11 / 17
新しい依頼
しおりを挟む
「おい、ここで寝るな。ベッド行けよ」
いくら体を揺すってもピクリともしない。
俺は起こすのは諦めて、せめてソファに寝かせようと諒から体を離した。
なんとか諒をソファに移すことは出来た。が、普段運動なんてしないせいで、眠っている自分より大柄な体を支える作業はかなりの重労働だった。
時計を見ると既にいい時間だった。スマホで調べると、もう二時間もすれば最寄り駅から終電が出る。今日はもう飲まないだろう。疲れで体がだるいとはいえ、目の前の机にある散々飲み食いしたあとをそのままで帰るわけにはいかない。
「あれ、セノ~……?」
一人で黙々と片づけていると、リビングから寝ぼけ声が聞こえてきた。諒が起きたのだろう。
俺は洗い物をしながらソファにいる諒に声をかけた。
「疲れてるだろ。もうそのまま寝てろ。俺もこれ洗ったら帰るから」
諒の住むマンションはオートロックだから、俺が勝手に出ていっても鍵は閉まる。
「え、帰るの?」
一気に目がさめたのか、諒はすぐに起き上がって速足で駆け寄ってくる。
「帰る。まだ電車あるし」
「寂しいな。泊ればいいのに」
「泊まらない。……寂しいなら奥さんに相手してもらえ」
諒は黙って目をそらした。
最後に洗剤を流していたグラスを水切り籠に置くと手を拭いた。
諒と再会してから、数回会って確信したことがある。諒は家族の話題を出すとあまりいい反応を示さない。
もしかしたら上手くいっていないのかもしれない。しかしその話をしたところで自分は助けてやれないし、悩みを自ら聞き出してやるほど、心の広い人間にはなれなかった。
ダイニングチェアにかけてあった鞄を取りにいこうとすると、壁に寄りかかっていた諒が通り過ぎざまに呟いた。
「……なぁ。本当にあいつとは何もないの?」
まさかこの話に戻るとは思わず、つい短いため息をこぼしてしまった。
俺には諒がこれだけアンドウを気にする理由がわからなかった。
しかし同性と体の関係を持っていると察している相手にこれ以上誤魔化す理由もなかった。
「マッチングアプリで一回きり相手を探してやってる。俺、男相手にしか興味もてないから。今は誰とも付き合ってないから、どうしても欲求不満になった時だけ。あいつ……アンドウはそれで終わらなかったから関係が続いてる。あいつしつこいから諒も関わらない方が良い」
俺が鞄を肩にかけながら淡々と説明するのを諒は黙って聞いていた。
「納得したか? 俺が人付き合いが苦手なの知ってるだろ。アプリで相手探すなんて珍しくないし、楽でいいんだよ。じゃ、お邪魔しました」
諒に向かって手をひらひらと振ると玄関に向かい、靴を履いた。
「セノ」
「何?」
「……特定の相手、作った方が良いと思うよ」
言いづらそうに顔を背ける諒に、一気に心の中が冷えた。
諒に嫌われるのは怖い。けど、そんな風に心配されるくらいなら嫌われた方がマシだった。
「……この会話、終電逃してまでする意味あるか? じゃあな。お邪魔しました」
俺はこれ以上の言葉のやり取りを拒否するように部屋のドアを閉めた。これ以上、こちらの事情を詮索してほしくなかった。諒はまだ何か言いたそうにしていたが、その言葉が口から出るのを待つことはしなかった。
やはりあの日、諒と連絡先を交換したのは間違いだった。一度きりの再会で終わらすべきだった。好きな相手、絶対付き合えない相手の口からそんな言葉は聞きたくない。
諒を忘れられなくて他の人を好きになれないなんて、口が裂けても言えないのに。
こんなに泣きたくなったのはいつぶりだろう。優柔不断な自分を恨んで、溢れてきそうになる涙を堪えた。
あれから三か月。相変わらず仕事に明け暮れる日が続いている。連載が最後まで好評だったおかげで雑誌関連の依頼が増えたのは大きい。
「あー、また……」
寝ぼけ目に加工途中の写真が並ぶ。
仕事が増えると忙しくなるが、仕事が増えなければ職業として成り立たない。当たり前だが体は一つだ。今まで通りやっていたらいつかは回らなくなる。その前に対策しなければと、最近は一つ一つの依頼をこなすスピードを上げるように意識していた。
確かこの作業も、まだ締め切りに余裕はあるが、今日少しでも進めて後に時間を作ろうと取り掛かったはずだった。
