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55 嘘泣した 1
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隅に寝具らしいものが積まれているところを見ると、この家の者たちの寝室なのだろう。別の隅に細々とした木造りの玩具めいたものが寄せられているので、子どもの遊び場にもなっているのか。
女の子ハイダは、そこからいくつか小さな人形のようなものを抱えて戻ってきた。
幼い顔が大写しに迫ったかと思うと、あたしの上にコトリコトリと軽い衝突音が響く。平らな上面に、木の人形を載せたのだろう。
――本気で、遊び道具にされるのかあ。
当面は様子見、とじっと動かずに辛抱を続ける。
見える範囲で観察を続けると、ハイダは男の子を相手にままごとめいた遊びを始めたみたいだ。
ただ「あたしがママよ」とか「パパの役をしてね」などというやりとりはない。どうもこのハイダは、女の子にしては口数が少ない性格のようだ。
ときどき男の子に「こいつは子どもか?」などと人形を持ち上げて尋ねられ、うん、と頷き返している。
カチカチと人形同士をぶつけたり、並んで一緒に歩かせたりが続く。
しばらくすると、部屋の戸口に女性の顔が覗いた。まだ若い、二十代前半かという外見だ。
「大人しく遊んでいるかい? ヴィリ、ハイダの相手をありがとうねえ」
「おお」
「もう少ししたらお団子が茹で上がるから、おやつにしなさい」
「分かった」
ハイダの母親ということになるのか。ヴィリと呼ばれた男の子は、やっぱり近所の子という感じの会話だ。
「今やっている工夫がうまくいったら忙しいのも落ち着いて、ハイダと遊んでやれるんだけどねえ。ごめんねヴィリ、もうしばらくお願いね」
「分かってる。おじちゃんとおばちゃんのしていることがこの村のメイウンを握っているんだって、うちの父ちゃんが言ってたさあ」
「はは、うまくいくといいんだけどねえ。ハイダ、もう少し遊んでてね」
「あい」
「あれハイダ、それは何だい」
「カメしゃん」
「街道の近くに落ちていたの、拾ってきたんだよ」
「……ふうん……」
ようやくあたしの存在に気がついて、母親は子どもたちに問いかけた。男の子の説明にも納得はいかないようだけど、とにかく害はなさそうだと判断したのか。
頷いて、部屋の外に戻っていく。
戸が開いた向かいの部屋はやっぱり土間で、ちょっとしか見えないけれどどうも台所みたいに見える。女性の夫なのか、大柄の男性が調理に動いている様子だ。
しばらく二人の遊戯は続き。
その後おやつだと言って、向こうに呼ばれていった。
部屋の戸はしっかり閉じられて、逃げ出せそうにない。あたしの力であの木の戸は開けないだろう。
ついでに今のあたしの上には、水を入れた木のコップに花を一輪挿したものが載せられている。へたに動いてこれを倒しでもしたら、たいへんな騒動になりそうだ。
ということでやっぱり、じっと我慢している他ない。
少しして二人が戻り、遊びは再開された。
でも今度は間もなく、ハイダが居眠りを始めたのでそれは終了した。
何と言うか甲斐甲斐しく、ヴィリは寝具らしい厚布を開いてハイダを寝せてやる。
そうしてハイダの親に声をかけ、帰っていったようだ。
――人目はなくなったけど、うーん……。
やっぱり戸口は閉められて、逃亡は不可能と思われる。
頭の上のコップは移動されたので、その不自由さは軽減されたという程度だ。
ただやっぱり子どもが眠っているとはいえ、動き回るわけにはいかないだろう。
しばらく考えて、他にどうしようもない。あたしは苦肉の策を実行することにした。
念じると、ぼんやりした空間に入る。
予定通り、小さな女の子が座っている。
あたしは横を向き、蹲った。
