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これから
進むべき道
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今日は使われる予定のない調理室へ移動した私達。
若葉がティーカップを運んできた。
「とりあえず紅茶入れましたわ」
「ありがとう」
私は一口紅茶を飲む。
「さてと、これからはモタモタしてられないね」
利津が肩肘をついて、手の甲に顎を乗せた。
「そうね。先に『石』の秘密を突き止めて、何をするべきなのか明らかにしないと」
「何が待っているのかわかりませんけど、不穏な空気しかしませんわ」
「それでもやらなくちゃ。やるしかないもの」
「だね。《姫巫女》様の為にも、あたし達の為にも負けられない」
ニカッと悪戯っぽい笑みを浮かべて頷く利津。
「知恵の見せ所ですわ」
若葉もウインクして頷く。
「やるわよ!ここまできたら!」
とりあえず、姫の時代(おそらく平安時代くらい)に何かの手掛かりがないかと、図書室の隣の読まれなくなった本を一時保管しておく図書保管室に忍び込んでみる事にした私達。
「すっごいホコリですわね…掃除されてますのかしら」
「若葉、考えて物を言え。ほとんど倉庫と同じだよ」
ケホケホと顔の前でホコリを避けるように手を振る若葉に呆れたように利津がツッコミを入れる。
「そうよ。それに若葉が「ここはどうですかしら?」って言ったんだからね」
「…わかってますわよ。探しますわ」
諦め顔若葉。
その若葉の肩をポンと叩いて
「じゃ、ここは若葉ちゃんに任せた!」
「えっ?利津?」
若葉の目が丸く見開かれる。
「あたしと美沙希は他の所当たるから」
「えっ?」
さらに目を大きく見開く。眼球出ちゃうよ?
「そういう事。手分けした方が早いじゃない?頼みましてよ。若葉ちゃん!期待してよ」
ウインクする私。
「ひどいですわ。ここをわたくし1人で探せだなんて」
嘆く若葉を残して、私と利津は図書保管室を出る。
廊下を歩きながら
「さてと、あたし達はどうする?」
利津が私を見る。
「私は屋上に言って、姫に呼びかけてみようと思って。屋上なら誰もこないだろうし」
「了解。じゃ、あたしは別の線で調べてみる。もしかしたら歴史資料室に何かあるかもしれないし」
「OK。気をつけてね」
「そっちもね」
そうして、私達も別々に分かれた。
ドアの隣の窓から屋上に出る。
空を見上げて深呼吸する。よく晴れて、青空に浮かぶいくつかの雲。こんなに気持ち良くて、いつもと変わらない空なのに、葉月達と対立するなんて信じられない。
目を閉じて、もう一度深呼吸して、目を開けて呼び掛ける。
「姫。私の声、聞こえているでしょ?お願い。応えて」
返事を待つ。
何度か呼び掛けた時、姫の気配を感じた。
『美沙希。遅れてごめんなさい。津薙が美沙希の元に参ります』
「姫、ありがとう。必ず、姫を助けてみせるわ!」
『美沙希…ありがとう。こんな事に巻き込んでしまって申し訳なく思っています』
その後、合流した若葉と利津も何も収穫なく解散した。
家に帰って、お風呂に入った後に自分の部屋に戻って待っていると津薙と三若が現れた。
『美沙希様、遅れて申し訳ございません』
深々と頭を下げる2人。
「いいのよ。約束してたわけじゃないんだもの。2人とも顔を上げて。こちらこそ、呼び出してごめんね」
『とんでもないことにございます。もう1度、こうしてお会いする事が出来て、三若は嬉しゅうございます』
「ありがとう。私もよ。それで、早速だけど」
微笑む2人の顔は、前回よりも憔悴しているように思う。
『承知しております。美沙希様、落ち着いてお聞きくださいませ』
2人の話を聞いて、私は小さく悲鳴にも似た声を上げた。
「なんですって!?津薙と三若、あなた達2人は姫を庇ってもう直ぐ死ぬって言うの?こっちはこっちで、利津と若葉が生死を彷徨う?何かの間違いでしょ?」
『美沙希様、落ち着いてくださいませ。もう、わたくし達にはどうする事も出来ない事なのです』
言いながら、津薙が目を伏せる。
「どういう事?仲間が死んでしまうかもしれないのを黙って見ていろって事?」
『美沙希様、これは決められた《さだめ》なのです。変える事は出来ないのです』
悲しそうに微笑む三若。