アラームを常に同じ時間に鳴る設定にしてあるから、その日の作業さえ終わっていれば寝落ちしても仕事に支障はないが、やはり悔しい。
目を覚ますために、一度椅子から離れて顔を洗った。冷たい水が乾燥気味の目に沁みる。顔をあげて鏡に映った自分の目元には、なかなか立派な隈があった。
『誤魔化せないくらいやつれてる』
ふと、諒が言った言葉を思い出す。あれから諒とは会っていない。というより会えない。
俺は帰りの電車の中で『忙しくなるからもう会えない』とメールを送った後、諒の連絡先をすべてブロックして消してしまったからだ。
ひどいことをしている自覚はある。あまりに一方的だ。
しかしもうこれでいい。
あの日諒と会うのは気が進まなかったが、会ったおかげで気持ちを切り替えるきっかけにはなった。
好きな相手に会いながら、片思いを忘れることなど出来やしない。
『俺がそういうの気にしないって知ってるじゃん』
ふと、アンドウ声が頭の中をよぎる。
もし自分が結婚していることなど気にせず告白出来たとしたら、諒は一体どんな反応をするだろう。
想像してみたが思い浮かべただけでも気分が悪かった。今後も自分がアンドウのようなふるまいに憧れることはなさそうだ。
諒とは一緒に酒を飲んで懐かしい話に花を咲かせた。もうそれで十分だ。
パソコンの前に戻ると、画面の片隅にメールの通知があった。中身を見ると、新しい仕事の依頼だった。個人の、オーディション用のポートレート撮影。正直忙しい今、新たな依頼として受けるかどうか悩む内容だった。しかし打ち合わせはメールや電話、撮影は一日だけと、なんとかこなせそうな内容でもある。
結局俺は引き受ける方向で話を聞くことにした。
数日かけてメールでの打ち合わせが終わった。依頼は飯や外で散歩など、日常生活を切り取るような写真を撮って欲しいという内容だった。オーディション用のスタジオ撮影は良いのか尋ねると、それは既に終わっていると返事があった。丸一日生活を共にして写真を撮ることから見積もりはそれなりに行く。それでも構わないなら断る理由もなかった。前金を入金してもらい、俺はこの依頼を正式に引き受けることにした。
今日は最終確認と、待ち合わせの詳細を決める電話が相手からかかってくる予定だ。
大体、予定通りの時間に、仕事用に置いているファックス付きの電話がなる。
『本日依頼の最終確認をお願いしていた“まこと”といいます』
短く社名を名乗って出た電話、俺は受話器から聞こえた相手の声を聞いて思わず耳を疑った。
愛想の悪い言葉を漏らしそうになって、喉の奥でなんとか堪えた。
混乱しない方がおかしい。
今、電話で話している相手の声が明らかに諒なのだから。
いくら体を揺すってもピクリともしない。
俺は起こすのは諦めて、せめてソファに寝かせようと諒から体を離した。
なんとか諒をソファに移すことは出来た。が、普段運動なんてしないせいで、眠っている自分より大柄な体を支える作業はかなりの重労働だった。
時計を見ると既にいい時間だった。スマホで調べると、もう二時間もすれば最寄り駅から終電が出る。今日はもう飲まないだろう。疲れで体がだるいとはいえ、目の前の机にある散々飲み食いしたあとをそのままで帰るわけにはいかない。
「あれ、セノ~……?」
一人で黙々と片づけていると、リビングから寝ぼけ声が聞こえてきた。諒が起きたのだろう。
俺は洗い物をしながらソファにいる諒に声をかけた。
「疲れてるだろ。もうそのまま寝てろ。俺もこれ洗ったら帰るから」
諒の住むマンションはオートロックだから、俺が勝手に出ていっても鍵は閉まる。
「え、帰るの?」
一気に目がさめたのか、諒はすぐに起き上がって速足で駆け寄ってくる。
「帰る。まだ電車あるし」
「寂しいな。泊ればいいのに」
「泊まらない。……寂しいなら奥さんに相手してもらえ」
諒は黙って目をそらした。
最後に洗剤を流していたグラスを水切り籠に置くと手を拭いた。
諒と再会してから、数回会って確信したことがある。諒は家族の話題を出すとあまりいい反応を示さない。
もしかしたら上手くいっていないのかもしれない。しかしその話をしたところで自分は助けてやれないし、悩みを自ら聞き出してやるほど、心の広い人間にはなれなかった。