『ぐすん、ぐすん……』
『え、あなただあれ?』
『ぐすん、ぐすん……』
『なんで泣いてるの?』
当然のように、女の子は四つん這いで身を乗り出してきた。
女の子ハイダは、そこからいくつか小さな人形のようなものを抱えて戻ってきた。
幼い顔が大写しに迫ったかと思うと、あたしの上にコトリコトリと軽い衝突音が響く。平らな上面に、木の人形を載せたのだろう。
――本気で、遊び道具にされるのかあ。
当面は様子見、とじっと動かずに辛抱を続ける。
見える範囲で観察を続けると、ハイダは男の子を相手にままごとめいた遊びを始めたみたいだ。
ただ「あたしがママよ」とか「パパの役をしてね」などというやりとりはない。どうもこのハイダは、女の子にしては口数が少ない性格のようだ。
ときどき男の子に「こいつは子どもか?」などと人形を持ち上げて尋ねられ、うん、と頷き返している。
カチカチと人形同士をぶつけたり、並んで一緒に歩かせたりが続く。
しばらくすると、部屋の戸口に女性の顔が覗いた。まだ若い、二十代前半かという外見だ。
「大人しく遊んでいるかい? ヴィリ、ハイダの相手をありがとうねえ」
「おお」
「もう少ししたらお団子が茹で上がるから、おやつにしなさい」
「分かった」
ハイダの母親ということになるのか。ヴィリと呼ばれた男の子は、やっぱり近所の子という感じの会話だ。
「今やっている工夫がうまくいったら忙しいのも落ち着いて、ハイダと遊んでやれるんだけどねえ。ごめんねヴィリ、もうしばらくお願いね」
「分かってる。おじちゃんとおばちゃんのしていることがこの村のメイウンを握っているんだって、うちの父ちゃんが言ってたさあ」
「はは、うまくいくといいんだけどねえ。ハイダ、もう少し遊んでてね」
「あい」
「あれハイダ、それは何だい」
「カメしゃん」
「街道の近くに落ちていたの、拾ってきたんだよ」
「……ふうん……」
ようやくあたしの存在に気がついて、母親は子どもたちに問いかけた。男の子の説明にも納得はいかないようだけど、とにかく害はなさそうだと判断したのか。
頷いて、部屋の外に戻っていく。
戸が開いた向かいの部屋はやっぱり土間で、ちょっとしか見えないけれどどうも台所みたいに見える。女性の夫なのか、大柄の男性が調理に動いている様子だ。
しばらく二人の遊戯は続き。
その後おやつだと言って、向こうに呼ばれていった。
部屋の戸はしっかり閉じられて、逃げ出せそうにない。あたしの力であの木の戸は開けないだろう。
ついでに今のあたしの上には、水を入れた木のコップに花を一輪挿したものが載せられている。へたに動いてこれを倒しでもしたら、たいへんな騒動になりそうだ。
ということでやっぱり、じっと我慢している他ない。
少しして二人が戻り、遊びは再開された。
でも今度は間もなく、ハイダが居眠りを始めたのでそれは終了した。
何と言うか甲斐甲斐しく、ヴィリは寝具らしい厚布を開いてハイダを寝せてやる。
そうしてハイダの親に声をかけ、帰っていったようだ。
――人目はなくなったけど、うーん……。
やっぱり戸口は閉められて、逃亡は不可能と思われる。
頭の上のコップは移動されたので、その不自由さは軽減されたという程度だ。
ただやっぱり子どもが眠っているとはいえ、動き回るわけにはいかないだろう。
しばらく考えて、他にどうしようもない。あたしは苦肉の策を実行することにした。
念じると、ぼんやりした空間に入る。
予定通り、小さな女の子が座っている。
あたしは横を向き、蹲った。
『ぐすん、ぐすん……』
『え、あなただあれ?』
『ぐすん、ぐすん……』
『なんで泣いてるの?』
当然のように、女の子は四つん這いで身を乗り出してきた。
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