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苦手だったあの彼と…三角関係がもたらした奇跡!
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【第1話 最後の夏祭りに告白を】
高校2年の夏…私はある男の子に恋をした…。
苦手だった…あの彼に…。
私は 白瀬優。通称ゆうちゃんと呼ばれている高校2年生。
勉強は苦手だけど部活のバレーボール部ではエースアタッカーをつとめる女の子。
そんな私にもずっと片想いの男の子がいる。
いつかは彼氏彼女になれたらなぁ…なーんて漠然とした夢を描いてる純な女の子だ。
ただ一つのコンプレックスを除いては…。
私のコンプレックス…それは私の身長が高いってこと!!
女子にしては高身長の175㎝!もちろん女子の中では1番だ!
部活では有利だけど…周りからはいつもおどろかれるし、男子にはちょっと引かれちゃってるのはわかるんだよなぁ…自分の身長がうらめしい…はあ…。
キーンコーンカーンコーン…。
授業のベルが鳴ると同時に親友の桃田美百合 ちゃんこと通称みゆちゃんと青野夏樹ちゃんこと通称なっちゃんが私の席に駆け寄ってくる。
みゆちゃんは小柄で可愛い人懐っこい天然フェミニン女子!もちろん男子からも人気がある!
なっちゃんは頭がよくしっかり者の優等生!大人っぽい雰囲気で高嶺の花っぽく近寄りがたい印象ではあるけど、じつは私の1番の理解者だったりする!
「ねえねえ…ゆうちゃん!この日にね…この夏、最後の夏祭りがあるんだって!みんなで行かない?」
とみゆちゃんが夏祭りのチラシをみせて満面の笑顔で話をする。
いつも落ち着いて物静かななっちゃんも「そうだね!最後の夏祭りだもんね…行こうよ!」といってくる。
私はお祭りのような人が多く騒がしいところが苦手だったけど、みゆちゃんとなっちゃんの勢いにおされ「うん!」と返事をした。
「やった!ゆうちゃん絶対だからね~!ねえねえ…きょうちゃん…」と同時にみゆちゃんが彼氏のとこにも駆け寄りそのことを告げているようだった。
そのうちに彼氏の親友たちも引き連れてこちらに帰ってきた。
みゆちゃんの彼氏…緑川京也くんこと通称きょうちゃん!
明るくひょうきんでクラスのムードメーカー!
この2人…じつはクラス公認のラブラブカップルなんだよな~。ほんとうらやましい…。
あっ!…その後ろの…みゆちゃんの彼氏の親友…赤井知樹くん!
男子の中じゃ少し小柄だけど、まじめで優しい優等生で…私の片想いの相手…。
なぜ好きになったか…
それは以前、図書室で本を探しているとき、赤井くんのお目当ての本が届かなく私がとってあげたとき…
絶対に引かれるんだろうなぁ…って覚悟してたら
「ありがとう!きみのその身長が羨ましいよ!僕は168㎝!このとおりの低身長だからね…。」
と笑顔でいってくれた。
今まで身長をほめられた記憶なんてなく、こんな優しくいってくれた人…初めてだった…。
ん?あと…この人もいた…。
同じくみゆちゃんの彼氏の親友…黒崎純くん。
いつもツンケンしててちょっと嫌みな塩対応系のクールさをもつ男子!
私はなんとなく苦手だ…。
何が苦手かって?
それは187㎝もある高身長なくせにそんな上から目線の態度で見下ろしてくるから!
どちらかといえば自分がみおろすことが多いし、誰かに見下ろされるのは慣れてない分、苦手でちょっと怖い…。
あと…あんまりしゃべらないから何考えてるか正直わかんない…。
ってな感じのメンバー6人でこの夏、最後の夏祭りに行くことになった。
「じゃあ!せっかくのお祭りなんだし…浴衣で行こ!」とみゆちゃんがはしゃいで言う。
「えっ!浴衣…浴衣はちょっと…私持ってないし…。」私は浴衣なんて着たくなかった…。
「お母さんのがあるんじゃない?去年…ゆうちゃんち行ったとき、ゆうちゃんのお母さんにきいた!」となっちゃんまでもが…。
もう!母さんめぇ~余計なことを…。
私が浴衣を着たくない理由…それは…下駄を履かなくちゃいけなくなるからだよ…。
下駄をはくと必然的に背が高くなっちゃうもん…。
ただでさえいつもぺたんこ靴をはくようにしてるのにこんなの横暴すぎる!
と心で叫んでみてもとおるわけもなく…結局…女子は浴衣で集合になってしまった…。
みゆちゃんははしゃいで彼氏のきょうちゃんと楽しそうにおしゃべりしている。
あのカップルほんと癒しだな~と思いながら2人をみているとなっちゃんが話しかけてきた…。
「ねぇ…ゆうちゃん…。ゆうちゃんの好きな人って…赤井くん…だよね?」
「・・・・・・えー!!な、なんでわかるの?」
私は真っ赤になった自分のほっぺを隠すように押さえながら聞いた。
「やっぱりね!ゆうちゃんみてたらわかるわよ。あからさまに赤井くんを目で追ってるし…ひとりで赤くなってるし…まあ、みゆちゃんは鈍感だから気づいてないと思うけど…。」
「うん…なっちゃんにはかなわないなぁ…。」
「だったらさぁ!この夏祭りに決めてみない?私…協力する!」
「決めるって?」
なっちゃんが満面の笑みで私をみる!
「こ・く・は・く!赤井くんに!」
「えーー!!無理無理!ぜーったい無理!」
私の動揺は大きく、つい声をあらげてしまい、ちらほらこっちをみる生徒もいて焦る…。
「あの2人が羨ましいんでしょ?ここで決めないとズルズルいっちゃうよ?」
それもそうだけど…いきなり告白なんて…。私と赤井くんじゃとても釣り合わないよ…。
「でも…私…頭も良くないし…それに身長だって…男の子はきっと小柄なかわいい娘がいいと思うし…。」
「そんな考えじゃだめ!考え方なんて人それぞれなんだし…あたって砕けろ精神だよ!」
なっちゃんの言うことはいつも説得力がある!やればできるって思わせてくれる!
「う、うん…じゃあ…頑張ってみようかな…。」
「うん!がんばろ!お祭りの日、赤井くんと2人っきりになれるようにセッティングするから!」
「うん…。」
「それとこのことはみゆちゃんには内緒ね!だってみゆちゃんのことだから、ぜーったい彼氏のきょうちゃんに言っちゃうから!極秘でね!」
そういってなっちゃんは私を見て微笑む!
なっちゃんの勢いに押されちゃったけど…どうしよう大変なことになっちゃったー!という動揺は今日1日ずっとかくせないままになってしまった…。
【第2話 母の浴衣と言い伝え】
お祭り当日の夕方…。
「母さん前ゆってた浴衣は?そろそろ着付けしてほしんだけど…。」
私は母さんにあらかじめ浴衣をお願いしてて、さらに着付けもしてもらうつもり…。
「はいはい…ちょとまってね…これこれ!じゃーん、私が若いころ着てた浴衣!かわいいでしょ?」
それは…真っ白い生地に青いアサガオの花がいくつも描かれたシンプルな浴衣だった。
「えー!なんか地味すぎるんだけど?もっと…こう…ピンクや黄色や水色の生地にかわいい柄とかのないの?」
こんなシンプルなの…背が高いの余計に目立っちゃうじゃん!!
「なにいってんの?浴衣といえばシンプルなのが1番なのよ!母さんもこれで好きな人とお祭りいったなぁ…。」
今は母さんの恋愛話を聞いてる暇はない!
とにかく待ち合わせの時間が刻一刻と近づいているんだから!
「母さん早く!待ち合わせ時間があるの!着付けお願い!」
「はいはい!ちょっと聞いてくれてもいいのにな…。」
母さんはちょっと残念そうだったけど…ごめんね…。
「よし!できた!」
鏡の前でみると…たしかにシンプルだけど真っ白い生地がとても清潔感があっていい!
それに…青いアサガオの花々がとってもかわいくみえる!
なにこれ!イメージしていたのとはちがって…かわいいかも!うん!
母さんが私の嬉しそうな顔をみて…
「ね?言ったでしょ?ゆうは私の娘なんだから絶対に似合うと思ってたのよね~!」
「母さん、それ親バカっていうんだよ!」
「もう、この子はぁ!あとはおそろいの青いアサガオの髪飾り!うん!我が娘ながらかわいい!」
と自慢げに母さんは笑った。
私はこんな底抜けに明るい母が大好きだ!
ここまで褒められるのは…ちょっと気恥ずかしいけど…。
最近もこの高身長で悩んでいるのを知られたが、そんな身長差なんて気にしない王子様がいつか現れるわよって笑い飛ばしてくれた!
そんな母の言葉に正直救われたのだけれど…やっぱりそこは乙女である女の子だもん…気になるよ…。
そうこうしているうちに浴衣、髪飾り、浴衣用の和風の可愛いバッグがそろい準備ができた!
ふいに母さんが言った…。
「ねぇ…あそこのお祭りの古い言い伝えって知ってる?」
「言い伝え?知らないし聞いたこともないけど?そんなのあるの?」
それは…
祭りの日に神社の境内で花火を一緒にみた男女は必ず結ばれる…という古くからの言い伝えだそうだ。
母さんもおばあちゃんから聞いたのだという…。
まあ…ただの迷信だと思うけど…。
私は急いで玄関へ。
するとそこにはもうすでにセットでおそろいの下駄が置いてあった。
その下駄は黒の光沢に鼻緒の真ん中に青のアサガオの花が一凛飾られたとても綺麗で清楚な感じの下駄だった。
ただ…昔のタイプだからか…下駄の高さが5㎝もあるものだった…。
私がこんなん履いちゃったら…背丈が180㎝になるから嫌だったんだよ…。
「母さん…ほかの下駄って…?」
「ないわよ!この浴衣にはこの下駄って決まってるんだから!」
「だよね…はぁ…。」
しゃーないかぁ…よし!いざ出陣!
「あ!そうだ!神社の境内で母さんと一緒に花火を見た人って…だれ?」
「ん?聞きたい?その人はね…ゆうの1番近い人…。」
「ただいまー!」
「うわさをすれば!あなた…おかえりなさい!」
「まさか!父さん?へぇー!」
「ん?うわさってなんのことだい?」
「ううん、なんでもない!じゃ、ゆう…気をつけて行ってらっしゃい!頑張って!」
「えっ?う、うん!いってきます!母さんありがと!」
「頑張ってってなんなんだ?おい、ゆう!あんまり遅くなるなよ。」
ちょっと戸惑っている父さんの声を遠くに聞きながら…私は足早に集合場所の夜店の入口にむかった。
【第3話 ほめと怒り】
集合場所に近づくにつれて人々が楽しむ声、祭り囃子の賑やかな音色が響いてくる!!
私、人混みは好きじゃないけど夜店は好きだなぁ!
それにとってもいい匂い!
気分もわくわくしてくる!
昔よく連れて行ってもらった夜店で、射的や金魚すくいをしたり、あまーい艶やかなりんご飴やその当時流行った人気のキャラクターの袋に入ったふわふわの白い雲のような綿菓子…おいしかったなぁ!
たくさんの人達が賑わう中、夜店の入口に若者達が…。
「あっ!ゆうちゃん、こっちこっち!」
ともうすでに来ていたみゆちゃん、なっちゃんと男子組…京也くん、赤井くん、黒崎くんが集まっていた。
みゆちゃんは淡いピンク地に色鮮やかな黄色が光るひまわりがたくさん散りばめられた浴衣!
なっちゃんは水色地に白いユリの花がほどこされた清楚な浴衣!
2人ともほんとにイメージどおりなんだからー!!
「ごめーん…遅くなって…。浴衣に手間取っちゃって…。」
「ゆうちゃん…可愛い…可愛いよ!すっごく似合ってる!さらに背が高くスラッと見えるしカッコいい!」
と満面の笑みでゆってくれるみゆちゃん!
実はグサッと痛いとこつかれちゃっても…
このみゆちゃんの嫌みのない、嘘をつけない天然さもまた…
可愛いくて憎めないんだよね…。
「あ、ありがと!こんな格好めったにしないし…なんか恥ずかしいよ…。」
本当だった…。
普段もスカート系よりパンツ系選んじゃう…。
ペタンコ靴が多いから…。
「ねえねえ、きょうちゃん達もそう思うでしょ?」
と半ば強引に男子たちに答えを求めるのだけはやめてほしい…。
「おう!可愛いし似合ってる!なぁ、お前ら?」
と京也くんまで…。
もういい…やめて…と私は心の中で呟くしかなかった…。
「可愛いよ!白瀬さん背が高いから浴衣がすごく似合うよ…。」
「あ、ありがとう…。」
と片想いの赤井くんから。
ショック…は隠せないけど似合うといわれてやっぱりそれは嬉しい!
もちろん赤井くんに悪気はないことは重々承知…。
でもやっぱりこの背が目立つんだよね…。
だって下駄を履いたら180cm近くあるんだもん…そりゃ、みんな驚くよ…。
私のうかない表情に気づいたのか…なっちゃんがそばにきて…小声でいう。
「ほんと素敵だよ!2人も悪気はないんだし気にしない!気にしな~い!」
と励ましてくれる。
「うん!」
なっちゃんはほんとに頼れるなぁと心からそう思った!
その時…私は黒崎くんと目が合ってしまった!
でも…すぐに目をそらしてしまった…。
私のばか!なんですぐ目をそらしちゃうのよー。逆に気まずいじゃん…。
すると…
「いいんじゃね…。」と黒崎くんが無表情で小声でいう。
黒崎くんは苦手だけど…でも…なんだろ?ちょっとうれしい…かも。
それをみていたみんなはちょっとびっくりしていたようだった。
「なんだよ!純、女子とはめったに話さないお前でもそんなこと言えんのな?もしかしてでかい白瀬のこと女子と思ってないとか!ははは!」
私の心はちくん…と痛んだ。
そういった京也くんの胸ぐらを黒崎くんはとっさに掴んでいた。
「お、おい…冗談だよ…。何怒ってんだよ?」
他のみんなにもさとされ、すぐに離したが黒崎くんの表情は曇っている。
ちょっとからかわれただけで胸ぐら掴むなんてやっぱり…ちょっと怖い…。
「もうやめようよ!きょうちゃんも冗談が過ぎる!ゆうちゃんと黒崎くんに謝って!せっかくのお祭りなんだし気分なおしてみんなで楽しも!ね!」
みゆちゃんが彼氏の京也くんを注意し状況をまとめた。
ほんとはその役回りはなっちゃんだったりするのにすごい!
さすが彼女さんだ…なんて感心してる私はそんなみゆちゃんがとても頼もしく見えた。
普段が天然な女の子なだけに…。
その横でさらになっちゃんが驚きの顔をしているのが印象的!
たぶん私より驚かされたのだろう!
「悪かったよ…純…白瀬…。」
黒崎くんは黙っている。
「あー、私は気にしてないから!それにでかいのはほんとのことだし…。」
と言わないくてもいい自虐セリフをついついいってしまう自分が…嫌いだ…。
スタートからなんか妙な雰囲気になっちゃったけど…
気分一新して私たちはこの夏、最後の夏祭りを楽しむことにした…。
【第4話 楽しいはずの切ない夜店】
先頭にみゆちゃんと京也くんが楽しそうに歩いてる!
もう、この2人だけの世界作っちゃって!いいなぁ…。
その後ろを私となっちゃんが…。
最後尾に赤井くんと黒崎くんが歩いてる。
歩く先々の両側から夜店の食べ物のいい匂いや音、射的で子供たちがは楽しくはしゃぐ声、りんご飴をほおばる子供の手をひきながら楽しそうに歩く親子連れの姿…。
そして…並んで手をつないで嬉しそうに歩くほほえましいカップル…。
こんなふうに好きな人と並んで歩けたらどんなにいいか…。
私はそんなことを考えながらそのお祭りの雰囲気に酔いしれていた!
そのとき夜店の一画に金魚すくいが見えた!
「わぁ!金魚すくい!私、好きなんだー!ね、なっちゃんやらない?」
私はなっちゃんにそういうと…なっちゃんは少し考えているようだったが…うんと答えた。
赤井くんと黒崎くんはそんなの興味がないとばかりに向かいの石垣の下で待ってると。
みゆちゃんと京也くんカップルはもう先にいっちゃてて自由に楽しんでいるみたい!
私となっちゃんは入れ物と金魚をすくう道具のポイをもらう。
するとなっちゃんが「ちょっと待ってて!」といって男子たちが待つ場所に向かっていった。
しばらくして…なぜか赤井くんがポイをもってこっちにくる!
「えっ!なんで赤井くんが?なっちゃんは?」
赤井くんは少し困った顔をしながら…
「青野さんは…なんか…魚が苦手だから僕に代わってほしいって…一緒にいい?」
「も、もちろん!どうぞどうぞ!」
私が向かいの方向を見ると、黒崎くんの横にならんでなっちゃんが笑顔で手を振っている。
なっちゃんが金魚とか魚が嫌いなんてきいたことがない!だって家で飼ってるくらいなんだもん…嘘だ!
さてはもう協力作戦が始まってるー?
赤井くんが私のすぐ隣に座る!
ちょっと…すごく緊張するんですけどー!
どうしよ…なっちゃん…金魚すくいどころじゃないよ…。
「白瀬さんは金魚すくい得意?」
「えっと…得意かはわかんないけど…好き…かな…。」
「じゃあ、どっちがたくさんすくえるか競争しようか?」
「うん!」
そうして私は赤井くんと金魚すくいの競争をすることになったのだが…。
「あーあ、破れちゃった…。7匹かぁ…赤井くんは?ん?」
赤井くんをみると1匹すくってはいるが、まだ破れていないポイを片手に向かいの2人のいる方を見つめている。
なっちゃんが黒崎くんに笑いかけている様子を赤井くんは真剣なまなざしで見つめていたのだった…。
これって…。
「赤井くん?」
赤井くんははっと我に返った様子で…
「ああ…ごめんごめん…白瀬さんすごいなぁ!ぼくはいいからこれ使って!」
とちょっと動揺している様子で私にポイを渡してくれた。
「あ、ありがとう!」
といって水に浸すとすぐに破けてしまった…。
「残念だったね…でも白瀬さん金魚すくい上手なんだね!」と笑いかけてくれたけど…
私はなんとなく…気づいてしまった…赤井くんの想いに…。
私たちは2人が待つ場所にもどった。
「どうだった?楽しかった?」
なーんて聞いてくるなっちゃん…。
「うん、楽しかった…ありがとう。」
その少しテンションの低い言い方に違和感を感じている様子のなっちゃんだったが…少し首をかしげただけでそれ以上なにも聞いてこなかった…。
そのまま私たちは夜店の先を歩いた…。
すると進行方向に向かって左側に神社へとつづく石階段が見えてきた。
これだ!
