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27. どこにいても
コテージのテラスでは、朝の強い日差しが白い床を照らしていた。
潮風が少し湿り気を帯びて吹き抜け、テーブルに置かれたカップを小さく揺らす。
「……もう帰る支度しなきゃいけないのね」
沙耶はアイスコーヒーを口に運びながら、小さく息を吐いた。
蓮は窓辺でスーツケースの整理をしていた。
自分の荷物は少なく、ほとんどが沙耶の服や小物。
ハワイに来る時から、荷物の大半は沙耶のものだった。
(それが嬉しかった。俺は沙耶さんのためにここにいる)
そう自然に思えていた。
⸻
「蓮、そっち終わった?」
「はい」
「じゃあ……ちょっとこっち来て」
沙耶がソファに腰を下ろし、軽く指を曲げて呼ぶ。
蓮は素直に近づくと、沙耶は小さく笑って蓮の首元に指を滑らせた。
まだ薄いチョーカーをつけているその場所を、沙耶の指がなぞる。
「これ……飛行機の中でもちゃんとつけていなさいね」
「……はい」
沙耶はすぐに満足そうに目を細めると、そっと蓮を引き寄せてキスを落とした。
長く、柔らかく。
口の中に沙耶の香りが広がって、自然に目を閉じた。
⸻
やがて唇が離れると、沙耶は少し名残惜しそうに額を預けてきた。
「……帰ったら、すぐにまた私の好きなこと、させてね」
「……もちろんです」
その言葉に、沙耶は小さく微笑み、蓮の頬に唇を落とした。
⸻
チェックアウトを済ませ、車に乗り込む。
コテージを離れるとき、沙耶は後ろを振り返り、海の見える景色を一瞬だけじっと見ていた。
何も言わない。
でもその横顔が、ほんの少し寂しそうだった。
蓮は沙耶の手をそっと握った。
「……また来ましょう。沙耶さんと」
その言葉に沙耶は一瞬驚いたように目を見開き、それから小さく笑った。
「……そうね。また来ましょう」
指先が少し強く絡んでくる。
⸻
ホノルル空港のラウンジは落ち着いた静けさに包まれていた。
沙耶はカウンターで頼んだシャンパンを口にしながら、窓の外に並ぶ飛行機を眺めていた。
蓮は沙耶の隣で、じっとその横顔を見ていた。
「何?」
「……いえ」
沙耶は少しだけ不思議そうに蓮を見つめ、それから小さく笑った。
「ふふ……そんな顔して。やっぱり可愛いわ」
沙耶はそっと蓮の手に自分の指を絡めた。
ガラス張りのラウンジの中、周囲には他の客がいるというのに、その仕草はどこまでも自然だった。
⸻
やがて搭乗の案内が流れ、二人はゲートへ向かう。
「……帰りも長いわよ? 7時間以上、あなたは私の隣でおとなしくしてなきゃいけないの」
「……はい」
「ちゃんといい子にできる?」
「……はい」
そう答えると、沙耶はまた少し笑って蓮の肩に軽く頬を寄せた。
「良い子」
⸻
飛行機の中、ビジネスクラスの広いシートに並んで座ると、沙耶は毛布をかけてゆっくりと身体を寄せた。
「少し寝るわ」
「はい……」
でも沙耶は目を閉じる代わりに、そっと蓮の手を膝の上へ導き、そのまま自分の太腿に置いた。
「ずっと触れていて」
小さな声でそう言われる。
沙耶の太腿は少しだけ冷えていて、触れているうちにじんわり熱を帯びていく。
何でもない仕草なのに、それだけで胸がいっぱいになった。
⸻
数時間後、沙耶は浅い眠りから目を覚まし、軽く伸びをした。
蓮の手はずっと太腿に置かれたままだった。
「……ずっとこうしてるの、好きよ」
それだけ言って、沙耶は短くキスをした。
窓の外にはまだどこまでも青い空が広がっている。
でもあと数時間もすれば、日本に戻る。
これからもまた、沙耶の傍で生きる毎日が始まるのだと思うと、胸の奥が静かに熱くなった。
