ご主人様は小学四年生

ましゅまろ

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日常と訓練

お昼寝の監視係

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「ふあぁ……眠くなってきた……」

午後三時過ぎ。宿題をすべて終えた陽翔は、大きなあくびを一つ。
ソファに腰掛けたまま、背もたれにゆっくり身体を預ける。

「じゃあ、お昼寝の時間にしましょうか」

僕がそう声をかけると、陽翔は目をこすりながら、ゆっくりと頷いた。

「その間、君には“監視係”をお願いするよ」

「監視……?」

「うん。僕の寝顔を見守ってて。寝返りを打ちすぎたら、ちゃんと直してね。あと……さびしくなったら、手、握って」

「……それ、監視っていうか、介抱では?」

「いいから、命令だよ。執事でしょ?」

陽翔はいつものように、涼しい顔で“命令”してきた。
けれどその頬は、ほんのりと赤みを帯びている。

僕は小さく笑って、うなずいた。

「承知しました、ご主人様。全力で、見守らせていただきます」


リビングのカーテンを少しだけ閉じて、室内をやわらかい薄明かりにする。
陽翔はブランケットをかけられて、ソファの上でくるんと丸まるように寝転がった。

「ねぇ、執事」

「はい?」

「もし、僕が泣いてたら……どうする?」

「もちろん、すぐに慰めに行きますよ。手を握って、頭も撫でて、心配しながら」

「……そう。そしたら安心して泣けるな」

ぽつりとつぶやいたあと、陽翔は目を閉じた。
まつ毛の長さと、少し上を向いた鼻先。そのどれもが、子どもらしくて、でもどこか儚い。

“孤独”を知っている目をしている――最初に出会ったときから、そう感じていた。


しばらくして、陽翔の呼吸が穏やかになる。
僕はそっと隣に座り、言われた通り手を握ってみた。

小さな手。けれど、意志を込めて握り返すこの手は、誰よりも温かい。

(この子を守るって、きっと――こういうことなんだろうな)

大人が子どもを守るのではない。
互いに信頼し、支え合う――それが、僕たちの関係だった。
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