母さんがいってた神社って…。
でもここの神社ってもう…ほどんどだれも近づかない感じだよな…私も小さいときに行ったきりだし…。
ちなみにこの夜店を抜けたちょっと先に広い河原があり、そこで盛大に花火大会が行われる。
その河原もきれいに整備されててみんなそこへ集中して花火をみにくる!
昔は神社の境内もにぎわっていたんだろうけど…考えたらこの長い石階段を登るのだけでも大変そうだ!
ましてや浴衣姿の女の子じゃ…きっと敬遠するだろう…。
そんなことを考えていると…
「私、ベビーカステラ好きなのよね!買ってくるから待ってて!」
といってなっちゃんが店の方へ駆け出そうとした瞬間、下駄がつまづきバランスをくずし倒れそうになったのをそばにいた赤井くんがとっさに抱きかかえた!
「大丈夫?」
といった赤井くんの表情は真剣になっちゃんを心配していて…私が声をかけられる隙間もなかった…。
「あ、ありがとう…。」
なっちゃんも驚きと戸惑いの顔をして少し頬をピンク色に染めながらうつむいて言った…。
それから何事もなかったようにベビーカステラの店の前へ。
そんななっちゃんをみていてふと、子供たちの楽しそうな声でにぎわっている真向いの射的の店をみる。
そこには所狭しと並べられた景品の数々と正面に並べられたいろんな人形に番号がふられた的にコルク玉を懸命にあてている子供たちの姿が…。
これもほんと楽しくてわくわくするんだよなぁ!
と景品の上のほうにひときわ目立つ白いビーチサンダルが!
かわいい!
真っ白いサンダルに大きな青いアサガオの飾りが真ん中についてる!私の浴衣青いアサガオだしこれって偶然?
あれ…履いたら…ちょっとは背が低くみえるかな…。
赤井くんに…かわいいって思ってもらえちゃったりするのかな…。
なんて自然に考えてた。
気がついたら店の前にいて…
「おい、なにやってんだよ。」
と黒崎くんに声をかけられた。
「あっ…ごめん…ちょっとぼーっとしてた…。」
「なんかほしいもんでもあんのかよ…。」
「えっ!ううん、なんでもないよ…ごめん…。」
なんてやりとりをしていたら、なっちゃんと赤井くんがこっちにくる。
「ゆうちゃん、どうしたの?はいこれ!ベビーカステラ!みんなでだべよ!」
と笑顔でカステラをみんなに分けてくれる。
そのまま…後ろ髪引かれる思いはあったけどその場を後にした…。
少し先でみゆちゃんと京也くんが待っていた。
「やっときたー!こっちこっち!」
とみゆちゃんが手まねきしている。
「お前ら遅いぞ!おれたちがどんなに待ちくたびれたか…。」
と京也くんがおふざけでいった!
「なにいってんだよ!仲良く2人きりで歩いていったくせに!」
と赤井くんが笑顔でめずらしく京也くんとみゆちゃんをひやかした!
そんな明るい赤井くんをみて…私は逆に少し不安を覚えたのを心で感じとってしまっていた…。
【第5話 苦手な彼と2人で】
「ゆうちゃん、なっちゃん、これ見て!じゃーん!」
といって夜店であれこれ買って食べているものを見せてくれた。
みゆちゃんは右手にりんご飴をもって嬉しそうに言ってくる!
その後ろから京也くんも買った焼きそばの入った袋を腕にかけ、いちごシロップがけのかき氷をもって美味しそうにほおばっている。
私となっちゃんは顔を見合わせ思わず笑ってしまった!
「なによー?」
みゆちゃんが不思議そうに私たちを見ている。
なっちゃんがすかさず言う。
「だって、2人でそんなに食べ物ばっかり買ってー!ラブラブなのに色気も何もないじゃん!」
と2人を見ながらまた笑う!
「はい!ベビーカステラもどうぞ!」
というと少し複雑な表情のみゆちゃんと京也くんだったけど、ちゃっかりベビーカステラをもらい口にほおばっていた。
私はそんな2人がさらにほほえましく見え…うらやましかった…。
「なんか喉かわかねぇ?花火もみるし俺、飲み物買ってくるわ。みんななんでもいいな?」と京也くんが食べ物をたくさんもったまま行こうとする。
そんなんでどうやってみんなの分持つのよー。
「あっ、私いくよ!そんなに持ってて…もう持てないでしょ?ベビーカステラの店の横に飲み物の店あったし…。人も多くなったきたし大勢で行ってもね…。それに私…手…大きいから…ほら!!」
といって両手を見せる。
確かに背が高いせいか…手も大きいけど…なにもまたこんなことを自分から言わなくてもいいのに…。
その時なっちゃんが思いついたように…
「じゃあ、赤井くんついてってあげて!女の子だけじゃ持てないでしょ?」と言った瞬間…
「俺がいく。」と黒崎くんが無表情でいった…。
「えっ!!」と思わず私は声をだしてしまった。
みんなも黒崎くんをみて驚きの表情を隠せない!
「手なら俺の方がでかいし…たくさん持てるだろ?」
そう言われて…私は何も返せる言葉がなかった。
もちろんみんなも…。
なっちゃんが私をみて…ごめんと言わんばかりに小さく手を胸の前で合わせる。
「行くぞ。」と黒崎くんがそっけなく言う。
「あ…うん。」
私は目も合わさずにさっさと先を歩いていく黒崎くんに、とりあえずついていくしかなかった…。
よりにもよって1番苦手な黒崎くんと…。
私たちが歩いている方向からは花火大会がある河原に向かって、歩いてくるたくさんの人達ばかりだった。
私はどんどん先を行く黒崎くんに、はぐれないよう必死でついていったが、履きなれていない下駄で鼻緒のあたる部分が少し痛んだ…。
人の流れに逆らうように歩いていた私は、しゃべりながらはしゃいでいた男子数人のグループの1人に押される形でぶつかりバランスを崩した。
「きゃっ!!」
後ろに倒れる…と覚悟し目をとじた。
その時…私の右手首がぐっとつかまれひきよせられた。
誰かの大きな胸に顔うずめる私…。
顔をあげるとそこには黒崎くんが…。
「大丈夫か?」
私は少しぼーとしていた。
大きい体…広い胸板…。
「白瀬?」
はっ!私…何考えて…。
「あっ、ご、ごめん…ありがとう…。」
焦る私は体勢を整え歩こうとしたとたん…黒崎くんに手をつながれた!
「えっ、えっ!」
という私をよそに黒崎くんは手をつなぎ引っぱっていく。
「またさっきみたいなことがあったらやっかいだからな…。」
と少し照れた表情をしながら…今度は私の歩幅に合わせながらゆっくり歩いてくれる。
そんな彼を見ながら…私は意外な頼もしさと優しさをみせた黒崎くんになぜか…安心感をおぼえていた…。
飲み物の店につくともう種類は少なくなっていた。
「ミネラルウォーターでいいよな?」
「う、うん。」
黒崎くんが6本購入する。
「あっ、お金…」といってバックから財布を出そうとした…。
「いらねえよ…明日、男子に徴収しとくから。」といってくれ、私はその言葉にお礼をいった。
黒崎くんは両手に2本ずつ、私は1本ずつに分けてくれた。
ふと向かいをみると、人がまばらになった射的の店がまだやっていた。
そしてそこにはまだ…あの白いビーチサンダルがあった。
「帰るぞ。」
「・・・」
「おい!」
「あっ!ごめん…黒崎くん…これ…ちょっと持っててもらっていい?ほんとごめん…。」
私は手にもってたペットボトル2本を黒崎くんに強引に渡し、射的の店の前に行った。
「なんだ、ねえちゃんやるのか?」
と店の威勢のいいおじさんが私に声をかけてくれた!
「うん!おじさん、それ…その白いサンダルってどれに当てたらいいの?」
「サンダル?おお、これか!これは8番の人形だ!」
それはかなり小さな人形だった。
1回100円で当たる気がしなく、私は500円で6回を選んで狙いを定める。
1回目…2回目…3回目…4回目、全部外れた…。
ふと後ろをみると黒崎くんが遠目から私の様子をじっとみている。
私はどう思われようと気にならなく的に集中した。
もしこの白いサンダルがとれたら…履きかえよう!
私はちょっとでも低くなった私を見てもらって、赤井くんにつりあえる女の子になりたい…。
1度でいいからかわいいねって言ってもらいたい…。
私の心の中はもう…そのことでいっぱいだった。
5回目…最後6回目…すべてだめだった…。
はぁ…そんなにうまくいくはずないか…。
「残念だったな!ねえちゃん、はいよ!残念賞!」
といって小袋のスナック菓子をくれた。
私は黒崎くんの前に行き「ごめん。」と一言…。
彼は何も言わず…何も聞かず…歩き出そうとした。
「私も持つよ…。」といい手を差し出す。
彼はいいといったけど、私は心を見透かされているようで気まずいのか…はたまた同情されるのが嫌だったのか…無理やりにペットボトルを2本うばった…。
そのときの私には…そんな黒崎くんの優しさに気づく余裕すらなかったんだ…。
私の…ばか…。
【第6話 気づいてくれた?私の気持ち】
私と黒崎くんがみんなのところへ戻ると少し遠目に赤井くんとなっちゃんの姿が目に入った。
なにやら神妙な面持ちで…。
私が声をかけようとしたと同時に赤井くんの声が耳に入ってきた。
「青野さんが好きなんだ…ずっと前から…ぼくとつきあってほしい…。」
私は自分の目を…耳を疑った…。
なんとなくは心のどこかでは気づいていたこと…認めるのが怖かったこと…。
でも…まさか…自分の片想いの相手の告白を今、まさに目の当たりにするなんて…。
「何いってるの…?赤井くんのことが好きなのは…ゆうちゃんなんだよ…。」
となっちゃんが動揺しながら赤井くんに必死で話しかけている。
「知ってる…なんとなくは気づいてた…。」
「だったらなんで?」
「白瀬さんのことは好きだよ…でもそれは友達としてだから…。きみへの好きとはちがうんだ…。」
私は堂々とした赤井くんの告白にもちろんショックは隠せなかった…。
だけど…なぜかもやもやしていた気持ちがすーっと晴れていくのを感じていた…。
失恋…。
告白もせず…。
と同時に親友の恋の成就を心から願いたいと思った瞬間だった!
私の足は自然と2人の方へと向いていた。
「ゆうちゃん!」
なっちゃんは驚いて…焦りで体が固まっている。
赤井くんもそう…。
「はい!」
といってなっちゃんと赤井くんにペットボトルの水を差し出した。
「よかったじゃない!なっちゃん!」
「なんでそんなこと…?ゆうちゃん、赤井くんが好きなんでしょ?なんですぐにあきらめられんの?」
となっちゃんが声を少しあらげて言った。
「それは…赤井くんが好きだからだよ…赤井くんはちゃんとはっきり言ってくれた…。なっちゃんのために…。」
「白瀬さん…。」と赤井くんが切ない表情で私を見る。
「誰だって…好きな人には幸せになってもらいたい…たとえそれが私じゃなくても…。」
「ゆうちゃん…。」
というなりなっちゃんが大粒の涙をこぼした…。
「ごめん…。私、赤井くんの告白…嫌じゃなかった…それどころか嬉しかった自分がいて嫌だった。ずっと成績でライバル視してたのは私なのに…なぜか…いつからか私も目で赤井くんを追ってた…。」
「なっちゃん…。」
なっちゃんは私の気持ちを知ってしまってからは…自分の気持ちを知られるのが怖くて封印したらしい。
今の私との関係が壊れるのが嫌だったから…。
私にいつも気を遣ってしんどかっただろう…苦しかっただろう…。
「だったらもう、何も問題ないじゃない!私との関係も壊れないし、赤井くんとも両想いだし!」
泣いてる顔をあげ、なっちゃんがいった。
「ほんとにいいの?」
「もちろん!好きな人の好きな人が…自分の親友なんて素敵じゃない?」
と精一杯の笑顔でいった。
「白瀬さん…ありがとう。」
と赤井くんがなっちゃんの方へ向きをかえ…再び…
「青野さん、もう一度いう…僕とつきあって下さい!」
なっちゃんも涙を拭いながら真剣なまなざしで…
「はい…。」と答えた。
私は心から2人のことを喜んでるし…よかったと思っているのに…なんでだろう…心にぽっかり穴があいたような感じがした。
「ん、これ…。」
といって一部始終をみていた黒崎くんがペットボトルを私にくれる。
「あ、ありがとう。」
水を受け取ったと同時に、奥でさっきの買ったものを2人仲良く食べていたみゆちゃんと京也くんが私たちの方へやってきた。
「飲み物ありがとな!」と京也くん。
「ごめんね…ありがと!」とみゆちゃん。
といつもの感じでペットボトルを黒崎くんから受け取っていた。
なんか…この変わらない感じに…今の私の心は救われた感じがした…。
「そろそろ花火見えるとこ行こうぜ!」
と京也くんがみんなを誘い花火大会がある河原の方へ歩き出す。
みんなもそれにつられてゆっくり歩いていく。
周りには花火大会に向かうたくさんの人達が一緒に歩いていく。
みゆちゃんと京也くん…。
なっちゃんと赤井くん…。
みんな…楽しそう…。
どっちも私の理想のカップル…ほんとにそう思える!
私は右隣、少し前を歩く黒崎くんをみた。
黒崎くん…どう思っただろう…。
バカだって笑う?
失恋女にかける言葉なんてない…か。
ほんと無表情だし何考えてんのかわかんないや…。
帰りたい…。
そんな中…私の両足はまるで足かせをつけられているかのように…重い…。
鼻緒ですれて痛いから?
ちがう…私…本当は……。
その時…
「白瀬はまちがってねえよ…。」
私の足は止まっていた…。
えっ何?今なんて?
私…まちがってない?
よかった…。
この一言…たったこの一言を…私は待っていたのかもしれない…。
黒崎くんが立ち止まり、みんなも振り向く。
「どうしたの?ゆうちゃん。」とみゆちゃんがきょとんとした表情でいう。
「私…ここで帰るね。じつは父さんにこの時間に帰るように言われてたの…始めにいっちゃうとしらけちゃうでしょ?」
みんなは驚き、なっちゃんはうかない表情をしていたが周りは人が多いこともありみんな納得してくれた。
「ごめんね、みんな!花火楽しんできてね!」
と私はみんなが向かう方向に手をふり、笑顔で見送った。
少し目をそらした黒崎くんにも…。
そうして、私はみんなとは反対方向へと歩き出した。
人の流れに逆らって…。
【第7話 言い伝えは本当?ビーチサンダルがもたらす奇跡】
気がついたら、私はあの射的のお店の前まで引き返していた。
時間も終わりに近づいていて、みんな花火大会に向かっているためか、そこには誰もいなかった。
ちらっと景品の方へ目をやると、そこにはまだあの白いビーチサンダルが飾ってあった。
「おう、さっきのねえちゃんじゃねえか!どうした?花火行かねえのかい?」
と店のおじさんが威勢のいい声で話しかけてきてくれた。
その声に吸い寄せられるように歩き、私は店の前で立っていた。
「おじさん、1回だけやらせて?」
私はもう必要なくなった白いビーチサンダルがとれようがとれまいがもう、関係なかった…。
だけど…最後にもう1度だけ…自分の気持ちをリセットしたくてがんばってみたかったんだ…。
さっきとは違う私の雰囲気を感じとったのか、おじさんが射的の準備をしながら言った。
「なあ、知ってるかい?この神社の上の境内で花火を一緒にみた男女は、必ず結ばれるって話…。まっ、古い言い伝えらしいけどな!」
それは母さんからも聞いていた話と同じだった。
ちょうど店の横が神社の入り口で、長い石階段が続いている。
「あんなのただの迷信でしょ?母さんは父さんと一緒に見に行ってたみたいだけど…。」
といって射的の銃を受け取り、8番の的に狙いをさだめる。
この1回…
1回で絶対に当てる…。
私はすべての気持ちをぶつけるように引き金を引いた。
念を込めたはずのコルク玉は無情にも外れ地面に転がった。
はぁ…また外れ…。
そんなにうまくいくもんじゃない…か…。
と右横に誰かが…。
「俺も1回…。」
見上げるとそこには黒崎くんが立っていた。
「黒崎くん!なんでここに?花火は?みんなは?」
私はあまりの驚きに怒涛のように、どうして?の感情をあらわにしていた。
「ちょっと落ち着け…俺が1人あの中にいてもしゃーねぇだろ?」
「あ…そだね…。」
そっか…。カップルの中に1人って…しかも黒崎くんだし…。
「青野と桃田が送れってうるさくて…。それに危なっかしいだろ?1人じゃ…。」
と少しうつむき照れたように見えた黒崎くんがちょっとかわいく見えた。
こんな表情初めて見た…。
「はいよ、にいちゃん!頑張りな!彼女にいいとこ見せなきゃな!」
「ちょ、ちょっとおじさん!ちがうから!」
私はとっさに訂正してみたけど、おじさんはにやにやしていて、黒崎くんはうつむき黙ったまま…。
おじさんから射的の銃を受け取った黒崎くんが銃をかまえる…。
背が高く…肩幅も胸板も大きい男子がかまえるとこんなにもさまになるんだぁ…。
「1回だけじゃ無理だよ。私なんかもう、7回もやって無理だったんだから…。」
というやいなうや、黒崎くんが放ったコルク玉は見事、8番の小さな人形を倒した!
