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『私のいた世界には魔法というものがなかったんだが、いろいろ物語のようなものに空想の魔法なら登場した。その中に〈鑑定〉とか〈収納〉とかいう魔法があったんだが、こちらにそういうものはないんだろうか』
『それは、どういうものでしょうか』
『〈鑑定〉というのは、対象物を見るとその名称や性質などを知ることができる。〈収納〉は例えば小さな鞄やあるいは何もないところに、いろいろなものを大容量で出し入れすることができる、という感じか』
『ああ。ふつうの人間が持つ魔法とは別ですが、その話に近い〈マジックグラス〉というのと〈マジックバッグ〉と呼ばれる魔道具が、ダンジョンで見つかったと聞いたことがあります。非常に希少なものですが』
『あるのか? ――いやそれに、ダンジョン?』
『確かにその〈マジックグラス〉や〈マジックバッグ〉があれば、今回のような採取目的には非常に助かるでしょうが。我が国の王室でも所有していない貴重品ですね』
ダンジョンというのは、この大陸の中に数箇所ある不思議な場所だという。
たいていは森の中などにぽっかり口を開けていて、中は階層に分かれている。何処から湧いてきたか分からない魔物が大量に動き回り、それを狩ると死体が消えてドロップ品と呼ばれるものを残す。ほとんどは肉や素材だが、稀に珍しい魔道具ということもある。
魔物は無限に新しく現れる。また五階層ごとに『ボス部屋』と呼ばれる場所があり――。
――おいおいおい、なんやそれ? あまりにファンダジー過ぎるっちゅうか。ここはゲームの世界かい?
そこまで聞いて、あたしは首を振った。
『いやちょっと、私の常識とかけ離れすぎて理解に余る。少なくとも今回のこの森での採取作業に関係しないのだろう?』
『そうですね。この森にダンジョンはないはずです』
『ではこの知識については、目的達成以降に置いておこう』
『そうですね』
改めて訊いてみると『マジックグラス』というのは短い筒の形状で、それを通して対象物を見ると、動植物なら種類名、採取法、素材の用途、食用の可否、加工品ならその材料などを知ることができる。
どうも聞く限り、あたしが見ることができるものより高性能らしい。しかしそれが国宝レベルに希少な品であることからすると、あたしの能力を明かすのは考えものという気がする。
そんなことを話しているうち、夜が明けてきたらしい。見張り番をしていた橙騎士がエトヴィンを起こしに来たようだ。
また周囲がぼやけ、あたしの意識は元の模型の中に戻る。
「ちょっと二人、食事をしながら聞いてくれ」
ひとしきり洗顔などに動き、三人で焚き火を囲んで干し肉を囓り始めながらエトヴィンが話し出した。
騎士二人は、黙って頷く。
「俄に信じられないだろうが、私は昨夜眠りながら、その昨日の拾い物である不思議な箱型物体と会話したのだ」
「「はあ?」」
二人は、ぽかんと口を開ける。
まあ、当然の反応だ。
「もちろん夢の中だけのこととしか思えないわけだが、昨夜の見張り時間に確認した。その物体、ハル殿というのだが、意思を持って動くことができる。また、こちらの話を聞くことができる」
「それは、何とも……」
「信じがたいと言いますか……」
「ハル殿、来てもらえますか」
呼びかけられて、あたしは前進した。昨夜のエトヴィンの枕元から焚き火まで、二メートルほど。
「お、本当に!」
「動いた!」
「ハル殿、こちら二人が私の護衛、緑の髪がヘルビヒ、橙の髪がカルステンと申します」
紹介され、よろしく、とあたしはマジックハンドで頷く。
二人は全身硬直し、これ以上ないほど目を見開いている。
「どうも会話のやりとりはこちらが眠っている間しかできないようなのだが、ふだんもこうして一方的な会話はできる。ハル殿もこうして、肯定否定の動作を返すことはできる」
「は、なるほど」
「了解、しました」
『それは、どういうものでしょうか』
『〈鑑定〉というのは、対象物を見るとその名称や性質などを知ることができる。〈収納〉は例えば小さな鞄やあるいは何もないところに、いろいろなものを大容量で出し入れすることができる、という感じか』
『ああ。ふつうの人間が持つ魔法とは別ですが、その話に近い〈マジックグラス〉というのと〈マジックバッグ〉と呼ばれる魔道具が、ダンジョンで見つかったと聞いたことがあります。非常に希少なものですが』
『あるのか? ――いやそれに、ダンジョン?』
『確かにその〈マジックグラス〉や〈マジックバッグ〉があれば、今回のような採取目的には非常に助かるでしょうが。我が国の王室でも所有していない貴重品ですね』
ダンジョンというのは、この大陸の中に数箇所ある不思議な場所だという。
たいていは森の中などにぽっかり口を開けていて、中は階層に分かれている。何処から湧いてきたか分からない魔物が大量に動き回り、それを狩ると死体が消えてドロップ品と呼ばれるものを残す。ほとんどは肉や素材だが、稀に珍しい魔道具ということもある。
魔物は無限に新しく現れる。また五階層ごとに『ボス部屋』と呼ばれる場所があり――。
――おいおいおい、なんやそれ? あまりにファンダジー過ぎるっちゅうか。ここはゲームの世界かい?
そこまで聞いて、あたしは首を振った。
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『そうですね。この森にダンジョンはないはずです』
『ではこの知識については、目的達成以降に置いておこう』
『そうですね』
改めて訊いてみると『マジックグラス』というのは短い筒の形状で、それを通して対象物を見ると、動植物なら種類名、採取法、素材の用途、食用の可否、加工品ならその材料などを知ることができる。
どうも聞く限り、あたしが見ることができるものより高性能らしい。しかしそれが国宝レベルに希少な品であることからすると、あたしの能力を明かすのは考えものという気がする。
そんなことを話しているうち、夜が明けてきたらしい。見張り番をしていた橙騎士がエトヴィンを起こしに来たようだ。
また周囲がぼやけ、あたしの意識は元の模型の中に戻る。
「ちょっと二人、食事をしながら聞いてくれ」
ひとしきり洗顔などに動き、三人で焚き火を囲んで干し肉を囓り始めながらエトヴィンが話し出した。
騎士二人は、黙って頷く。
「俄に信じられないだろうが、私は昨夜眠りながら、その昨日の拾い物である不思議な箱型物体と会話したのだ」
「「はあ?」」
二人は、ぽかんと口を開ける。
まあ、当然の反応だ。
「もちろん夢の中だけのこととしか思えないわけだが、昨夜の見張り時間に確認した。その物体、ハル殿というのだが、意思を持って動くことができる。また、こちらの話を聞くことができる」
「それは、何とも……」
「信じがたいと言いますか……」
「ハル殿、来てもらえますか」
呼びかけられて、あたしは前進した。昨夜のエトヴィンの枕元から焚き火まで、二メートルほど。
「お、本当に!」
「動いた!」
「ハル殿、こちら二人が私の護衛、緑の髪がヘルビヒ、橙の髪がカルステンと申します」
紹介され、よろしく、とあたしはマジックハンドで頷く。
二人は全身硬直し、これ以上ないほど目を見開いている。
「どうも会話のやりとりはこちらが眠っている間しかできないようなのだが、ふだんもこうして一方的な会話はできる。ハル殿もこうして、肯定否定の動作を返すことはできる」
「は、なるほど」
「了解、しました」
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