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本編
偽りから始まる本物の恋、そして王妃の影
「おはよう、リリィ」
──その朝、王の寝室で目を覚ました私に、
王・レオンは、まるで恋人のような声で語りかけてきた。
優しい笑み。整った横顔。
あの冷酷だった目に、今はもうあの頃の冷たさはなかった。
「昨日は……ごめんなさい。怖がらせてしまった」
「……ううん、怖かったけど、でも」
「嬉しかった。あなたが、私“自身”を見てくれたのが」
ふたりの距離が、ほんの少しだけ縮まった気がした。
けれど、それは──王宮という舞台の外での話だった。
◆ ◆ ◆
午前十時。
私のもとに、城の侍女頭がやってきた。
「……リリィ様。少しよろしいでしょうか?」
「“様”……?」
「ええ。王にお仕えした女性には、仮称ですが“準妃”としての礼儀が求められます」
(準妃……!)
つまり、私はもう「ただの演技をしている女」ではなくなったのだ。
王に気に入られ、王の寝室で夜を越えた女。
それがどう扱われるのか──身に沁みるほど、分かっていた。
◆ ◆ ◆
「準妃だなんて、笑わせないで!」
――そう言ったのは、貴族出身の妃候補・セリーナ嬢。
黄金の巻き髪、ドレスにはダイヤ。
“処女性保持法”によって処女を維持し、王の側室候補として育てられてきた少女たちの代表格だ。
「あなたみたいな庶民の娘が、何をどう頑張ったって“王妃”にはなれないのよ!」
「……私は、そんなつもりでここに来たんじゃない」
「へえ? じゃあ何よ? 王と寝るつもりもなかったとでも?」
私は、何も言い返さなかった。
──だって、本当はその通りだから。
でも、そこへ現れたのは──レオンだった。
「リリィに手を出すな。……王命だ」
「っ……陛下……」
「彼女を侮辱する者は、法を犯す者と同じ。わかったな、セリーナ」
セリーナは青ざめて跪いた。
「……はい、陛下」
◆ ◆ ◆
その夜。
王の部屋で、私は彼に問いかけた。
「私、王妃になれると思ってるわけじゃない。でも……ここにいていいの?」
レオンはしばらく黙っていたが、
やがてゆっくりと私の肩を抱き寄せて、こう言った。
「……“王妃にする気がなければ、抱かなかった”」
私は、その言葉に胸が熱くなった。
この恋は、最初は嘘だった。
でも、今はもう──本物になろうとしている。
◆ ◆ ◆
けれど、その翌朝。
一通の報告書が、王のもとに届いた。
《王の花嫁候補に、“処女ではない女”が混じっているという噂あり》
──その標的が誰なのか、明らかにするため、
王宮内で“再査定”の議論が始まった。
つまり私が、もう一度、“バレるかどうか”の危機にさらされることを意味していた。
──その朝、王の寝室で目を覚ました私に、
王・レオンは、まるで恋人のような声で語りかけてきた。
優しい笑み。整った横顔。
あの冷酷だった目に、今はもうあの頃の冷たさはなかった。
「昨日は……ごめんなさい。怖がらせてしまった」
「……ううん、怖かったけど、でも」
「嬉しかった。あなたが、私“自身”を見てくれたのが」
ふたりの距離が、ほんの少しだけ縮まった気がした。
けれど、それは──王宮という舞台の外での話だった。
◆ ◆ ◆
午前十時。
私のもとに、城の侍女頭がやってきた。
「……リリィ様。少しよろしいでしょうか?」
「“様”……?」
「ええ。王にお仕えした女性には、仮称ですが“準妃”としての礼儀が求められます」
(準妃……!)
つまり、私はもう「ただの演技をしている女」ではなくなったのだ。
王に気に入られ、王の寝室で夜を越えた女。
それがどう扱われるのか──身に沁みるほど、分かっていた。
◆ ◆ ◆
「準妃だなんて、笑わせないで!」
――そう言ったのは、貴族出身の妃候補・セリーナ嬢。
黄金の巻き髪、ドレスにはダイヤ。
“処女性保持法”によって処女を維持し、王の側室候補として育てられてきた少女たちの代表格だ。
「あなたみたいな庶民の娘が、何をどう頑張ったって“王妃”にはなれないのよ!」
「……私は、そんなつもりでここに来たんじゃない」
「へえ? じゃあ何よ? 王と寝るつもりもなかったとでも?」
私は、何も言い返さなかった。
──だって、本当はその通りだから。
でも、そこへ現れたのは──レオンだった。
「リリィに手を出すな。……王命だ」
「っ……陛下……」
「彼女を侮辱する者は、法を犯す者と同じ。わかったな、セリーナ」
セリーナは青ざめて跪いた。
「……はい、陛下」
◆ ◆ ◆
その夜。
王の部屋で、私は彼に問いかけた。
「私、王妃になれると思ってるわけじゃない。でも……ここにいていいの?」
レオンはしばらく黙っていたが、
やがてゆっくりと私の肩を抱き寄せて、こう言った。
「……“王妃にする気がなければ、抱かなかった”」
私は、その言葉に胸が熱くなった。
この恋は、最初は嘘だった。
でも、今はもう──本物になろうとしている。
◆ ◆ ◆
けれど、その翌朝。
一通の報告書が、王のもとに届いた。
《王の花嫁候補に、“処女ではない女”が混じっているという噂あり》
──その標的が誰なのか、明らかにするため、
王宮内で“再査定”の議論が始まった。
つまり私が、もう一度、“バレるかどうか”の危機にさらされることを意味していた。
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