私は驚きのあまり声がでなかった。
「大当たり―!!」
とおじさんが派手に大きな声で言う。
すでに透明のビニール袋に入ってある、青いアサガオの飾りがついた白いビーチサンダルを手にとり、にやにやしながらわざと黒崎くんに手渡した。
ちょっと戸惑う黒崎くんだったけど…私の目の前にさっと差し出した。
「欲しかったんだろ?これ…。」
「えっ、でも…。」
「俺が持ってても仕方ねぇだろ?」とさらに押し付けてくる。
「ありがと…。」と私は小声でいった。
べつに欲しかったんじゃない…。
気持ちのリセットがしたかっただけなのに…それも私はできなかった…。
履く必要もなくなったこのサンダルは今や…私の中ではむなしいだけだった…。
そんなやりとりを見ていたおじさんが言った。
「ねえちゃん、さっきの言い伝えの話だが、昔、俺も見たんだよ…境内で花火!」
とおじさんが自慢げに話す。
「へぇー、その人とはどうなったの?」
と聞いた時、1人の女性が裏から入ってきた。
「ねぇ、そろそろ片づけないと…。あっ、お客さん?この人おしゃべりがすぎるから、花火大会行くのに引き留めてたんじゃないの?ごめんなさいね…。」
とても元気で明るい女性が弾丸のように会話に入ってくる!
「いえ…もう帰るとこなので…。」
「えっ!恋人どうしで花火見ないとかありえないわ!なんで?」と女性が間髪入れずに聞いてくる。
「私たち…そんなんじゃ…。」
「ふーん。お似合いなのにね!」
お似合い?私と黒崎くんが?そんな風にみえてるの…?
それをみていたおじさんがすまなさそうに間に入ってくる。
「お前それぐらいにしとけ。ねえちゃんたちにもいろいろと事情があるんだよ…な?すまなかったな。」
「でもさ、せっかくなんだし…友達どうしでも花火見てきたら?この上の境内から見る花火は絶景なんだから!河原に行ってたら絶対間に合わないと思うし、ここからなら境内のほうが近いしね!でも急がなきゃ!」と女性がせかす。
私と黒崎くんは一瞬、顔を見合わすがなんとも煮えきらない様子に業を煮やしたのか、女性は表に出てきて私たちの背中を押す。
「ほら、早く!あら、でもその下駄でこの階段は辛いわね…そうだ、このサンダルに履き替えたら?」
「えっ?は、はい…。」
帰るはずの私たちが…なんかへんな展開になっちゃったけど…まっ、いいか!と思いながら私は、赤井くんの前では履けなかったこの白いビーチサンダルに履き替えた。
「うん!かわいい!この浴衣にすごく合うじゃん!」
と女性は満面の笑みでいってくれたのがすごくうれしかった!
「ありがとうございます!」と私も自然に笑顔になっていた!
下駄をサンダルが入っていた袋に入れ替えた。
「さぁ、急いで!そしてちゃんと思い出つくっといでよー!」とまた女性がいう。
私は思い出したようにおじさんに聞いた。
「おじさん、さっき言ってた一緒に花火見た人って…?」
「これ!うちの奥さん!」といって笑顔で女性を指さす。
「これってなによー!失礼しちゃう!」と少し怒って見せたがその表情は幸せそう!
母さんもおじさんもここで?
でもほんとなのかな…あの言い伝え…。
と思いながら石階段を登ろうとしたとき、おじさんが黒崎くんに袋に入った何かを投げ渡した。
「にいちゃん、ほらよ!これしか残ってなかったけどもってけ!」といって見送ってくれた!
2人で仲良く手をふりながら!
【第8話 石階段での恋の気づきと切なすぎる涙】
私たちは神社の境内へとつづく長い石階段を、急ぎぎみに登った。
思ったより急で大変…。
私は浴衣の裾が足にまとわりつき、階段をふみ外しかけた。
「きゃっ!」
その瞬間…
またもや黒崎くんの大きな手で支えられた。
「ごめん…。」
「まったく…しょうがねぇな…。」
といったかと思えば黒崎くんは私の手をつなぎ、優しくひっぱる形で登ってくれる。
「ちょ、ちょっと…黒崎くん!私…大丈夫だから…。」
「大丈夫なやつが2回もこけそうになるかよ!少し黙ってろ。」
大きな手…その手から黒崎くんの体温が伝わってくる…あたたかい…。
その手をたどってゆっくりみあげるとシャープでキリっとした黒崎くんの横顔が目に入る。
いつもは無表情で怖い人って思ってたけど…今はなんだか安心できる人…。
黒崎くんってこんなことする人だったっけ?
とか考えてたら急に黒崎くんがこっちを振り向いた。
私はとっさに目をそらしてしまう…。
「なんだよ…。」
「ううん、なんでもない…。」
ちょっとびっくりした…。
なんで目をそらしちゃったの?私…。
今…胸が…心臓が……。
これじゃ…まるで…恋…?
その時、遠くからドンドンと連続する花火のフィナーレの音が聞こえる。
「ちょっと急ぐぞ。」
私の手をにぎる黒崎くんの大きな手にさらにぎゅっと力がこめられる。
私たちはやっと神社の境内に着いた。
そこには外灯がポツポツとあるだけ…人の気配はなく私たちだけのようだった。
私は急いで見晴らしの良い場所へ向かい遠くを見渡した。
そこにはもう…花火の光はどこにも見あたらなかった。
もう花火は終わってしまったようだった…。
黒崎くんが遅れてわたしの隣に…。
「終わっちゃった…。」
「ああ…。」
私はしばらく呆然としていた。
花火が特別見たかったんじゃない…。
ただ…当たり前かのように、言い伝えどおりに花火がみれるものだと勝手に思い込んでいた自分が嫌だっだ…情けなかった…悲しかった…。
花火をみたらちょっとでも気持ちが癒されるかなぁ…って思ってた自分がいた…。
母さん…おじさん…。
好きな人とここで花火が見れるなんて…それはきっと…奇跡に近いことなんだよ…。
私は好きな人どころか…告白もできずに失恋…。
気持ちのリセットもできずに…今年最後の花火すら…みることもできなかった…。
最悪…。
なんか…神様に見放された気分…。
こんなこともあるんだなぁ…。
そんなことを考えているとほほを伝う生あたたかいものが…。
「白瀬…お前…。」と黒崎くんがおどろいている様子で私をみる。
一瞬、黒崎くんをみて…はっと我に返る私…涙…?。
すぐに指で涙をぬぐった。
「やだ…私…なんで涙なんか…どうしちゃったんだろう…。」
自然に流れでた涙に自分が1番おどろいていた。
それを見ていた黒崎くんが私の手首をつかみどこかへひっぱっていく。
「えっ、ちょっと…黒崎くん…どこいくの?」
そこは神社の前の階段。
黒崎くんがさっきおじさんからもらった袋に入った何かを取り出し、袋を階段に敷いた。
「ちょっとここ…座って。」
「なに?」
「いいから!」
さっきとはちがう黒崎くんの真剣なまなざしに私は不安はあったけどゆっくり腰かけた。
そのすぐ隣に黒崎くんも座った。
そしてなにやら準備をしている様子。
小さい袋から何かを取り出し私に手渡してくれた。
よくみるとそれは線香花火だった。
「線香花火?おじさんが黒崎くんにくれたやつ?」
「ああ、でも俺にじゃねぇ…俺たち2人にだ…。やるか?」
「うん!」
そう答えた私の心はなぜか穏やかになっていた。
【第9話 縁起物と8の意味】
黒崎くんは付属のマッチを取り出し準備をする。
「ねえ、線香花火って全部で何本?」
「8本だけど…何?」
「ううん、2人で4回ずつできるね。」
「俺はべつにいいから白瀬が全部やれよ。」
「べつにそんな意味で言ったんじゃ…。」
「・・・」
「一緒にしてくれる?1人じゃ寂しくなるから…。あっ、でも男の子は線香花火より華やかな花火のほうがいいよね…きっと…。」
「そんなことねえけど…大丈夫か?」
黒崎くんがそんなこというなんて…なんか意外…。
「なんで…そんなこと…。」
「いや…さっきも泣いてたし…。」
心のどこかで気丈にしとかなくちゃって…思ってたんだけどな…。
そっか…やっぱり変に思われてたよね…。
心の中を悟られた恥ずかしさと同時に、それまで必死に抑えていた切なさと悲しみがどっとこみあげてくる。
私はそっとうつむいた…。
と目にうつるのは…この白いビーチサンダル…青いアサガオの飾りがついた…。
自分の抑えている感情がいっぱいいっぱいまで追い込まれている気がした…。
目にうつっているはずの白いビーチサンダルがぼやけてゆがんでいくのがわかった…。
そして一粒…また一粒と涙がこぼれる。
「おい…。」
と黒崎くんが少し動揺した声で私に言った。
「私ね…この白いビーチサンダルを初めてみたとき、これを履いたら背が低くなるし、赤井くん…ちょっとはかわいいねってほめてくれるかなって思ったんだぁ…。そんな不純な動機…。でも失恋して…必要なくなったはずだったんだけど、最後に気持ちをリセットできるかなって思ってやってみたら…見事に外れ…。あたりまえに見れると思ってた花火だって…結局見れなかった…ほんと笑っちゃうでしょ?」
黒崎くんは黙って私の話に耳を傾け聞いてくれている。
「せっかく黒崎くんがとってくれたこのサンダルを私はもう…むなしいものだって思っちゃったんだ…。最低だよね?」
「今も…そう思うのか?」と黒崎くんが言う。
あらためてそう聞かれても私はすぐに答えが見つからない…。
「わかんない…。でもこれを見るたびに…今日の悲しい1日がよみがえる…縁起の悪いものに思えるようで嫌かも…。」
黒崎くんがあきれた表情でため息をつき私をみる。
「縁起が悪いってなんだよ。俺からすりゃ…そのサンダルは縁起のいいものでしかねえけどな。」
「えっ?どうして?」
私は黒崎くんが言ってる意味が本当にわからなかった。
今のこの状況でなんでそんなことがいえるの?
「8…。」
「えっ?」
「数字の8だ。」
「8がどうしたの?」
「あのな…分かってねぇから言っとくが8って数字はな、昔っから末広がりで縁起がいいとされてる数字なんだよ。達成とか成功って意味合いもある。8を横にしてみ?」
私は頭の中で8を横にしてイメージしてみた…。
「ループかな?」
「そう。無限に…とか永遠に…とかの意味になる。分かるか?」
「うん…恋愛とか結婚だったらうれしいよね、永遠に…って言葉!」
はっ!私…何言ってんだろ…さっき失恋したばかりなのに…もう…。
でもなぜか…自然に出てきた言葉…。
「まあ、そうだな…あとそのサンダルな。それも8が関係してるの…気づいてない?」
「えっ?」
「やっぱり気づいてなかったか…。景品の番号は?射的でとれた回数は?」
そう言われて考えてみた。
景品の番号も…黒崎くんが射的でとってくれたのを含めた回数も…
「全部…8!」
「この線香花火の本数もな。」
黒崎くんが優しく微笑む。
「それだけじゃない。このサンダルがとれたのも…今、白瀬がそれを履いてここにいるこの状況も…俺にとってはすべてが縁起のいいことなんだよ…。」
私は黒崎くんの熱のこもったその話に聞き入っていた!
「すごいね…黒崎くん!物知りな上に…ただむなしくなるはずだったこのサンダルのイメージまでいいものに変えてくれた!ちょっとうれしい…ありがとう…。」
そう笑って黒崎くんの顔を見上げると、少し困った…複雑な表情をしている黒崎くんがそこにいた。
「どうしたの?」
「いや…なんでも。線香花火するか?」
「うん!」
そのときの私の心は…すっかり晴れやかになっていた!
【第10話 突然の…。告白に秘められた気持ちと線香花火】
黒崎くんがマッチで火をつけてくれる。
パチパチと小さい炎があがったと思ったら…ポトッと小さい火の玉が下に落ちた。
「あれ…落ちちゃった…。」
私に2本目を渡してくれて火をつけてくれた。
「よし!今度は大丈夫!」と意気込んでみたわりには1本目よりも早く落ちた…。
「あっ、なんでよ…。」
それを見ていた黒崎くんがクスっと笑った。
「ちょっと持ってみ。」
といい私が線香花火を持つと、ちがうといっていきなり手を握られ下の方に持ち替えさせてくれた。
私は一瞬、驚きで声がでなくなった…。
また胸が…変…これ…さっきのとおんなじ…。
「上をもつとふり幅が大きくなるから、できるだけ下の方をもつといい。」
「う、うん…。」
と私はそんな気持ちを隠せないほどに動揺してるのに、ポーカーフェイスの黒崎くんが火をつけてくれる。
今度はさっきよりも長くきれいに…そして華やかに燃えて火の玉が落ちた。
「ほんとだ、すごい!」といって黒崎くんのほうをみると優しい笑顔で私をみている。
なんだか恥ずかしい…。
はしゃいでる自分を見られたからなのか…それともその優しい笑顔に…なのか…。
「これ、最後な…。」
と最後の1本を手渡してくれ火をつけてくれる。
さっきとはちがって次は落ち着いて…ゆっくり眺めていられる。
パチパチと小さな音をたてて火花を散らす線香花火…。
じっと見つめていると…その火花の光の中に吸い込まれそうになる…。
「きれい…。」
私の口からはその言葉が気づかないままに自然にでていた。
「ああ、きれいだ…。」
と黒崎くんの声がすぐ横で聞こえた…。
私はこの幻想的な空間にいる私たちの時間が…少しの間、とまってくれたらいいのにって思ってた…。
「白瀬…。」
「ん?」
ふいに黒崎くんに呼ばれ振り向いた瞬間…唇へのあたたかい感触…。
しばらくその感触に包まれていた…。
黒崎くんの顔がわかるくらいにゆっくりと離れたとき…
「ごめん…いきなり…。」
そういわれて…初めて何がおこったのか理解した私…。
黒崎くんからのキス…。
私はうつむき恥ずかしさと戸惑いが交錯する中…このキスの理由を必死でさがしていた…。
「ずっと好きだった…。白瀬が花火を見つめる表情…綺麗で我慢できなかった…。もう1度言う…白瀬が好きだ。俺とつきあってほしい…。」
黒崎くんからの突然の告白に…私はすぐに言葉がでなかった…。
ふとみると線香花火はとっくに消えていた…。
「ずっとって…いつから私のことを…?」
ほんとにいつから…?
黒崎くんがなんて…そんなの考えたこともなかったのに…。
「図書室…知樹と話してたろ?あのとき俺…いたんだ。」
「うそ?」
それは私が赤井くんと初めて話をして…恋した日…。
そこに黒崎くんが…いた?
「知樹と一緒にきてて、知樹と話す白瀬のころころと変わる表情が妙に気になって…意識し始めた…。」
赤井くんとのあのやりとりを見られてた?
やだ…私、絶対へんな顔になってたのに…。
「白瀬…たぶん背が高いこと気にしてたろ?」
「えっ!なんでそれを…。」
「知樹が小柄だから余計…どこか一線をおいてるっていうか…なんとなくな…。あの時…待ち合わせの時も京也が白瀬を侮辱するようなこと言ったからむかついた…。」
「あの時って…そうだったの?私…てっきり京也くんにからかわれたから怒ったのかと…。」
「親友だぞ…そんなんしょっちゅうだし、そんなことじゃ怒んねえよ。」
そんなの…全然わからなかった…。
無表情で何考えてるかわからないし…。
黒崎くんのことはどちらかというと怖くてずっと避けてきたから…。
その彼が私を好き…?
それなのに私は赤井くんをずっと目で追ってた…黒崎くんの気持ちも知らないで…。
それって…それって…今日の私と同じ気持ちをずっとさせてたってこと…?
こんな辛い気持ちを…。
私の目からは自然に涙がぽろぽろとこぼれていた…。
「ごめん…。」
黒崎くんはそんな私をみて少しおどろいていたけど、何かを悟ったように冷静に言った。
「こっちこそごめんな…自分の気持ち…打ち明けるつもりなんてなかったし…白瀬にそんな辛い言葉いわせるつもりもなかった…ただ…白瀬の顔をみてたら体が勝手に…。」
黒崎くんの想いが痛いほどに伝わってくる…。
「俺…あいつの…知樹の気持ち…知ってたんだ…応援してやりたかった…。」
赤井くんのなっちゃんへの気持ちを…?
「知樹はこの祭りで…青野に気持ちを伝えるっていってた…だからあのとき…あいつらを2人にした…。」
ああ、そういえば…飲み物買いに行くとき、私の次に黒崎くんが真っ先に行くって言ってたっけ…。
「でもそれは同時に…白瀬の失恋を意味することにもなる…。俺は心のどこかでそれでもいいと思った…。誰にも…自分の親友にも…白瀬を渡したくないと思った…。」
そう言い終わった瞬間、黒崎くんがさっと立ち上がり夜空を見上げる。
そこには満点の星たちが…。
「そんな最低なやつだよ…俺は…。だから断ってくれてじつはほっとしてる…。一緒に花火したのが…知樹ならよかったのにな…。」
「えっ?何…それ?」
「昔からの言い伝え…この神社の境内で一緒に花火をみた男女は必ず結ばれるってな。」
「なんでそんなこと黒崎くんが知ってるの?」
私は思わず立ち上がった!
そんなロマンチックな話とは無縁そうな黒崎くんが知ってたことにほんとにおどろいた!
「なんでって…うちの両親、思い出話が好きで恥ずかしげもなくよくその話聞かされた…。2人も昔…ここでみたって花火…。それ…白瀬の両親からなんか聞いてない?」
「えっ、その話は母さんから今日、聞いただけだけど…。」
黒崎くんのご両親もここで…?
「ふーん、じゃあ、俺の父さんと白瀬の父さんが親友でそれぞれの彼女をつれてここで花火見ようってなったことは…知らない?」
「知らない!!そんなこと今、初めて聞いた!!」
母さんそんなこと一言も…。
帰ったらいっぱい聞かなきゃ!
「とにかく…そのチャンスはおれが潰した…軽蔑してくれていい…。」
いつもそうやって…まわりのことを考えて…苦しんで…それで自分の気持ちを抑えつけてきたの?