ダイニングチェアにかけてあった鞄を取りにいこうとすると、壁に寄りかかっていた諒が通り過ぎざまに呟いた。
「……なぁ。本当にあいつとは何もないの?」
まさかこの話に戻るとは思わず、つい短いため息をこぼしてしまった。
俺には諒がこれだけアンドウを気にする理由がわからなかった。
しかし同性と体の関係を持っていると察している相手にこれ以上誤魔化す理由もなかった。
「マッチングアプリで一回きり相手を探してやってる。俺、男相手にしか興味もてないから。今は誰とも付き合ってないから、どうしても欲求不満になった時だけ。あいつ……アンドウはそれで終わらなかったから関係が続いてる。あいつしつこいから諒も関わらない方が良い」
俺が鞄を肩にかけながら淡々と説明するのを諒は黙って聞いていた。
「納得したか? 俺が人付き合いが苦手なの知ってるだろ。アプリで相手探すなんて珍しくないし、楽でいいんだよ。じゃ、お邪魔しました」
諒に向かって手をひらひらと振ると玄関に向かい、靴を履いた。
「セノ」
「何?」
「……特定の相手、作った方が良いと思うよ」
言いづらそうに顔を背ける諒に、一気に心の中が冷えた。
諒に嫌われるのは怖い。けど、そんな風に心配されるくらいなら嫌われた方がマシだった。
「……この会話、終電逃してまでする意味あるか? じゃあな。お邪魔しました」
俺はこれ以上の言葉のやり取りを拒否するように部屋のドアを閉めた。これ以上、こちらの事情を詮索してほしくなかった。諒はまだ何か言いたそうにしていたが、その言葉が口から出るのを待つことはしなかった。
やはりあの日、諒と連絡先を交換したのは間違いだった。一度きりの再会で終わらすべきだった。好きな相手、絶対付き合えない相手の口からそんな言葉は聞きたくない。
諒を忘れられなくて他の人を好きになれないなんて、口が裂けても言えないのに。
こんなに泣きたくなったのはいつぶりだろう。優柔不断な自分を恨んで、溢れてきそうになる涙を堪えた。
あれから三か月。相変わらず仕事に明け暮れる日が続いている。連載が最後まで好評だったおかげで雑誌関連の依頼が増えたのは大きい。
「あー、また……」
寝ぼけ目に加工途中の写真が並ぶ。
仕事が増えると忙しくなるが、仕事が増えなければ職業として成り立たない。当たり前だが体は一つだ。今まで通りやっていたらいつかは回らなくなる。その前に対策しなければと、最近は一つ一つの依頼をこなすスピードを上げるように意識していた。
確かこの作業も、まだ締め切りに余裕はあるが、今日少しでも進めて後に時間を作ろうと取り掛かったはずだった。
アラームを常に同じ時間に鳴る設定にしてあるから、その日の作業さえ終わっていれば寝落ちしても仕事に支障はないが、やはり悔しい。
目を覚ますために、一度椅子から離れて顔を洗った。冷たい水が乾燥気味の目に沁みる。顔をあげて鏡に映った自分の目元には、なかなか立派な隈があった。
『誤魔化せないくらいやつれてる』
ふと、諒が言った言葉を思い出す。あれから諒とは会っていない。というより会えない。
俺は帰りの電車の中で『忙しくなるからもう会えない』とメールを送った後、諒の連絡先をすべてブロックして消してしまったからだ。
ひどいことをしている自覚はある。あまりに一方的だ。
しかしもうこれでいい。
あの日諒と会うのは気が進まなかったが、会ったおかげで気持ちを切り替えるきっかけにはなった。
好きな相手に会いながら、片思いを忘れることなど出来やしない。
『俺がそういうの気にしないって知ってるじゃん』
ふと、アンドウ声が頭の中をよぎる。
もし自分が結婚していることなど気にせず告白出来たとしたら、諒は一体どんな反応をするだろう。
想像してみたが思い浮かべただけでも気分が悪かった。今後も自分がアンドウのようなふるまいに憧れることはなさそうだ。
諒とは一緒に酒を飲んで懐かしい話に花を咲かせた。もうそれで十分だ。
パソコンの前に戻ると、画面の片隅にメールの通知があった。中身を見ると、新しい仕事の依頼だった。個人の、オーディション用のポートレート撮影。正直忙しい今、新たな依頼として受けるかどうか悩む内容だった。しかし打ち合わせはメールや電話、撮影は一日だけと、なんとかこなせそうな内容でもある。
