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第1部 第32話
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ロビンとケーシーがお互いに驚きながら、暫し見つめ合う。
そんな二人の空気を破ったのは、ケーシーの父ウラスであった。
「これはこれは、ハロルド商会の弟さんではないかな?今日は、また、訪問先を間違えられたのかな?」
ウラスが、小バカにしたような言い回しでロビンとメイに言葉を掛ける。
すると、彼らの周りにいた者がくすくすと声を上げて笑い出した。
「やだわ。ハロルド商会のご子息なのに社交の仕方も知らないのかしら」
「少し、頭がゆるい弟がいるとは聞いていたが、まさかこれ程とはな」
「敵陣に正々堂々と正面からくるなんて、余程、余裕があるらしい。負けた時の顔を見るのが、今から楽しみだ!」
笑いと共に囁かれる言葉は、どれもこれもロビン達をバカにしている。
そんな言葉に、メイは居た堪れない気持ちになり、涙で潤む目をロビンに向ける。
しかし、ロビンは、そんなメイにもにこやかな笑顔を見せてから、握っていた手を更に深く握って見せた。
そして、目線をウラスに向けてから、懐に仕舞っていた白い封筒を抜き取った。
「いいえ、今日は、正式なご招待を受けたので参りました」
ロビンは、ケーシーとウラスに見せる様に、封筒に施された封印を高らかに掲げる。
「これ、お宅のですよね?宛名は確かに兄宛てでしたが、兄は立場上伺う訳にいかないと申してまして。でも、せっかくのお心遣いを無下にするのも失礼だと思いまして、僕達夫婦が、代理で参ったんですよ」
にこりと口元には笑みを浮かべるが、ロビンの目は笑ってはいない。
再び、ケーシーは驚く、そして、今度はウラスも大きく目を見開き、驚きを現している。
『あれー?何?、この反応・・えっと、この招待状は一体、誰がくれたのさ?』
ケーシー親子の戸惑う様子に、周りの者までもがざわつき出す。
ここに来て、メイも異変に気付いたようで、ロビンの上着の袖を引いてきた。
パッと扇子を広げて、メイがロビンに小さく耳打つ。
「ど・・どういう事?」
メイが顔に疑問符を張り巡らして問うてくるが、ロビンにも答えが見えないので、首を振る。
互いに状況がつかめないロビン達とケーシー親子。
双方、思考を巡らせていると、そんな状況を吹き飛ばす声が急に響いてきた。
「どういうことよぅ!あなたぁ、エディじゃないわよねぇ!」
その声は、ケーシーとウラスの直ぐ傍から上がった。
ケーシーとウラスは声の方へ振り替えると、ウラスの妻と娘たちがいた。
その顔は、赤くなり目が吊り上がっている。
「なっ、何なんだ!」
ウラスがそういうと、妹の方がロビンを睨みながら、引き続き声を上げる。
「今日はぁ、お姉さまとぉ、エディがぁ、出会う為のパーティーですのよぉ。なのにぃ、エディじゃないのが来てるなんてぇ!」
妹は、母と姉にも同調を求めるように、二人を見やる。
「えぇ、そうですわ!エディとのきっかけ作りの為に、わざわざ招待して差し上げたのに。その男が潰したわ!」
そう姉が吐き捨てながら、指先をビシッとロビンに向けてきた。
『はあっ?、この招待状の犯人はこいつらだったのか!』
指を差されているのに、呆れて言葉も何も返せないでいるロビンに、今度は、母親も愚痴り出す。
「本当に、多少の瑕疵はあるけれど、この際は目を瞑り、婚姻を考えてもと思える男だったから、招待をしてやったのにねぇ」
三人の女が次々に、自分達の考えた行動を告げていく。
それに比例して、傍にいたウラスが顔を真っ赤にしだしている。
「お前たち!、今日のパーティーがどういうものだか、わかっているのか!」
とうとう、ウラスの大きな声が会場内にこだました。
だが、それにも堪えることなく、ウラスの妻は、今度は夫であるウラスに噛みついたのだった。
「わかっていますわ!でもね、このままでは、娘が婚期を逃してしまうのよ!ちょうど、エディの離縁の話を耳にしたから、善は急げと思い行動にしたのよ。それに、婚姻が整えば、ハロルド商会がうちにつくことになる。そうなれば、全てが丸く収まるでしょう!」
ウラス婦人は、ふてぶてしいほどに満面の笑みを作って、夫と息子を見つめてきた。
それに対して、ケーシー親子は押し黙ってしまった。