そんなの…こうやって言ってくれなきゃ…絶対にわかんないよ…。
「私は納得のうえで失恋したんだよ…黒崎くんのせいじゃない…。そりゃあ、今日1日いろんなことがあったけど…それも無駄じゃなかった…だって黒崎くんの本当の気持ちが知れたんだもん…これって…ちょっとすごいことじゃない?」
私は満面の笑みでそういった。
うそじゃない…本当のこと…。
「そうだな…。」
「それでね…黒崎くんにちゃんと言わなきゃいけないことがあるの…。」
「それはもう…さっき聞いたけど…?」
黒崎くんは包み隠さず全部自分の気持ちをいってくれた…。
だから私もちゃんと伝えなきゃ…今の自分の本当の気持ちを…。
「ちがう…。さっきのごめんは…今まで苦しい気持ちをずっとさせてきた黒崎くんへの申し訳ないことへのごめんなさい…。」
「白瀬…何いってんだ?」
黒崎くんが聞いたけど、私はそのまま続けた…。
「私ね…今日1日…黒崎くんにずっとドキドキしっぱなしだった…。自分でも正直なんで?って戸惑ってばかりで…。でも今やっとわかった!これが…恋なんだって!だから…」
私が最後の言葉を言おうとした瞬間…彼に…黒崎くんに抱きしめられていた…。
私はまた…彼の胸に顔うずめる形になった…。
顔をゆっくり横にむけると黒崎くんの心臓の鼓動が…早い…。
それに合わせて私の胸の鼓動も高鳴るのを感じた…。
「黒崎…くん…。」
「同情なんかすんな…俺は白瀬の失恋を望んだ男だぞ?」
口からでる言葉とは裏腹に…私を抱きしめる黒崎くんの手に…腕に…力がこもる。
「でもそれは…私のことが好きな裏返しなんでしょ?私もちょっとはわかるよ…好きな人の…赤井くんの恋の成就を願うなんてかっこいいこと思った自分がいたけど…本当にそうなのかなって…。行かないで…なんで私じゃないの?って思ってるから…心にぽっかり穴があいたようになってるんじゃないかって…自分って嫌なやつかもって…。」
「白瀬…。」
「そんな気持ち…私だけじゃなかったんだね…。その人が好きだからこそ…そうなっちゃう当たり前の気持ち…。黒崎くんは全然悪くないんだよ…。」
もう迷いなんかない…私は黒崎くんが好きなんだ!
私は目に浮かぶ涙がこぼれないよう必死でこらえながら彼を見上げた。
「だから…こんな私でよかったら…つきあってください…。」
黒崎くんは一瞬、目を見開きおどろいてはいたけど…すぐに優しく微笑んだ…。
そして…しばらくの間…私の頭をそっと優しくなでた…。
「小さいな…。」
「えっ?」
「俺の中では白瀬は小さくて可愛いよ…ずっと前からな…。」
私は初めて言われた言葉に戸惑いつつも…自分の中でずっと抱えてきたコンプレックスが音をたてて崩れていくのを感じた…。
「ありがとう…。」
「おい…それ俺が言うセリフだろ?ありがとな…。白瀬…好きだ…。」
彼に優しく見つめられ…強く抱きしめられたままの私は…降りてくる彼の唇に瞳を閉じすべてをゆだねた…。
どれくらいたっただろう…。
彼のあたたかな唇が離れたと同時に瞳をあけた…。
「そろそろ帰るか…?」
「うん…。」
私は気持ちがいっぱいいっぱいでそれ以上の言葉が見つからなかった…。
たぶん…黒崎くんも…。
「あっ、そうだ…1本だけ線香花火余ったけどやるか?」
「なんで?全部やったんじゃなかったの?」
「あー、俺、最後してなかったから…白瀬に見とれてて…。」
と少し照れてうつむく彼…。
「えっ…あ…。」
あの時…黒崎くんからの突然のキスの時…。
「はい…白瀬がやれよ。」
私はその最後の1本をうけとり、さっき言われたとおり下の方をもった。
黒崎くんがその線香花火に火をつけてくれる。
ぽっとついて徐々に燃え上がる小さな炎…。
「黒崎くんも上の方持ってくれる?一緒にしてほしい…。」
大きな花火は見ることができなかったけど…この小さくても力強く最後まで燃え尽きるこの線香花火を…私は黒崎くんと一緒にしたかったんだ…。
その気持ちを悟ったのか…黒崎くんは黙って1番上の羽の部分をそっと持ってくれた。
「きれいだね…。これって一緒に花火を見たってことになるのかなぁ…?」
「あたりまえだろ…大きくても小さくても…花火は花火だ!」
「うん!」
そう…断言してくれた黒崎くんの優しい笑顔に見とれている間に、最後の線香花火は落ちて消えていた…。
でも私の心にはもう…切なさも…悲しさもない…。
だって…私のそばにはもう…彼がいてくれるから…。
苦手だった…あの彼が…。
「行くぞ!」と手早くかたずけた黒崎くんがいう。
「うん!」といいながら私は彼のあとについていく…来るときとは違う軽い足取りで…。
【第11話 石階段のときめき】
私たちはさっき登ってきた石階段の前にきた。
登ってきたということは…今度は降りなきゃいけない…。
1段ずつ…はぁ…大変…。
内心そう思っていたとき…
「こいよ…。」と黒崎くんがふいに手を差し出してきた。
「えっ?」
「そのビーチサンダルじゃ危ないだろ…下駄でもだ!」
「大、大丈夫だよ…子供じゃないんだから…。」
といって先に階段を降りようとした瞬間…
私の体はふわっと軽く抱きかかえられた!!
「わっ!!」
世に言うお姫様抱っこ!!黒崎くんに!
私は反射的に両腕を彼の首にまわし抱きつく姿になってしまい…おどろきと恥ずかしさですぐに離した…。
「なんで離すの?危ないからちゃんと持ってろ。」
私は言われるがままにもう1度…両腕をゆっくりと彼の首もとへまわした…。
黒崎くんの顔が近すぎる…恥ずかしい…顔をあげられない…。
「私…重いのに…。」
必死にがんばって出た言葉がこれだなんて…。
「さっきも言ったけど、俺の中では白瀬は小さいから問題ない…それにこのほうが安全だ。」
私はゆっくり顔をあげ…視線の感じるほうに目をやる。
やっぱりポーカーフェイスはそのままだけど…私をみる瞳はどこか…優しい感じがした…。
でも…こんなときめく言葉を動揺もせず…平然といえる黒崎くんに…私はちょっと嫉妬した…。
「うん…ありがと…。」
黒崎くんは私を抱きかかえながらどんどん神社の石階段を下っていく。
男の子って…こんなにたくましいんだ…。でも…
「ごめんね…。」
「何が?」
「なんか…最後にこんな負担かけちゃって…。」
「負担?俺は白瀬を抱けて嬉しいけどな!白瀬とつきあうことになったし…それに花火も一緒に見れたしな…。」
といって優しく微笑んだ。
そんな黒崎くんの笑顔をみて…私も自然と笑みがこぼれた…。
そして…私もだよ…と心の中でささやいた…。
ただ…私を抱けてなんて…表現が恥ずかしすぎるよ…もう…。
そんなやりとりをしていて、残り10段ていうところまで差し掛かったところで声がした!
「ゆうちゃん!黒崎くん!」
ふと声がした方を見るとそこには私を心配そうに見上げているみゆちゃんの姿が…。
そのみゆちゃんの周りには京也くんやなっちゃん、赤井くんもいた。
【第12話 男子たちの本音と1番の策士】
「な、なんでみんなが?どうしよう…黒崎くん…。」
と黒崎くんを見るとやっぱりポーカーフェイス…。
「慌てんな…。」
「恥ずかしいからもう降ろして!」
「こんな中途半端なとこで降ろせねぇ…下まで我慢しろ!」
そう言われて私は言い返せず…そのまま抱きかかえられたまま残りの石階段を下っていく…。
みんなに何ていえば…なんて説明すれば…私の頭の中は焦りと戸惑いと恥ずかしさでもう…ぐちゃぐちゃだった…。
下まで降りたと同時にみんなが駆け寄ってくる。
「ゆうちゃん大丈夫?黒崎くんいったい何があったの?」
と今度はなっちゃんが黒崎くんに詰め寄ってきてて赤井くんにまあまあ…とさとされていたのが分かった。
黒崎くんが私をゆっくり地面に降ろしてくれる。
「ありがと…。」とうつむき加減で私は黒崎くんに言いながら…みんなになんて説明しようか必死で考えてた…。
「えっと…これはね…じつは…」としどろもどろに言った私の横で黒崎くんが言った。
「俺たち…つきあうことになったから…。」
そのはっきり言った言葉に…私も…そしてみんなもしばらく固まったまま…何も言えずにいた。
その中で先陣をきったのはみゆちゃんだった。
「へぇー!そっかそっか…そうなんだぁ!ゆうちゃんと黒崎くんがねー!よかったじゃん!」
とまるでわかってたかのように満面の笑顔で言ってくる。
「ゆうちゃん…本当なの?黒崎くんとって…。」
なっちゃんが半信半疑で聞いてくる。
「う、うん…ちょっと…いろいろあってね…。」
と私も頭がまだ整理できてない分、まだうまく説明できないんだけど…。
それを悟ってくれたのか…なっちゃんがにっこり笑う。
「そっか…よかったね!またゆっくり聞かせてもらうからね!」と言ってくれた。
その横で黒崎くんがちょっと複雑な表情で言った。
「ところでお前ら…なんでこんなとこにいるんだよ?」
そうだった…なんでみんなここにいたのか不思議だった…。
すると京也くんがすかさず言った。
「何言ってんだよ!白瀬が帰ったあと…お前も白瀬が心配だからって帰るもんだから、みゆも青野もそのことが気になって花火どころじゃなかったんだよ!とりあえず花火のフィナーレが終わってすぐ帰ろうってことになって…。まっすぐ歩いてきたらお前らがその階段から降りてきたんだろ!」
「そうか…悪い…。」と黒崎くん。
「私もごめん…。」とみんなに謝った…。
そう…だったんだ…。
っていうか…私が心配だった?
「でも黒崎くん…みゆちゃんとなっちゃんに送れって言われたって…。」
「おい…。」といいながら黒崎くんがめずらしく慌てて…目頭を押さえてる。
みんなはそれぞれ顔を見合わせながらくすくす笑っている!
「純はほんと素直じゃないんだなよな…白瀬のことが心配なくせにそんな風に言っちゃって…。あっ、好きなくせに…の間違いか!」
と京也くんがにやにやしながらここぞとばかりに黒崎くんをからかう!
「京也…お前な…!!」
とますます黒崎くんはむきになってるけど…そのやりとりはちょっと楽しそうに見える!
男子の親友同士っていつもこんなふうなんだ…。
私たちにはわからない…絆?…みたいなのがあるんだね!きっと…。
やっぱりあの時って…私のために怒ってくれてたんだね…嬉しい!
「もう…2人ともやめとけって!女子もいるんだぞ!純の片想いが叶ってよかったじゃないか!あっ…。」
といって赤井くんが2人の間に仲裁に入ってくれる…意味深な言葉を放って…。
黒崎くんがおどろき…赤井くんをみる…。
「知樹…お前…いつから知って…?」
「うーん…図書室で白瀬さんに会ったあとくらいからかな…気がつくと純…よく彼女を目で追ってた気がして…ぼくの勘だけどね…。」
と赤井くんは笑った。
黒崎くんは観念したようだった…。
「京也…お前も?」
「お、俺は知らねえよ…全部みゆに言われて…。なぁ…みゆ!」
私たちはおどろき…一斉にみゆちゃんをみる!!
みゆちゃんはきょとんとした表情で…
「ん?わたし知らなーい!それより…みんなハッピーになったんだからよかったじゃん!ね!」
とくったくのない笑顔でそう言われてみんなはもう…それ以上なにも聞けなかった…。
私はなっちゃんと顔を合わせ…お互いに笑った!
だって…この最後の夏祭りの1番の策士は…いつもおっとり天然な…みゆちゃんだったってこと?
なんだかんだいって…私たちのことを1番そばで見ててくれたのは…みゆちゃんだったんだ!
私は思いがけない結末にもかかわらず…なぜか気持ちがほっこりと和んでいく自分を感じていた…。
おそらく周りのみんなの表情も和んでて…きっと同じ気持ちだったのだろう…。
「じゃあ、みんな帰ろ!私、京ちゃんに送ってもらうからここで解散ね!じゃ、また明日ー!行こ、京ちゃん!」
とみゆちゃんがテンション高く言った!
「お、おう!お前らもちゃんと女子、送ってけよ!じゃな!おい、待てよ…みゆ…。」
とあわてて京也くんもみゆちゃんの後を追ってった。
「じゃあ、僕たちも帰ろっか…。」と赤井くんが言った。
「ゆうちゃん…今日のこと…ほんとにごめん…でもありがとう…。」
となっちゃんが私に言う…。
「ううん…今日1日でたくさんのことに気づけた日になったよ…。1つが欠けても…たぶん黒崎くんとこんなことに…なんてならなかったと思う…。私のほうこそ…ありがとう…。」
この気持ちはほんとだった…。
黒崎くんと話をしていた赤井くんがこちらにきて私に言った…。
「白瀬さん…今日はいろいろとごめん…。それと…純の気持ち…引き出してくれてありがとう…。あいつ…いつも自分の気持ちは後回しで抑えてるから心配だったんだ…あいつをよろしく!」と小声で…。
「じゃあね…また明日ね!」といいながらなっちゃんと赤井くんが帰っていく。
私は2人に手をふり、黒崎くんと2人で見送った。
【第13話 待ち望んだ過去の想いとまだ見ぬ遥かなる未来】
「俺たちも行くか?」
「ちょっと待って…これ…履き替えるから…。」
といって透明の袋から下駄を取り出し、白い青いアサガオの飾りがついたビーチサンダルとを履き替えた。
「足…痛いんじゃないのか?そのままでも…。」と黒崎くんが心配そうに言う。
「ううん…このビーチサンダルはね…私にとってもう…大切なものだから…。」
黒崎くんが優しく微笑む…。
「送っていく…帰るぞ!」
「うん!」
下駄に履き替えた私の足取りはあの時とは違い…軽やかだった!
「今日はいろんなことがあったな…。」
「うん…みんなの本当の気持ちがわかった1日だったよね…。まさかみゆちゃんもこんなにみんなのこと考えてくれてたなんて!」
「桃田ってほんとにそうなのか?偶然とか…なんかそんな雰囲気じゃなさそうなんだけどな!」
「私たちもそう思ってた…。でも正直なに考えてるかわかんないとこもあったりするのよね…。」
その真相はわからないけどね…。
「それより赤井くんが黒崎くんの気持ちに気づいてたなんてびっくり!」
下を向いて少し赤くなってる黒崎くん…ちょっとかわいい…。
「あいつは勘がいいからな…でもまさかな…。」と考え込んでいる。
ほんとにそう…こんなことってなかなかないよね…。
これって…神社の言い伝えの力ってこともあったりするのかな…。
まさか…ね…。
そんな話をしている間に私の家の玄関先に着いた。
「送ってくれてありがとう!楽しかった!」
「俺も…」と黒崎くんがじっと見つめてくる…。
私はゆっくりと瞳をとじた…。
その瞬間!!
ドアの向こうから父さんの声が!
「優…帰ったのか?」といってドアを開けてあわてて父さんが出てきた。
「父さん!!」
「遅かったじゃないか…心配したんだぞ!ん…誰だ?きみは?」
その後から母さんが追いかけてくる。
「ちょっとあなた…そんな慌てなくても…。あら!」
まさか…黒崎くんといるところを両親にみられるなんて…気まずいよ…。
「初めまして。同じクラスの黒崎純といいます。白瀬……優さんとは今日から真剣にお付き合いさせていただいてます。」
と真剣な表情で父さんと母さんにむかって挨拶してくれた。動じることなく…。
わたしは内心…えー!!今ここで?と思ったけど…ちょっぴりうれしかった!
「な、なに?黒崎って…まさかあの黒崎か?親友の?」と父さんが動揺している。
「はい。俺はその息子です。」
父さんはしばらく黙っていた…何かを考えているかのように…。
「そうか…俺の…俺たちの想いが叶うとはな…。」
それはかつて…父さんと黒崎くんのお父さんが高校生だったころのお話…。
それぞれの彼女…母さんたちをつれて…あの言い伝えの神社の境内で花火を見たとこから始まったらしい…。そして言い伝えどおり…それぞれ結婚し子供が…。同じ年に産まれた私たちはそれぞれ男の子、女の子だったので父さんたちはいつか…2人が一緒になれることを密かに夢見て…今日まで過ごしていたらしい…。もちろん…お互い意識しないようにそのことは伏せて…ってことらしいけど…。
「あいつ…あれほど言うなよって約束したはずなのに…なんだよ…まったく…。」
と黒崎くんにいつも言い伝えのことを楽しく話をしていたことを知り…父さんがへこむ…。
「父が…すいません…。」と黒崎くんが…。
父さんはちょっとおどろき…そして黒崎くんに話しかける。
「きみはあいつとは違ってしっかりしているな…。あいつはだめだ…約束を守れないやつだ…。でも君はちがうようで安心した…。」
「俺は約束は守ります…。」
「そうか…。じゃあ…大切な娘の優を…よろしく頼むな…。」
「はい…。」
私はなんだか気恥ずかしくなってたけど…そのやりとりをみて初めて…自分が大切にされている存在だと感じていた…。
父さんと黒崎くんの話が終わったところを見定めてか…微笑んでいたみていた母さんが父さんの肩をトントンと叩いた。
「私たちおじゃま虫はそろそろ…ね!」と母さんが私にウィンクする!
「いや…まだ…」という父さんの腕を強引にひっぱって家の中に…。
「ごゆっくりー!」といって母さんがドアをしめる。
私たちはお互いに次…話す言葉を探していた…。
「いいご両親だな…。」
「あ…いつもあんな感じ!でも大好きなの!」
「そうか…。俺たちもいつか…あんなふうになれたらいいな…。」
そういって…黒崎くんは私にそっとキスをした…。
ふいに黒崎くんからでた言葉に…私は幸せを感じた!まだ見ぬ自分の未来に!
それから8年…
私と黒崎くんは結婚した!
「お前なにやってんの?そんなの俺がやるから座ってろ!」
と食器を集めてキッチンにもっていこうとする私からとりあげた。
「大丈夫だよ…ちょっとは動かないとだめなんだから…。」
「落として怪我でもしたらどうすんの?いいから俺にまかせてろ!」
心配性なのは相変わらずだけど…昔と変わらずとっても大事にしてくれている!
そして…私たちにはもうすぐ赤ちゃんが産まれる…。
まだ見ぬこの子にも…いつか…あの言い伝えを話そうとおもう…。
でも大きくなるまでは秘密…恋ができるその時まではね…。
えっ…あの白いビーチサンダルはって?
透明なケースにいれて今も大切にリビングに飾ってる!
