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昇天編
第八話 不自然
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「それにしても今回の事件は不自然なことだらけだなぁ。」
覆面パトカーの助手席で、神谷は煙草片手にこう呟いた。
「ちょっと!神谷さん!勤務中に、しかも車内で煙草吸わないでくださいよ!」
と、近藤が運転しながら怒鳴る。そんな近藤の注意をよそに、神谷は
「桜ちゃんはどう思う?」
と、神谷は訪ねる。
「そうですねぇ…。ただでさえこの鳴神市は訳のわからないことばかり起こるのに、今回の事件は不可解すぎます。あれだけの人が亡くなったのに、そばにいた人はどうしてそうなったのかまるでわからないなんて…。」
と、近藤は真面目に答える。
「スタジアムの崩壊は老朽化が原因。人々の記憶がないのは目の前の光景のストレスに対する防衛機制だって言う者もいれば、新手の犯罪者集団がスタジアムを爆破して観客や選手たちに集団催眠をかけて記憶を書き換えたって言ってる奴もいる。報道番組のコメンテーターの中には宇宙人の仕業だって言ってる奴もいるらしいぜ。普通に考えれば子供でもおかしいと思うような仮説ばかりだ。だけど、これ以外には何も考えられず、現実的ではないが可能性としては全くの0と言うわけではないこれらの仮説を、上の連中の中には信じ始めてる、いや、それで処理しようとしてるやつもいるらしい。しかし、俺にはどれもしっくりこない。」
「それは私も同感です!捜査資料を見ましたが、スタジアムの老朽化で建築物があんな風に崩壊したりしないと思います。しかも、それにしては死体の状態も不自然です。それに防衛機制によって記憶が抑圧されてしまうことはありますが、スタジアムにいた人全員がそんな風になるなんて考えられないです。新手の犯罪者集団の犯行だとしても動機がわかりませんし、集団催眠なんてそんな都合のいいことがあるのでしょうか?だけど…。」
「だけど…どうした?」
「だけど、宇宙人の仕業だって言っている人もいるって言ってたじゃないですか。宇宙人かどうかはわかりませんけど、なんかこの事件、そういった未知の何かが関わってる気がします…。」
「珍しいな。賢い桜ちゃんがそんな漠然としたことを言うなんて。」
「だって…。世の中にはまだまだ科学の力では解決できないような不思議な現象がたくさんあるんですよ?!いくら非科学的だって言ったって現実としてそんな現象があったら、人知を越えた何かがあるかもって思わない方が不自然だと思います…。鳴神市に産まれたときから住んでたら誰だってそんな気になりますよ…。」
「まぁ、たしかに…。俺も産まれたときからずっとここに住んでいるがここは何かおかしい。一年中枯れない桜があったり、事故に遭って死亡確認されたのに生き返ったって人物だってたくさんいる。逆に原因不明の事故で亡くなった方もかなりいる。それ以外にも、おかしなことはたくさんある…。」
珍しく神谷が真剣な眼差しになり、表情に影ができた。
「俺もこの事件は俺たちの想像を越える何かの仕業だと思う。自然災害や人の手によって起きた事故ではない、もっと大きな力によるものじゃないだろうか…。」
しばらく車内は沈黙に包まれた。
しかし、そんなのも束の間であった。突拍子もなく神谷はこのようなことを言った。
「そういえば桜ちゃんて彼氏いるの?」
キキキイィィィィィ!ハンドルは大きく右に回り、パトカーのタイヤの軌跡は大きく揺れた。
「ちょちょちょっなに言ってるんですか?!」
なんとか体勢を立て直した近藤が大きな声で聞き返す。
「いや、桜ちゃんてかわいいから。童顔で小柄で可愛らしいわりに強気で胸もあるじゃん。」
「…セクハラで訴えますよ?」
「ちょっ怖いこと言うなぁさくらちゃんたら照れちゃって!で、どうなの彼氏いるの?」
「…彼氏いない歴=年齢ですが何か?」
「あっ、そうなのじゃあ今度俺とデートでも…」
ゴンッ!