これからの事を受け入れている覚悟のような微笑み。
違う。そんなの間違ってる。
「津薙、三若。それは違うわ。例え決められている運命だとしたって、自分の人生じゃない。だったら望みを持って、そんな運命変えてやればいいのよ!」
私の言葉に目をぱちくりさせる2人。顔を見合わせて、私を見る。
『望みを持って…』
呟く津薙。
「そうよ。私は絶対諦めない。守ってみせるわ」
『美沙希様は、とてもお強いのですね』
三若の顔に少し明るさが戻った気がした。
『そうですね。わたくし達も諦めずに立ち向かおうと思います。もうお会い出来ないかもしれませんが、美沙希様、どうぞお健やかに』
「何言うの!この件が終わったら、また会いましょう」
次の日、少し早目に学校へ行った私に既に来ていた葉月が寄ってくる。
「おはよう美沙希。ちょっといい?」
「葉月おはよう。ここじゃ言えない話?意味ありげね」
「ふふっ。そう、ね」
そして、誰もこないだろう教室に移動する私と葉月。
「ここでいいでしょう?誰も来ないわ」
「そうね。それにしても、考えてみたら私達、最近授業サボりすぎね」
笑う葉月。見た目何も変わらないのに、ついこの間までの仲の良かった友達の表情とはどこか違う。
「仕方ないわね。さてと、本題に入りましょう。言いたい事は大体の想像がつくけど」
「おはよー。って、もう放課後よね。やらかしたわ」
「利津…随分遅い登校ですわね。あら?美沙希と一緒じゃないんですの?」
首を傾げる若葉。
「え?いないの?知らないわよ」
ハテナ顔の利津の後ろから叫ぶような声を上げたのは未奈だ。
「葉月がいなーいっ!」
「未奈…びっくりしてよ…」
「人をふってわいたように言わないでよー」
頬を膨らませる未奈。
「ところで、葉月がいないって?」
「そ、さっきから探してんだけど、どこに行ったか」
髪の毛をかきあげながら、未奈の隣にいた理沙がため息混じりに言う。
「美沙希もいないんですのよ」
「へぇ、そりゃ…って…まさか」
若葉の言葉に4人でハッとする。
「早く探さなきゃ!」
利津が駆け出すように教室を出た。
「そう。どうしても『石』を渡してくれる気はないって事ね。じゃ、取り合うしかないわね」
強気な笑みを浮かべる葉月。
「そうね。仕方ないわね。『石』を渡すわけにはいかないもの。避けて通れないケンカは承知よ」
「ま、そう言うとは思ってたけど。私は欲しいものは絶対、手に入れるまで諦めないわよ」
そう言って、右腕をあげて私の胸元を人差し指でさす。
「それは私も同じ事。絶対に渡さないわ」
私の言葉を鼻で嘲笑う葉月。
「笑っちゃうわ。『石』の力の引出し方すら知らないお子様が、随分と偉そうな事言えたものね」
「その言葉、お返しするわ」
余裕を込めた笑みを返す私。
「覚悟しておく事ね」
「そっちもね」
話がつかないまま、葉月から先に教室を後にした。
若葉がティーカップを運んできた。
「とりあえず紅茶入れましたわ」
「ありがとう」
私は一口紅茶を飲む。
「さてと、これからはモタモタしてられないね」
利津が肩肘をついて、手の甲に顎を乗せた。
「そうね。先に『石』の秘密を突き止めて、何をするべきなのか明らかにしないと」
「何が待っているのかわかりませんけど、不穏な空気しかしませんわ」
「それでもやらなくちゃ。やるしかないもの」
「だね。《姫巫女》様の為にも、あたし達の為にも負けられない」
ニカッと悪戯っぽい笑みを浮かべて頷く利津。
「知恵の見せ所ですわ」
若葉もウインクして頷く。
「やるわよ!ここまできたら!」
とりあえず、姫の時代(おそらく平安時代くらい)に何かの手掛かりがないかと、図書室の隣の読まれなくなった本を一時保管しておく図書保管室に忍び込んでみる事にした私達。
「すっごいホコリですわね…掃除されてますのかしら」
「若葉、考えて物を言え。ほとんど倉庫と同じだよ」
ケホケホと顔の前でホコリを避けるように手を振る若葉に呆れたように利津がツッコミを入れる。
「そうよ。それに若葉が「ここはどうですかしら?」って言ったんだからね」
「…わかってますわよ。探しますわ」
諦め顔若葉。
その若葉の肩をポンと叩いて
「じゃ、ここは若葉ちゃんに任せた!」
「えっ?利津?」
若葉の目が丸く見開かれる。
「あたしと美沙希は他の所当たるから」
「えっ?」
さらに目を大きく見開く。眼球出ちゃうよ?