だが、周りのざわめきはこれまで以上に大きくなる。
当然である。ハロルド商会の会頭夫妻が離縁したとは、噂には色々と聞いてはいたが、これまでは、あくまでも噂の域でしかなかったので、皆、驚きを隠せない。
「まあ!とうとう離縁されたのね?」
「そう言えば、先日、奥方を乗せた馬車が王都へ向かったとも聞いたな?」
「えぇっ!会頭は独り身になられたの?」
「離縁の理由は、あれか?父親の願望であった貴族との縁欲しさか!」
人々の口から、ハロルド商会の会頭夫婦の話が見る見るうちに広まっていく。
『これって、不味くないか・・・』
ずっと、ウラスとその妻たちの成り行きを見ていたロビンにも焦りが募る。
どうにかしないと、明日には、このトウの町全体に兄夫婦が離縁したとあらぬ噂が確実に広がる。
ここで、自分が抗議しないと、真実味を帯びてしまって大変なことになる。
ロビンは頭の中で無い知恵を絞りだそうとするが、良い案が浮かばない。困った・・
頭を捻り、思案しているロビン。
「ちょっと!、何、勝手な話をしているのよ!」
そんなロビンの横から、珍しくメイが声を荒げて、ウラスとその妻たちを睨みつけていた。
「さっきから、何を言っているのよ!いつ、うちのお義兄さんたち夫婦が離縁したっていうのよ!今も、あの二人はラブラブよ!」
フン!と、鼻息を荒くし口元も歪めたメイは、いつもの可愛らしさが消えていた。
「いい加減なこと言っているんじゃないわよ!」
「め・・メイ?」
ロビンは、傍らにいるメイの姿に唖然としてしまう。
「勝手に、離縁とか婚姻とか口にして、どうかしているんじゃないの?」
メイは、先程まで扱いずらそうにしていた手元の扇子を、器用に小さく開いたり閉じたりしながら、目を細めてウラスたちを見据える。
その姿に、ロビンは声を掛けれないでいた。その為、大人しく、ただ、メイを見守る側にまわる事にしたのだった。
「な・・何よぉ!離縁の話はぁ、本当じゃないのぉ!エディの嫁はぁ、王都の実家へ帰らされたってぇ、聞いたわよぅ!」
メイによる急な攻撃に、呆然としていたケーシーたちだが、その攻撃に少し怯みそうになっていたところを、ケーシーの妹がやり返す。
「はあ?それが何よ。勘違いにも程があるわね。お義姉さんは実家に帰ったんじゃないわよ。あれはねぇ・・・」
ケーシーの妹の発言に対して、不敵にニヤリと笑いメイは扇子を大きく広げた。
「うちの兄が選挙後に、王都で「平民議員」として暮らす為の準備として、一足早く、お義姉さんが王都に行っただけよ」
メイはそう言って、扇子で仰ぎだした。
「ごめんなさいね。先の話をして、気を悪くしてしまったら?」
優雅に振る舞い、全然悪びれることなく、そんなことまで口にするメイ。
『えっと、これは、本当にメイなの?』
夫のロビンも驚く豹変ぶりである。
「ちょっと、何、そんなデマかましているのよ!仲がいいとか嘘よ!4年も婚姻関係にあって子もいないじゃないの!貴族の血筋しか持ってない、子もできない女はいらないと捨てられたくせに!」
今度は、ケーシーの姉が吠え出したが、メイは、再び、唇を歪めて、姉と対峙する。
「あなたねぇ、同じ女性として配慮の言葉もないの?」
メイは、先程の妹に向ける視線よりも、もっと冷たくてキツイ睨みを見せる。
「子が出来ない理由が女性側だけにあるとか、本気で思っているの?それに、お義兄さんたちはね、二人で敢えて決めて、今は仕事を優先としているのよ。さっきも言ったでしょう?あの二人は、本当にラブラブなんだからっ!」
可愛そうな者を見るような目線を最後にくれてやり、メイは、ここで、くるりと、夫ロビンに向き直る。
「ロビン、もう帰りましょうか?私たち、ご招待受けてなかったようだし、ねっ?」
にこりと、いつもの屈託の無い笑顔を振りまき、メイがロビンに縋りつく。
「あっ、あ、うん、そうだね?帰ろうか。双方の誤解も解けたようだし。義理も果したし、ねっ!」
ロビンもメイに釣られ、いつもの笑顔になる。
二人は周囲に向けて、綺麗な一礼を行い、パーティー会場をそそくさと抜けて出て行く。
その姿を多くの者が、呆気に取られてみていたのだった。
会場を出たロビンとメイは、無言で足だけを速めて、馬車の待機場へ急ぐ。
そして、実家、ハロルド商会が用意した馬車に乗り込んでから、漸く、互いがそこで口にする。
「ロビン、怖かったよー」
「メイ、君、凄いね!」
「「えっ?!」」