「はっ!」
気がつくと車は止まっていた。どうやら神谷は気絶していたらしい。
「目的地につきましたよ。さっさと降りて下さい、ニコチン中毒のセクハラドスケベでまるでダメなおっさん!!!」
近藤の怒鳴り声が聞こえた。どうやら目的地に着いたらしい。そして何故か神谷の鼻からは大量の血が出ていた。
「うわっ!折角新しく買ったスーツに血がついたやん?!桜ちゃん!さては俺のこと思い切り殴ったやろ!」
「…下手な関西弁やめてください。…ってか自業自得ですよ?」
「あっ!認めたな!」
「うるさい!さっさと車降りて歩けボケ!」
「は、はいぃ!」
やっとの思いで凸凹コンビは目的地にたどり着いた。そして、そこには矢本と書かれた表札があった。
覆面パトカーの助手席で、神谷は煙草片手にこう呟いた。
「ちょっと!神谷さん!勤務中に、しかも車内で煙草吸わないでくださいよ!」
と、近藤が運転しながら怒鳴る。そんな近藤の注意をよそに、神谷は
「桜ちゃんはどう思う?」
と、神谷は訪ねる。
「そうですねぇ…。ただでさえこの鳴神市は訳のわからないことばかり起こるのに、今回の事件は不可解すぎます。あれだけの人が亡くなったのに、そばにいた人はどうしてそうなったのかまるでわからないなんて…。」
と、近藤は真面目に答える。
「スタジアムの崩壊は老朽化が原因。人々の記憶がないのは目の前の光景のストレスに対する防衛機制だって言う者もいれば、新手の犯罪者集団がスタジアムを爆破して観客や選手たちに集団催眠をかけて記憶を書き換えたって言ってる奴もいる。報道番組のコメンテーターの中には宇宙人の仕業だって言ってる奴もいるらしいぜ。普通に考えれば子供でもおかしいと思うような仮説ばかりだ。だけど、これ以外には何も考えられず、現実的ではないが可能性としては全くの0と言うわけではないこれらの仮説を、上の連中の中には信じ始めてる、いや、それで処理しようとしてるやつもいるらしい。しかし、俺にはどれもしっくりこない。」
「それは私も同感です!捜査資料を見ましたが、スタジアムの老朽化で建築物があんな風に崩壊したりしないと思います。しかも、それにしては死体の状態も不自然です。それに防衛機制によって記憶が抑圧されてしまうことはありますが、スタジアムにいた人全員がそんな風になるなんて考えられないです。新手の犯罪者集団の犯行だとしても動機がわかりませんし、集団催眠なんてそんな都合のいいことがあるのでしょうか?だけど…。」
「だけど…どうした?」
「だけど、宇宙人の仕業だって言っている人もいるって言ってたじゃないですか。宇宙人かどうかはわかりませんけど、なんかこの事件、そういった未知の何かが関わってる気がします…。」
「珍しいな。賢い桜ちゃんがそんな漠然としたことを言うなんて。」
「だって…。世の中にはまだまだ科学の力では解決できないような不思議な現象がたくさんあるんですよ?!いくら非科学的だって言ったって現実としてそんな現象があったら、人知を越えた何かがあるかもって思わない方が不自然だと思います…。鳴神市に産まれたときから住んでたら誰だってそんな気になりますよ…。」
「まぁ、たしかに…。俺も産まれたときからずっとここに住んでいるがここは何かおかしい。一年中枯れない桜があったり、事故に遭って死亡確認されたのに生き返ったって人物だってたくさんいる。逆に原因不明の事故で亡くなった方もかなりいる。それ以外にも、おかしなことはたくさんある…。」
珍しく神谷が真剣な眼差しになり、表情に影ができた。
「俺もこの事件は俺たちの想像を越える何かの仕業だと思う。自然災害や人の手によって起きた事故ではない、もっと大きな力によるものじゃないだろうか…。」
しばらく車内は沈黙に包まれた。
しかし、そんなのも束の間であった。突拍子もなく神谷はこのようなことを言った。
「そういえば桜ちゃんて彼氏いるの?」
キキキイィィィィィ!ハンドルは大きく右に回り、パトカーのタイヤの軌跡は大きく揺れた。
「ちょちょちょっなに言ってるんですか?!」
なんとか体勢を立て直した近藤が大きな声で聞き返す。
「いや、桜ちゃんてかわいいから。童顔で小柄で可愛らしいわりに強気で胸もあるじゃん。」
「…セクハラで訴えますよ?」
「ちょっ怖いこと言うなぁさくらちゃんたら照れちゃって!で、どうなの彼氏いるの?」
「…彼氏いない歴=年齢ですが何か?」
「あっ、そうなのじゃあ今度俺とデートでも…」
ゴンッ!
「はっ!」
気がつくと車は止まっていた。どうやら神谷は気絶していたらしい。
「目的地につきましたよ。さっさと降りて下さい、ニコチン中毒のセクハラドスケベでまるでダメなおっさん!!!」
近藤の怒鳴り声が聞こえた。どうやら目的地に着いたらしい。そして何故か神谷の鼻からは大量の血が出ていた。
「うわっ!折角新しく買ったスーツに血がついたやん?!桜ちゃん!さては俺のこと思い切り殴ったやろ!」
「…下手な関西弁やめてください。…ってか自業自得ですよ?」
「あっ!認めたな!」
「うるさい!さっさと車降りて歩けボケ!」
「は、はいぃ!」
やっとの思いで凸凹コンビは目的地にたどり着いた。そして、そこには矢本と書かれた表札があった。
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