潮風が少し湿り気を帯びて吹き抜け、テーブルに置かれたカップを小さく揺らす。
「……もう帰る支度しなきゃいけないのね」
沙耶はアイスコーヒーを口に運びながら、小さく息を吐いた。
蓮は窓辺でスーツケースの整理をしていた。
自分の荷物は少なく、ほとんどが沙耶の服や小物。
ハワイに来る時から、荷物の大半は沙耶のものだった。
(それが嬉しかった。俺は沙耶さんのためにここにいる)
そう自然に思えていた。
⸻
「蓮、そっち終わった?」
「はい」
「じゃあ……ちょっとこっち来て」
沙耶がソファに腰を下ろし、軽く指を曲げて呼ぶ。
蓮は素直に近づくと、沙耶は小さく笑って蓮の首元に指を滑らせた。
まだ薄いチョーカーをつけているその場所を、沙耶の指がなぞる。
「これ……飛行機の中でもちゃんとつけていなさいね」
「……はい」
沙耶はすぐに満足そうに目を細めると、そっと蓮を引き寄せてキスを落とした。
長く、柔らかく。
口の中に沙耶の香りが広がって、自然に目を閉じた。
⸻
やがて唇が離れると、沙耶は少し名残惜しそうに額を預けてきた。
「……帰ったら、すぐにまた私の好きなこと、させてね」
「……もちろんです」
その言葉に、沙耶は小さく微笑み、蓮の頬に唇を落とした。
⸻
チェックアウトを済ませ、車に乗り込む。
コテージを離れるとき、沙耶は後ろを振り返り、海の見える景色を一瞬だけじっと見ていた。
何も言わない。
でもその横顔が、ほんの少し寂しそうだった。
蓮は沙耶の手をそっと握った。
「……また来ましょう。沙耶さんと」
その言葉に沙耶は一瞬驚いたように目を見開き、それから小さく笑った。
「……そうね。また来ましょう」
指先が少し強く絡んでくる。
⸻
ホノルル空港のラウンジは落ち着いた静けさに包まれていた。
沙耶はカウンターで頼んだシャンパンを口にしながら、窓の外に並ぶ飛行機を眺めていた。
蓮は沙耶の隣で、じっとその横顔を見ていた。
「何?」
「……いえ」
沙耶は少しだけ不思議そうに蓮を見つめ、それから小さく笑った。
「ふふ……そんな顔して。やっぱり可愛いわ」
沙耶はそっと蓮の手に自分の指を絡めた。
ガラス張りのラウンジの中、周囲には他の客がいるというのに、その仕草はどこまでも自然だった。
⸻
やがて搭乗の案内が流れ、二人はゲートへ向かう。
「……帰りも長いわよ? 7時間以上、あなたは私の隣でおとなしくしてなきゃいけないの」
「……はい」
「ちゃんといい子にできる?」
「……はい」
そう答えると、沙耶はまた少し笑って蓮の肩に軽く頬を寄せた。
「良い子」
⸻
飛行機の中、ビジネスクラスの広いシートに並んで座ると、沙耶は毛布をかけてゆっくりと身体を寄せた。
「少し寝るわ」
「はい……」
でも沙耶は目を閉じる代わりに、そっと蓮の手を膝の上へ導き、そのまま自分の太腿に置いた。
「ずっと触れていて」
小さな声でそう言われる。
沙耶の太腿は少しだけ冷えていて、触れているうちにじんわり熱を帯びていく。
何でもない仕草なのに、それだけで胸がいっぱいになった。
⸻
数時間後、沙耶は浅い眠りから目を覚まし、軽く伸びをした。
蓮の手はずっと太腿に置かれたままだった。
「……ずっとこうしてるの、好きよ」
それだけ言って、沙耶は短くキスをした。
窓の外にはまだどこまでも青い空が広がっている。
でもあと数時間もすれば、日本に戻る。
これからもまた、沙耶の傍で生きる毎日が始まるのだと思うと、胸の奥が静かに熱くなった。
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