互いから出た言葉に暫し固まり、そして、次には緊張が解れたのか笑い出す。
「取り敢えず、終わったあー!」
兄エディからのミッションが終わり、二人はそれぞれ安堵したのだった。
そんな二人の空気を破ったのは、ケーシーの父ウラスであった。
「これはこれは、ハロルド商会の弟さんではないかな?今日は、また、訪問先を間違えられたのかな?」
ウラスが、小バカにしたような言い回しでロビンとメイに言葉を掛ける。
すると、彼らの周りにいた者がくすくすと声を上げて笑い出した。
「やだわ。ハロルド商会のご子息なのに社交の仕方も知らないのかしら」
「少し、頭がゆるい弟がいるとは聞いていたが、まさかこれ程とはな」
「敵陣に正々堂々と正面からくるなんて、余程、余裕があるらしい。負けた時の顔を見るのが、今から楽しみだ!」
笑いと共に囁かれる言葉は、どれもこれもロビン達をバカにしている。
そんな言葉に、メイは居た堪れない気持ちになり、涙で潤む目をロビンに向ける。
しかし、ロビンは、そんなメイにもにこやかな笑顔を見せてから、握っていた手を更に深く握って見せた。
そして、目線をウラスに向けてから、懐に仕舞っていた白い封筒を抜き取った。
「いいえ、今日は、正式なご招待を受けたので参りました」
ロビンは、ケーシーとウラスに見せる様に、封筒に施された封印を高らかに掲げる。
「これ、お宅のですよね?宛名は確かに兄宛てでしたが、兄は立場上伺う訳にいかないと申してまして。でも、せっかくのお心遣いを無下にするのも失礼だと思いまして、僕達夫婦が、代理で参ったんですよ」
にこりと口元には笑みを浮かべるが、ロビンの目は笑ってはいない。
再び、ケーシーは驚く、そして、今度はウラスも大きく目を見開き、驚きを現している。
『あれー?何?、この反応・・えっと、この招待状は一体、誰がくれたのさ?』
ケーシー親子の戸惑う様子に、周りの者までもがざわつき出す。
ここに来て、メイも異変に気付いたようで、ロビンの上着の袖を引いてきた。
パッと扇子を広げて、メイがロビンに小さく耳打つ。
「ど・・どういう事?」
メイが顔に疑問符を張り巡らして問うてくるが、ロビンにも答えが見えないので、首を振る。
互いに状況がつかめないロビン達とケーシー親子。
双方、思考を巡らせていると、そんな状況を吹き飛ばす声が急に響いてきた。
「どういうことよぅ!あなたぁ、エディじゃないわよねぇ!」
その声は、ケーシーとウラスの直ぐ傍から上がった。
ケーシーとウラスは声の方へ振り替えると、ウラスの妻と娘たちがいた。
その顔は、赤くなり目が吊り上がっている。
「なっ、何なんだ!」
ウラスがそういうと、妹の方がロビンを睨みながら、引き続き声を上げる。
「今日はぁ、お姉さまとぉ、エディがぁ、出会う為のパーティーですのよぉ。なのにぃ、エディじゃないのが来てるなんてぇ!」
妹は、母と姉にも同調を求めるように、二人を見やる。
「えぇ、そうですわ!エディとのきっかけ作りの為に、わざわざ招待して差し上げたのに。その男が潰したわ!」
そう姉が吐き捨てながら、指先をビシッとロビンに向けてきた。
『はあっ?、この招待状の犯人はこいつらだったのか!』
指を差されているのに、呆れて言葉も何も返せないでいるロビンに、今度は、母親も愚痴り出す。
「本当に、多少の瑕疵はあるけれど、この際は目を瞑り、婚姻を考えてもと思える男だったから、招待をしてやったのにねぇ」
三人の女が次々に、自分達の考えた行動を告げていく。
それに比例して、傍にいたウラスが顔を真っ赤にしだしている。
「お前たち!、今日のパーティーがどういうものだか、わかっているのか!」
とうとう、ウラスの大きな声が会場内にこだました。
だが、それにも堪えることなく、ウラスの妻は、今度は夫であるウラスに噛みついたのだった。
「わかっていますわ!でもね、このままでは、娘が婚期を逃してしまうのよ!ちょうど、エディの離縁の話を耳にしたから、善は急げと思い行動にしたのよ。それに、婚姻が整えば、ハロルド商会がうちにつくことになる。そうなれば、全てが丸く収まるでしょう!」
ウラス婦人は、ふてぶてしいほどに満面の笑みを作って、夫と息子を見つめてきた。
それに対して、ケーシー親子は押し黙ってしまった。
だが、周りのざわめきはこれまで以上に大きくなる。
当然である。ハロルド商会の会頭夫妻が離縁したとは、噂には色々と聞いてはいたが、これまでは、あくまでも噂の域でしかなかったので、皆、驚きを隠せない。
