創成魔法の使い手の巫女は、対の存在に気が付きました

山本あじさい

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二人の旅立ち

5-1 主の存在

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 魔物が、湧き出る扉を閉めた事で森の中が一気に
ザワついた。
強い魔物の気配である。

 ガガガガ、ギギギギと唸り声と地面を引っかく音がする。

「リリシ。もう一仕事頼めるかい?
この森全体に、結界を張って魔物が外に出ないようにしよう」
「えっ?」

 結界が、無ければ外に魔物が溢れ出すのは目に見えている。

「もしかして、今まではカグヅチが一人で結界を張っていて
くれたの?」

 その問いにカグヅチは、深く頷く。
その髪の毛が、揺れそっとこちらへと手を差し出してくる。
リリシは、その手を握り彼を労わるようにして見つめた。

「僕一人の力は、完全な物じゃないさ。
リリシと二人、扉を閉じたように完璧な結界をこの森に
施すんだ」
「分かった。やるよ! ワダツミさん達は、結界を張る間
魔物から私達を守って」

「無論だ。ツジヤの民を危険に晒さない為に今私達が
出来る事を全力でしよう。
リリシ殿、カグヅチ様、よろしくお願いします」

 ジャキン!と刀の鍔を捻りいつでも、抜刀出来るように構えた
ワダツミが頼もしく言葉を放った。
忠実な部下三人も、厳つい顔に笑顔を浮かべワダツミの指示を待つ。

 バロウも、アミルアも戦う準備は既に出来ていた。

「炎よ!」
「水の創成魔法、お願い。結界を……この森を結界で覆って!」

 カグヅチとリリシは、お互いに手を握り合い精神を集中させた。
その手から、大きく炎のオーラと水のオーラが噴出し、森に徐々に広がって行く!

「来るぞ!」

 オオオオン!と、狼の魔物が幾匹も、それを阻止せんと集まって来た!
アミルアは、魔浄笛を吹き魔物を怯ませる。

 ワダツミは、完全に刀を抜きリリシ達を守るように部下に指示を出す。
バロウは、油断なく魔物に目を走らせた。

 魔浄笛の澄んだ音色は、魔物の幾匹かを怯ませそれが大きく隙を
生んでいた。

ズシッ!

 森の奥から、あの足音が聞こえて来る。
そう、森の主と呼ばれる巨大な魔物の物だ。

「リリシの邪魔は、させませんわ」

 例え、巨大な敵でもここで下がる訳には行かない。

 動きが、止まった狼の魔物にアミルアが短剣を投げる。
 バロウは、姿勢を低くして地面を一気に駆け距離を詰め
狼魔物を殴り倒していた!

 ギャウッ!と、瀕死の魔物一匹の悲鳴が森の中に響くと
その魔物を踏み潰した主の頭がすっと姿を現す。
つるりとした頭を持つ二足歩行の巨大なトカゲ。
それが、主だった。
 優に3メートルを超える巨体。
ゴツゴツとした岩のような肌の表面には、葉っぱや枝が幾つも
張り付いていた。

 ごくり、と部下の一人が唾を飲む。
そして上司の様子を窺うと、ワダツミはしっかり刀を構えて
戦う姿勢を見せていた。
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