「そういう事。手分けした方が早いじゃない?頼みましてよ。若葉ちゃん!期待してよ」
ウインクする私。
「ひどいですわ。ここをわたくし1人で探せだなんて」
嘆く若葉を残して、私と利津は図書保管室を出る。
廊下を歩きながら
「さてと、あたし達はどうする?」
利津が私を見る。
「私は屋上に言って、姫に呼びかけてみようと思って。屋上なら誰もこないだろうし」
「了解。じゃ、あたしは別の線で調べてみる。もしかしたら歴史資料室に何かあるかもしれないし」
「OK。気をつけてね」
「そっちもね」
そうして、私達も別々に分かれた。
ドアの隣の窓から屋上に出る。
空を見上げて深呼吸する。よく晴れて、青空に浮かぶいくつかの雲。こんなに気持ち良くて、いつもと変わらない空なのに、葉月達と対立するなんて信じられない。
目を閉じて、もう一度深呼吸して、目を開けて呼び掛ける。
「姫。私の声、聞こえているでしょ?お願い。応えて」
返事を待つ。
何度か呼び掛けた時、姫の気配を感じた。
『美沙希。遅れてごめんなさい。津薙が美沙希の元に参ります』
「姫、ありがとう。必ず、姫を助けてみせるわ!」
『美沙希…ありがとう。こんな事に巻き込んでしまって申し訳なく思っています』
その後、合流した若葉と利津も何も収穫なく解散した。
家に帰って、お風呂に入った後に自分の部屋に戻って待っていると津薙と三若が現れた。
『美沙希様、遅れて申し訳ございません』
深々と頭を下げる2人。
「いいのよ。約束してたわけじゃないんだもの。2人とも顔を上げて。こちらこそ、呼び出してごめんね」
『とんでもないことにございます。もう1度、こうしてお会いする事が出来て、三若は嬉しゅうございます』
「ありがとう。私もよ。それで、早速だけど」
微笑む2人の顔は、前回よりも憔悴しているように思う。
『承知しております。美沙希様、落ち着いてお聞きくださいませ』
2人の話を聞いて、私は小さく悲鳴にも似た声を上げた。
「なんですって!?津薙と三若、あなた達2人は姫を庇ってもう直ぐ死ぬって言うの?こっちはこっちで、利津と若葉が生死を彷徨う?何かの間違いでしょ?」
『美沙希様、落ち着いてくださいませ。もう、わたくし達にはどうする事も出来ない事なのです』
言いながら、津薙が目を伏せる。
「どういう事?仲間が死んでしまうかもしれないのを黙って見ていろって事?」
『美沙希様、これは決められた《さだめ》なのです。変える事は出来ないのです』
悲しそうに微笑む三若。
これからの事を受け入れている覚悟のような微笑み。
違う。そんなの間違ってる。
「津薙、三若。それは違うわ。例え決められている運命だとしたって、自分の人生じゃない。だったら望みを持って、そんな運命変えてやればいいのよ!」
私の言葉に目をぱちくりさせる2人。顔を見合わせて、私を見る。
『望みを持って…』
呟く津薙。
「そうよ。私は絶対諦めない。守ってみせるわ」
『美沙希様は、とてもお強いのですね』
三若の顔に少し明るさが戻った気がした。
『そうですね。わたくし達も諦めずに立ち向かおうと思います。もうお会い出来ないかもしれませんが、美沙希様、どうぞお健やかに』
「何言うの!この件が終わったら、また会いましょう」
次の日、少し早目に学校へ行った私に既に来ていた葉月が寄ってくる。
「おはよう美沙希。ちょっといい?」
「葉月おはよう。ここじゃ言えない話?意味ありげね」
「ふふっ。そう、ね」
そして、誰もこないだろう教室に移動する私と葉月。
「ここでいいでしょう?誰も来ないわ」
「そうね。それにしても、考えてみたら私達、最近授業サボりすぎね」
笑う葉月。見た目何も変わらないのに、ついこの間までの仲の良かった友達の表情とはどこか違う。
「仕方ないわね。さてと、本題に入りましょう。言いたい事は大体の想像がつくけど」
「おはよー。って、もう放課後よね。やらかしたわ」
「利津…随分遅い登校ですわね。あら?美沙希と一緒じゃないんですの?」
首を傾げる若葉。
「え?いないの?知らないわよ」
ハテナ顔の利津の後ろから叫ぶような声を上げたのは未奈だ。
「葉月がいなーいっ!」
「未奈…びっくりしてよ…」
「人をふってわいたように言わないでよー」
頬を膨らませる未奈。
「ところで、葉月がいないって?」
「そ、さっきから探してんだけど、どこに行ったか」
髪の毛をかきあげながら、未奈の隣にいた理沙がため息混じりに言う。
「美沙希もいないんですのよ」
「へぇ、そりゃ…って…まさか」
若葉の言葉に4人でハッとする。
「早く探さなきゃ!」
利津が駆け出すように教室を出た。
「そう。どうしても『石』を渡してくれる気はないって事ね。じゃ、取り合うしかないわね」
強気な笑みを浮かべる葉月。
「そうね。仕方ないわね。『石』を渡すわけにはいかないもの。避けて通れないケンカは承知よ」
「ま、そう言うとは思ってたけど。私は欲しいものは絶対、手に入れるまで諦めないわよ」
そう言って、右腕をあげて私の胸元を人差し指でさす。
「それは私も同じ事。絶対に渡さないわ」
私の言葉を鼻で嘲笑う葉月。
「笑っちゃうわ。『石』の力の引出し方すら知らないお子様が、随分と偉そうな事言えたものね」
「その言葉、お返しするわ」
余裕を込めた笑みを返す私。
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