「まあ!とうとう離縁されたのね?」
「そう言えば、先日、奥方を乗せた馬車が王都へ向かったとも聞いたな?」
「えぇっ!会頭は独り身になられたの?」
「離縁の理由は、あれか?父親の願望であった貴族との縁欲しさか!」
人々の口から、ハロルド商会の会頭夫婦の話が見る見るうちに広まっていく。
『これって、不味くないか・・・』
ずっと、ウラスとその妻たちの成り行きを見ていたロビンにも焦りが募る。
どうにかしないと、明日には、このトウの町全体に兄夫婦が離縁したとあらぬ噂が確実に広がる。
ここで、自分が抗議しないと、真実味を帯びてしまって大変なことになる。
ロビンは頭の中で無い知恵を絞りだそうとするが、良い案が浮かばない。困った・・
頭を捻り、思案しているロビン。
「ちょっと!、何、勝手な話をしているのよ!」
そんなロビンの横から、珍しくメイが声を荒げて、ウラスとその妻たちを睨みつけていた。
「さっきから、何を言っているのよ!いつ、うちのお義兄さんたち夫婦が離縁したっていうのよ!今も、あの二人はラブラブよ!」
フン!と、鼻息を荒くし口元も歪めたメイは、いつもの可愛らしさが消えていた。
「いい加減なこと言っているんじゃないわよ!」
「め・・メイ?」
ロビンは、傍らにいるメイの姿に唖然としてしまう。
「勝手に、離縁とか婚姻とか口にして、どうかしているんじゃないの?」
メイは、先程まで扱いずらそうにしていた手元の扇子を、器用に小さく開いたり閉じたりしながら、目を細めてウラスたちを見据える。
その姿に、ロビンは声を掛けれないでいた。その為、大人しく、ただ、メイを見守る側にまわる事にしたのだった。
「な・・何よぉ!離縁の話はぁ、本当じゃないのぉ!エディの嫁はぁ、王都の実家へ帰らされたってぇ、聞いたわよぅ!」
メイによる急な攻撃に、呆然としていたケーシーたちだが、その攻撃に少し怯みそうになっていたところを、ケーシーの妹がやり返す。
「はあ?それが何よ。勘違いにも程があるわね。お義姉さんは実家に帰ったんじゃないわよ。あれはねぇ・・・」
ケーシーの妹の発言に対して、不敵にニヤリと笑いメイは扇子を大きく広げた。
「うちの兄が選挙後に、王都で「平民議員」として暮らす為の準備として、一足早く、お義姉さんが王都に行っただけよ」
メイはそう言って、扇子で仰ぎだした。
「ごめんなさいね。先の話をして、気を悪くしてしまったら?」
優雅に振る舞い、全然悪びれることなく、そんなことまで口にするメイ。
『えっと、これは、本当にメイなの?』
夫のロビンも驚く豹変ぶりである。
「ちょっと、何、そんなデマかましているのよ!仲がいいとか嘘よ!4年も婚姻関係にあって子もいないじゃないの!貴族の血筋しか持ってない、子もできない女はいらないと捨てられたくせに!」
今度は、ケーシーの姉が吠え出したが、メイは、再び、唇を歪めて、姉と対峙する。
「あなたねぇ、同じ女性として配慮の言葉もないの?」
メイは、先程の妹に向ける視線よりも、もっと冷たくてキツイ睨みを見せる。
「子が出来ない理由が女性側だけにあるとか、本気で思っているの?それに、お義兄さんたちはね、二人で敢えて決めて、今は仕事を優先としているのよ。さっきも言ったでしょう?あの二人は、本当にラブラブなんだからっ!」
可愛そうな者を見るような目線を最後にくれてやり、メイは、ここで、くるりと、夫ロビンに向き直る。
「ロビン、もう帰りましょうか?私たち、ご招待受けてなかったようだし、ねっ?」
にこりと、いつもの屈託の無い笑顔を振りまき、メイがロビンに縋りつく。
「あっ、あ、うん、そうだね?帰ろうか。双方の誤解も解けたようだし。義理も果したし、ねっ!」
ロビンもメイに釣られ、いつもの笑顔になる。
二人は周囲に向けて、綺麗な一礼を行い、パーティー会場をそそくさと抜けて出て行く。
その姿を多くの者が、呆気に取られてみていたのだった。
会場を出たロビンとメイは、無言で足だけを速めて、馬車の待機場へ急ぐ。
そして、実家、ハロルド商会が用意した馬車に乗り込んでから、漸く、互いがそこで口にする。
「ロビン、怖かったよー」
「メイ、君、凄いね!」
「「えっ?!」」
互いから出た言葉に暫し固まり、そして、次には緊張が解れたのか笑い出す。
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