<第一部 完結> お前がなれるわけがない!

mokono

文字の大きさ
27 / 78

第1部 第27話

しおりを挟む
ウラスの妻と娘らをカフェテリアの席から見送ってから、ロビンは足早に掛けて、アッシュの事務所に転がり込んだ。



その姿に、アッシュとラドは顔を見合わせてから、ロビンに尋ねた。



すると、ロビンが先程のウラスの妻と娘たちとの会話を聞かせてくれたのだった。



アッシュは、目を見開き、顔を青ざめさせていく。



どうやら、アッシュはあの姉妹のことを知っているようで、「なんで、私が婚姻しないといけないんだ!」と、顔面を青くさせて叫んでいた。



一方、ラドはいつもの美しい貌を歪めて・・・大笑いをしだした。



「えぇ、凄い方ですね。いやぁ、個人的に友だちになりたいなぁ。いや、本当に素敵な姉妹ですね。特に、姉がいい!」



ラドから出る言葉に、ロビンもアッシュも驚いて、顔を見合わせる。



「えっと、ラドさん?何故に笑うのでしょうか?」



「そうだよ!僕は吐きそうになったんだよ!頭がおかしいでしょ!あの三人!」



二人にあれこれ言われるが、ラドは、まだ笑っている。



怖いぐらいに笑顔を浮かべて・・・



その状況に、ロビンが首を掲げる。



『あれ?こいつ、何かおかしいぞ・・・』



ラドがいつになく表情にだして笑う仕草に、ロビンは怪しく思う。



「いやぁ、個人的にいい仕事してくれてるなぁと思いまして」



その言葉に、アッシュは眉間に大きく皺を刻み、ラドが今発言したことで、ますます解らなくなってきていた。



しかし、ロビンは自分の勘に確信を得る。



『やっぱり、こいつ、何かやってるな?これは、ちょっと探った方が良いかもな?』



「ううん?ラド、その良い仕事って何さ?何か別のこともしているわけなの?」



ロビンが、わざと顔に疑問を浮かべたようにしながら、問い掛けてみた。



しかし、ラドも、それに対して極上の笑みを零してみせるが、ロビンの問いには返そうとはしない。



その二人の姿によくわからないが、何故かアッシュは体に悪寒を感じた。



『なんだ、急に寒気がし出したような・・・まさか、ウラスの娘たちのせいか?』



なんて、体に受けた不快さは、あらぬ解釈となってしまい、アッシュにはラドとロビンの腹の探り合いが見えなかった。



「ところでさ、お義兄さんたちはどうだったんですか?」



変な雰囲気であった室内の様子を吹き消すかのように、ロビンが今日のアッシュたちの行動について問い掛けてきた。



それに、アッシュが丁寧に応えていった。



まずは、父ウォルトが勤める職場でのことを話した。



「そうだったんですか・・」



ロビンも話の内容に、視線を落として見せる。



「まあ、ラドさんのお陰で、まだ黒にはなってはないんだけどもね・・」



アッシュがチラリとラドを見るが、先程と違い、ラドは平然としている。



「その後は、気持ちを上げる為に、ケーシーたちに反発している感じのところを中心に何箇所か回った。皆、口を揃えて激励してくれた」



アッシュは、エディから渡された「重要」書類にあった名前の一覧を、ロビンにも見せて、今日、訪問した箇所を指差して教える。



「結構、回られたんですね?」



アッシュが差し示す名前を、ロビンは数えながらそう告げた。



「まあ、中にはどちらとも言えない人も居て、私が来たから、愛想を向けた人もいてそうだがな・・」



アッシュは肩をすぼめて、そう話した。



「まあ、なかなか難しいですよね?人の裏なんて見る事は・・」



そう言いながら、今度は、ロビンがラドを見つめる。



ラドはその視線に対して薄く笑い「そうですよ。人は何を考えているかなんて、わかりませんからね」と囁く。



アッシュは、ここでまた、嫌な空気を感じてしまい、ラドとロビンに「今日は疲れたから帰ろうか!」と提案してみた。



すると、ロビンがその言葉にすぐに飛びついてくれたので、アッシュは少し嫌な空気を消せて、安堵した。



そして、その勢いのまま、執務机から立ち上がろうとした時、ラドが声を掛けてきたのだ。



「あぁそうそう、明日なんですが、個人的にお休みを頂きたくて」



ラドがにこやかに告げるので、アッシュはつられて「どうぞ!」と頷きかけたが、それをロビンが制したのである。



「何言ってるの!こんな大事な時に、休みなんかある訳ないでしょう!」



ロビンがいつになく突っかかるので、アッシュも驚いて、暫し、呆然としていたが。



「まあでも、何か用があるのかもしれないじゃないか?」



アッシュはラドの事を思い、ロビンを諭すが、ロビンはいつになく頑なに拒む。



「ダメですよ!選挙なんですよ。負けたら、どうするんですか!ウラスの娘と婚姻になっても良いんですか!」



ロビンが目を吊り上げて凄みだす。



「こ・・婚姻は嫌だけど、でも、休みがないと体も壊れるじゃないか・・」



アッシュも正論で返すが、なかなかに引かないロビンの様子に、とうとうラドが休みの許可を引き下げたのだった。



「わかりました。今は我慢の時ですね。いいでしょう。選挙に全力投球しますよ」



ラドが美しく微笑む。その姿に、アッシュは申し訳なさを覚え、ひたすら謝る。



そんなアッシュとラドの姿を見ながら、ロビンは訝しげにラドを睨む。



しかし、ラドはその視線も流してみせる。



『こいつ、何を企んでるんだ?』



ロビンはラドをじーっと見ながら、「ラド、わかってくれて良かったよ」といつもの笑顔を浮かべた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...