だって…私たちの大切な…たからもの…だから…
高校2年の夏…私はある男の子に恋をした…。
苦手だった…あの彼に…。
私は 白瀬優。通称ゆうちゃんと呼ばれている高校2年生。
勉強は苦手だけど部活のバレーボール部ではエースアタッカーをつとめる女の子。
そんな私にもずっと片想いの男の子がいる。
いつかは彼氏彼女になれたらなぁ…なーんて漠然とした夢を描いてる純な女の子だ。
ただ一つのコンプレックスを除いては…。
私のコンプレックス…それは私の身長が高いってこと!!
女子にしては高身長の175㎝!もちろん女子の中では1番だ!
部活では有利だけど…周りからはいつもおどろかれるし、男子にはちょっと引かれちゃってるのはわかるんだよなぁ…自分の身長がうらめしい…はあ…。
キーンコーンカーンコーン…。
授業のベルが鳴ると同時に親友の桃田美百合 ちゃんこと通称みゆちゃんと青野夏樹ちゃんこと通称なっちゃんが私の席に駆け寄ってくる。
みゆちゃんは小柄で可愛い人懐っこい天然フェミニン女子!もちろん男子からも人気がある!
なっちゃんは頭がよくしっかり者の優等生!大人っぽい雰囲気で高嶺の花っぽく近寄りがたい印象ではあるけど、じつは私の1番の理解者だったりする!
「ねえねえ…ゆうちゃん!この日にね…この夏、最後の夏祭りがあるんだって!みんなで行かない?」
とみゆちゃんが夏祭りのチラシをみせて満面の笑顔で話をする。
いつも落ち着いて物静かななっちゃんも「そうだね!最後の夏祭りだもんね…行こうよ!」といってくる。
私はお祭りのような人が多く騒がしいところが苦手だったけど、みゆちゃんとなっちゃんの勢いにおされ「うん!」と返事をした。
「やった!ゆうちゃん絶対だからね~!ねえねえ…きょうちゃん…」と同時にみゆちゃんが彼氏のとこにも駆け寄りそのことを告げているようだった。
そのうちに彼氏の親友たちも引き連れてこちらに帰ってきた。
みゆちゃんの彼氏…緑川京也くんこと通称きょうちゃん!
明るくひょうきんでクラスのムードメーカー!
この2人…じつはクラス公認のラブラブカップルなんだよな~。ほんとうらやましい…。
あっ!…その後ろの…みゆちゃんの彼氏の親友…赤井知樹くん!
男子の中じゃ少し小柄だけど、まじめで優しい優等生で…私の片想いの相手…。
なぜ好きになったか…
それは以前、図書室で本を探しているとき、赤井くんのお目当ての本が届かなく私がとってあげたとき…
絶対に引かれるんだろうなぁ…って覚悟してたら
「ありがとう!きみのその身長が羨ましいよ!僕は168㎝!このとおりの低身長だからね…。」
と笑顔でいってくれた。
今まで身長をほめられた記憶なんてなく、こんな優しくいってくれた人…初めてだった…。
ん?あと…この人もいた…。
同じくみゆちゃんの彼氏の親友…黒崎純くん。
いつもツンケンしててちょっと嫌みな塩対応系のクールさをもつ男子!
私はなんとなく苦手だ…。
何が苦手かって?
それは187㎝もある高身長なくせにそんな上から目線の態度で見下ろしてくるから!
どちらかといえば自分がみおろすことが多いし、誰かに見下ろされるのは慣れてない分、苦手でちょっと怖い…。
あと…あんまりしゃべらないから何考えてるか正直わかんない…。
ってな感じのメンバー6人でこの夏、最後の夏祭りに行くことになった。
「じゃあ!せっかくのお祭りなんだし…浴衣で行こ!」とみゆちゃんがはしゃいで言う。
「えっ!浴衣…浴衣はちょっと…私持ってないし…。」私は浴衣なんて着たくなかった…。
「お母さんのがあるんじゃない?去年…ゆうちゃんち行ったとき、ゆうちゃんのお母さんにきいた!」となっちゃんまでもが…。
もう!母さんめぇ~余計なことを…。
私が浴衣を着たくない理由…それは…下駄を履かなくちゃいけなくなるからだよ…。
下駄をはくと必然的に背が高くなっちゃうもん…。
ただでさえいつもぺたんこ靴をはくようにしてるのにこんなの横暴すぎる!
と心で叫んでみてもとおるわけもなく…結局…女子は浴衣で集合になってしまった…。
みゆちゃんははしゃいで彼氏のきょうちゃんと楽しそうにおしゃべりしている。
あのカップルほんと癒しだな~と思いながら2人をみているとなっちゃんが話しかけてきた…。
「ねぇ…ゆうちゃん…。ゆうちゃんの好きな人って…赤井くん…だよね?」
「・・・・・・えー!!な、なんでわかるの?」
私は真っ赤になった自分のほっぺを隠すように押さえながら聞いた。
「やっぱりね!ゆうちゃんみてたらわかるわよ。あからさまに赤井くんを目で追ってるし…ひとりで赤くなってるし…まあ、みゆちゃんは鈍感だから気づいてないと思うけど…。」
「うん…なっちゃんにはかなわないなぁ…。」
「だったらさぁ!この夏祭りに決めてみない?私…協力する!」
「決めるって?」
なっちゃんが満面の笑みで私をみる!
「こ・く・は・く!赤井くんに!」
「えーー!!無理無理!ぜーったい無理!」
私の動揺は大きく、つい声をあらげてしまい、ちらほらこっちをみる生徒もいて焦る…。
「あの2人が羨ましいんでしょ?ここで決めないとズルズルいっちゃうよ?」
それもそうだけど…いきなり告白なんて…。私と赤井くんじゃとても釣り合わないよ…。
「でも…私…頭も良くないし…それに身長だって…男の子はきっと小柄なかわいい娘がいいと思うし…。」
「そんな考えじゃだめ!考え方なんて人それぞれなんだし…あたって砕けろ精神だよ!」
なっちゃんの言うことはいつも説得力がある!やればできるって思わせてくれる!
「う、うん…じゃあ…頑張ってみようかな…。」
「うん!がんばろ!お祭りの日、赤井くんと2人っきりになれるようにセッティングするから!」
「うん…。」
「それとこのことはみゆちゃんには内緒ね!だってみゆちゃんのことだから、ぜーったい彼氏のきょうちゃんに言っちゃうから!極秘でね!」
そういってなっちゃんは私を見て微笑む!
なっちゃんの勢いに押されちゃったけど…どうしよう大変なことになっちゃったー!という動揺は今日1日ずっとかくせないままになってしまった…。
【第2話 母の浴衣と言い伝え】
お祭り当日の夕方…。
「母さん前ゆってた浴衣は?そろそろ着付けしてほしんだけど…。」
私は母さんにあらかじめ浴衣をお願いしてて、さらに着付けもしてもらうつもり…。
「はいはい…ちょとまってね…これこれ!じゃーん、私が若いころ着てた浴衣!かわいいでしょ?」
それは…真っ白い生地に青いアサガオの花がいくつも描かれたシンプルな浴衣だった。
「えー!なんか地味すぎるんだけど?もっと…こう…ピンクや黄色や水色の生地にかわいい柄とかのないの?」
こんなシンプルなの…背が高いの余計に目立っちゃうじゃん!!
「なにいってんの?浴衣といえばシンプルなのが1番なのよ!母さんもこれで好きな人とお祭りいったなぁ…。」
今は母さんの恋愛話を聞いてる暇はない!
とにかく待ち合わせの時間が刻一刻と近づいているんだから!
「母さん早く!待ち合わせ時間があるの!着付けお願い!」
「はいはい!ちょっと聞いてくれてもいいのにな…。」
母さんはちょっと残念そうだったけど…ごめんね…。
「よし!できた!」
鏡の前でみると…たしかにシンプルだけど真っ白い生地がとても清潔感があっていい!
それに…青いアサガオの花々がとってもかわいくみえる!
なにこれ!イメージしていたのとはちがって…かわいいかも!うん!
母さんが私の嬉しそうな顔をみて…
「ね?言ったでしょ?ゆうは私の娘なんだから絶対に似合うと思ってたのよね~!」
「母さん、それ親バカっていうんだよ!」
「もう、この子はぁ!あとはおそろいの青いアサガオの髪飾り!うん!我が娘ながらかわいい!」
と自慢げに母さんは笑った。
私はこんな底抜けに明るい母が大好きだ!
ここまで褒められるのは…ちょっと気恥ずかしいけど…。
最近もこの高身長で悩んでいるのを知られたが、そんな身長差なんて気にしない王子様がいつか現れるわよって笑い飛ばしてくれた!
そんな母の言葉に正直救われたのだけれど…やっぱりそこは乙女である女の子だもん…気になるよ…。
そうこうしているうちに浴衣、髪飾り、浴衣用の和風の可愛いバッグがそろい準備ができた!
ふいに母さんが言った…。
「ねぇ…あそこのお祭りの古い言い伝えって知ってる?」
「言い伝え?知らないし聞いたこともないけど?そんなのあるの?」
それは…
祭りの日に神社の境内で花火を一緒にみた男女は必ず結ばれる…という古くからの言い伝えだそうだ。
母さんもおばあちゃんから聞いたのだという…。
まあ…ただの迷信だと思うけど…。
私は急いで玄関へ。
するとそこにはもうすでにセットでおそろいの下駄が置いてあった。
その下駄は黒の光沢に鼻緒の真ん中に青のアサガオの花が一凛飾られたとても綺麗で清楚な感じの下駄だった。
ただ…昔のタイプだからか…下駄の高さが5㎝もあるものだった…。
私がこんなん履いちゃったら…背丈が180㎝になるから嫌だったんだよ…。
「母さん…ほかの下駄って…?」
「ないわよ!この浴衣にはこの下駄って決まってるんだから!」
「だよね…はぁ…。」
しゃーないかぁ…よし!いざ出陣!
「あ!そうだ!神社の境内で母さんと一緒に花火を見た人って…だれ?」
「ん?聞きたい?その人はね…ゆうの1番近い人…。」
「ただいまー!」
「うわさをすれば!あなた…おかえりなさい!」
「まさか!父さん?へぇー!」
「ん?うわさってなんのことだい?」
「ううん、なんでもない!じゃ、ゆう…気をつけて行ってらっしゃい!頑張って!」
「えっ?う、うん!いってきます!母さんありがと!」
「頑張ってってなんなんだ?おい、ゆう!あんまり遅くなるなよ。」
ちょっと戸惑っている父さんの声を遠くに聞きながら…私は足早に集合場所の夜店の入口にむかった。
【第3話 ほめと怒り】
集合場所に近づくにつれて人々が楽しむ声、祭り囃子の賑やかな音色が響いてくる!!
私、人混みは好きじゃないけど夜店は好きだなぁ!
それにとってもいい匂い!
気分もわくわくしてくる!
昔よく連れて行ってもらった夜店で、射的や金魚すくいをしたり、あまーい艶やかなりんご飴やその当時流行った人気のキャラクターの袋に入ったふわふわの白い雲のような綿菓子…おいしかったなぁ!
たくさんの人達が賑わう中、夜店の入口に若者達が…。
「あっ!ゆうちゃん、こっちこっち!」
ともうすでに来ていたみゆちゃん、なっちゃんと男子組…京也くん、赤井くん、黒崎くんが集まっていた。
みゆちゃんは淡いピンク地に色鮮やかな黄色が光るひまわりがたくさん散りばめられた浴衣!
なっちゃんは水色地に白いユリの花がほどこされた清楚な浴衣!
2人ともほんとにイメージどおりなんだからー!!
「ごめーん…遅くなって…。浴衣に手間取っちゃって…。」
「ゆうちゃん…可愛い…可愛いよ!すっごく似合ってる!さらに背が高くスラッと見えるしカッコいい!」
と満面の笑みでゆってくれるみゆちゃん!
実はグサッと痛いとこつかれちゃっても…
このみゆちゃんの嫌みのない、嘘をつけない天然さもまた…
可愛いくて憎めないんだよね…。
「あ、ありがと!こんな格好めったにしないし…なんか恥ずかしいよ…。」
本当だった…。
普段もスカート系よりパンツ系選んじゃう…。
ペタンコ靴が多いから…。
「ねえねえ、きょうちゃん達もそう思うでしょ?」
と半ば強引に男子たちに答えを求めるのだけはやめてほしい…。
「おう!可愛いし似合ってる!なぁ、お前ら?」
と京也くんまで…。
もういい…やめて…と私は心の中で呟くしかなかった…。
「可愛いよ!白瀬さん背が高いから浴衣がすごく似合うよ…。」
「あ、ありがとう…。」
と片想いの赤井くんから。
ショック…は隠せないけど似合うといわれてやっぱりそれは嬉しい!
もちろん赤井くんに悪気はないことは重々承知…。
でもやっぱりこの背が目立つんだよね…。
だって下駄を履いたら180cm近くあるんだもん…そりゃ、みんな驚くよ…。
私のうかない表情に気づいたのか…なっちゃんがそばにきて…小声でいう。
「ほんと素敵だよ!2人も悪気はないんだし気にしない!気にしな~い!」
と励ましてくれる。
「うん!」
なっちゃんはほんとに頼れるなぁと心からそう思った!
その時…私は黒崎くんと目が合ってしまった!
でも…すぐに目をそらしてしまった…。
私のばか!なんですぐ目をそらしちゃうのよー。逆に気まずいじゃん…。
すると…
「いいんじゃね…。」と黒崎くんが無表情で小声でいう。
黒崎くんは苦手だけど…でも…なんだろ?ちょっとうれしい…かも。
それをみていたみんなはちょっとびっくりしていたようだった。
「なんだよ!純、女子とはめったに話さないお前でもそんなこと言えんのな?もしかしてでかい白瀬のこと女子と思ってないとか!ははは!」
私の心はちくん…と痛んだ。
そういった京也くんの胸ぐらを黒崎くんはとっさに掴んでいた。
「お、おい…冗談だよ…。何怒ってんだよ?」
他のみんなにもさとされ、すぐに離したが黒崎くんの表情は曇っている。
ちょっとからかわれただけで胸ぐら掴むなんてやっぱり…ちょっと怖い…。
「もうやめようよ!きょうちゃんも冗談が過ぎる!ゆうちゃんと黒崎くんに謝って!せっかくのお祭りなんだし気分なおしてみんなで楽しも!ね!」
みゆちゃんが彼氏の京也くんを注意し状況をまとめた。
ほんとはその役回りはなっちゃんだったりするのにすごい!
さすが彼女さんだ…なんて感心してる私はそんなみゆちゃんがとても頼もしく見えた。
普段が天然な女の子なだけに…。
その横でさらになっちゃんが驚きの顔をしているのが印象的!
たぶん私より驚かされたのだろう!
「悪かったよ…純…白瀬…。」
黒崎くんは黙っている。
「あー、私は気にしてないから!それにでかいのはほんとのことだし…。」
と言わないくてもいい自虐セリフをついついいってしまう自分が…嫌いだ…。
スタートからなんか妙な雰囲気になっちゃったけど…
気分一新して私たちはこの夏、最後の夏祭りを楽しむことにした…。
【第4話 楽しいはずの切ない夜店】
先頭にみゆちゃんと京也くんが楽しそうに歩いてる!
もう、この2人だけの世界作っちゃって!いいなぁ…。
その後ろを私となっちゃんが…。
最後尾に赤井くんと黒崎くんが歩いてる。
歩く先々の両側から夜店の食べ物のいい匂いや音、射的で子供たちがは楽しくはしゃぐ声、りんご飴をほおばる子供の手をひきながら楽しそうに歩く親子連れの姿…。
そして…並んで手をつないで嬉しそうに歩くほほえましいカップル…。
こんなふうに好きな人と並んで歩けたらどんなにいいか…。
私はそんなことを考えながらそのお祭りの雰囲気に酔いしれていた!
そのとき夜店の一画に金魚すくいが見えた!
「わぁ!金魚すくい!私、好きなんだー!ね、なっちゃんやらない?」
私はなっちゃんにそういうと…なっちゃんは少し考えているようだったが…うんと答えた。
赤井くんと黒崎くんはそんなの興味がないとばかりに向かいの石垣の下で待ってると。
みゆちゃんと京也くんカップルはもう先にいっちゃてて自由に楽しんでいるみたい!
私となっちゃんは入れ物と金魚をすくう道具のポイをもらう。
するとなっちゃんが「ちょっと待ってて!」といって男子たちが待つ場所に向かっていった。
しばらくして…なぜか赤井くんがポイをもってこっちにくる!
「えっ!なんで赤井くんが?なっちゃんは?」
赤井くんは少し困った顔をしながら…
「青野さんは…なんか…魚が苦手だから僕に代わってほしいって…一緒にいい?」
「も、もちろん!どうぞどうぞ!」
私が向かいの方向を見ると、黒崎くんの横にならんでなっちゃんが笑顔で手を振っている。
なっちゃんが金魚とか魚が嫌いなんてきいたことがない!だって家で飼ってるくらいなんだもん…嘘だ!
さてはもう協力作戦が始まってるー?
赤井くんが私のすぐ隣に座る!
ちょっと…すごく緊張するんですけどー!
どうしよ…なっちゃん…金魚すくいどころじゃないよ…。
「白瀬さんは金魚すくい得意?」
「えっと…得意かはわかんないけど…好き…かな…。」
「じゃあ、どっちがたくさんすくえるか競争しようか?」
「うん!」
そうして私は赤井くんと金魚すくいの競争をすることになったのだが…。
「あーあ、破れちゃった…。7匹かぁ…赤井くんは?ん?」
赤井くんをみると1匹すくってはいるが、まだ破れていないポイを片手に向かいの2人のいる方を見つめている。
なっちゃんが黒崎くんに笑いかけている様子を赤井くんは真剣なまなざしで見つめていたのだった…。
これって…。
「赤井くん?」
赤井くんははっと我に返った様子で…
「ああ…ごめんごめん…白瀬さんすごいなぁ!ぼくはいいからこれ使って!」
とちょっと動揺している様子で私にポイを渡してくれた。
「あ、ありがとう!」
といって水に浸すとすぐに破けてしまった…。
「残念だったね…でも白瀬さん金魚すくい上手なんだね!」と笑いかけてくれたけど…
私はなんとなく…気づいてしまった…赤井くんの想いに…。
私たちは2人が待つ場所にもどった。
「どうだった?楽しかった?」
なーんて聞いてくるなっちゃん…。
「うん、楽しかった…ありがとう。」
その少しテンションの低い言い方に違和感を感じている様子のなっちゃんだったが…少し首をかしげただけでそれ以上なにも聞いてこなかった…。
そのまま私たちは夜店の先を歩いた…。
すると進行方向に向かって左側に神社へとつづく石階段が見えてきた。
これだ!
