創成魔法の使い手の巫女は、対の存在に気が付きました

山本あじさい

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水魔法の弓

4-1 豪勇の金狼

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 王宮の中は、不思議な造りになっていた。
全面木で設えられたそこは、床は畳敷きとなっている。

「先ずは控室で、金狼殿に会って貰う」

 使者の男が、案内してくれた部屋に靴を脱いで上がり
リリシとアミルアは、そこに居る一人の男と対面する。

 金髪の、短い髪に青の瞳。右の頬には、薄っすらと刀傷がある。
長身のその男は、きちんと足を畳んで正座をしていた。
 ツジヤでは、正式な場では正座をするのが常なのだ、
と使者から聞かされたリリシも、そのように座る。

「やはり巫女様であったか」

 開口一番言うのは、その言葉でその口調には少し咎めるような
響きも含まれていた。

「ごめんなさい、えーっと」
「俺は、金狼のバロウ。バロウと呼んでください。
しかし、巫女様。偽名を使ってまで教団を抜け出したのは
何故なんですか。おかげで、今に至るまで教団の内部は大混乱しています」
「えっと、それは……ある予言を得たからです」
「予言とは?」

 訝し気に目を瞬かせるバロウを前に、リリシは言葉を詰まらせながら
考え込んでしまう。
 ふと、バロウの視線がアミルアの方へと向くと微かにおや?と言う
顔をしていた。
 そのまま視線をアミルアに集中させるバロウに対し
アミルアはコホンと咳払いをして、

「あの、金狼様。その様に見つめられると困りますわ」
「いや、すまない。俺の探している者の面影があったのでな……」

 じっと顔を覗く行為を指摘されるとバロウは、困ったように
頭を下げて謝った。

「その、探している人とは?」
「生き別れの妹だ……しかし今は、それについて
話している場合では無い。
巫女様、予言の内容について教えてください」
「東の国に、創成魔法の使い手在り。
その者、将来魔王を打ち倒す鍵となり何としても
見つけ出し、協力を仰ぐ事」

 唐突に出て来た魔王、と言う言葉にバロウは
微かに眉を動かして、しかし疑う事はせずに頷いた。

 これで、良かったのかな。思わず偽の予言内容を
考えてしまったけど……とリリシは、内心言ちる。
 流石に、魔王の話なんて壮大過ぎるかな、と心の中で
謝ったが、バロウは納得してくれたようだ。

「魔王……魔王ですか。もしその存在が近い将来出て来るなら
我々は、人間同士で争っている場合ではありません。
幸いにもこの国との戦争は終結しています。
ツジヤの王に、その予言を申し上げてよろしいか」
「うん、勿論」
「しかし創成魔法の使い手が、貴女以外にも居たとは。
その者の名前は分かっているのですか?」
「カグヅチと言う少年です。炎の魔法を使う……」
「分かりました、それも王に伝えるといたしましょう。
しかし、巫女様。予言ならば何故教団の人間に相談を
しなかったのですか。我々の協力を得ずにほぼ単独で
教団を飛び出すのは、危険過ぎました」
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