スパルタ学園

ましゅまろ

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さらけ出される身体

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翌朝、まだ太陽が高く昇り切らないうちに、再び寮のベルが鳴り響いた。

「天音、起きろ!」

隣のベッドの少年が小声で呼ぶ。
天音は寝ぼけ頭を振り払いながら身を起こした。

「今日は何だよ……」

声がかすれて自分でも驚く。連日の訓練で喉が荒れていた。

やがて部屋のドアが開き、当番の上級生が木刀を鳴らす。

「全員、身体測定の準備をしろ!」

「……っ」

(身体測定……?)

不穏な響きに、胸がざわりとした。

 



 
渡されたのは、昨日と同じ白いブリーフ。

「ブリーフだけになり、廊下で整列!」

またかと思いながらも、もう逆らう気力は薄れていた。
皆が同じように無言で制服を脱ぎ、白い布切れ一枚になる。

(……くそ、また見せ物じゃねぇか……)

だが昨日までよりも自然に「はい」と返事が出ていた。自分でもそれに気づき、嫌な汗が背を伝う。

廊下に整列すると、上級生が一人一人の肩や背筋をチェックする。

「もっと胸を張れ。お前、猫背になってるぞ。」

バシンッ!

天音の前の少年が軽く尻を叩かれ、小さく呻く。

次に木刀を持つ当番が天音の前に立った。天音は慌てて背を伸ばす。

「……ふん、その調子だ。」

木刀が肩を軽く叩いただけで済み、安堵の吐息をこぼした。

(あぁ……もう俺、叩かれたくなくて勝手に背筋伸ばしてる……)

小さな敗北感が胸を抉った。

 



 
案内されたのは学園内の体育館。そこには医療台のような台と、秤、身長計、体脂肪を測るための装置まで整然と並んでいた。

だが驚いたのは、その脇に整列する教師たち。全員が木刀を持っている。

(身体測定に木刀持つ必要あるかよ……)

列は静かに進み、一人一人、ブリーフを脱いで全裸にさせられる。
年相応の小さな体つき、うっすらと筋の見える子供らしい腹、どの少年も羞恥に顔を赤くしながら測定台に上がっていく。

「次、天音。」

ビクリと名を呼ばれ、前へ出る。

「ブリーフを脱げ。」

「……っ」

ほんの一瞬ためらった。その時、後ろにいた当番が木刀の柄で軽く背中を小突く。

「早くしろ。」

「……はい……」

情けなくも、自然に答えていた。

震える手でブリーフを下ろすと、ひやりとした空気が股間を撫でた。

「台に乗れ。」

指示に従い、秤に乗る。全員が見ている前で、数字が読み上げられた。

「36.8キロ。」

「次、身長を計る。頭をきっちりつけろ。」

頭頂に器具が下ろされると、無意識に背筋をピンと伸ばしていた。

「142.3センチ。……おい、少しでもずらしたら尻を打つぞ。」

「はい……」

返事をする声がかすれていた。

(嫌だ……でも、逆らったら、また……)

屈辱と恐怖で全身が火照る。太股が無意識にこわばった。

 



 
「体脂肪計に乗れ。」

別の台に移動し、冷たい金属の上に裸足で立つ。

「13.9%。なかなか良い数値だ。」

桐島が帳面にメモしながら、じっと天音を見た。

「この年頃は脂肪がつきやすい。お前は無駄な贅肉が少ない。だが逆に言えば、持久力をつけるにはまだ訓練が必要だな。」

「……はい。」

自然と出る「はい」に、もう抵抗する心は弱くなりつつあった。

次に柔軟性を見るといい、天音は台の上に座らされ、前屈をさせられた。

「もっと深く。膝を曲げるな。」

「っ……はい……」

小さな腰を折り曲げると、尻の割れ目がむき出しになる。それを教師たちが何の表情もなく覗き込んでくる。

(見んな……くそっ……見んなよ……)

でも反発する気持ちより先に、「叩かれたくない」という恐怖が全てを抑え込んでいた。

 



 
一連の測定が終わると、ようやくブリーフが戻された。
布地が肌に触れるだけで、心底ほっとする。

(……こんなもんで安心してるなんて……)

自分が少しずつ変えられていってるのがわかった。

「全員、整列!」

木刀の柄をコンと床に打つ音が響く。

裸足のまま、全員が白いブリーフ一枚で直立する。

桐島が前に出て、静かに目を細めた。

「お前たちはよくやっている。だが、ここはスパルタ学園だ。甘えは一切許されない。何よりも服従と規律。それを身体に刻め。」

木刀の先が天音の顎を持ち上げる。

「お前は——だいぶ素直になったな。」

「……っ」

悔しいのに、身体が自然に反応してしまう。

「はい……」

その声が、ほんの少し震えていた。

桐島は満足げに微笑み、背中を木刀で軽く叩いた。

「よし、着替えて良い。」

その瞬間、全員が一斉に息をついた。
冷たい床に散らばった少年たちの足音が、一斉に更衣室へ向かう。

 



 
制服を身に着けるとき、天音は自分が少し安心していることに気づいて愕然とした。

(俺、何でこんなにも……服着れるだけで安心してんだよ……)

でも、それがこの学園の狙いだと、頭では分かっていた。

恐怖で縛り、羞恥で心を砕き、少しの衣服や命令を守ることで救われるように錯覚させる。

(負けねぇ……負けるもんか……)

それでも尻に残る痛みの記憶が、強くはならないように、心をそっと押さえつけていた。
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