母さんがいってた神社って…。
でもここの神社ってもう…ほどんどだれも近づかない感じだよな…私も小さいときに行ったきりだし…。
ちなみにこの夜店を抜けたちょっと先に広い河原があり、そこで盛大に花火大会が行われる。
その河原もきれいに整備されててみんなそこへ集中して花火をみにくる!
昔は神社の境内もにぎわっていたんだろうけど…考えたらこの長い石階段を登るのだけでも大変そうだ!
ましてや浴衣姿の女の子じゃ…きっと敬遠するだろう…。
そんなことを考えていると…
「私、ベビーカステラ好きなのよね!買ってくるから待ってて!」
といってなっちゃんが店の方へ駆け出そうとした瞬間、下駄がつまづきバランスをくずし倒れそうになったのをそばにいた赤井くんがとっさに抱きかかえた!
「大丈夫?」
といった赤井くんの表情は真剣になっちゃんを心配していて…私が声をかけられる隙間もなかった…。
「あ、ありがとう…。」
なっちゃんも驚きと戸惑いの顔をして少し頬をピンク色に染めながらうつむいて言った…。
それから何事もなかったようにベビーカステラの店の前へ。
そんななっちゃんをみていてふと、子供たちの楽しそうな声でにぎわっている真向いの射的の店をみる。
そこには所狭しと並べられた景品の数々と正面に並べられたいろんな人形に番号がふられた的にコルク玉を懸命にあてている子供たちの姿が…。
これもほんと楽しくてわくわくするんだよなぁ!
と景品の上のほうにひときわ目立つ白いビーチサンダルが!
かわいい!
真っ白いサンダルに大きな青いアサガオの飾りが真ん中についてる!私の浴衣青いアサガオだしこれって偶然?
あれ…履いたら…ちょっとは背が低くみえるかな…。
赤井くんに…かわいいって思ってもらえちゃったりするのかな…。
なんて自然に考えてた。
気がついたら店の前にいて…
「おい、なにやってんだよ。」
と黒崎くんに声をかけられた。
「あっ…ごめん…ちょっとぼーっとしてた…。」
「なんかほしいもんでもあんのかよ…。」
「えっ!ううん、なんでもないよ…ごめん…。」
なんてやりとりをしていたら、なっちゃんと赤井くんがこっちにくる。
「ゆうちゃん、どうしたの?はいこれ!ベビーカステラ!みんなでだべよ!」
と笑顔でカステラをみんなに分けてくれる。
そのまま…後ろ髪引かれる思いはあったけどその場を後にした…。
少し先でみゆちゃんと京也くんが待っていた。
「やっときたー!こっちこっち!」
とみゆちゃんが手まねきしている。
「お前ら遅いぞ!おれたちがどんなに待ちくたびれたか…。」
と京也くんがおふざけでいった!
「なにいってんだよ!仲良く2人きりで歩いていったくせに!」
と赤井くんが笑顔でめずらしく京也くんとみゆちゃんをひやかした!
そんな明るい赤井くんをみて…私は逆に少し不安を覚えたのを心で感じとってしまっていた…。
【第5話 苦手な彼と2人で】
「ゆうちゃん、なっちゃん、これ見て!じゃーん!」
といって夜店であれこれ買って食べているものを見せてくれた。
みゆちゃんは右手にりんご飴をもって嬉しそうに言ってくる!
その後ろから京也くんも買った焼きそばの入った袋を腕にかけ、いちごシロップがけのかき氷をもって美味しそうにほおばっている。
私となっちゃんは顔を見合わせ思わず笑ってしまった!
「なによー?」
みゆちゃんが不思議そうに私たちを見ている。
なっちゃんがすかさず言う。
「だって、2人でそんなに食べ物ばっかり買ってー!ラブラブなのに色気も何もないじゃん!」
と2人を見ながらまた笑う!
「はい!ベビーカステラもどうぞ!」
というと少し複雑な表情のみゆちゃんと京也くんだったけど、ちゃっかりベビーカステラをもらい口にほおばっていた。
私はそんな2人がさらにほほえましく見え…うらやましかった…。
「なんか喉かわかねぇ?花火もみるし俺、飲み物買ってくるわ。みんななんでもいいな?」と京也くんが食べ物をたくさんもったまま行こうとする。
そんなんでどうやってみんなの分持つのよー。
「あっ、私いくよ!そんなに持ってて…もう持てないでしょ?ベビーカステラの店の横に飲み物の店あったし…。人も多くなったきたし大勢で行ってもね…。それに私…手…大きいから…ほら!!」
といって両手を見せる。
確かに背が高いせいか…手も大きいけど…なにもまたこんなことを自分から言わなくてもいいのに…。
その時なっちゃんが思いついたように…
「じゃあ、赤井くんついてってあげて!女の子だけじゃ持てないでしょ?」と言った瞬間…
「俺がいく。」と黒崎くんが無表情でいった…。
「えっ!!」と思わず私は声をだしてしまった。
みんなも黒崎くんをみて驚きの表情を隠せない!
「手なら俺の方がでかいし…たくさん持てるだろ?」
そう言われて…私は何も返せる言葉がなかった。
もちろんみんなも…。
なっちゃんが私をみて…ごめんと言わんばかりに小さく手を胸の前で合わせる。
「行くぞ。」と黒崎くんがそっけなく言う。
「あ…うん。」
私は目も合わさずにさっさと先を歩いていく黒崎くんに、とりあえずついていくしかなかった…。
よりにもよって1番苦手な黒崎くんと…。
私たちが歩いている方向からは花火大会がある河原に向かって、歩いてくるたくさんの人達ばかりだった。
私はどんどん先を行く黒崎くんに、はぐれないよう必死でついていったが、履きなれていない下駄で鼻緒のあたる部分が少し痛んだ…。
人の流れに逆らうように歩いていた私は、しゃべりながらはしゃいでいた男子数人のグループの1人に押される形でぶつかりバランスを崩した。
「きゃっ!!」
後ろに倒れる…と覚悟し目をとじた。
その時…私の右手首がぐっとつかまれひきよせられた。
誰かの大きな胸に顔うずめる私…。
顔をあげるとそこには黒崎くんが…。
「大丈夫か?」
私は少しぼーとしていた。
大きい体…広い胸板…。
「白瀬?」
はっ!私…何考えて…。
「あっ、ご、ごめん…ありがとう…。」
焦る私は体勢を整え歩こうとしたとたん…黒崎くんに手をつながれた!
「えっ、えっ!」
という私をよそに黒崎くんは手をつなぎ引っぱっていく。
「またさっきみたいなことがあったらやっかいだからな…。」
と少し照れた表情をしながら…今度は私の歩幅に合わせながらゆっくり歩いてくれる。
そんな彼を見ながら…私は意外な頼もしさと優しさをみせた黒崎くんになぜか…安心感をおぼえていた…。
飲み物の店につくともう種類は少なくなっていた。
「ミネラルウォーターでいいよな?」
「う、うん。」
黒崎くんが6本購入する。
「あっ、お金…」といってバックから財布を出そうとした…。
「いらねえよ…明日、男子に徴収しとくから。」といってくれ、私はその言葉にお礼をいった。
黒崎くんは両手に2本ずつ、私は1本ずつに分けてくれた。
ふと向かいをみると、人がまばらになった射的の店がまだやっていた。
そしてそこにはまだ…あの白いビーチサンダルがあった。
「帰るぞ。」
「・・・」
「おい!」
「あっ!ごめん…黒崎くん…これ…ちょっと持っててもらっていい?ほんとごめん…。」
私は手にもってたペットボトル2本を黒崎くんに強引に渡し、射的の店の前に行った。
「なんだ、ねえちゃんやるのか?」
と店の威勢のいいおじさんが私に声をかけてくれた!
「うん!おじさん、それ…その白いサンダルってどれに当てたらいいの?」
「サンダル?おお、これか!これは8番の人形だ!」
それはかなり小さな人形だった。
1回100円で当たる気がしなく、私は500円で6回を選んで狙いを定める。
1回目…2回目…3回目…4回目、全部外れた…。
ふと後ろをみると黒崎くんが遠目から私の様子をじっとみている。
私はどう思われようと気にならなく的に集中した。
もしこの白いサンダルがとれたら…履きかえよう!
私はちょっとでも低くなった私を見てもらって、赤井くんにつりあえる女の子になりたい…。
1度でいいからかわいいねって言ってもらいたい…。
私の心の中はもう…そのことでいっぱいだった。
5回目…最後6回目…すべてだめだった…。
はぁ…そんなにうまくいくはずないか…。
「残念だったな!ねえちゃん、はいよ!残念賞!」
といって小袋のスナック菓子をくれた。
私は黒崎くんの前に行き「ごめん。」と一言…。
彼は何も言わず…何も聞かず…歩き出そうとした。
「私も持つよ…。」といい手を差し出す。
彼はいいといったけど、私は心を見透かされているようで気まずいのか…はたまた同情されるのが嫌だったのか…無理やりにペットボトルを2本うばった…。
そのときの私には…そんな黒崎くんの優しさに気づく余裕すらなかったんだ…。
私の…ばか…。
【第6話 気づいてくれた?私の気持ち】
私と黒崎くんがみんなのところへ戻ると少し遠目に赤井くんとなっちゃんの姿が目に入った。
なにやら神妙な面持ちで…。
私が声をかけようとしたと同時に赤井くんの声が耳に入ってきた。
「青野さんが好きなんだ…ずっと前から…ぼくとつきあってほしい…。」
私は自分の目を…耳を疑った…。
なんとなくは心のどこかでは気づいていたこと…認めるのが怖かったこと…。
でも…まさか…自分の片想いの相手の告白を今、まさに目の当たりにするなんて…。
「何いってるの…?赤井くんのことが好きなのは…ゆうちゃんなんだよ…。」
となっちゃんが動揺しながら赤井くんに必死で話しかけている。
「知ってる…なんとなくは気づいてた…。」
「だったらなんで?」
「白瀬さんのことは好きだよ…でもそれは友達としてだから…。きみへの好きとはちがうんだ…。」
私は堂々とした赤井くんの告白にもちろんショックは隠せなかった…。
だけど…なぜかもやもやしていた気持ちがすーっと晴れていくのを感じていた…。
失恋…。
告白もせず…。
と同時に親友の恋の成就を心から願いたいと思った瞬間だった!
私の足は自然と2人の方へと向いていた。
「ゆうちゃん!」
なっちゃんは驚いて…焦りで体が固まっている。
赤井くんもそう…。
「はい!」
といってなっちゃんと赤井くんにペットボトルの水を差し出した。
「よかったじゃない!なっちゃん!」
「なんでそんなこと…?ゆうちゃん、赤井くんが好きなんでしょ?なんですぐにあきらめられんの?」
となっちゃんが声を少しあらげて言った。
「それは…赤井くんが好きだからだよ…赤井くんはちゃんとはっきり言ってくれた…。なっちゃんのために…。」
「白瀬さん…。」と赤井くんが切ない表情で私を見る。
「誰だって…好きな人には幸せになってもらいたい…たとえそれが私じゃなくても…。」
「ゆうちゃん…。」
というなりなっちゃんが大粒の涙をこぼした…。
「ごめん…。私、赤井くんの告白…嫌じゃなかった…それどころか嬉しかった自分がいて嫌だった。ずっと成績でライバル視してたのは私なのに…なぜか…いつからか私も目で赤井くんを追ってた…。」
「なっちゃん…。」
なっちゃんは私の気持ちを知ってしまってからは…自分の気持ちを知られるのが怖くて封印したらしい。
今の私との関係が壊れるのが嫌だったから…。
私にいつも気を遣ってしんどかっただろう…苦しかっただろう…。
「だったらもう、何も問題ないじゃない!私との関係も壊れないし、赤井くんとも両想いだし!」
泣いてる顔をあげ、なっちゃんがいった。
「ほんとにいいの?」
「もちろん!好きな人の好きな人が…自分の親友なんて素敵じゃない?」
と精一杯の笑顔でいった。
「白瀬さん…ありがとう。」
と赤井くんがなっちゃんの方へ向きをかえ…再び…
「青野さん、もう一度いう…僕とつきあって下さい!」
なっちゃんも涙を拭いながら真剣なまなざしで…
「はい…。」と答えた。
私は心から2人のことを喜んでるし…よかったと思っているのに…なんでだろう…心にぽっかり穴があいたような感じがした。
「ん、これ…。」
といって一部始終をみていた黒崎くんがペットボトルを私にくれる。
「あ、ありがとう。」
水を受け取ったと同時に、奥でさっきの買ったものを2人仲良く食べていたみゆちゃんと京也くんが私たちの方へやってきた。
「飲み物ありがとな!」と京也くん。
「ごめんね…ありがと!」とみゆちゃん。
といつもの感じでペットボトルを黒崎くんから受け取っていた。
なんか…この変わらない感じに…今の私の心は救われた感じがした…。
「そろそろ花火見えるとこ行こうぜ!」
と京也くんがみんなを誘い花火大会がある河原の方へ歩き出す。
みんなもそれにつられてゆっくり歩いていく。
周りには花火大会に向かうたくさんの人達が一緒に歩いていく。
みゆちゃんと京也くん…。
なっちゃんと赤井くん…。
みんな…楽しそう…。
どっちも私の理想のカップル…ほんとにそう思える!
私は右隣、少し前を歩く黒崎くんをみた。
黒崎くん…どう思っただろう…。
バカだって笑う?
失恋女にかける言葉なんてない…か。
ほんと無表情だし何考えてんのかわかんないや…。
帰りたい…。
そんな中…私の両足はまるで足かせをつけられているかのように…重い…。
鼻緒ですれて痛いから?
ちがう…私…本当は……。
その時…
「白瀬はまちがってねえよ…。」
私の足は止まっていた…。
えっ何?今なんて?
私…まちがってない?
よかった…。
この一言…たったこの一言を…私は待っていたのかもしれない…。
黒崎くんが立ち止まり、みんなも振り向く。
「どうしたの?ゆうちゃん。」とみゆちゃんがきょとんとした表情でいう。
「私…ここで帰るね。じつは父さんにこの時間に帰るように言われてたの…始めにいっちゃうとしらけちゃうでしょ?」
みんなは驚き、なっちゃんはうかない表情をしていたが周りは人が多いこともありみんな納得してくれた。
「ごめんね、みんな!花火楽しんできてね!」
と私はみんなが向かう方向に手をふり、笑顔で見送った。
少し目をそらした黒崎くんにも…。
そうして、私はみんなとは反対方向へと歩き出した。
人の流れに逆らって…。
【第7話 言い伝えは本当?ビーチサンダルがもたらす奇跡】
気がついたら、私はあの射的のお店の前まで引き返していた。
時間も終わりに近づいていて、みんな花火大会に向かっているためか、そこには誰もいなかった。
ちらっと景品の方へ目をやると、そこにはまだあの白いビーチサンダルが飾ってあった。
「おう、さっきのねえちゃんじゃねえか!どうした?花火行かねえのかい?」
と店のおじさんが威勢のいい声で話しかけてきてくれた。
その声に吸い寄せられるように歩き、私は店の前で立っていた。
「おじさん、1回だけやらせて?」
私はもう必要なくなった白いビーチサンダルがとれようがとれまいがもう、関係なかった…。
だけど…最後にもう1度だけ…自分の気持ちをリセットしたくてがんばってみたかったんだ…。
さっきとは違う私の雰囲気を感じとったのか、おじさんが射的の準備をしながら言った。
「なあ、知ってるかい?この神社の上の境内で花火を一緒にみた男女は、必ず結ばれるって話…。まっ、古い言い伝えらしいけどな!」
それは母さんからも聞いていた話と同じだった。
ちょうど店の横が神社の入り口で、長い石階段が続いている。
「あんなのただの迷信でしょ?母さんは父さんと一緒に見に行ってたみたいだけど…。」
といって射的の銃を受け取り、8番の的に狙いをさだめる。
この1回…
1回で絶対に当てる…。
私はすべての気持ちをぶつけるように引き金を引いた。
念を込めたはずのコルク玉は無情にも外れ地面に転がった。
はぁ…また外れ…。
そんなにうまくいくもんじゃない…か…。
と右横に誰かが…。
「俺も1回…。」
見上げるとそこには黒崎くんが立っていた。
「黒崎くん!なんでここに?花火は?みんなは?」
私はあまりの驚きに怒涛のように、どうして?の感情をあらわにしていた。
「ちょっと落ち着け…俺が1人あの中にいてもしゃーねぇだろ?」
「あ…そだね…。」
そっか…。カップルの中に1人って…しかも黒崎くんだし…。
「青野と桃田が送れってうるさくて…。それに危なっかしいだろ?1人じゃ…。」
と少しうつむき照れたように見えた黒崎くんがちょっとかわいく見えた。
こんな表情初めて見た…。
「はいよ、にいちゃん!頑張りな!彼女にいいとこ見せなきゃな!」
「ちょ、ちょっとおじさん!ちがうから!」
私はとっさに訂正してみたけど、おじさんはにやにやしていて、黒崎くんはうつむき黙ったまま…。
おじさんから射的の銃を受け取った黒崎くんが銃をかまえる…。
背が高く…肩幅も胸板も大きい男子がかまえるとこんなにもさまになるんだぁ…。
「1回だけじゃ無理だよ。私なんかもう、7回もやって無理だったんだから…。」
というやいなうや、黒崎くんが放ったコルク玉は見事、8番の小さな人形を倒した!
