チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

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3 水没した 1

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――え? え――え?

 今度は、沈んでいく。
 明らかに、水の中へと。
 沈没はすぐ止まり。
 どうも水底に着いたらしい。
 一瞬濁った周囲の水が、少しずつ沈み澄んでくる。

――いやいやいやいや、そんな呑気のんきに観察思考している暇あるか。

 このままだと、溺死する。
 立ち上がり、泳いで、浮上しなければ。
 幸いこちとら、着衣水泳の経験あり、だ。

――実体験派フリーライターを舐めんなよ!

 誰にともなく威嚇を投げつけ。
 起き上がる。
 ――いや。
 起き上が――れない。

――え? え?

 身を起こせない。
 手足が動かない。
 動かし方が分からない――と言うより、手足の在処ありかさえ分からない。

――え? え? え? え?

 じたばたじたばた。
 しているうち。
 もっと重大なことに気がついた。

――苦しくない。

 呼吸できないはずなのに。
 水没してから、もう何分も経つはずなのに。
 苦しくない。
 と言うより、その前から呼吸していた記憶がない。

――え? え? え? え?

 (大事なことなので)もう一度、言おう。
 苦しくない。
 呼吸してない。
 つまり――

――なあんだ。そういうことか。

 得心の息を、あたしはついた。呼吸、してないけど。
 他に考えようもない。
 あたしは今、夢の中にいるんだ。
 水に沈んで数分、苦しくないなど、あり得るはずもない。
 考えてみれば、さっきから。
 水の中なのに、冷たくもない。濡れている感触もない。
 ついさっきにしても。
 何かに激突して、痛みさえなかった。
 何となく、相手の方が陥没した感じだけど、こちらは傷ついた気さえしない。
 何をとっても、あり得ない。
 つまり、これは現実ではないという可能性しかない。
 ただ一つ、それを否定するのは。

――見えるものだけ、異様に鮮明、現実的だ。

 肌に何も感じない。
 何も聞こえない――これはまあ、水中なら疑問ないかもしれないけど。
 匂いも、空腹の類いも、何も感じない。
 およそ、生き物として感じる最低条件を満たしていないとしか思えない。
 それなのに、目に見えるものだけは鮮明なんだ。
 水中なので、何もかもが揺らいでいるけど。
 さっき一度濁った周囲の水が、静かに汚れが沈んで透明感を増してきている。
 水は、綺麗なあお色だ。
 少し離れて、小さな魚が泳いでいる。
 下は、砂混じりの泥状だ。
 その他何もかも、テレビで観た水中カメラの映像と変わらない。
 つまり視界だけは、現在進行形で現実のものを捉えていると思って矛盾なさそうだ。
 とは言えこれだって、夢の中で勝手に現実的だと認識しているだけという可能性もあり得る。
 五感のうち視覚だけ鮮明、残り四つは存在を実感できない。となれば多数決、いくら鮮明であれこの見えているものも夢の中の想像、と思うべきだろう。

――この見えているものに、決定的に現実を信じられる決め手があれば別だけど。

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