結局俺は引き受ける方向で話を聞くことにした。
数日かけてメールでの打ち合わせが終わった。依頼は飯や外で散歩など、日常生活を切り取るような写真を撮って欲しいという内容だった。オーディション用のスタジオ撮影は良いのか尋ねると、それは既に終わっていると返事があった。丸一日生活を共にして写真を撮ることから見積もりはそれなりに行く。それでも構わないなら断る理由もなかった。前金を入金してもらい、俺はこの依頼を正式に引き受けることにした。
今日は最終確認と、待ち合わせの詳細を決める電話が相手からかかってくる予定だ。
大体、予定通りの時間に、仕事用に置いているファックス付きの電話がなる。
『本日依頼の最終確認をお願いしていた“まこと”といいます』
短く社名を名乗って出た電話、俺は受話器から聞こえた相手の声を聞いて思わず耳を疑った。
愛想の悪い言葉を漏らしそうになって、喉の奥でなんとか堪えた。
混乱しない方がおかしい。
今、電話で話している相手の声が明らかに諒なのだから。
7
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
運命のアルファ
猫丸
BL
俺、高木颯人は、幼い頃から亮太が好きだった。亮太はずっと俺のヒーローだ。
亮太がアルファだと知った時、自分の第二の性が不明でも、自分はオメガだから将来は大好きな亮太と番婚するのだと信じて疑わなかった。
だが、検査の結果を見て俺の世界が一変した。
まさか自分もアルファだとは……。
二人で交わした番婚の約束など、とっくに破綻しているというのに亮太を手放せない颯人。
オメガじゃなかったから、颯人は自分を必要としていないのだ、と荒れる亮太。
オメガバース/アルファ同士の恋愛。
CP:相手の前でだけヒーローになるクズアルファ ✕ 甘ったれアルファ
※颯人視点は2024/1/30 21:00完結、亮太視点は1/31 21:00完結です。
※話の都合上、途中女性やオメガ男性を貶めるような発言が出てきます(特に亮太視点)。地雷がある方、苦手な方は自衛してください。
※表紙画像は、亮太をイメージして作成したAI画像です。
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
事故つがいの夫は僕を愛さない ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】
カミヤルイ
BL
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続。
2025.4.28にも1位に返り咲きました。
ありがとうございます!
美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活
(登場人物)
高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。
高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。
(あらすじ)*自己設定ありオメガバース
「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」
ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。
天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。
理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。
天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。
しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。
ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。
表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる