異世界猫カフェでまったりスローライフ 〜根暗令嬢に憑依した動物看護師、癒しの猫パラダイスを築く〜

きよぴの

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第1部 伯爵邸での日々

鉱山の秘密と、黒衣の賢者

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​鉱山を巡る衝撃の事実

​梓がバルカスに依頼してから数日後、『銀の鈴』から緊急の連絡が入った。梓は、夜の帳が降りた頃、再び裏街へ急いだ。

​「お嬢様、鉱山について、驚くべき情報が入った」

​バルカスは、一枚の古い書類を梓の前に置いた。それは、ローウェル領地の鉱山に関する、採掘権契約の控えだった。

​「この鉱石、冷却作用があるだけでなく、特定の魔力を増幅する効果があることが判明した。しかも、その採掘権は、現伯爵に代々受け継がれているものだが、契約書にはある致命的な条項があった」

​「致命的な条項?」

​「はい。ローウェル家が一年間、採掘を完全に停止した場合、採掘権は王室に譲渡される、というものです」

​梓は息を飲んだ。

​(そうか!アラン殿下は、私の父である現伯爵を、何らかの理由で一時的に職務不能に追い込み、採掘を停止させようとしている!そして、そのタイミングに合わせて私を断罪し、採掘権の譲渡が完了した後、セシリアと結婚してローウェル家を完全に掌握するつもりだ!)

​梓は、自分とアイリスの運命が、単純な婚約破棄ではなく、国を揺るがす軍事戦略の一端であったことに、改めて身震いした。


​さらにバルカスは、梓の依頼した弁護士『黒衣の賢者』との接触の手配が完了したことを告げた。

​「彼は、今夜、この場所で、貴女と秘密裏に会うことを承諾した。ただし、彼の正体を詮索してはならない」

​バルカスが部屋を離れてまもなく、フードを深く被り、全身を黒い上質な生地で覆った男が、静かに部屋に入ってきた。その男の纏う静かな威圧感は、ただ者ではないことを物語っていた。

​「あなたが、ローウェル伯爵令嬢ですか」男の声は、驚くほど冷静で、理知的だった。

​「はい。私は、アラン殿下との婚約を、穏便かつ有利な形で解消したいのです」

​『黒衣の賢者』は、梓の目を見た後、ふっと笑った。
​「穏便に、ですか。しかし、お嬢様。あなたの婚約は、すでに王位継承戦における駒となっている。穏便は望めないでしょう。私は、貴女の望み通りの結果をもたらしますが、その代わり、全ての決定権は私に委ねていただきます」

​梓は、一瞬ためらったが、この弁護士の持つ圧倒的な専門性を感じた。アラン殿下に対抗するには、この最強の武器が必要だ。

​「承知いたしました。私の自由と、動物たちの未来のために、全てを貴方に委ねます」

​梓は、事前に用意していた多額の報酬を、弁護士の前に置いた。



​同じ頃、アラン殿下は、セシリアからの新たな報告を受けていた。

​「殿下、わたくし、お姉様の行動を監視しておりました。最近、お姉様は以前よりも頻繁に、裏街へ出入りしているようなのです」

​(裏街?あの愚かな娘が、今度は何を始めた?失敗した商売をまだ続けているのか?いや、もしかすると、私の計画を嗅ぎつけたか?)

アランの心に、再び警戒心が芽生えた。

​「裏街か。セシリア、よく報告してくれた。その情報は重要だ。アイリスは、王族の婚約者としてふさわしくない場所にいるようだ」

​アランは、アイリスの裏街への出入りを、「貴族としての品位を欠く行為」として利用し、婚約破棄の口実にする計画を立てた。そして、それに合わせて、ローウェル伯爵に対する工作を加速させることを決意する。

​(アイリスの愚かな行動のおかげで、断罪の口実は増えた。もうすぐ、この駒は用済みになる。全ては、我が王位継承のために)

​梓の行動は、アラン殿下の警戒を再燃させてしまったが、彼女にはもう、『黒衣の賢者』という最強の盾があった。法廷での静かな戦いは、すぐそこまで迫っていた。

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