【R18】支配と快楽の檻で

ましゅまろ

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27. どこにいても

コテージのテラスでは、朝の強い日差しが白い床を照らしていた。

 潮風が少し湿り気を帯びて吹き抜け、テーブルに置かれたカップを小さく揺らす。

 「……もう帰る支度しなきゃいけないのね」

 沙耶はアイスコーヒーを口に運びながら、小さく息を吐いた。

 蓮は窓辺でスーツケースの整理をしていた。
 自分の荷物は少なく、ほとんどが沙耶の服や小物。
 ハワイに来る時から、荷物の大半は沙耶のものだった。

 (それが嬉しかった。俺は沙耶さんのためにここにいる)

 そう自然に思えていた。



 「蓮、そっち終わった?」

 「はい」

 「じゃあ……ちょっとこっち来て」

 沙耶がソファに腰を下ろし、軽く指を曲げて呼ぶ。
 蓮は素直に近づくと、沙耶は小さく笑って蓮の首元に指を滑らせた。

 まだ薄いチョーカーをつけているその場所を、沙耶の指がなぞる。

 「これ……飛行機の中でもちゃんとつけていなさいね」

 「……はい」

 沙耶はすぐに満足そうに目を細めると、そっと蓮を引き寄せてキスを落とした。

 長く、柔らかく。
 口の中に沙耶の香りが広がって、自然に目を閉じた。



 やがて唇が離れると、沙耶は少し名残惜しそうに額を預けてきた。

 「……帰ったら、すぐにまた私の好きなこと、させてね」

 「……もちろんです」

 その言葉に、沙耶は小さく微笑み、蓮の頬に唇を落とした。



 チェックアウトを済ませ、車に乗り込む。

 コテージを離れるとき、沙耶は後ろを振り返り、海の見える景色を一瞬だけじっと見ていた。

 何も言わない。
 でもその横顔が、ほんの少し寂しそうだった。

 蓮は沙耶の手をそっと握った。

 「……また来ましょう。沙耶さんと」

 その言葉に沙耶は一瞬驚いたように目を見開き、それから小さく笑った。

 「……そうね。また来ましょう」

 指先が少し強く絡んでくる。



 ホノルル空港のラウンジは落ち着いた静けさに包まれていた。

 沙耶はカウンターで頼んだシャンパンを口にしながら、窓の外に並ぶ飛行機を眺めていた。

 蓮は沙耶の隣で、じっとその横顔を見ていた。

 「何?」

 「……いえ」

 沙耶は少しだけ不思議そうに蓮を見つめ、それから小さく笑った。

 「ふふ……そんな顔して。やっぱり可愛いわ」

 沙耶はそっと蓮の手に自分の指を絡めた。
 ガラス張りのラウンジの中、周囲には他の客がいるというのに、その仕草はどこまでも自然だった。



 やがて搭乗の案内が流れ、二人はゲートへ向かう。

 「……帰りも長いわよ? 7時間以上、あなたは私の隣でおとなしくしてなきゃいけないの」

 「……はい」

 「ちゃんといい子にできる?」

 「……はい」

 そう答えると、沙耶はまた少し笑って蓮の肩に軽く頬を寄せた。

 「良い子」



 飛行機の中、ビジネスクラスの広いシートに並んで座ると、沙耶は毛布をかけてゆっくりと身体を寄せた。

 「少し寝るわ」

 「はい……」

 でも沙耶は目を閉じる代わりに、そっと蓮の手を膝の上へ導き、そのまま自分の太腿に置いた。

 「ずっと触れていて」

 小さな声でそう言われる。

 沙耶の太腿は少しだけ冷えていて、触れているうちにじんわり熱を帯びていく。

 何でもない仕草なのに、それだけで胸がいっぱいになった。



 数時間後、沙耶は浅い眠りから目を覚まし、軽く伸びをした。

 蓮の手はずっと太腿に置かれたままだった。

 「……ずっとこうしてるの、好きよ」

 それだけ言って、沙耶は短くキスをした。

 窓の外にはまだどこまでも青い空が広がっている。
 でもあと数時間もすれば、日本に戻る。

 これからもまた、沙耶の傍で生きる毎日が始まるのだと思うと、胸の奥が静かに熱くなった。
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