私は驚きのあまり声がでなかった。
「大当たり―!!」
とおじさんが派手に大きな声で言う。
すでに透明のビニール袋に入ってある、青いアサガオの飾りがついた白いビーチサンダルを手にとり、にやにやしながらわざと黒崎くんに手渡した。
ちょっと戸惑う黒崎くんだったけど…私の目の前にさっと差し出した。
「欲しかったんだろ?これ…。」
「えっ、でも…。」
「俺が持ってても仕方ねぇだろ?」とさらに押し付けてくる。
「ありがと…。」と私は小声でいった。
べつに欲しかったんじゃない…。
気持ちのリセットがしたかっただけなのに…それも私はできなかった…。
履く必要もなくなったこのサンダルは今や…私の中ではむなしいだけだった…。
そんなやりとりを見ていたおじさんが言った。
「ねえちゃん、さっきの言い伝えの話だが、昔、俺も見たんだよ…境内で花火!」
とおじさんが自慢げに話す。
「へぇー、その人とはどうなったの?」
と聞いた時、1人の女性が裏から入ってきた。
「ねぇ、そろそろ片づけないと…。あっ、お客さん?この人おしゃべりがすぎるから、花火大会行くのに引き留めてたんじゃないの?ごめんなさいね…。」
とても元気で明るい女性が弾丸のように会話に入ってくる!
「いえ…もう帰るとこなので…。」
「えっ!恋人どうしで花火見ないとかありえないわ!なんで?」と女性が間髪入れずに聞いてくる。
「私たち…そんなんじゃ…。」
「ふーん。お似合いなのにね!」
お似合い?私と黒崎くんが?そんな風にみえてるの…?
それをみていたおじさんがすまなさそうに間に入ってくる。
「お前それぐらいにしとけ。ねえちゃんたちにもいろいろと事情があるんだよ…な?すまなかったな。」
「でもさ、せっかくなんだし…友達どうしでも花火見てきたら?この上の境内から見る花火は絶景なんだから!河原に行ってたら絶対間に合わないと思うし、ここからなら境内のほうが近いしね!でも急がなきゃ!」と女性がせかす。
私と黒崎くんは一瞬、顔を見合わすがなんとも煮えきらない様子に業を煮やしたのか、女性は表に出てきて私たちの背中を押す。
「ほら、早く!あら、でもその下駄でこの階段は辛いわね…そうだ、このサンダルに履き替えたら?」
「えっ?は、はい…。」
帰るはずの私たちが…なんかへんな展開になっちゃったけど…まっ、いいか!と思いながら私は、赤井くんの前では履けなかったこの白いビーチサンダルに履き替えた。
「うん!かわいい!この浴衣にすごく合うじゃん!」
と女性は満面の笑みでいってくれたのがすごくうれしかった!
「ありがとうございます!」と私も自然に笑顔になっていた!
下駄をサンダルが入っていた袋に入れ替えた。
「さぁ、急いで!そしてちゃんと思い出つくっといでよー!」とまた女性がいう。
私は思い出したようにおじさんに聞いた。
「おじさん、さっき言ってた一緒に花火見た人って…?」
「これ!うちの奥さん!」といって笑顔で女性を指さす。
「これってなによー!失礼しちゃう!」と少し怒って見せたがその表情は幸せそう!
母さんもおじさんもここで?
でもほんとなのかな…あの言い伝え…。
と思いながら石階段を登ろうとしたとき、おじさんが黒崎くんに袋に入った何かを投げ渡した。
「にいちゃん、ほらよ!これしか残ってなかったけどもってけ!」といって見送ってくれた!
2人で仲良く手をふりながら!
【第8話 石階段での恋の気づきと切なすぎる涙】
私たちは神社の境内へとつづく長い石階段を、急ぎぎみに登った。
思ったより急で大変…。
私は浴衣の裾が足にまとわりつき、階段をふみ外しかけた。
「きゃっ!」
その瞬間…
またもや黒崎くんの大きな手で支えられた。
「ごめん…。」
「まったく…しょうがねぇな…。」
といったかと思えば黒崎くんは私の手をつなぎ、優しくひっぱる形で登ってくれる。
「ちょ、ちょっと…黒崎くん!私…大丈夫だから…。」
「大丈夫なやつが2回もこけそうになるかよ!少し黙ってろ。」
大きな手…その手から黒崎くんの体温が伝わってくる…あたたかい…。
その手をたどってゆっくりみあげるとシャープでキリっとした黒崎くんの横顔が目に入る。
いつもは無表情で怖い人って思ってたけど…今はなんだか安心できる人…。
黒崎くんってこんなことする人だったっけ?
とか考えてたら急に黒崎くんがこっちを振り向いた。
私はとっさに目をそらしてしまう…。
「なんだよ…。」
「ううん、なんでもない…。」
ちょっとびっくりした…。
なんで目をそらしちゃったの?私…。
今…胸が…心臓が……。
これじゃ…まるで…恋…?
その時、遠くからドンドンと連続する花火のフィナーレの音が聞こえる。
「ちょっと急ぐぞ。」
私の手をにぎる黒崎くんの大きな手にさらにぎゅっと力がこめられる。
私たちはやっと神社の境内に着いた。
そこには外灯がポツポツとあるだけ…人の気配はなく私たちだけのようだった。
私は急いで見晴らしの良い場所へ向かい遠くを見渡した。
そこにはもう…花火の光はどこにも見あたらなかった。
もう花火は終わってしまったようだった…。
黒崎くんが遅れてわたしの隣に…。
「終わっちゃった…。」
「ああ…。」
私はしばらく呆然としていた。
花火が特別見たかったんじゃない…。
ただ…当たり前かのように、言い伝えどおりに花火がみれるものだと勝手に思い込んでいた自分が嫌だっだ…情けなかった…悲しかった…。
花火をみたらちょっとでも気持ちが癒されるかなぁ…って思ってた自分がいた…。
母さん…おじさん…。
好きな人とここで花火が見れるなんて…それはきっと…奇跡に近いことなんだよ…。
私は好きな人どころか…告白もできずに失恋…。
気持ちのリセットもできずに…今年最後の花火すら…みることもできなかった…。
最悪…。
なんか…神様に見放された気分…。
こんなこともあるんだなぁ…。
そんなことを考えているとほほを伝う生あたたかいものが…。
「白瀬…お前…。」と黒崎くんがおどろいている様子で私をみる。
一瞬、黒崎くんをみて…はっと我に返る私…涙…?。
すぐに指で涙をぬぐった。
「やだ…私…なんで涙なんか…どうしちゃったんだろう…。」
自然に流れでた涙に自分が1番おどろいていた。
それを見ていた黒崎くんが私の手首をつかみどこかへひっぱっていく。
「えっ、ちょっと…黒崎くん…どこいくの?」
そこは神社の前の階段。
黒崎くんがさっきおじさんからもらった袋に入った何かを取り出し、袋を階段に敷いた。
「ちょっとここ…座って。」
「なに?」
「いいから!」
さっきとはちがう黒崎くんの真剣なまなざしに私は不安はあったけどゆっくり腰かけた。
そのすぐ隣に黒崎くんも座った。
そしてなにやら準備をしている様子。
小さい袋から何かを取り出し私に手渡してくれた。
よくみるとそれは線香花火だった。
「線香花火?おじさんが黒崎くんにくれたやつ?」
「ああ、でも俺にじゃねぇ…俺たち2人にだ…。やるか?」
「うん!」
そう答えた私の心はなぜか穏やかになっていた。
【第9話 縁起物と8の意味】
黒崎くんは付属のマッチを取り出し準備をする。
「ねえ、線香花火って全部で何本?」
「8本だけど…何?」
「ううん、2人で4回ずつできるね。」
「俺はべつにいいから白瀬が全部やれよ。」
「べつにそんな意味で言ったんじゃ…。」
「・・・」
「一緒にしてくれる?1人じゃ寂しくなるから…。あっ、でも男の子は線香花火より華やかな花火のほうがいいよね…きっと…。」
「そんなことねえけど…大丈夫か?」
黒崎くんがそんなこというなんて…なんか意外…。
「なんで…そんなこと…。」
「いや…さっきも泣いてたし…。」
心のどこかで気丈にしとかなくちゃって…思ってたんだけどな…。
そっか…やっぱり変に思われてたよね…。
心の中を悟られた恥ずかしさと同時に、それまで必死に抑えていた切なさと悲しみがどっとこみあげてくる。
私はそっとうつむいた…。
と目にうつるのは…この白いビーチサンダル…青いアサガオの飾りがついた…。
自分の抑えている感情がいっぱいいっぱいまで追い込まれている気がした…。
目にうつっているはずの白いビーチサンダルがぼやけてゆがんでいくのがわかった…。
そして一粒…また一粒と涙がこぼれる。
「おい…。」
と黒崎くんが少し動揺した声で私に言った。
「私ね…この白いビーチサンダルを初めてみたとき、これを履いたら背が低くなるし、赤井くん…ちょっとはかわいいねってほめてくれるかなって思ったんだぁ…。そんな不純な動機…。でも失恋して…必要なくなったはずだったんだけど、最後に気持ちをリセットできるかなって思ってやってみたら…見事に外れ…。あたりまえに見れると思ってた花火だって…結局見れなかった…ほんと笑っちゃうでしょ?」
黒崎くんは黙って私の話に耳を傾け聞いてくれている。
「せっかく黒崎くんがとってくれたこのサンダルを私はもう…むなしいものだって思っちゃったんだ…。最低だよね?」
「今も…そう思うのか?」と黒崎くんが言う。
あらためてそう聞かれても私はすぐに答えが見つからない…。
「わかんない…。でもこれを見るたびに…今日の悲しい1日がよみがえる…縁起の悪いものに思えるようで嫌かも…。」
黒崎くんがあきれた表情でため息をつき私をみる。
「縁起が悪いってなんだよ。俺からすりゃ…そのサンダルは縁起のいいものでしかねえけどな。」
「えっ?どうして?」
私は黒崎くんが言ってる意味が本当にわからなかった。
今のこの状況でなんでそんなことがいえるの?
「8…。」
「えっ?」
「数字の8だ。」
「8がどうしたの?」
「あのな…分かってねぇから言っとくが8って数字はな、昔っから末広がりで縁起がいいとされてる数字なんだよ。達成とか成功って意味合いもある。8を横にしてみ?」
私は頭の中で8を横にしてイメージしてみた…。
「ループかな?」
「そう。無限に…とか永遠に…とかの意味になる。分かるか?」
「うん…恋愛とか結婚だったらうれしいよね、永遠に…って言葉!」
はっ!私…何言ってんだろ…さっき失恋したばかりなのに…もう…。
でもなぜか…自然に出てきた言葉…。
「まあ、そうだな…あとそのサンダルな。それも8が関係してるの…気づいてない?」
「えっ?」
「やっぱり気づいてなかったか…。景品の番号は?射的でとれた回数は?」
そう言われて考えてみた。
景品の番号も…黒崎くんが射的でとってくれたのを含めた回数も…
「全部…8!」
「この線香花火の本数もな。」
黒崎くんが優しく微笑む。
「それだけじゃない。このサンダルがとれたのも…今、白瀬がそれを履いてここにいるこの状況も…俺にとってはすべてが縁起のいいことなんだよ…。」
私は黒崎くんの熱のこもったその話に聞き入っていた!
「すごいね…黒崎くん!物知りな上に…ただむなしくなるはずだったこのサンダルのイメージまでいいものに変えてくれた!ちょっとうれしい…ありがとう…。」
そう笑って黒崎くんの顔を見上げると、少し困った…複雑な表情をしている黒崎くんがそこにいた。
「どうしたの?」
「いや…なんでも。線香花火するか?」
「うん!」
そのときの私の心は…すっかり晴れやかになっていた!
【第10話 突然の…。告白に秘められた気持ちと線香花火】
黒崎くんがマッチで火をつけてくれる。
パチパチと小さい炎があがったと思ったら…ポトッと小さい火の玉が下に落ちた。
「あれ…落ちちゃった…。」
私に2本目を渡してくれて火をつけてくれた。
「よし!今度は大丈夫!」と意気込んでみたわりには1本目よりも早く落ちた…。
「あっ、なんでよ…。」
それを見ていた黒崎くんがクスっと笑った。
「ちょっと持ってみ。」
といい私が線香花火を持つと、ちがうといっていきなり手を握られ下の方に持ち替えさせてくれた。
私は一瞬、驚きで声がでなくなった…。
また胸が…変…これ…さっきのとおんなじ…。
「上をもつとふり幅が大きくなるから、できるだけ下の方をもつといい。」
「う、うん…。」
と私はそんな気持ちを隠せないほどに動揺してるのに、ポーカーフェイスの黒崎くんが火をつけてくれる。
今度はさっきよりも長くきれいに…そして華やかに燃えて火の玉が落ちた。
「ほんとだ、すごい!」といって黒崎くんのほうをみると優しい笑顔で私をみている。
なんだか恥ずかしい…。
はしゃいでる自分を見られたからなのか…それともその優しい笑顔に…なのか…。
「これ、最後な…。」
と最後の1本を手渡してくれ火をつけてくれる。
さっきとはちがって次は落ち着いて…ゆっくり眺めていられる。
パチパチと小さな音をたてて火花を散らす線香花火…。
じっと見つめていると…その火花の光の中に吸い込まれそうになる…。
「きれい…。」
私の口からはその言葉が気づかないままに自然にでていた。
「ああ、きれいだ…。」
と黒崎くんの声がすぐ横で聞こえた…。
私はこの幻想的な空間にいる私たちの時間が…少しの間、とまってくれたらいいのにって思ってた…。
「白瀬…。」
「ん?」
ふいに黒崎くんに呼ばれ振り向いた瞬間…唇へのあたたかい感触…。
しばらくその感触に包まれていた…。
黒崎くんの顔がわかるくらいにゆっくりと離れたとき…
「ごめん…いきなり…。」
そういわれて…初めて何がおこったのか理解した私…。
黒崎くんからのキス…。
私はうつむき恥ずかしさと戸惑いが交錯する中…このキスの理由を必死でさがしていた…。
「ずっと好きだった…。白瀬が花火を見つめる表情…綺麗で我慢できなかった…。もう1度言う…白瀬が好きだ。俺とつきあってほしい…。」
黒崎くんからの突然の告白に…私はすぐに言葉がでなかった…。
ふとみると線香花火はとっくに消えていた…。
「ずっとって…いつから私のことを…?」
ほんとにいつから…?
黒崎くんがなんて…そんなの考えたこともなかったのに…。
「図書室…知樹と話してたろ?あのとき俺…いたんだ。」
「うそ?」
それは私が赤井くんと初めて話をして…恋した日…。
そこに黒崎くんが…いた?
「知樹と一緒にきてて、知樹と話す白瀬のころころと変わる表情が妙に気になって…意識し始めた…。」
赤井くんとのあのやりとりを見られてた?
やだ…私、絶対へんな顔になってたのに…。
「白瀬…たぶん背が高いこと気にしてたろ?」
「えっ!なんでそれを…。」
「知樹が小柄だから余計…どこか一線をおいてるっていうか…なんとなくな…。あの時…待ち合わせの時も京也が白瀬を侮辱するようなこと言ったからむかついた…。」
「あの時って…そうだったの?私…てっきり京也くんにからかわれたから怒ったのかと…。」
「親友だぞ…そんなんしょっちゅうだし、そんなことじゃ怒んねえよ。」
そんなの…全然わからなかった…。
無表情で何考えてるかわからないし…。
黒崎くんのことはどちらかというと怖くてずっと避けてきたから…。
その彼が私を好き…?
それなのに私は赤井くんをずっと目で追ってた…黒崎くんの気持ちも知らないで…。
それって…それって…今日の私と同じ気持ちをずっとさせてたってこと…?
こんな辛い気持ちを…。
私の目からは自然に涙がぽろぽろとこぼれていた…。
「ごめん…。」
黒崎くんはそんな私をみて少しおどろいていたけど、何かを悟ったように冷静に言った。
「こっちこそごめんな…自分の気持ち…打ち明けるつもりなんてなかったし…白瀬にそんな辛い言葉いわせるつもりもなかった…ただ…白瀬の顔をみてたら体が勝手に…。」
黒崎くんの想いが痛いほどに伝わってくる…。
「俺…あいつの…知樹の気持ち…知ってたんだ…応援してやりたかった…。」
赤井くんのなっちゃんへの気持ちを…?
「知樹はこの祭りで…青野に気持ちを伝えるっていってた…だからあのとき…あいつらを2人にした…。」
ああ、そういえば…飲み物買いに行くとき、私の次に黒崎くんが真っ先に行くって言ってたっけ…。
「でもそれは同時に…白瀬の失恋を意味することにもなる…。俺は心のどこかでそれでもいいと思った…。誰にも…自分の親友にも…白瀬を渡したくないと思った…。」
そう言い終わった瞬間、黒崎くんがさっと立ち上がり夜空を見上げる。
そこには満点の星たちが…。
「そんな最低なやつだよ…俺は…。だから断ってくれてじつはほっとしてる…。一緒に花火したのが…知樹ならよかったのにな…。」
「えっ?何…それ?」
「昔からの言い伝え…この神社の境内で一緒に花火をみた男女は必ず結ばれるってな。」
「なんでそんなこと黒崎くんが知ってるの?」
私は思わず立ち上がった!
そんなロマンチックな話とは無縁そうな黒崎くんが知ってたことにほんとにおどろいた!
「なんでって…うちの両親、思い出話が好きで恥ずかしげもなくよくその話聞かされた…。2人も昔…ここでみたって花火…。それ…白瀬の両親からなんか聞いてない?」
「えっ、その話は母さんから今日、聞いただけだけど…。」
黒崎くんのご両親もここで…?
「ふーん、じゃあ、俺の父さんと白瀬の父さんが親友でそれぞれの彼女をつれてここで花火見ようってなったことは…知らない?」
「知らない!!そんなこと今、初めて聞いた!!」
母さんそんなこと一言も…。
帰ったらいっぱい聞かなきゃ!
「とにかく…そのチャンスはおれが潰した…軽蔑してくれていい…。」
いつもそうやって…まわりのことを考えて…苦しんで…それで自分の気持ちを抑えつけてきたの?
