111 / 122
111 驚嘆された 1
しおりを挟む
『あとあまり公になっていないけどもう一件、ティルピッツ侯爵領南部の地域で、最近になって突然そこの代官が、その地域特有の小麦生産を中止して他と同じ品種を植えよ、と命を下したということがあった。もしこれが実施されて冷害気味の気候に襲われたら、大きく小麦生産量に影響したかもしれない。そこの住民が従来生産の小麦の有用性を示して、この命令は取り下げられたけどね』
『そんなことも、あったんだ』
『他にも探せばあるのかもしれないけど、とにかくこんな出来事がこの半月程度の間に続けざまに起きているわけだね』
『どうなっているんだろう、これ……』
長椅子に横たわる少年は、ただ天井を凝視している。
こちらに視線は向けないけど、真剣に今の話について思い巡らす表情だ。
『で、かなりそれぞれ言葉を加えたから納得してもらえると思うけど、これらの件に明らかな共通点がある。どれも、放っておいたら小麦収穫に甚大な影響を与えていただろうってことだね』
『うん、そうなるね』
『つまりこれらは、現政権が低温対策などの手当てをして小麦不作を抑えようとした、ノベルストーリー回避の動きに対して、いわゆるシナリオ強制ってやつが働いた結果と想像することができる。目的は、その何たら侯爵がこちらの侯爵伯爵への懐柔を果たすこと、だろうね』
『そうなりそうだね』
『ここらで一つ、はっきり覚悟を決めて認識しておかないかい? この一連の出来事、人間業では実現しようがない。まずまちがいなく、この動きには隣の国の政権やその何たら侯爵の裏で、別の力が働いている』
『別の力?』
『おそらくのところ、神、あるいはそれに匹敵する力だね』
『ええーー?』
もちろん声になっていないんだけど、明らかに半分力の抜けた驚嘆めいた声音が返ってきた。
まあ当然っちゃ当然、この話の流れで驚きも呆れも無理のないところだわな。
『あんただって、考えるだけは考えていたんでしょ。この訳の分かんない、それこそ〈シナリオ強制〉とでも呼ぶしかなさそうな不合理な出来事の連続、神の仕業とでも思うしかないっての』
『まあ、そりゃそうだけど――それって、あり?』
『これがミステリ小説の中だったら、こんな結論にしたら〈無茶苦茶だ〉〈不合理だ〉〈アンフェアだ〉って、読者から石投げられるだろうね』
『だよねえ』
『一方でこれが異世界ものラノベだったら、何の疑問もないよね。世界に関与する神様が現存していて当たり前。人間以上に人間臭かったり、悪戯好きだったり間抜けだったりする神様が、嫌というほど登場する』
『そう、だけどさあ』
『いや、今いるこの世界がラノベの中だなんて、決めつける気はないよ。それでもこの事態を考察するに当たって、ここは腹をくくっておかなくちゃならないと思う。とにかくもここには、神レベルの力が働いている可能性が高いって』
『まあ――そうだね』
『それに、ミステリを引き合いに出したついでに表現すると、今我々が直面している事態は、フーダニットじゃなくて、正確な言い方じゃないけどハウダニットだ』
『ハウ――何?』
『〈Who done it〉ってのは、〈犯人は誰だ〉ってやつだね。一方〈How done it〉は、〈どうやってやった〉〈犯行方法は?〉って感じだけど。英語や専門用語に詳しくなくてごめん、今の我々の場合は過去形じゃなくて未来形、〈どうやってやる〉〈これを切り抜ける方法は?〉ってところだよね』
『ああ』
『ここがラノベの中なのか、本当に神が存在するのか、なんて疑問はとりあえずどうでもいい。とにかくも神レベルの力がここに働いているという前提で、これからの指針を考えなくちゃってことだ――何だかいろいろ言葉を捻くり回した末に、至極当たり前っぽい結論になっちゃうけどさ』
『ああ――まあ、そうだね』
『その〈どうやって〉を考えるとっかかりにもなるはずだから、ちょっと話を広げるとね。あたしがこの〈神レベル〉ってのを断定めかして言うのには、他にも理由っていうか、情況証拠みたいなのがあるんだ』
『何?』
『そんなことも、あったんだ』
『他にも探せばあるのかもしれないけど、とにかくこんな出来事がこの半月程度の間に続けざまに起きているわけだね』
『どうなっているんだろう、これ……』
長椅子に横たわる少年は、ただ天井を凝視している。
