8 / 91
⑧デート
しおりを挟む
穏やかな午後の日差しが降り注ぐ、洒落た街角。
蓮はどこかそわそわしながら、隣を歩く沙耶を盗み見た。
「なに?」
沙耶は少し不機嫌そうに眉を寄せる。
でもそれが照れ隠しだと、蓮にはもう分かっていた。
「……いや、沙耶さん、すごく綺麗だなって」
「……バカ。そういうのは部屋の中で言いなさい」
顔を赤らめてそっぽを向く沙耶に、蓮は思わず笑みが零れた。
今日は調教も鎖もない。ただのデート。
沙耶はいつもの黒いタイトスカートに代わって、柔らかな白いワンピースを着ている。
それがあまりに眩しくて、胸がぎゅっと苦しくなった。
「でも、今日は沙耶さんを独り占めできて嬉しいです」
蓮がそう言うと、沙耶は軽くため息をつき、でもすぐに小さな声で答えた。
「……私もよ」
その言葉に頬が熱くなる。
思わず沙耶の手をそっと取ると、最初は小さく抵抗したものの、すぐに指を絡め返してくれた。
(あ……繋げた……)
心臓が跳ねる。
街行く人は誰も、沙耶を女王様だなんて思わないだろう。
この人が、あの夜のように冷たく笑って自分を責めてくる人だなんて――
でも、蓮の首には今日も細いチョーカーが巻かれている。
遠目には普通のファッションアクセサリーにしか見えないが、中には薄い金属が仕込まれ、軽く引けば締まる特注品だった。
(俺は……沙耶さんの犬で、でも……こうして一緒に並んで歩ける)
幸せで、泣きそうになった。
***
午後はカフェで一緒にケーキを食べ、ショップで沙耶のワンピースを褒め、次に小さな雑貨店へ入った。
「ほら、これ蓮に似合うわ」
沙耶が指差したのは、黒いシンプルなブレスレットだった。
革製で細く、さりげなく金の小さなプレートが光る。
「沙耶さんが選んでくれるなら……すごく嬉しいです」
「バカね……」
そう呟きながら、沙耶はその場で蓮の手首にブレスレットを巻きつけた。
カチャ、と小さな留め金の音がした瞬間、思わず胸が詰まった。
「これ、首輪じゃないけど……」
「うん……でも、これを見たら思い出します。俺は沙耶さんのものだって」
沙耶は恥ずかしそうに目を逸らし、それでも優しく微笑んだ。
「……変な子。でも、そういうところが好きよ」
そう言って、店を出るときにそっと蓮の頬にキスをくれた。
街角でのそのキスは、調教よりもずっと心臓に響いた。
***
その夜、沙耶の部屋に戻ると、彼女はリビングのソファに座って蓮を呼んだ。
「蓮、膝枕してあげる」
「えっ……?」
「今日は……お利口だったから」
照れたように唇を尖らせる沙耶に、嬉しくなって素直に彼女の膝に頭を乗せた。
「……沙耶さん……」
「なに?」
「……大好きです」
沙耶は何も言わずに蓮の髪を撫でた。
いつもの冷たい指なのに、今日はやけに優しく感じた。
目を閉じると、ふわりと香水の匂いがした。
その甘い匂いと、ゆっくりと頭を撫でる手の動きが心地よくて、蓮は少しだけ涙が滲むのを感じた。
(この人の犬でよかった……沙耶さんに飼われて……よかった)
沙耶はそっと、額に唇を落とした。
「私も……大好きよ、蓮」
蓮はどこかそわそわしながら、隣を歩く沙耶を盗み見た。
「なに?」
沙耶は少し不機嫌そうに眉を寄せる。
でもそれが照れ隠しだと、蓮にはもう分かっていた。
「……いや、沙耶さん、すごく綺麗だなって」
「……バカ。そういうのは部屋の中で言いなさい」
顔を赤らめてそっぽを向く沙耶に、蓮は思わず笑みが零れた。
今日は調教も鎖もない。ただのデート。
沙耶はいつもの黒いタイトスカートに代わって、柔らかな白いワンピースを着ている。
それがあまりに眩しくて、胸がぎゅっと苦しくなった。
「でも、今日は沙耶さんを独り占めできて嬉しいです」
蓮がそう言うと、沙耶は軽くため息をつき、でもすぐに小さな声で答えた。
「……私もよ」
その言葉に頬が熱くなる。
思わず沙耶の手をそっと取ると、最初は小さく抵抗したものの、すぐに指を絡め返してくれた。
(あ……繋げた……)
心臓が跳ねる。
街行く人は誰も、沙耶を女王様だなんて思わないだろう。
この人が、あの夜のように冷たく笑って自分を責めてくる人だなんて――
でも、蓮の首には今日も細いチョーカーが巻かれている。
遠目には普通のファッションアクセサリーにしか見えないが、中には薄い金属が仕込まれ、軽く引けば締まる特注品だった。
(俺は……沙耶さんの犬で、でも……こうして一緒に並んで歩ける)
幸せで、泣きそうになった。
***
午後はカフェで一緒にケーキを食べ、ショップで沙耶のワンピースを褒め、次に小さな雑貨店へ入った。
「ほら、これ蓮に似合うわ」
沙耶が指差したのは、黒いシンプルなブレスレットだった。
革製で細く、さりげなく金の小さなプレートが光る。
「沙耶さんが選んでくれるなら……すごく嬉しいです」
「バカね……」
そう呟きながら、沙耶はその場で蓮の手首にブレスレットを巻きつけた。
カチャ、と小さな留め金の音がした瞬間、思わず胸が詰まった。
「これ、首輪じゃないけど……」
「うん……でも、これを見たら思い出します。俺は沙耶さんのものだって」
沙耶は恥ずかしそうに目を逸らし、それでも優しく微笑んだ。
「……変な子。でも、そういうところが好きよ」
そう言って、店を出るときにそっと蓮の頬にキスをくれた。
街角でのそのキスは、調教よりもずっと心臓に響いた。
***
その夜、沙耶の部屋に戻ると、彼女はリビングのソファに座って蓮を呼んだ。
「蓮、膝枕してあげる」
「えっ……?」
「今日は……お利口だったから」
照れたように唇を尖らせる沙耶に、嬉しくなって素直に彼女の膝に頭を乗せた。
「……沙耶さん……」
「なに?」
「……大好きです」
沙耶は何も言わずに蓮の髪を撫でた。
いつもの冷たい指なのに、今日はやけに優しく感じた。
目を閉じると、ふわりと香水の匂いがした。
その甘い匂いと、ゆっくりと頭を撫でる手の動きが心地よくて、蓮は少しだけ涙が滲むのを感じた。
(この人の犬でよかった……沙耶さんに飼われて……よかった)
沙耶はそっと、額に唇を落とした。
「私も……大好きよ、蓮」
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる