チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

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『あとあまりおおやけになっていないけどもう一件、ティルピッツ侯爵領南部の地域で、最近になって突然そこの代官が、その地域特有の小麦生産を中止して他と同じ品種を植えよ、と命を下したということがあった。もしこれが実施されて冷害気味の気候に襲われたら、大きく小麦生産量に影響したかもしれない。そこの住民が従来生産の小麦の有用性を示して、この命令は取り下げられたけどね』
『そんなことも、あったんだ』
『他にも探せばあるのかもしれないけど、とにかくこんな出来事がこの半月程度の間に続けざまに起きているわけだね』
『どうなっているんだろう、これ……』

 長椅子に横たわる少年は、ただ天井を凝視している。
 こちらに視線は向けないけど、真剣に今の話について思い巡らす表情だ。

『で、かなりそれぞれ言葉を加えたから納得してもらえると思うけど、これらの件に明らかな共通点がある。どれも、放っておいたら小麦収穫に甚大な影響を与えていただろうってことだね』
『うん、そうなるね』
『つまりこれらは、現政権が低温対策などの手当てをして小麦不作を抑えようとした、ノベルストーリー回避の動きに対して、いわゆるシナリオ強制ってやつが働いた結果と想像することができる。目的は、その何たら侯爵がこちらの侯爵伯爵への懐柔を果たすこと、だろうね』
『そうなりそうだね』
『ここらで一つ、はっきり覚悟を決めて認識しておかないかい? この一連の出来事、人間業にんげんわざでは実現しようがない。まずまちがいなく、この動きには隣の国の政権やその何たら侯爵の裏で、別の力が働いている』
『別の力?』
『おそらくのところ、神、あるいはそれに匹敵する力だね』
『ええーー?』

 もちろん声になっていないんだけど、明らかに半分力の抜けた驚嘆めいた声音が返ってきた。
 まあ当然っちゃ当然、この話の流れで驚きも呆れも無理のないところだわな。

『あんただって、考えるだけは考えていたんでしょ。この訳の分かんない、それこそ〈シナリオ強制〉とでも呼ぶしかなさそうな不合理な出来事の連続、神の仕業とでも思うしかないっての』
『まあ、そりゃそうだけど――それって、あり?』
『これがミステリ小説の中だったら、こんな結論にしたら〈無茶苦茶だ〉〈不合理だ〉〈アンフェアだ〉って、読者から石投げられるだろうね』
『だよねえ』
『一方でこれが異世界ものラノベだったら、何の疑問もないよね。世界に関与する神様が現存していて当たり前。人間以上に人間臭かったり、悪戯好きだったり間抜けだったりする神様が、嫌というほど登場する』
『そう、だけどさあ』
『いや、今いるこの世界がラノベの中だなんて、決めつける気はないよ。それでもこの事態を考察するに当たって、ここは腹をくくっておかなくちゃならないと思う。とにかくもここには、神レベルの力が働いている可能性が高いって』
『まあ――そうだね』
『それに、ミステリを引き合いに出したついでに表現すると、今我々が直面している事態は、フーダニットじゃなくて、正確な言い方じゃないけどハウダニットだ』
『ハウ――何?』
『〈Who done itフーダニット〉ってのは、〈犯人は誰だ〉ってやつだね。一方〈How done itハウダニット〉は、〈どうやってやった〉〈犯行方法は?〉って感じだけど。英語や専門用語に詳しくなくてごめん、今の我々の場合は過去形じゃなくて未来形、〈どうやってやる〉〈これを切り抜ける方法は?〉ってところだよね』
『ああ』
『ここがラノベの中なのか、本当に神が存在するのか、なんて疑問はとりあえずどうでもいい。とにかくも神レベルの力がここに働いているという前提で、これからの指針を考えなくちゃってことだ――何だかいろいろ言葉を捻くり回した末に、至極当たり前っぽい結論になっちゃうけどさ』
『ああ――まあ、そうだね』
『その〈どうやって〉を考えるとっかかりにもなるはずだから、ちょっと話を広げるとね。あたしがこの〈神レベル〉ってのを断定めかして言うのには、他にも理由っていうか、情況証拠みたいなのがあるんだ』
『何?』

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