そんなの…こうやって言ってくれなきゃ…絶対にわかんないよ…。
「私は納得のうえで失恋したんだよ…黒崎くんのせいじゃない…。そりゃあ、今日1日いろんなことがあったけど…それも無駄じゃなかった…だって黒崎くんの本当の気持ちが知れたんだもん…これって…ちょっとすごいことじゃない?」
私は満面の笑みでそういった。
うそじゃない…本当のこと…。
「そうだな…。」
「それでね…黒崎くんにちゃんと言わなきゃいけないことがあるの…。」
「それはもう…さっき聞いたけど…?」
黒崎くんは包み隠さず全部自分の気持ちをいってくれた…。
だから私もちゃんと伝えなきゃ…今の自分の本当の気持ちを…。
「ちがう…。さっきのごめんは…今まで苦しい気持ちをずっとさせてきた黒崎くんへの申し訳ないことへのごめんなさい…。」
「白瀬…何いってんだ?」
黒崎くんが聞いたけど、私はそのまま続けた…。
「私ね…今日1日…黒崎くんにずっとドキドキしっぱなしだった…。自分でも正直なんで?って戸惑ってばかりで…。でも今やっとわかった!これが…恋なんだって!だから…」
私が最後の言葉を言おうとした瞬間…彼に…黒崎くんに抱きしめられていた…。
私はまた…彼の胸に顔うずめる形になった…。
顔をゆっくり横にむけると黒崎くんの心臓の鼓動が…早い…。
それに合わせて私の胸の鼓動も高鳴るのを感じた…。
「黒崎…くん…。」
「同情なんかすんな…俺は白瀬の失恋を望んだ男だぞ?」
口からでる言葉とは裏腹に…私を抱きしめる黒崎くんの手に…腕に…力がこもる。
「でもそれは…私のことが好きな裏返しなんでしょ?私もちょっとはわかるよ…好きな人の…赤井くんの恋の成就を願うなんてかっこいいこと思った自分がいたけど…本当にそうなのかなって…。行かないで…なんで私じゃないの?って思ってるから…心にぽっかり穴があいたようになってるんじゃないかって…自分って嫌なやつかもって…。」
「白瀬…。」
「そんな気持ち…私だけじゃなかったんだね…。その人が好きだからこそ…そうなっちゃう当たり前の気持ち…。黒崎くんは全然悪くないんだよ…。」
もう迷いなんかない…私は黒崎くんが好きなんだ!
私は目に浮かぶ涙がこぼれないよう必死でこらえながら彼を見上げた。
「だから…こんな私でよかったら…つきあってください…。」
黒崎くんは一瞬、目を見開きおどろいてはいたけど…すぐに優しく微笑んだ…。
そして…しばらくの間…私の頭をそっと優しくなでた…。
「小さいな…。」
「えっ?」
「俺の中では白瀬は小さくて可愛いよ…ずっと前からな…。」
私は初めて言われた言葉に戸惑いつつも…自分の中でずっと抱えてきたコンプレックスが音をたてて崩れていくのを感じた…。
「ありがとう…。」
「おい…それ俺が言うセリフだろ?ありがとな…。白瀬…好きだ…。」
彼に優しく見つめられ…強く抱きしめられたままの私は…降りてくる彼の唇に瞳を閉じすべてをゆだねた…。
どれくらいたっただろう…。
彼のあたたかな唇が離れたと同時に瞳をあけた…。
「そろそろ帰るか…?」
「うん…。」
私は気持ちがいっぱいいっぱいでそれ以上の言葉が見つからなかった…。
たぶん…黒崎くんも…。
「あっ、そうだ…1本だけ線香花火余ったけどやるか?」
「なんで?全部やったんじゃなかったの?」
「あー、俺、最後してなかったから…白瀬に見とれてて…。」
と少し照れてうつむく彼…。
「えっ…あ…。」
あの時…黒崎くんからの突然のキスの時…。
「はい…白瀬がやれよ。」
私はその最後の1本をうけとり、さっき言われたとおり下の方をもった。
黒崎くんがその線香花火に火をつけてくれる。
ぽっとついて徐々に燃え上がる小さな炎…。
「黒崎くんも上の方持ってくれる?一緒にしてほしい…。」
大きな花火は見ることができなかったけど…この小さくても力強く最後まで燃え尽きるこの線香花火を…私は黒崎くんと一緒にしたかったんだ…。
その気持ちを悟ったのか…黒崎くんは黙って1番上の羽の部分をそっと持ってくれた。
「きれいだね…。これって一緒に花火を見たってことになるのかなぁ…?」
「あたりまえだろ…大きくても小さくても…花火は花火だ!」
「うん!」
そう…断言してくれた黒崎くんの優しい笑顔に見とれている間に、最後の線香花火は落ちて消えていた…。
でも私の心にはもう…切なさも…悲しさもない…。
だって…私のそばにはもう…彼がいてくれるから…。
苦手だった…あの彼が…。
「行くぞ!」と手早くかたずけた黒崎くんがいう。
「うん!」といいながら私は彼のあとについていく…来るときとは違う軽い足取りで…。
【第11話 石階段のときめき】
私たちはさっき登ってきた石階段の前にきた。
登ってきたということは…今度は降りなきゃいけない…。
1段ずつ…はぁ…大変…。
内心そう思っていたとき…
「こいよ…。」と黒崎くんがふいに手を差し出してきた。
「えっ?」
「そのビーチサンダルじゃ危ないだろ…下駄でもだ!」
「大、大丈夫だよ…子供じゃないんだから…。」
といって先に階段を降りようとした瞬間…
私の体はふわっと軽く抱きかかえられた!!
「わっ!!」
世に言うお姫様抱っこ!!黒崎くんに!
私は反射的に両腕を彼の首にまわし抱きつく姿になってしまい…おどろきと恥ずかしさですぐに離した…。
「なんで離すの?危ないからちゃんと持ってろ。」
私は言われるがままにもう1度…両腕をゆっくりと彼の首もとへまわした…。
黒崎くんの顔が近すぎる…恥ずかしい…顔をあげられない…。
「私…重いのに…。」
必死にがんばって出た言葉がこれだなんて…。
「さっきも言ったけど、俺の中では白瀬は小さいから問題ない…それにこのほうが安全だ。」
私はゆっくり顔をあげ…視線の感じるほうに目をやる。
やっぱりポーカーフェイスはそのままだけど…私をみる瞳はどこか…優しい感じがした…。
でも…こんなときめく言葉を動揺もせず…平然といえる黒崎くんに…私はちょっと嫉妬した…。
「うん…ありがと…。」
黒崎くんは私を抱きかかえながらどんどん神社の石階段を下っていく。
男の子って…こんなにたくましいんだ…。でも…
「ごめんね…。」
「何が?」
「なんか…最後にこんな負担かけちゃって…。」
「負担?俺は白瀬を抱けて嬉しいけどな!白瀬とつきあうことになったし…それに花火も一緒に見れたしな…。」
といって優しく微笑んだ。
そんな黒崎くんの笑顔をみて…私も自然と笑みがこぼれた…。
そして…私もだよ…と心の中でささやいた…。
ただ…私を抱けてなんて…表現が恥ずかしすぎるよ…もう…。
そんなやりとりをしていて、残り10段ていうところまで差し掛かったところで声がした!
「ゆうちゃん!黒崎くん!」
ふと声がした方を見るとそこには私を心配そうに見上げているみゆちゃんの姿が…。
そのみゆちゃんの周りには京也くんやなっちゃん、赤井くんもいた。
【第12話 男子たちの本音と1番の策士】
「な、なんでみんなが?どうしよう…黒崎くん…。」
と黒崎くんを見るとやっぱりポーカーフェイス…。
「慌てんな…。」
「恥ずかしいからもう降ろして!」
「こんな中途半端なとこで降ろせねぇ…下まで我慢しろ!」
そう言われて私は言い返せず…そのまま抱きかかえられたまま残りの石階段を下っていく…。
みんなに何ていえば…なんて説明すれば…私の頭の中は焦りと戸惑いと恥ずかしさでもう…ぐちゃぐちゃだった…。
下まで降りたと同時にみんなが駆け寄ってくる。
「ゆうちゃん大丈夫?黒崎くんいったい何があったの?」
と今度はなっちゃんが黒崎くんに詰め寄ってきてて赤井くんにまあまあ…とさとされていたのが分かった。
黒崎くんが私をゆっくり地面に降ろしてくれる。
「ありがと…。」とうつむき加減で私は黒崎くんに言いながら…みんなになんて説明しようか必死で考えてた…。
「えっと…これはね…じつは…」としどろもどろに言った私の横で黒崎くんが言った。
「俺たち…つきあうことになったから…。」
そのはっきり言った言葉に…私も…そしてみんなもしばらく固まったまま…何も言えずにいた。
その中で先陣をきったのはみゆちゃんだった。
「へぇー!そっかそっか…そうなんだぁ!ゆうちゃんと黒崎くんがねー!よかったじゃん!」
とまるでわかってたかのように満面の笑顔で言ってくる。
「ゆうちゃん…本当なの?黒崎くんとって…。」
なっちゃんが半信半疑で聞いてくる。
「う、うん…ちょっと…いろいろあってね…。」
と私も頭がまだ整理できてない分、まだうまく説明できないんだけど…。
それを悟ってくれたのか…なっちゃんがにっこり笑う。
「そっか…よかったね!またゆっくり聞かせてもらうからね!」と言ってくれた。
その横で黒崎くんがちょっと複雑な表情で言った。
「ところでお前ら…なんでこんなとこにいるんだよ?」
そうだった…なんでみんなここにいたのか不思議だった…。
すると京也くんがすかさず言った。
「何言ってんだよ!白瀬が帰ったあと…お前も白瀬が心配だからって帰るもんだから、みゆも青野もそのことが気になって花火どころじゃなかったんだよ!とりあえず花火のフィナーレが終わってすぐ帰ろうってことになって…。まっすぐ歩いてきたらお前らがその階段から降りてきたんだろ!」
「そうか…悪い…。」と黒崎くん。
「私もごめん…。」とみんなに謝った…。
そう…だったんだ…。
っていうか…私が心配だった?
「でも黒崎くん…みゆちゃんとなっちゃんに送れって言われたって…。」
「おい…。」といいながら黒崎くんがめずらしく慌てて…目頭を押さえてる。
みんなはそれぞれ顔を見合わせながらくすくす笑っている!
「純はほんと素直じゃないんだなよな…白瀬のことが心配なくせにそんな風に言っちゃって…。あっ、好きなくせに…の間違いか!」
と京也くんがにやにやしながらここぞとばかりに黒崎くんをからかう!
「京也…お前な…!!」
とますます黒崎くんはむきになってるけど…そのやりとりはちょっと楽しそうに見える!
男子の親友同士っていつもこんなふうなんだ…。
私たちにはわからない…絆?…みたいなのがあるんだね!きっと…。
やっぱりあの時って…私のために怒ってくれてたんだね…嬉しい!
「もう…2人ともやめとけって!女子もいるんだぞ!純の片想いが叶ってよかったじゃないか!あっ…。」
といって赤井くんが2人の間に仲裁に入ってくれる…意味深な言葉を放って…。
黒崎くんがおどろき…赤井くんをみる…。
「知樹…お前…いつから知って…?」
「うーん…図書室で白瀬さんに会ったあとくらいからかな…気がつくと純…よく彼女を目で追ってた気がして…ぼくの勘だけどね…。」
と赤井くんは笑った。
黒崎くんは観念したようだった…。
「京也…お前も?」
「お、俺は知らねえよ…全部みゆに言われて…。なぁ…みゆ!」
私たちはおどろき…一斉にみゆちゃんをみる!!
みゆちゃんはきょとんとした表情で…
「ん?わたし知らなーい!それより…みんなハッピーになったんだからよかったじゃん!ね!」
とくったくのない笑顔でそう言われてみんなはもう…それ以上なにも聞けなかった…。
私はなっちゃんと顔を合わせ…お互いに笑った!
だって…この最後の夏祭りの1番の策士は…いつもおっとり天然な…みゆちゃんだったってこと?
なんだかんだいって…私たちのことを1番そばで見ててくれたのは…みゆちゃんだったんだ!
私は思いがけない結末にもかかわらず…なぜか気持ちがほっこりと和んでいく自分を感じていた…。
おそらく周りのみんなの表情も和んでて…きっと同じ気持ちだったのだろう…。
「じゃあ、みんな帰ろ!私、京ちゃんに送ってもらうからここで解散ね!じゃ、また明日ー!行こ、京ちゃん!」
とみゆちゃんがテンション高く言った!
「お、おう!お前らもちゃんと女子、送ってけよ!じゃな!おい、待てよ…みゆ…。」
とあわてて京也くんもみゆちゃんの後を追ってった。
「じゃあ、僕たちも帰ろっか…。」と赤井くんが言った。
「ゆうちゃん…今日のこと…ほんとにごめん…でもありがとう…。」
となっちゃんが私に言う…。
「ううん…今日1日でたくさんのことに気づけた日になったよ…。1つが欠けても…たぶん黒崎くんとこんなことに…なんてならなかったと思う…。私のほうこそ…ありがとう…。」
この気持ちはほんとだった…。
黒崎くんと話をしていた赤井くんがこちらにきて私に言った…。
「白瀬さん…今日はいろいろとごめん…。それと…純の気持ち…引き出してくれてありがとう…。あいつ…いつも自分の気持ちは後回しで抑えてるから心配だったんだ…あいつをよろしく!」と小声で…。
「じゃあね…また明日ね!」といいながらなっちゃんと赤井くんが帰っていく。
私は2人に手をふり、黒崎くんと2人で見送った。
【第13話 待ち望んだ過去の想いとまだ見ぬ遥かなる未来】
「俺たちも行くか?」
「ちょっと待って…これ…履き替えるから…。」
といって透明の袋から下駄を取り出し、白い青いアサガオの飾りがついたビーチサンダルとを履き替えた。
「足…痛いんじゃないのか?そのままでも…。」と黒崎くんが心配そうに言う。
「ううん…このビーチサンダルはね…私にとってもう…大切なものだから…。」
黒崎くんが優しく微笑む…。
「送っていく…帰るぞ!」
「うん!」
下駄に履き替えた私の足取りはあの時とは違い…軽やかだった!
「今日はいろんなことがあったな…。」
「うん…みんなの本当の気持ちがわかった1日だったよね…。まさかみゆちゃんもこんなにみんなのこと考えてくれてたなんて!」
「桃田ってほんとにそうなのか?偶然とか…なんかそんな雰囲気じゃなさそうなんだけどな!」
「私たちもそう思ってた…。でも正直なに考えてるかわかんないとこもあったりするのよね…。」
その真相はわからないけどね…。
「それより赤井くんが黒崎くんの気持ちに気づいてたなんてびっくり!」
下を向いて少し赤くなってる黒崎くん…ちょっとかわいい…。
「あいつは勘がいいからな…でもまさかな…。」と考え込んでいる。
ほんとにそう…こんなことってなかなかないよね…。
これって…神社の言い伝えの力ってこともあったりするのかな…。
まさか…ね…。
そんな話をしている間に私の家の玄関先に着いた。
「送ってくれてありがとう!楽しかった!」
「俺も…」と黒崎くんがじっと見つめてくる…。
私はゆっくりと瞳をとじた…。
その瞬間!!
ドアの向こうから父さんの声が!
「優…帰ったのか?」といってドアを開けてあわてて父さんが出てきた。
「父さん!!」
「遅かったじゃないか…心配したんだぞ!ん…誰だ?きみは?」
その後から母さんが追いかけてくる。
「ちょっとあなた…そんな慌てなくても…。あら!」
まさか…黒崎くんといるところを両親にみられるなんて…気まずいよ…。
「初めまして。同じクラスの黒崎純といいます。白瀬……優さんとは今日から真剣にお付き合いさせていただいてます。」
と真剣な表情で父さんと母さんにむかって挨拶してくれた。動じることなく…。
わたしは内心…えー!!今ここで?と思ったけど…ちょっぴりうれしかった!
「な、なに?黒崎って…まさかあの黒崎か?親友の?」と父さんが動揺している。
「はい。俺はその息子です。」
父さんはしばらく黙っていた…何かを考えているかのように…。
「そうか…俺の…俺たちの想いが叶うとはな…。」
それはかつて…父さんと黒崎くんのお父さんが高校生だったころのお話…。
それぞれの彼女…母さんたちをつれて…あの言い伝えの神社の境内で花火を見たとこから始まったらしい…。そして言い伝えどおり…それぞれ結婚し子供が…。同じ年に産まれた私たちはそれぞれ男の子、女の子だったので父さんたちはいつか…2人が一緒になれることを密かに夢見て…今日まで過ごしていたらしい…。もちろん…お互い意識しないようにそのことは伏せて…ってことらしいけど…。
「あいつ…あれほど言うなよって約束したはずなのに…なんだよ…まったく…。」
と黒崎くんにいつも言い伝えのことを楽しく話をしていたことを知り…父さんがへこむ…。
「父が…すいません…。」と黒崎くんが…。
父さんはちょっとおどろき…そして黒崎くんに話しかける。
「きみはあいつとは違ってしっかりしているな…。あいつはだめだ…約束を守れないやつだ…。でも君はちがうようで安心した…。」
「俺は約束は守ります…。」
「そうか…。じゃあ…大切な娘の優を…よろしく頼むな…。」
「はい…。」
私はなんだか気恥ずかしくなってたけど…そのやりとりをみて初めて…自分が大切にされている存在だと感じていた…。
父さんと黒崎くんの話が終わったところを見定めてか…微笑んでいたみていた母さんが父さんの肩をトントンと叩いた。
「私たちおじゃま虫はそろそろ…ね!」と母さんが私にウィンクする!
「いや…まだ…」という父さんの腕を強引にひっぱって家の中に…。
「ごゆっくりー!」といって母さんがドアをしめる。
私たちはお互いに次…話す言葉を探していた…。
「いいご両親だな…。」
「あ…いつもあんな感じ!でも大好きなの!」
「そうか…。俺たちもいつか…あんなふうになれたらいいな…。」
そういって…黒崎くんは私にそっとキスをした…。
ふいに黒崎くんからでた言葉に…私は幸せを感じた!まだ見ぬ自分の未来に!
それから8年…
私と黒崎くんは結婚した!
「お前なにやってんの?そんなの俺がやるから座ってろ!」
と食器を集めてキッチンにもっていこうとする私からとりあげた。
「大丈夫だよ…ちょっとは動かないとだめなんだから…。」
「落として怪我でもしたらどうすんの?いいから俺にまかせてろ!」
心配性なのは相変わらずだけど…昔と変わらずとっても大事にしてくれている!
そして…私たちにはもうすぐ赤ちゃんが産まれる…。
まだ見ぬこの子にも…いつか…あの言い伝えを話そうとおもう…。
でも大きくなるまでは秘密…恋ができるその時まではね…。
えっ…あの白いビーチサンダルはって?
透明なケースにいれて今も大切にリビングに飾ってる!
だって…私たちの大切な…たからもの…だから…
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