区域は、元々は、ピスタ国の王族が管理する集落が主とされている。
この制度が導入される前は、王族が領地管理としていたのだが、目に見えた利益産物もない土地の管理に、王族たちは仕事を削られることに負担を感じていた。
ならば、代わりとなる者を置く必要があるのだが、二束三文的な小さな土地を欲しがる貴族はおらず、いや、この王族管理下の領地の中には、元々は、貴族に与えられていた領地もあったが、その領地での価値が見いだせず王家に返上したものもあった訳で、要するに、不良債権的な土地が占めていた。
そんな領地をどう分割して、尚、規定通りの税を徴収するかと言う問題から、その一つの対策として、国から地方に公人を配置して運営を図ることを考えたのだった。
その大きな役割の拠点を役場において、地方の、貧しい土地の管理を王家から放す事に成功したのだ。
ただ、それだけでは、役場に全てを任せてしまい、国が投げ捨てて、見捨てた事がわかってしまう。
それを恐れた王家は「平民議員」たるものを設立し、平民によって、その集落の統率力を持たせ、平民の力量を高めさせ、それぞれがその土地を上手く運営するように仕向けたのだ。
しかし、多くの平民は、王家のそんな企みがあるとは知らず、「平民議員」たるものから、この国での自由や平等を見出そうとしたのだった。
だが、いざ、この「平民議員」が世に放たれてからは、平民の中で序列を強いるまでになり、自由や平等とはかけ離れていったのである。
このトウでもそれは当たり前のようになっていった。
そんな「平民議員」の選出について、初めて、国が告知したのは、ほんの一昔前だ。
トウにも初めて「平民議員」が誕生した。彼の名は、ハッサンといい、この集落では、代々酪農を営み、トウの中では大きな事業を起こしている家の当主であった。
その為、このハッサンは、国の中央である王都の様子にも詳しく、町の情報通としても名を馳せていた。
そんな物知りである彼を、集落の皆は頼りにしていた。
それが、彼ハッサンを「平民議員」として、このトウから選出する者として決めた理由だった。
ほとんどの集落の者たちの相違で、混乱も何もなく、ハッサンが「平民議員」として決まったのだ。
皆の期待は大きく、ハッサンもそれに応えようと、当初は張り切っていた。
だが、王都での「平民議員」は立場がなく、また、学もない平民には議会の内容は難しく、思っていたような状況になれない、いや、近づきさえも出来ない日々だった。
中央での活躍、それに伴い、故郷の活性化・・・そんなことを思い描いていたが、それは夢でしかなかった。
だが、集落の者に本当のことを言えるはずもなく、ハッサンは、王都での華やかな生活や中央にて、「平民議員」としての大いなる活躍談などのウソを、真実として伝えていくのであった。
その姿に、トウの町の者は、ますます彼に期待し頼るようになっていった。
ハッサンが話す言葉に、誰もが耳を貸し、また、手を貸していく。
ハッサンが伝える世界が真実であり、それが、このトウの為になっている。ハッサンに頼るのが一番だと・・
そんな事が月日が経つに連れ、色濃くなり、トウの町にも浸透していったのだ。
最近まで、「平民議員」として、このトウから出ていたのは、初代「平民議員」のハッサンから、三代後としたハッサンのひ孫であるウラスである。
このウラス、生まれた時から、将来は「平民議員」になる者として、家族は元より親戚一同からも期待され、甘やかされて育ってきた男で、頭の中身はさほど大したこともないというのに、小さな頃から偉そうで、権力を振りかざす傲慢ぷりであったので、人々は困っていたのだった。
だが、そんな彼であったのに、トウの人々は、彼にも「平民議員」の地位を与えてしまったのである。
そして、この横暴ウラスが「平民議員」になってからは、これまで以上に「平民議員」の立場が高く扱われることになっていった。
それは、彼がこのトウで「絶対的な権力者」となる為に、色々なところに、彼の息のかかる者が配置されていったからだ。
町の中心である役場や駐屯騎士団と。
こうなると、トウの人たちは、ウラスに逆らえない。ウラスがトウの最高権力者となっていった。
トウでは、ウラスたち一族の傲慢ぷりが顕著となっていった。
ウラスの奥方や娘などが欲しいと強請れば、宝石や衣服が店から奪われる。
公共事業があれば、ウラスが出張り、賄賂を事業者に要求する。
役場の規律が邪魔になれば、自分よりに改変させる。
町の食堂や酒場では無銭がまかり通る。
学校では、自分の子たちに有利な成績を与えさせる。
病院の医療費も支払わない。
と、やりたい放題であった。
「それが、今のトウの「平民議員」の実体さ・・」
所長が、ため息と共に、ラドが尋ねてきたことについて、自分が知りえる情報として話をした。
所長の話に、問い掛けたラドはただ黙って聞いていた。顔色一つ変えずに。
一方、アッシュは、沈痛な面持ちである。
自分が生まれ育つ地が、これほどまでに腐りきっていたとは・・・
昨日のエディから見せられた報告書にもあったことだが、あまりにも酷い内容である。
これでは、どこぞの支配国家ではないか・・・
「まあ、こんなとこに勤めていながら、私もやつらには敵わず、情けない状態さ。だから、正直なとこ、アッシュの「平民議員」の立候補には驚きよりも、喜んじまった。ただ、年配者として、心配もあったんだ」
頭を少し下げながら、所長が小さく呟く。
「ウラスらは、手段を択ばないからな・・」
その言葉にアッシュは拳をぎゅっと握った。
ウラス・・彼のことは、正直、あまり知らないが、この話で、彼らに対する気持ちに、これまで以上の怖さを感じてしまった。
だけど、だけど・・
「もう、立候補しましたから、やるしかないですね」
アッシュの代わりに、ラドが爽やな口調で言葉を口にした。
「所長殿が味方なのは大きいです」
ラドの美しい顔が、益々、美しく輝いたように見えた。
「アッシュさん、そろそろ、他の方にもご挨拶しに行きませんか?ドブネズミも気になりますし」
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