チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

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『不思議なこと?』
『何でも、不可解な夢を見ることがあるというのですがね。いつぞやもしばらくぼんやりしていたかと思うと突然、〈チョーゴーキン!〉などと叫び出したり』
『え?』

――おい今、何て言った?!

 今のエトヴィンの発言。
 夢の中で実際に音声になっていないわけなのでややこしいけど、これまでの一連の会話はまるで音として聞こえるように現地語が伝わってきて、あたしの頭で日本語に翻訳されていくという感覚だった。
 それが、今の『チョーゴーキン』という単語は、そのままそう聞こえる音声として発せられていたんだ。

『何とも意味不明なんですがね。本人も何のことか、分かっているやらどうやら不明で』
『そうなのか』

 つまりそういう発音の言葉はこちらの世界になく、エトヴィンも意味を解しかねるということらしい。
 ということは。

――『チョーゴーキン』って、日本語の『超合金』をそのまま発声したんじゃね?

 つまりその教え子の少年、日本からの転生者、あるいはそういう記憶を持つ者、なのではないか。
 いやもっと言ってしまえばその少年、甥の颯人が転生した存在なんじゃないか。
 あたしがこんな、妙な格好に転生(?)してしまったのが現実だとしたら。同じ事故に遭ったはずの颯人が、同様に転生していても不思議ない。事故の瞬間膝に抱いていた模型の存在が記憶に蘇ることも、あり得るんじゃないか。
 まあ無関係の日本人の転生という可能性も、まったくこちらと関係ない発声ということも、否定できないわけだけど。
 それでも、颯人だという可能性が少しでもあるなら。

――あたしは、その少年と会わなければならない。

 さっきまで――ここが現実の異世界だとして――ここで生きる(?)目的など何も持てない、と思っていた。
 しかし、この世界に颯人がいる、しかもあの子が困難に陥っている、となれば話は別だ。
 あたしはその難を取り除いてやらなければならない。もしかするとそれが、あたしのこの奇妙な転生の意味なのかもしれない。
 その辺りをこのエトヴィンに打ち明けて相談するか、少し迷ったけれどあたしは口をつぐむことにした。
 その少年が颯人である確証はないし。もしそうだとしても身近な人間にそれを知られる利益不利益が、現時点で判断できない。
 しかしともかく、あたしに目標ができた。

――この科学者に同行して、その少年に会わせてもらう。

 それに先んじて、その薬草を採取するミッションに、最大限協力する。
 そう思い定めると、今まで他人事のように聞いていたこの三人の山行の詳細が気になってきた。

『それでその少年を救うため、この森に薬草を探しにきたと言うが、貴族の子息だというあんたが直々じきじきに来なくちゃいけないのか』
『さっきも言ったように、雑草に紛れると見分けがつきにくいのです。私は魔法の研究の関係でこの薬草も何度か見たことがある』
『それにしても護衛が二人というのは、少ないんじゃないのか。実家の領に接しているというなら、もっと大勢の兵を引き連れてというわけにいかないのか』
『ここはいろいろ事情があるのです。その患者たる子息に絡んで、様々な思惑があるので。私が大っぴらな動きをすると、邪魔が入る恐れがあるのです』
『よく分からないが、そういう事情か』

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