こちらに視線は向けないけど、真剣に今の話について思い巡らす表情だ。
『で、かなりそれぞれ言葉を加えたから納得してもらえると思うけど、これらの件に明らかな共通点がある。どれも、放っておいたら小麦収穫に甚大な影響を与えていただろうってことだね』
『うん、そうなるね』
『つまりこれらは、現政権が低温対策などの手当てをして小麦不作を抑えようとした、ノベルストーリー回避の動きに対して、いわゆるシナリオ強制ってやつが働いた結果と想像することができる。目的は、その何たら侯爵がこちらの侯爵伯爵への懐柔を果たすこと、だろうね』
『そうなりそうだね』
『ここらで一つ、はっきり覚悟を決めて認識しておかないかい? この一連の出来事、人間業では実現しようがない。まずまちがいなく、この動きには隣の国の政権やその何たら侯爵の裏で、別の力が働いている』
『別の力?』
『おそらくのところ、神、あるいはそれに匹敵する力だね』
『ええーー?』
もちろん声になっていないんだけど、明らかに半分力の抜けた驚嘆めいた声音が返ってきた。
まあ当然っちゃ当然、この話の流れで驚きも呆れも無理のないところだわな。
『あんただって、考えるだけは考えていたんでしょ。この訳の分かんない、それこそ〈シナリオ強制〉とでも呼ぶしかなさそうな不合理な出来事の連続、神の仕業とでも思うしかないっての』
『まあ、そりゃそうだけど――それって、あり?』
『これがミステリ小説の中だったら、こんな結論にしたら〈無茶苦茶だ〉〈不合理だ〉〈アンフェアだ〉って、読者から石投げられるだろうね』
『だよねえ』
『一方でこれが異世界ものラノベだったら、何の疑問もないよね。世界に関与する神様が現存していて当たり前。人間以上に人間臭かったり、悪戯好きだったり間抜けだったりする神様が、嫌というほど登場する』
『そう、だけどさあ』
『いや、今いるこの世界がラノベの中だなんて、決めつける気はないよ。それでもこの事態を考察するに当たって、ここは腹をくくっておかなくちゃならないと思う。とにかくもここには、神レベルの力が働いている可能性が高いって』
『まあ――そうだね』
『それに、ミステリを引き合いに出したついでに表現すると、今我々が直面している事態は、フーダニットじゃなくて、正確な言い方じゃないけどハウダニットだ』
『ハウ――何?』
『〈Who done it〉ってのは、〈犯人は誰だ〉ってやつだね。一方〈How done it〉は、〈どうやってやった〉〈犯行方法は?〉って感じだけど。英語や専門用語に詳しくなくてごめん、今の我々の場合は過去形じゃなくて未来形、〈どうやってやる〉〈これを切り抜ける方法は?〉ってところだよね』
『ああ』
『ここがラノベの中なのか、本当に神が存在するのか、なんて疑問はとりあえずどうでもいい。とにかくも神レベルの力がここに働いているという前提で、これからの指針を考えなくちゃってことだ――何だかいろいろ言葉を捻くり回した末に、至極当たり前っぽい結論になっちゃうけどさ』
『ああ――まあ、そうだね』
『その〈どうやって〉を考えるとっかかりにもなるはずだから、ちょっと話を広げるとね。あたしがこの〈神レベル〉ってのを断定めかして言うのには、他にも理由っていうか、情況証拠みたいなのがあるんだ』
『何?』
2
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜
naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。
※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。
素材利用
・森の奥の隠里様
・みにくる様
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?
秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。
※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。
※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる