ファンタジー小説～1分で読める超短編集～

逃げ出した豚

　俺は城で豚の飼育を担当している。
　ついこの前、もうひとりの飼育員が辞任してしまった。
　原因は料理長のデブのおっさんがその飼育員をいじめていたからだ。

　しかし新しく配属された飼育員はなんと90歳の老人だ。

「いやー最近目が悪くてねえ…耳も遠くてしょうがない」

　こんなんであのデブのおっさんのいじめに耐えられるのか？

　俺は調理室に行ってデブの料理長に新しい飼育員が来たことを知らせようとした。
　だがおかしい。昼どきなのにどこにもいない。どこかで休憩中なのだろうか。

　俺が戻ると、老人は思い出したようにしゃべり出した。


「あっそうそう、調理室に逃げ出した豚が寝てたから縛って豚小屋に入れといたよ」





ー完ー